医療一般|page:277

双極性障害とうつ病患者における不安症の有病率とその関連因子

 気分障害の患者では、不安症が併発すると、うつ症状の持続、QOL低下、自殺リスク上昇、抗うつ薬治療による気分の不安定化などの悪影響が認められる。しかし多くの場合、このことは臨床診断で認識されていない。東京医科大学の井上 猛氏らは、以前報告したJET-LMBP研究のデータを用いて、日本人気分障害患者における不安症の有病率とその関連因子を調査し、不安症の併発を確認するのに役立つ方法を検討した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年7月12日号の報告。  双極性障害患者114例、うつ病患者334例を分析した。不安症の併発は、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を用いて確認した。人口統計学的および臨床的特徴は、日本語版自己記入式簡易抑うつ尺度日本語版(QIDS-SR-J)、SF-36、Child Abuse and Trauma Scale(CATS)を用いて評価した。不安症の併発に関連する因子は、年齢、性別、抑うつ症状の重症度で調整した多変量ロジスティック回帰分析を用いて特定した(事後分析)。

ペムブロリズマブ、6週ごと投与の用法・用量を追加/MSD

 MSDは、2020年8月21日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)のすべての効能・効果における用法・用量について、単剤または併用療法を問わず、これまでの 「1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する」に加えて、「1回400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する」が追加となったと発表。  今回の用法・用量追加は、薬物動態シミュレーション、曝露量と有効性または安全性との関係に基づいて検討した結果、新規用法・用量である1回400mgを6週間間隔で投与した場合の有効性または安全性は、既承認の用法・用量である1回200mgを3週間間隔で投与した場合と明確な差異がないと予測され、承認に至ったもの。

周産期うつ病に対するピアサポート介入の有効性~メタ解析

 周産期うつ病の予防や治療に対する代替アプローチとして、ピアサポート介入が有効である可能性が示唆されているが、出産前および産後の有効性、経済性、満足度については、あまりわかっていない。中国・湖南医薬学院のRuirui Huang氏らは、周産期うつ病に対するピアサポート介入の有効性、経済性、満足度に関する利用可能なエビデンスをレビューした。Journal of Affective Disorders誌2020年7月15日号の報告。  英語および中国語の複数の電子データベースより、2019年4月までのエビデンスを検索した。リファレンスのハンドサーチも行った。周産期うつ病を対象としたピアサポート介入について報告されたランダム化比較試験を抽出した。エビデンスの質は、Cochrane risk of bias toolを用いて評価した。

イマチニブのGIST術後補助療法の期間、1年vs.3年/JAMA Oncol

 消化管間質腫瘍(GIST)に対するイマチニブ術後補助療法の至適投与期間はどれくらいなのか。フィンランド・ヘルシンキ大学のHeikki Joensuu氏らによる、イマチニブ術後補助療法の1年投与と3年投与を比較する多施設共同無作為化非盲検第III相試験の追跡10年時点の評価において、有効性は1年投与より3年投与が優れていることが示された。イマチニブ術後補助療法は、無再発生存期間(RFS)の延長と関連することが示されていたが、全生存期間(OS)の成績については明らかになっていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「より長期のイマチニブ術後補助療法を行うことで、術後10年間の死亡リスクはほぼ半減する可能性が示された」とまとめている。JAMA Oncology誌2020年5月29日号掲載の報告。

METエクソン14スキッピング肺がん治療薬カプマチニブ発売/ノバルティス

 ノバルティス ファーマ、2020年8月26日、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬として、カプマチニブ (商品名:タブレクタ)を発売した。  カプマチニブはMETに対する選択的な経口阻害薬で、NSCLCにおける発がんドライバー因子であるMETex14変異に対しても阻害活性を有する。  METex14変異陽性のNSCLCは、肺がんの中でも予後不良な集団で治療選択肢が限られており、METex14を標的とする治療法の開発が望まれていた。METex14変異はNSCLC患者の約3~4%に報告されており、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者数は日本国内では約3,000名程度と推定される。

