医療一般|page:6

自己免疫性皮膚疾患は心臓病のリスク増加につながる

 一部の皮膚疾患患者は心臓病の早期スクリーニングを受ける必要があるかもしれない。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター皮膚科のHenry Chen氏らの最新の研究によると、免疫システムが自己を攻撃する自己免疫性皮膚疾患患者では動脈硬化を発症するリスクが対象群と比べて72%増加することが、明らかになった。同氏らによる研究結果は、「JAMA Dermatology」に12月4日掲載された。  全身性エリテマトーデス(SLE)は全身に炎症を引き起こし、皮膚、関節、臓器に損傷を与える疾患である。米疾病対策センター(CDC)の報告によれば、米国にはSLE患者が約20万4,000人存在し、そのうちの少なくとも80%が皮膚症状を発症している。一方、皮膚のみに症状が現れることもあり、この病態は皮膚エリテマトーデス(CLE)と診断される。これまでに、SLEや乾癬のような自己免疫疾患の患者では、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症リスクが高まることが報告されている。しかし、CLE患者では、メタボリックシンドロームやがんのリスクが高まることは報告されてはいるものの、ASCVDのリスクについてはこれまで検証されてこなかった。

日本における片頭痛治療パターン、急性期治療薬の過剰処方の可能性

 長岡技術科学大学の勝木 将人氏らは、日本における18歳以上の成人片頭痛患者に対する治療パターンを明らかにするため、メディカルビッグデータREZULTのデータベースを用いて、検討を行った。Cureus誌2024年12月18日号の報告。  REZULTデータベースの従業員ベースのレセプトデータを用いて、次の2つの要素について検討を行った。1つ目の要素(研究1)は、2020年に片頭痛と診断された患者における急性期治療薬の過剰処方率を評価するための横断的分析として実施した。過剰処方の定義は、トリプタンとNSAIDs、複数の薬剤の併用が90日以内に30錠以上または同一期間におけるNSAIDs単独で45錠以上とした。2つ目の要素(研究2)は、2010年7月〜2022年4月、初回片頭痛診断から2年以上にわたり患者フォローアップを行った縦断的分析として実施した。処方された錠数は、90日ごとに記録した。

適切な感染症管理が認知症のリスクを下げる

 認知症は本人だけでなく介護者にも深刻な苦痛をもたらす疾患であり、世界での認知症による経済的損失は推定1兆ドル(1ドル155円換算で約155兆円)を超えるという。しかし、現在のところ、認知症に対する治療は対症療法のみであり、根本療法の開発が待たれる。そんな中、英ケンブリッジ大学医学部精神科のBenjamin Underwood氏らの最新の研究で、感染症の予防や治療が認知症を予防する重要な手段となり得ることが示唆された。  Underwood氏によると、「過去の認知症患者に関する報告を解析した結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬の使用は、いずれも認知症リスクの低下と関連していることが判明した」という。この研究結果は、同氏を筆頭著者として、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に1月21日掲載された。

糖尿病治療薬のメトホルミンに皮膚がん予防効果

 糖尿病治療で処方される頻度の高い、メトホルミンという経口血糖降下薬に、皮膚がんの発症予防効果があることを示唆するデータが報告された。米ブラウン大学のTiffany Libby氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of Drugs in Dermatology」に11月26日掲載された。皮膚がんの中で最も一般的な、基底細胞がん(BCC)と扁平上皮がん(SCC)という非黒色腫(メラノーマ)皮膚がんの発症リスクが有意に低下する可能性があるという。Libby氏は、「われわれの研究結果はメトホルミンが、これら非メラノーマ皮膚がんに対する予防薬となり得ることを示すエビデンスと言える」と述べている。

COVID-19は筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群リスクを高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の発症リスクを高めるようだ。新型コロナウイルス感染者は、ME/CFSを発症するリスクが5倍近く高くなることが、新たな研究で示された。研究グループは、このことからME/CFSの新規症例がパンデミック前の15倍に増加している理由を説明できる可能性があるとの見方を示している。米ベイトマンホーンセンターのSuzanne Vernon氏らによるこの研究結果は、「Journal of General Internal Medicine」に1月13日掲載された。Vernon氏らは、「われわれの研究結果は、新型コロナウイルス感染後にME/CFSの発症率と発症リスクが大幅に増加することのエビデンスとなるものだ」と結論付けている。

ストレスを抱えた外科医が手術した患者には合併症が少ない?

