医療一般|page:52

砂糖入り飲料は1杯/日でもCKDリスク上昇

 砂糖入り飲料または人工甘味料入り飲料を1日1杯(250mL)以上摂取することで、慢性腎臓病(CKD)の発症リスクが上昇し、それらの飲料を天然果汁ジュース(natural juice)または水に置き換えるとCKD発症リスクが低下したことを、韓国・延世大学校医科大学のGa Young Heo氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年2月5日号掲載の報告。  砂糖や人工甘味料の摂取と2型糖尿病や心血管系疾患との関連を示すエビデンスは増えているが、腎臓に及ぼす影響については不明な点が多い。そのため研究グループは、英国バイオバンクのデータを用いて、3種類の飲料(砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料、天然果汁ジュース)の摂取量とCKDの発症リスクとの関連、およびこれらの飲料を別の飲料に置き換えた場合の関連を調査するために前向きコホート研究を行った。

がん治療中のその輸液、本当に必要ですか?/日本臨床腫瘍学会

 がん患者、とくに終末期の患者において最適な輸液量はどの程度なのか? 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「その治療、やり過ぎじゃないですか?」の中で、猪狩 智生氏(東北大学大学院医学系研究科緩和医療学分野)が、終末期がん患者における輸液の適切な用い方について、ガイドラインでの推奨や近年のエビデンスを交え講演した。  猪狩氏はまず実際の症例として、70代の膵頭部がん(StageIV)患者の事例を紹介した:1次治療(GEM+nab-PTX)後にSDとなったものの、8ヵ月後に腹痛、吐き気で緊急入院し、がん性腹膜炎、麻痺性イレウスと診断。中心静脈確保、絶食補液管理(1日2,000mL)となり、腹痛に対しオピオイドを開始したものの症状コントロール困難となった。

在胎不当過小に関わる胎盤の異常をドプラ超音波検査で検出

 胎盤と胎児の血流を超音波で測定することで、在胎不当過小(small for gestational age;SGA)に関連する胎盤の異常を見つけられる可能性のあることが、アムステルダム大学メディカルセンター(オランダ)産科学准教授のWessel Ganzevoort氏らの研究から明らかになった。詳細は、「British Journal of Obstetrics & Gynaecology」に2月5日掲載された。  Ganzevoort氏らの説明によると、胎児の約10%は母親の胎内にいる時点で超音波検査によりSGAと判定される。SGAは、同じ在胎期間で生まれた新生児の標準的な体重分布の10パーセンタイル未満に該当する新生児の状態を指す。SGAであっても健康であれば、特別な介入は必要ない。しかし、胎盤に異常がある場合には対処する必要があり、分娩誘発が必要となることもある。Ganzevoort氏は、「こうしたことから、胎盤異常を原因とするSGAの胎児は、追跡が極めて重要だ」と言う。

3Dプリントで「会話」する脳組織の作成に成功

 ニューロン(神経細胞)が互いにネットワークを形成して「会話」する脳組織を3Dプリンティング技術で作成することに成功したという研究結果を、米ウィスコンシン大学マディソン校の研究グループが発表した。研究グループは、「研究室における神経学的プロセスの研究を進歩させる画期的な成果だ」と述べている。同大学マディソン校ワイズマンセンターのSu-Chun Zhang氏らによるこの研究の詳細は、「Cell Stem Cell」2月号に掲載された。  Zhang氏は、「これは、ヒトの脳細胞や脳の部位がどのようにコミュニケーションを取っているのかを理解する上で、非常に強力なモデルになる可能性がある」と述べ、「この3Dプリントの脳組織は、幹細胞生物学、神経科学、そして多くの神経疾患や精神疾患の発症機序に対する見方を変える可能性がある」と付け加えている。

日本人胃がんの薬物療法研究の最新情報/日本胃癌学会

 新薬の登場で変化する胃がん薬物療法の国内研究の最新情報が第96回日本胃癌学会総会で報告された。  ペムブロリズマブと化学療法の併用は日本人胃・食道胃接合部がんの1次治療においてもグローバルと同様の結果を示した。  切除不能または転移を有するHER2陰性の胃・食道胃接合部腺がん1次治療で良好な結果を示したペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-859試験における日本人サブセットの結果が示された。日本人サブセットは101例で、ペムブロリズマブ+化学療法群は48例、コントロールとなる化学療法群は53例であった。

