医療一般|page:243

「高齢者糖尿病の血糖管理目標(HbA1c値)」と死亡リスクの関係

 日本糖尿病学会と日本老年医学会は「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」を公表し、患者を3つのカテゴリーに分類している。しかしその妥当性に関して本邦の縦断研究に基づくエビデンスは不足していた。東京都健康長寿医療センターの荒木 厚氏・大村 卓也氏らはJ-EDIT研究のデータを用い、認知機能、手段的ADL、基本的ADL、併存疾患による種々のカテゴリー分類と死亡リスクとの関連を検討。身体機能と認知機能に基づく分類および併存疾患数に基づく分類が死亡リスクの予測因子となることに加え、8つの簡便な質問項目でカテゴリー分類が可能となることが明らかとなった。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版4月22日号の報告より。

日本におけるアルツハイマー病に伴う経済的負担

 アルツハイマー病は、日本における介護の主要な原因の1つである。国際医療福祉大学の池田 俊也氏らは、65歳以上の日本のアルツハイマー病患者を対象に、2018年度の年間医療費や介護費、さらに家族による個人的な介護ケアの費用や生産性の損失がどの程度かについて調査を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2021年3月23日号の報告。  文献レビューによるレポートを用いて、臨床的認知症尺度(CDR)スコアにより疾患重症度で分類したうえで、アルツハイマー病の医療費と介護費を推定した。介護に費やされた時間的コストは、20~69歳のアルツハイマー病家族の介護による生産性の損失とすべての個人的な介護ケアの費用として算出した。

高リスク早期乳がん術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加、アジア人での解析(monarchE)/ESMO BREAST 2021

 高リスクのホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)早期乳がんの術後補助療法において、CDK4/6阻害薬アベマシクリブと内分泌療法(ET)併用は、アジア人集団においても無浸潤疾患生存期間(iDFS)と遠隔無転移生存期間(DRFS)を有意に改善することが認められた。monarchE試験におけるアジア人での解析結果を、シンガポール国立がんセンターのYoon-Sim Yap氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で発表した。

肺がん根治手術患者の心理と術後補助化学療法実施に関する因子/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、過去10年以内に肺がんの根治手術を受けたStage II~IIIの肺がん患者(以下、患者)131名を対象に、手術前後に抱く不安や心情を理解するとともに、患者が術後補助化学療法の実施を検討する際に何を重視し、影響を受けるかを把握することを目的に、WEBアンケート調査を実施した。  調査結果から、患者の治療選択における情報入手先として医師が80%を占めており、術後補助化学療法実施の意思決定は、患者が医師からの説明をどのように受け止めたかに大きく左右されることが明らかとなった。

HER2+進行乳がんへのT-DXdによるILDの特徴/ESMO BREAST 2021

 既治療のHER2陽性進行乳がんに高い有効性を示すトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)のリスクとして間質性肺疾患(ILD)がある。本剤の第I/II相試験で発現したILDの特徴を解析したところ、承認用量ではほとんどの場合、低Gradeで、治療開始から12ヵ月以内に発現し、12ヵ月を超えるとリスクが低下することがわかった。米国・マウントサイナイ医科大学のCharles A. Powell氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。

トシリズマブ、重症COVID-19肺炎患者の生存率改善/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症肺炎で入院した患者の治療において、IL-6受容体モノクローナル抗体のトシリズマブ(商品名:アテムクラ)を投与することで臨床状態が改善し、28日以内の退院率が向上する、という結果が報告された。無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY」によるもので、Lancet誌5月1日号に掲載された。ただし、別の研究においては、トシリズマブは臨床状態改善や死亡率低下に寄与しないとの結果も報告されており、今後の詳細な分析とさらなる試験結果が待たれる。

片頭痛に対する抗CGRPモノクローナル抗体の有効性と安全性~メタ解析

 片頭痛に対して、いくつかの抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体が承認されているが、どの抗CGRPモノクローナル抗体が最適なのかについては、よくわかっていない。中国・四川大学のXing Wang氏らは、片頭痛成人患者に対するCGRPまたはCGRP受容体に作用する各モノクローナル抗体の有効性および安全性を比較するため、ランダム化比較試験のネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Pharmacology誌2021年3月25日号の報告。