 手術を受けるときには、執刀医をチェックしてみてほしい。ストレスを感じている様子が見られるのであれば、それは、手術を受ける人にとって良いサインである可能性のあることが、新たな研究から明らかになった。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJake Awtry氏らによるこの研究では、生理的なストレスレベルが高い外科医が執刀した患者の方が、手術に関連する主要な合併症を発症しにくいことが示されたという。詳細は、「JAMA Surgery」に1月15日掲載された。

犬を強く愛している飼い主ほど健康になれる?

 犬と暮らす人の中でも、犬への愛着が強い人ほど身体活動量が高くなっていることが明らかになった。国立環境研究所の谷口優氏と東京都健康長寿医療センター研究所の池内朋子氏による論文が、「PLOS One」に11月27日掲載された。同氏らは、「犬と暮らすことで得られる健康効果を説明する要因として、犬への愛着の強さが鍵を握っているのではないか」と述べている。  近年、犬の飼い主は健康状態が良好な人が多いとする研究結果が複数報告されてきている。谷口氏らも既に、犬と暮らす高齢者は身体機能が高いことや、フレイル(虚弱)や死亡に至るリスクが低いことを報告している。また、犬と暮らす高齢者の中でも、散歩などの運動習慣がある人において認知症の発症リスクが低くなることも報告している。しかし、なぜ犬と暮らす人の中で、運動習慣に差が生じるのかについては不明であった。

運動による記憶力向上は少なくとも8週間続く

 運動することで記憶力が向上し、運動しない場合との有意差は少なくとも8週間維持されるとする研究結果が報告された。北海道教育大学岩見沢校スポーツ文化専攻の森田憲輝氏らが、学生対象クロスオーバー試験で明らかにしたもので、詳細は「Journal of Science and Medicine in Sport」に11月4日掲載された。  記憶は、数秒から数十秒ほど保持される短期記憶と、数時間から場合によっては生涯にわたって保持される長期記憶に分類される。後者の長期記憶の中でも、本人が意識的に思い出すことができ、言葉などで表現することのできる記憶は「陳述記憶」と呼ばれ、この陳述記憶がより長期間保持されるほど、学業や就業において有利になると考えられている。

スタチンと認知症リスクに関するメタ分析、最も顕著な予防作用が示された薬剤は

 世界の認知症患者数は、5,500万例に達するといわれており、2050年までに3倍に増加すると推定されている。心血管系への効果を期待し広く用いられているスタチンには、神経保護作用があるとされているが、認知症リスクに対する影響については、相反する結果が報告されている。ブラジル・アマゾナス連邦大学のFernando Luiz Westphal Filho氏らは、スタチンと認知症リスクとの関連を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年1月16日号の報告。

CKDを伴う関節リウマチにおけるJAK阻害薬の安全性・有効性

 虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らが慢性腎臓病(CKD)を伴う関節リウマチ(RA)患者におけるJAK阻害薬の有効性・安全性を評価し、腎機能が低下した患者における薬剤継続率を明らかにした。また、推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者については、帯状疱疹や深部静脈血栓症(DVT)の可能性を考慮する必要があることも示唆した。Rheumatology誌2025年1月25日号掲載の報告。  研究者らは、2013~2022年にJAK阻害薬を新規処方されたRA患者216例について、多施設共同観察研究を実施。腎機能に応じたJAK阻害薬の減量ならびに禁忌については添付文書に従い、患者を腎機能とJAK阻害薬の各薬剤で分類した。主要評価項目は24ヵ月間の薬剤継続率で、副次評価項目は関節リウマチの疾患活動性評価の指標の1つであるDAS28-CRPの変化、プレドニゾロン投与量、およびJAK阻害薬の中止理由だった。