糖尿病患者の死因1位は男女ともに悪性新生物/糖尿病学会

 従来、糖尿病患者は、大血管障害で亡くなる患者が多かった。最新の『糖尿病診療ガイド 2022-2023』では、糖尿病治療の目標を「健康な人と変わらない人生」と定義し、糖尿病合併症である糖尿病細小血管合併症や動脈硬化性疾患の発症、進展の阻止を治療の柱としている。  では実際に糖尿病患者は、どのような死因で亡くなっているのだろうか。糖尿病学会では「糖尿病の死因に関する委員会」(委員長:中村 二郎氏[愛知医科大学医学部 先進糖尿病治療学寄附講座 教授])を設置し、全国の医療機関にアンケートを行い、死因の調査を行っている。

高齢者の睡眠の質改善に対するバイノーラルビートの効果

 バイノーラルビートとは、人間の耳では聞くことのできない脳に効果のある低い周波数を、特別な方法で聞こえるようにしたものであり、脳波をコントロールし、集中力や睡眠に影響を及ぼすことが期待される。高齢者の睡眠の質改善に対するバイノーラルビートの影響を明らかにするため、台湾・Shu Zen Junior College of Medicine and ManagementのPin-Hsuan Lin氏らは、単盲検ランダム化対照試験を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌2024年3月号の報告。  対象は、台湾の長期介護施設に入居している睡眠の質の低下が認められる高齢者64例。対象患者は、14日間のバイノーラルビートミュージック(BBM)介入を行ったBBM群と対照群にランダムに割り付けた。介入期間中、BBM群は、週3回、朝と午後に20分間、BBMを組み込んだTaiwanese Hokkien oldiesをリスニングした。

de novo転移乳がん、治療を受けない場合の生存期間

 新規に転移のある乳がん(dnMBC)と診断され、その後治療を受けなかった患者の全生存期間(OS)中央値は2.5ヵ月と、1回以上治療を受けた患者の36.4ヵ月に比べて有意に短かったことが、米国・Duke University Medical CenterのJennifer K. Plichta氏らの研究でわかった。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2024年3月5日号に掲載。

低リスク高血圧患者、「血圧の下げすぎ」による心血管リスクは

 高リスクの高血圧患者において、治療中の収縮期血圧(SBP)が120mmHg未満および拡張期血圧(DBP)が70mmHg未満の場合は心血管リスクが増加することが報告され、欧州心臓病学会/欧州高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2018年版では高血圧患者全般に対してSBPを120mmHg以上に維持することを提案している。しかし、低リスク患者におけるデータは十分ではない。京都大学の森 雄一郎氏らの研究グループは、全国健康保険協会のデータベースを用いたコホート研究を実施。結果をHypertension Research誌オンライン版2024年2月14日号に報告した。  本研究は、3,000万人の生産年齢人口をカバーする全国健康保険協会のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて行われた。10年間の心血管リスクが10%未満で降圧薬を継続的に使用している患者が特定され、治療中のSBPとDBPによってカテゴリー分類された。主要アウトカムは心筋梗塞、脳卒中、心不全入院、末梢動脈疾患の複合であった。

認知症の診断、実は肝硬変の可能性も?

 高齢化した米国の退役軍人を対象とした新たな研究で、認知症と診断された人の10人に1人は、実際には肝硬変により脳に障害が生じている可能性のあることが示された。米リッチモンドVA医療センターのJasmohan Bajaj氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に1月31日掲載された。  肝硬変は、肝臓の肝組織が徐々に瘢痕化して機能障害を起こすもので、その発症要因には、年齢、男性の性別、アルコール性肝障害、肝炎ウイルス、うっ血性心不全など多数ある。肝硬変の症状の一つである肝性脳症は、本来、肝臓で分解されるはずのアンモニアが、肝硬変や肝臓がんなどによる肝機能の低下が原因で十分に分解されず、血液に蓄積して脳に達し、脳の機能が低下する病態を指す。