不安障害に対するヨガvs.認知行動療法vs.ストレス教育の有効性

 メンタルヘルスの改善に効果があるとされることの多いヨガだが、医学療法と比較した場合の効果はどうなのか。ヨガ、認知行動療法(CBT)と従来の治療法であるストレス教育の効果を比較した、米国・ニューヨーク大学のNaomi M. Simon氏らによる研究がJAMA Psychiatry誌オンライン版2020年8月12日号に掲載されている。  著者らは、2013年12月1日から2つの専門学術機関で参加者を募集、全般性不安障害(GAD)と診断された成人226例を対象とした。評価は2019年10月25日まで、分析は 2020年2月12日までに完了した。ヨガ(クンダリーニヨガ)とCBTそれぞれのストレス教育に対する優越性、およびヨガのCBTに対する非劣性を検証した。

体重減少伴う発症初期の糖尿病で膵がんリスク増/JAMA Oncol

 糖尿病と膵臓がんの関連は知られているが、体重減少を伴う発症して間もない糖尿病では、膵臓がんのリスクが大幅に高いことが明らかにされた。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のChen Yuan氏らによるコホート研究の結果で、「高齢」「以前は健康体重」「意図的な減量ではない」場合は、さらに膵臓がんの発症リスクが高まることも示された。米国において膵臓がんは、がん死要因で3番目に多いという。しかしこれまで、膵臓がんの早期診断戦略を促進する高リスク群は、ほとんど特定されていなかった。JAMA Oncology誌オンライン版2020年8月13日号掲載の報告。  研究グループは、30年以上にわたり繰り返し評価が行われてきた米国の2つのコホート研究(Nurses’Health StudyおよびHealth Professionals Follow-Up Study)のデータを用いて、糖尿病罹病期間および最近の体重変化とその後の膵臓がんリスクとの関連を解析した。

毎月の住宅費や物件の購入価格は?医師1,000人に聞きました

 転勤や開業の可能性など、キャリアプランによって大きく左右される医師の住まい選び。20代から70代以上まで、各世代の医師たちはどんな選択をして、どれくらいの費用を住宅にかけているのか。CareNet.comの会員医師1,000人に、その実情を聞いた。  住宅の購入歴あり、と答えたのは1,000人中519人(51.9%)。総務省「住宅・土地統計調査」によると、2018年の日本全国での持ち家率は61.2%1)。転勤が多いなどの医師という職業の特性が影響しているのかもしれない。購入した年代別にみると、最も多かったのが30代で312人(60.1%)、40代が165人(31.8%)と続き、30~40代での購入者が9割以上を占めた。

“GLP-1ダイエット”は速やかに規制当局へ連絡、製造販売元4社が警告

 2型糖尿病治療薬・GLP-1受容体作動薬の適応外使用について、「GLP-1ダイエット」などと称され、美容・痩身をうたうインターネット上の広告が問題となっている。20日、GLP-1受容体作動薬の製造販売元4社(ノボ ノルディスク ファーマ、アストラゼネカ、サノフィ、日本イーライリリー)が、文書で適正使用を呼び掛けた。この問題に関しては、日本糖尿病学会からも7月9日に見解・警告が出されている。  文書では、GLP-1受容体作動薬について、現時点でわが国においては2型糖尿病のみを効能・効果として製造販売承認を取得しており、それ以外の目的で使用された場合の安全性および有効性については確認されていない、と改めて強調。また、GLP-1受容体作動薬が適応外使用された場合、本来の効果が見込めないだけでなく、思わぬ健康被害が発現する可能性も想定されると注意喚起している。

がん治療で心疾患リスクを伴う患者の実態と対策法/日本循環器学会

 第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で佐瀬 一洋氏(順天堂大学大学院臨床薬理学/早稲田大学医療レギュラトリーサイエンス研究所)が「腫瘍循環器診療の拡がりとCardio-Oncology Rehabilitation(CORE)」について発表。がんを克服した患者の心血管疾患発症リスクやその予防策について講演した。  がん医療の進歩により、がんは不治の病ではなくなりつつある。言い換えるとがん治療の進歩により生命予後が伸びる患者、がんサバイバーが増えているのである。とくに米国ではがんサバイバーの急激な増加が大きな社会問題となっており、2015年時点で1,500万人だった患者は、今後10年でさらに1,000万人の増加が見込まれる。

