アルツハイマー病患者の認知機能や実行機能に対する身体活動の影響は、数多くの研究で調査されているものの、その結果は完全に一致しているとはいえない。また、特定のトレーニングや使用する評価ツールに関する研究も、不十分である。中国・湖南渉外経済学院のLinlin Yang氏らは、有酸素運動がアルツハイマー病患者のQOL、認知機能、抑うつ症状に及ぼす影響を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Open誌2025年1月11日号の報告。
対象研究には、アルツハイマー病患者に対する介入として有酸素運動を用いたすべてのランダム化比較試験(RCT)を含めた。2024年3月12日までに公表された研究を、PubMed、Web of Science、Cochrane Library、EMBASE、Scopus、CINAHL、CNKIより、システマティックに検索した。2人の独立した著者により、定義された手法を用いてデータ選択、検索を行った。バイアスリスク、システマティックレビューおよびメタ解析、エビデンスの確実性の評価には、それぞれCochrane risk of bias tool、ランダム効果モデル、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いた。研究間の異質性を評価するため、Stata MP V.18.0およびV.14.0を用いてメタ回帰を実施した。標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出した。データは、Cochrane CollaborationのReview Manager V.5.4を用いてレビューした。結果の安定性および信頼性を確認するため感度分析を実施し、出版バイアスを確認するためファンネルプロットおよびEgger's testを用いた。出版バイアスの修正および評価には、Duval and Tweedie clipping methodを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・有酸素運度は、アルツハイマー病患者の認知機能を向上させることが示唆された。
・ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア、アルツハイマー病評価尺度の認知サブスケール(ADAS-cog)スコア、QOLの有意な改善が認められた。一方、抑うつ症状については、有意な差が認められなかった。
【MMSEスコア】SMD:0.95、95%CI:0.58〜1.32、z=5.06、p<0.00001
【ADAS-cogスコア】SMD:−0.67、95%CI:−1.15〜−0.20、z=2.77、p=0.006
【QOL】SMD:0.36、95%CI:0.08〜0.64、z=2.51、p=0.01
【抑うつ症状】SMD:−0.25、95%CI:−0.63〜0.13、z=1.27、p=0.21
・サブグループ解析では、介入期間が16週超、介入1回当たり50分未満の場合、MMSEスコアの改善が認められた。
・介入期間が16週超、介入1回当たり30分超の場合、ADAS-cogスコアの改善が認められた。
・有酸素運動を週3回以上、介入1回当たり30〜50分以上を16週間継続した場合、QOLの向上が認められた。
著者らは「アルツハイマー病に対する有酸素運動は、認知機能およびQOLの改善に寄与するが、抑うつ症状には有意な影響を及ぼさないことが明らかとなった。ただし、含まれた研究の異質性の高さや質のばらつきを考慮すると、より科学的かつ客観的なRCTにより本結果を検証する必要がある」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)