漢方薬による偽アルドステロン症、高血圧や認知症と関連

 漢方薬は日本で1500年以上にわたり伝統的に用いられているが、使用することにより「偽アルドステロン症」などの副作用が生じることがある。今回、日本のデータベースを用いて漢方薬の使用と副作用報告に関する調査が行われ、偽アルドステロン症と高血圧や認知症との関連が明らかとなった。また、女性、70歳以上などとの関連も見られたという。福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座の畝田一司氏らによる研究であり、詳細は「PLOS ONE」に1月2日掲載された。  偽アルドステロン症は、血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにもかかわらず、高血圧、むくみ、低カリウムなどの症状が現れる状態。「甘草(カンゾウ)」という生薬には抗炎症作用や肝機能に対する有益な作用があるが、その主成分であるグリチルリチンが、偽アルドステロン症の原因と考えられている。現在、保険が適用される漢方薬は148種類あり、そのうちの70%以上に甘草が含まれている。

閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、日本人での有効性・安全性明らかに(HORIZON-HCM)/日本循環器学会

 閉塞性肥大型心筋症におけるfirst-in-classの選択的心筋ミオシン阻害薬mavacamtenは、2022年に米国において、ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II/III度の症候性閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の運動耐容能および症状改善の適応で承認されている。今回、北岡 裕章氏(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)が3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 2において、日本人の症候性肥大型心筋症(HCM)患者を対象にmavacamtenの有効性、安全性などを調査した第III相非盲検単群試験HORIZON-HCM(NCT05414175)の結果を報告した。

歩行を守るために気付いてほしい脚の異常/日本フットケア・足病医学会

 超高齢社会では、いかに健康を保ちつつ日常生活を送るかが模索されている。とくに「脚」は、歩行という運動器の中でも重要な部位である。日本フットケア・足病医学会は、この脚を守るための下肢動脈疾患(LEAD)・フレイル研究募集についてメディア向けにセミナーを開催した。  セミナーでは、研究概要のほか、同学会の活動概要、LEADをはじめとする脚の動脈硬化の診療、LEAD・フレイル研究募集について説明が行われた。

日本循環器学会から学ぶ、学会公式SNSのあるべき運用とは?/日本臨床腫瘍学会

 学会の情報発信はどうあるべきか? 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)ではSNSを使った学会の広報活動をどう広めていくかをテーマにシンポジウムが行われた。  本シンポジウムは昨年4月にJSMO広報渉外委員会の下部組織として「SNSワーキンググループ(SNS-WG)」が発足したことを契機として企画された。SNS-WGは立候補制で、現在専攻医からがん薬物療法専門医まで幅広い世代の会員14人が参加し、1)JSMO会員のSNS利用を活発にするための環境整備、2)医学生・研修医や一般市民に向けた腫瘍内科・JSMOの認知度向上、3)JSMOの国際化を主な目的として活動している。  今回のシンポジウムはメンバーからの報告のほか、国内でもっとも活発にSNSを使っている学会の1つである日本循環器学会から、活動の中心的メンバーである国際医療福祉大学大学院医学研究科 循環器内科の岸 拓弥氏が招かれ、講演を行った。本シンポジウムでは特例的に公演中のスライド撮影、SNSへの投稿を自由とし、活発なディスカッションの一助とする取り組みも行われた。

統合失調症の幻聴に関連する報酬ネットワーク異常

 統合失調症における幻聴は、中脳辺縁系皮質回路の機能不全と関連しているといわれており、とくに正常ではない顕著および内部の言語性リソースモニタリング処理中に見られる。しかし、統合失調症における幻聴の病態生理学に相互に関与する領域間の情報の流れについては、不明であった。中国・鄭州大学のJingli Chen氏らは、統合失調症の幻聴に関連する報酬ネットワークの異常を明らかにするため、検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌2024年3月号の報告。

カペシタビンによる手足症候群は外用ジクロフェナクで予防?/JCO

 カペシタビンは、乳がんや消化管がんの治療に用いられるが、頻度の高い副作用の1つに手足症候群があり、減量が必要となることがある。ソラフェニブによる手足症候群の予防には尿素クリームが有用とされているが、カペシタビンによる手足症候群の予防への有用性は明らかになっていない。また、セレコキシブは手足症候群の予防効果があるが長期連用には副作用の懸念が存在する。そこで、全インド医科大学のAkhil Santhosh氏らが、外用ジクロフェナクの手足症候群予防効果を検証する第III相無作為化比較試験を実施した。その結果、外用ジクロフェナクはプラセボと比較して、カペシタビンによる手足症候群を有意に抑制することが示された。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年2月27日号で報告された。

「継続は力なり」は勃起機能にも当てはまる?