うつ病のアルゴリズムに基づく治療プログラムの有効性

 ランダム化比較試験(RCT)で証明された効果が、日常の臨床診療で一般化できるかどうかには疑問が残る。オランダ・フローニンゲン大学のKaying Kan氏らは、うつ病のアルゴリズムに基づく治療(AGT)プログラムの治療オプションを評価し、それらの有効性を有効性試験のアウトカムと比較した。さらに、治療継続性とアウトカムとの関係を評価した。Journal of Affective Disorders誌2020年10月1日号の報告。  オランダのメンタルヘルス医療従事者より2012年1月~2014年11月の治療データを収集し、ルーチンアウトカムモニタリング(ROM)データと関連付けた患者351例を対象とした、自然主義的研究を実施した。治療オプション(薬物療法、心理療法、薬物+心理療法)の有効性は、メタ解析で報告された有効性と比較した。バイナリ変数として治療継続性(推奨された治療セッションの早期中止患者と完了患者の比較)を含めた。

慢性心不全にARNIのエンレスト発売/ノバルティス ファーマ

 ノバルティス ファーマは8月26日、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)のエンレスト(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)を「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」を効能・効果として発売した。医療従事者への情報提供はノバルティス ファーマと大塚製薬が共同で行う。  ARNIのエンレストは、ネプリライシン阻害作用をもつサクビトリルとアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)であるバルサルタンを1:1のモル比で含有する単一の結晶複合体。心不全の病態を悪化させる神経体液性因子の1つであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰な活性化を抑制するとともに、RAASと代償的に作用する内因性のナトリウム利尿ペプチド系を増強し、神経体液性因子のバランス破綻を是正する。

第4次「対糖尿病戦略5ヵ年計画」を策定/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、第4次「対糖尿病戦略5ヵ年計画」を策定し、同学会のホームぺージで公開した。  本計画は、増加を続ける糖尿病患者の歯止めと診療の進歩への寄与などを盛り込んで、2004年より策定されているもの。第3次計画では、糖尿病予備群の数の減少、健康寿命の延伸、わが国独自の糖尿病の疫学・臨床データの蓄積、専門知識を持つさまざまな職種の人材の育成などが予測される成果として標榜され、検証されている。

ペムブロリズマブ+化学療法、食道がん1次治療で生存改善(KEYNOTE-590)/Merck

 Merck社は、2020年8月19日、局所進行または転移のある食道がん患者の1次治療に対する第III相KEYNOTE-590試験において、ペムブロリズマブと化学療法の併用が主要評価項目を達成したと発表。  同試験の中間解析では、ペムブロリズマブと化学療法(シスプラチン+5-FU)の併用は、化学療法(同)と比較して、OSおよびPFSを統計的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した。また、主要副次評価項目である客観的奏効率(ORR)も有意に改善したとしている。試験の結果は、欧州腫瘍学会(ESMO)2020Virtual Congressで発表される予定。

妊婦の定期健診とSARS-CoV-2感染リスクの相関は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に懸念されたことの1つに、患者の受診自粛がある。しかし、医療機関を訪れることが感染リスクにどう影響するかについては、十分に明らかになっていない。本研究は、米国・Brigham and Women's HospitalのSharon C. Reale氏らの研究チームが、コロナパンデミックの中にあっても定期的な診察が必要だった妊婦を対象に、受診回数がSARS-CoV-2感染のリスクと関連しているかどうかを検証した。JAMA誌オンライン版2020年8月14日号リサーチレターでの報告。  本研究の対象は、2020年4月19日~6月27日(産科患者全員が入院時にSARS-CoV-2のRT-PCR検査を実施した期間)にマサチューセッツ州ボストンの4つの医療機関で出産した2,968例。