日本における双極性障害の治療パターンと服薬アドヒアランス

 東京医科大学の井上 猛氏らは、日本における双極性障害患者に対する治療パターンと服薬アドヒアランスについて調査を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年3月18日号の報告。  株式会社JMDCの雇用関連レセプトデータベースを用いて、2013年7月~2018年2月に双極性障害と診断された成人患者を特定した。気分安定薬または抗精神病薬の治療パターンとアドヒアランス(proportion of days covered:PDC[処方日数を調査対象期間の日数で除した割合]で測定)について、フォローアップ期間中の1~3年目に評価した。患者サブグループのアドヒアランスについても評価した。

新型コロナワクチン初回投与で入院リスク大幅減、スコットランドの全国調査/Lancet

 現在、世界中でCOVID-19ワクチンの接種プログラムが進められており、ワクチンが及ぼす臨床効果の研究は急務である。今回、英スコットランド・エディンバラ大学のEleftheria Vasileiou氏らが、BNT162b2 mRNAワクチン(商品名:コミナティ、Pfizer/BioNTech)およびChAdOx1 nCoV-19(別名:AZD1222)ワクチン(Oxford/AstraZeneca)の大規模接種とCOVID-19入院との関連を調査した。その結果、COVID-19ワクチンの大規模な初回接種は、スコットランドにおけるCOVID-19入院リスクの大幅な減少と関連していた。Lancet誌2021年5月1日号に掲載。

新型コロナで肺がん新規患者の受診減少、8,000人以上が診療機会喪失か/日本肺癌学会

 COVID-19の感染拡大により、がん検診およびがん診療の制限は、重大な懸念事項となってきた。日本肺癌学会では、COVID-19が肺がん診療におよぼした影響を見るために、第2波が収まりつつあ った2020年10月末、原発性肺がんと診断され初回治療を受けた患者数を2019年1~10月と2020年1~10月で比較検討した。アンケート対象は、日本肺癌学会の評議員が所属する施設およびがん拠点病院である。

ADHD児のビデオゲーム使用方法と症状との関連

 小児ではビデオゲーム依存症との関連が認められているが、この問題はADHD児にとってとくに重要である。カナダ・モントリオール大学のLaura Masi氏らは、カナダの子供たちにおけるビデオゲーム使用に関する多くのデータを収集し、ADHD児と非ADHD児における違いを調査した。また、依存症とADHD症状との関連を調査し、性別の影響についても評価した。Frontiers in Pediatrics誌2021年3月12日号の報告。  本研究は、多施設(小児精神科)、横断的、探索的、記述的研究として実施された。カナダの4~12歳を対象にADHD群、臨床対照群、コミュニティー対照群について募集を行った。各群の親1人に対し質問票を用いて、プレイ時間、依存性スコア、年齢別の使用状況などのビデオゲーム使用に関するデータを収集した。データの収集は、2016年12月~2018年8月にモントリオールで実施した(280例)。

山火事でアトピー性皮膚炎・かゆみ受診率が増加

 山火事による大気汚染の短期間曝露と、アトピー性皮膚炎(AD)およびかゆみを有する患者の受診機会の増加には関連性が認められることを、米国・カリフォルニア大学のRaj P. Fadadu氏らが横断研究によって明らかにした。大気汚染は世界的な公衆衛生上の課題で、近年の山火事による悪化も深刻になっている。しかし、山火事と大気汚染、および炎症性皮膚疾患との関連は明らかにされていない。著者は、「今回の結果は、大気の質の悪化とスキンヘルスの関連の理解を深めることに寄与するものであり、医療の専門家による皮膚疾患患者のカウンセリングと公衆衛生の実践に参考となるだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。

研修医の基本的臨床能力獲得に施設間差

 2年にわたる新型コロナウイルス感染症の流行という異例の社会環境の中で、本年度の初期臨床研修がスタートした。感染症流行下で患者さんの診療控えなどもあり、臨床研修病院では初期臨床研修医の教育に例年にない苦労があると聞く。  さて、初期臨床研修医の基本的臨床能力の向上について、研修先の施設間で差は生まれるのであろうか。JAMEP(Japan Institute for Advancement of Medical Education Program)が開発した、初期臨床研修医の客観的な臨床能力を測る基本的臨床能力評価試験(GM-ITE: General Medicine In-Training Examination)の解析結果から、大学病院で研修を受けた初期臨床研修医は、市中病院で研修を受けた初期臨床研修医よりもGM-ITE合計スコアが、低い傾向にあることが報告されてきている。しかながら、基本的臨床能力を構成するいくつかの要素のうち、どの要素に差があるのか、その詳細については明らかになっていない。そこで、順天堂大学医学部 医学教育研究室 西﨑 祐史氏らは、GM-ITEの結果を用い、この疑問を解決するべく観察研究を実施した。