 「継続は力なり」という諺は、男性の勃起機能にも当てはまる可能性があるようだ。マウスを用いた研究から、定期的に勃起することが勃起機能にとって重要である可能性が示されたのだ。この研究では、その鍵を握っているのが線維芽細胞と呼ばれる結合組織細胞であることも示唆された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)細胞・分子生物学分野のEduardo Guimaraes氏らによるこの研究結果は、「Science」に2月9日掲載された。  研究グループによると、マウスかヒトかにかかわりなく、陰茎の組織で最も豊富なのは線維芽細胞であることは知られているが、その役割は不明であったという。今回、Guimaraes氏らが、遺伝子ターゲティングと光遺伝学(optogenetics)により陰茎海綿体の線維芽細胞の脱分極を誘導して検討した結果、線維芽細胞が陰茎の血管の収縮や拡張に重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、線維芽細胞はノルアドレナリンの供給量を調節することで陰茎の血管を拡張させて勃起を促していることも示された。

外傷による大量出血、早めの全血輸血が生存率を高める

 外傷により大量出血を来している患者には、病院到着後にできるだけ早く全血輸血を行うことで、患者の生存率が改善する可能性のあることが新たな研究で明らかにされた。ただし、病院到着後の全血輸血がたった14分遅れただけでも、それが生存にもたらすベネフィットは著しく減少することも示されたという。米ボストン大学医学部外科分野のCrisanto Torres氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に1月31日掲載された。  Torres氏らによると、現行の外傷救急治療では、重度の出血による輸血を必要とする患者の凝固障害リスクを緩和するために、赤血球や血小板などの特定の血液成分製剤をバランスよく輸血するアプローチを取るべきことが強調されているという。米国では、外傷患者に対する治療は年々進歩しているものの、大量出血による死亡は依然として予防可能な死因の中で最も多く、克服すべき課題であることに変わりはない。

スクリーンタイムとうつ病との関連には男女差あり

 これまでの研究において、スクリーンタイムは、とくに小児のうつ病と関連していることが示唆されている。この関連性は、男性よりも女性において、強くみられることがいくつかのエビデンスで示されているが、これらの調査結果は決定的なものではない。米国・コロンビア大学のLauren E. Kleidermacher氏らは、代表的な米国成人を対象に、スクリーンタイムとうつ病との関連を性別階層化のうえ、調査を行った。AJPM Focus誌2024年4月号の報告。  本研究は、2015~16年の米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)のデータを用いて、2023年に分析を実施した。スクリーンタイムは、テレビおよびコンピュータの時間を含め、3群(1日当たり0~2時間、3~4時間、4時間以上)に分類した。うつ病の定義は、患者健康質問票(PHQ)スコアが10以上とした。テレビおよびコンピュータのスクリーンタイムについて、個別の分析も行った。スクリーンタイムとうつ病との関連性を評価するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。

EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、治験不適格患者へのオシメルチニブの効果は?

 オシメルチニブはFLAURA試験(未治療のEGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん[NSCLC]患者を対象に、オシメルチニブと他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を比較した試験)の結果1)に基づき、EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移NSCLC患者の1次治療に広く用いられている。実臨床においては、臨床試験への登録が不適格となる患者にも用いられるが、その集団における治療成績は明らかになっていない。そこで、カナダ・BC Cancer AgencyのJ. Connor Wells氏らがリアルワールドデータを用いて解析した結果、半数超の患者がFLAURA試験への登録が不適格であり、不適格の患者は適格の患者と比較して大幅に全生存期間(OS)が短かったことが示された。本研究結果は、Lung Cancer誌オンライン版2024年3月4日号で報告された。