免疫チェックポイント阻害薬関連の1型糖尿病、生存率との関連~日本人2万例を解析

 免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病(ICI-T1DM)の発現割合、危険因子、生存率への影響について、奈良県立医科大学の紙谷 史夏氏らが後ろ向き大規模コホートで調査した結果、ICI-T1DMは0.48%に発現し、他の免疫関連有害事象(irAE)と同様、ICI-T1DM発現が高い生存率に関連していることが示唆された。Journal of Diabetes Investigation誌2025年2月号に掲載。

あなたのプロテインは安全? 重金属汚染の可能性

 米国のプロテイン・サプリメント市場規模は、2023年に97億ドル(1ドル155円換算で約1兆5000億円)を突破した。しかし、広く消費される市販のプロテインパウダーは、あなたが思っているほど健康的ではないかもしれない。  米国の非営利組織Clean Label Project(CLP)は最新の調査結果の中で、「ポピュラーなプロテインパウダー(特に植物性の製品、オーガニック製品、チョコレート風味の製品)には、高レベルの鉛とカドミウムが含まれている可能性がある」と報告した。鉛には人体に安全な濃度はなく、カドミウムは発がん性物質であることが知られている。

腰痛の軽減方法、最も効果的なのは生活習慣の是正かも

 腰痛を改善するには、従来の治療法を試すよりも不健康な生活習慣を見直す方が大きな改善効果を見込める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。腰痛持ちの患者のうち、生活習慣指導を受けた患者は標準的なケアを受けた患者に比べて、腰痛により日常生活が障害される程度が軽減し、生活の質(QOL)が向上したという。シドニー大学(オーストラリア)のChristopher Williams氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に1月10日掲載された。  Williams氏は、「腰痛を治すには、腰以外の部分にも焦点を当てる必要がある。われわれの体は機械ではなく、複雑な生態系(エコシステム)のようなもので、多くの要因が相互に影響し合うことで、どのように機能し感じるかが決まる。腰痛もそれと同じだ」と話す。

日本人乾癬患者へのデュークラバシチニブ、年齢やBMIごとの有効性

 TYK2阻害薬デュークラバシチニブの乾癬に対する有効性は確認され、本邦においても2022年に承認・発売されているが、年齢およびBMIによる層別解析を含む長期的な実臨床での有効性の検討は十分ではない。日本医科大学千葉北総病院の萩野 哲平氏らは、日本人乾癬患者におけるデュークラバシチニブの実臨床における52週時での有効性を、年齢およびBMIにより層別化して評価する前向き研究を実施。結果をThe Journal of Dermatology誌オンライン版1月28日号に報告した。  本研究は、2022年12月~2024年8月に実施された。中等症~重症の乾癬を有する15歳以上の日本人患者107例を対象とし、デュークラバシチニブ6mgを1日1回、52週間投与した。治療効果は、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)75、PASI 90、PASI 100の達成率およびその他の主要な臨床指標により評価。データは年齢(<65歳 vs.≧65歳)およびBMI(<25 vs.≧25)により層別化された。

アルツハイマー病患者に対する有酸素運動のベネフィット/BMJ Open

 アルツハイマー病患者の認知機能や実行機能に対する身体活動の影響は、数多くの研究で調査されているものの、その結果は完全に一致しているとはいえない。また、特定のトレーニングや使用する評価ツールに関する研究も、不十分である。中国・湖南渉外経済学院のLinlin Yang氏らは、有酸素運動がアルツハイマー病患者のQOL、認知機能、抑うつ症状に及ぼす影響を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Open誌2025年1月11日号の報告。  対象研究には、アルツハイマー病患者に対する介入として有酸素運動を用いたすべてのランダム化比較試験(RCT)を含めた。2024年3月12日までに公表された研究を、PubMed、Web of Science、Cochrane Library、EMBASE、Scopus、CINAHL、CNKIより、システマティックに検索した。2人の独立した著者により、定義された手法を用いてデータ選択、検索を行った。バイアスリスク、システマティックレビューおよびメタ解析、エビデンスの確実性の評価には、それぞれCochrane risk of bias tool、ランダム効果モデル、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いた。研究間の異質性を評価するため、Stata MP V.18.0およびV.14.0を用いてメタ回帰を実施した。標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出した。データは、Cochrane CollaborationのReview Manager V.5.4を用いてレビューした。結果の安定性および信頼性を確認するため感度分析を実施し、出版バイアスを確認するためファンネルプロットおよびEgger's testを用いた。出版バイアスの修正および評価には、Duval and Tweedie clipping methodを用いた。