治療抵抗性精神疾患治療のための3次医療サービスの有効性

 治療抵抗性統合失調症は、2次医療機関における疾患マネジメントが困難な場合が多い疾患の1つである。再入院や長期介護費用などのリスクを軽減するため、複雑な治療抵抗性精神疾患に対しエビデンスに基づき個別で、集学的な医療を提供する専門の3次医療機関として英国精神疾患ユニット(National Psychosis Unit:NPU)がある。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのCecilia Casetta氏らは、NPUでの治療の長期的な有効性を自然主義的なアウトカムを検討することにより評価した。BJPsych Open誌2020年8月3日号の報告。  精神科病床と一般病床の入院回数、入院日数、緊急度、NPU入院前後に処方された向精神薬の数と抗精神病薬の用量について、ミラーイメージデザインを用いて比較した。CRISシステム、South London and Maudsley NHS Trustデータベース、HESシステムを用いてデータを収集した。

T-DM1、HER2陽性早期乳がんの術後薬物療法に適応追加/中外製薬

 中外製薬は、抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体トラスツズマブ エムタンシン(商品名:カドサイラ、以下T-DM1)について、「HER2陽性の乳癌における術後薬物療法」に対する適応追加の承認を8月21日に取得したことを発表した。手術前の薬物療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られなかったHER2陽性早期乳がんに対して、術後薬物療法の新たな選択肢となる。  今回のT-DM1の承認は、海外で実施された非盲検ランダム化第III相国際共同臨床試験(KATHERINE試験)の成績に基づく。本試験では、トラスツズマブを含む術前薬物療法でpCRが得られなかったHER2陽性早期乳がん1,486例を対象に、術後薬物療法としてのT-DM1の有効性と安全性をトラスツズマブと比較した。その結果、主要評価項目である浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)について、トラスツズマブに対するT-DM1の優越性が認められた(非層別ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.39~0.64、p<0.0001)。また、本試験におけるT-DM1の安全性は、転移を有するHER2陽性乳がんにおける治療で認められている安全性プロファイルと同様であり、忍容性が認められた。

デュルバルマブ、進展型小細胞肺がんに国内適応拡大/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年8月21日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について、化学療法(エトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチン)との併用療法で、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を適応症に厚生労働省より承認を取得したと発表。  デュルバルマブに対する今回の承認は、デュルバルマブと化学療法との併用療法が、化学療法単独との比較において、統計学的に有意で臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示した第III相CASPIAN試験の結果に基づいている。

COVID-19、第1波・第2波の特徴と転帰を比較/JAMA

 COVID-19感染流行において、初期と2度目の流行では、患者の属性や臨床的症状、転帰に違いはあるのか。Center for Outcomes Research(米国・ヒューストン)のFarhaan S. Vahidy氏らによる分析が、JAMA誌オンライン版2020年8月13日号のリサーチレターで報告されている。  著者らは、テキサス州ヒューストンの8病院が使うヘルスケアシステム・Houston Methodistの電子カルテから、PCR検査で陽性となったCOVID-19重症患者を抽出したうえで、年齢、性別、人種/民族、併存症、投薬、ICU入院、死亡率を分析した。第1波は2020年3月13日~5月15日、第2波は5月16日~7月7日までとした。2020年7月7日時点におけるCOVID-19の入院患者のユニーク数は2,904例、第1波が774例、第1波が2,130例だった。

レビー小体型認知症が疑われる患者の初期症状と診断時の特徴

 レビー小体型認知症(DLB)は、さまざまな初期症状がみられるが、多くのDLBの症例に焦点を当てた報告は、これまでほとんどなかった。北海道・砂川市立病院の内海 久美子氏らは、診断時にDLBおよびDLB関連症状が認められた患者234例を対象に、初期症状をレトロスペクティブに評価し、症状プロファイルの性差について検討を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2020年8月2日号の報告。  対象は、2017年に改訂されたDLBの臨床診断に関するコンセンサス基準を満たした、DLBの可能性の高い患者234例。DLBは、ドパミントランスポーターシンチグラフィと123 I-MIBG心筋シンチグラフィで確認した。脳灌流は、SPECTを用いて測定した。これらに加えて、中心および補助的な臨床的特徴を考慮した。