体重減少には週何分くらいの有酸素運動が必要か

 ダイエットではどのくらいの時間、有酸素運動をすれば痩せることができるだろうか。この疑問について、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンの公衆衛生学部疫学・生物統計学科のAhmad Jayedi氏らの研究グループは有酸素運動と脂肪率の指標との用量反応関係を明らかにするために文献の系統的レビューと用量反応のメタ解析を行った。その結果、週30分の有酸素運動は、成人の過体重または肥満者の体重、ウエスト周囲径および体脂肪値の緩やかな減少と関連していることが明らかになった。この結果はJAMA Network Open誌2024年12月26日号に掲載された。

がんが肺に転移しやすいのはなぜ?

 肺はがん細胞にとって魅力的な場所なのか、進行がん患者の半数以上で肺転移が認められる。その理由の一つとなり得る研究結果が報告された。この研究では、がんが転移した肺の中ではアミノ酸の一種であるアスパラギン酸の濃度が上昇しており、がん細胞が増殖しやすい環境が形成されている可能性のあることが示唆されたという。フランダースバイオテクノロジー研究機関(VIB、ベルギー)がん生物学センターのGinevra Doglioni氏らによるこの研究結果は、「Nature」に1月1日掲載された。  Doglioni氏は、「乳がんに罹患したマウスや患者の肺では、がんに罹患していないマウスや患者の肺に比べてアスパラギン酸のレベルが高いことが分かった。これは、アスパラギン酸が肺転移に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆している」とVIBのニュースリリースで述べている。

よく笑う人にはオーラルフレイルが少ない

 笑う頻度が高い人にはオーラルフレイルが少ないことが明らかになった。福島県立医科大学医学部疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月5日掲載された。  近年、笑うことが心身の健康に良いことを示唆するエビデンスが徐々に増えていて、例えば笑う頻度の高い人は心疾患や生活習慣病が少ないことが報告されている。一方、オーラルフレイルは、心身のストレス耐性が低下した要介護予備群である「フレイル」のうち、特に口腔機能が低下した状態を指す。オーラルフレイルでは食べ物の咀嚼や嚥下が困難になることなどによって、身体的フレイルのリスク上昇を含む全身の健康に負の影響が生じる。舟久保氏らは、このオーラルフレイル(以下、OFと省略)にも笑う頻度が関連している可能性を想定し、福島県楢葉町の住民を対象とする横断研究を行った。

コロナとインフル、臨床的特徴の違い~100論文のメタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの鑑別診断の指針とすべく、中国・China-Japan Union Hospital of Jilin UniversityのYingying Han氏らがそれぞれの臨床的特徴をメタ解析で検討した。その結果、患者背景、症状、検査所見、併存疾患にいくつかの相違がみられた。さらにCOVID-19患者ではより多くの医療資源を必要とし、臨床転帰も悪い患者が多いことが示された。NPJ Primary Care Respiratory Medicine誌2025年1月28日号に掲載。  著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで論文検索し、Stata 14.0でランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。COVID-19患者22万6,913例とインフルエンザ患者20万1,617例を含む100の論文が対象となった。

日本における妊娠中の抗うつ薬継続投与、約10年の変化は

 近年、複数の日本の学会より周産期の抗うつ薬治療に関する治療ガイドラインが発表されており、最新の動向や妊娠中の抗うつ薬継続投与を評価し、出産前抗うつ薬処方を最適化することが重要であると考えられる。東北大学の石川 智史氏らは、日本での2012〜23年における妊娠中の抗うつ薬処方の変化を評価した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年1月10日号の報告。  対象は、2012〜23年に日本で出産した女性。妊娠中の抗うつ薬処方率、傾向、継続性について、大規模行政レセプトデータを用いて評価した。年次変化は、出産時女性の年齢に合わせて調整された多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。