乳房温存術が切除術より生存率が高いのは独立した効果か

 術後放射線療法を伴う乳房温存術が、放射線療法を伴わない乳房切除術より生存率が高いことがコホート研究で示されているが、独立した効果なのか、選択バイアスの結果なのかは不明である。今回、スウェーデン・Capio St Goran's HospitalのJana de Boniface氏らは、重要な交絡因子である併存疾患および社会経済的状態の補正後も、乳房温存術の生存ベネフィットがみられるかどうか検討した。JAMA Surgery誌オンライン版2021年5月5日号に掲載。  本研究は、前向きに収集されたスウェーデンの全国的なデータ(National Breast Cancer Quality Registerからの全国的な臨床データ、National Board of Health and WelfareのPatient Registersからの併存疾患データ、Statistics Swedenからの個人レベルの教育と収入のデータ)を使用したコホート研究。スウェーデンで2008~17年にT1-2 N0-2の浸潤性乳がんと診断され手術を受けたすべての女性を対象に、放射線療法ありの乳房温存術、放射線療法なしの乳房切除術、放射線療法ありの乳房切除術の3群に分け、全生存率(OS)と乳がん特異的生存率(BCSS)を比較した。

統合失調症患者の抗精神病薬誘発性脂質異常症に対する薬理学的介入~メタ解析

 抗精神病薬誘発性脂質異常症は、統合失調症患者で一般的にみられる副作用であり、代謝性合併症や心血管疾患の発症リスクを高める可能性がある。このような問題があるにもかかわらず、抗精神病薬誘発性脂質異常症に対する治療は十分でなく、脂質異常症を軽減するための薬理学的介入の有効性は、十分に評価されていない。カナダ・ウォータールー大学のPruntha Kanagasundaram氏らは、統合失調症患者の脂質異常症を軽減するための薬理学的介入の有用性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年3月17日号の報告。

ファイザー社ワクチン、英国・南ア変異株に対する有効率は?/NEJM

 有効率95%と報告されているファイザー/ビオンテック社製COVID-19ワクチン(BNT162b2)だが、英国で確認された変異株(B.1.1.7)および南アフリカで確認された変異株(B.1.351)に対する実社会での有効率はどの程度なのか? カタール・Weill Cornell MedicineのLaith J. Abu-Raddad氏らが、変異株への感染および重症化に対する同ワクチンの有効性を検証したコホート研究結果を、NEJM誌オンライン版2021年5月5日号のCORRESPONDENCEに報告した。  カタールでは、2月23日~3月18日にゲノム解析された症例の50.0%がB.1.351、44.5%がB.1.1.7により引き起こされていた。また3月7日以降はゲノム解析されたほぼすべての症例が、B.1.351またはB.1.1.7のいずれかへの感染であった。同ワクチンの接種は2020年12月21日に開始され、2021年3月31日時点で計38万5,853人が少なくとも1回のワクチン接種を受け、26万5,410人が2回の接種を完了している(訳注:カタールの総人口は約280万人)。

肺がん再生検のモダリティ、気管支鏡 vs.CTガイド下針生検/Respir Investig

 治療薬の進歩により進行非小細胞肺がん(NSCLC)の再生検の必要性が増している。再生検のモダリティは、気管支鏡検査やCTガイド下針生検(CTNB)などのがあるものの、どの手法が最適か、コンセンサスはない。そのような中、岡山大学による気管支鏡検査とCTNB生検を比較した後ろ向き研究の結果がRespiratory Investigation誌に発表された。  対象は、2014年1月~2016年12月に、岡山大学で気管支鏡検査またはCTNB再生検を受けたNSCLC79例。

依存症の衝動性に対する認知機能改善介入~メタ解析

 衝動的な行動や選択に対する3つの認知機能介入アプローチ(コンピューター化された認知トレーニング、認知矯正療法、薬理学的な認知機能介入)の効果を評価し、それらの比較検討を行うため、オーストラリア・モナシュ大学のAlexandra C. Anderson氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Addiction誌オンライン版2021年3月10日号の報告。  物質使用障害またはギャンブル依存症の治療を求めている成人患者を対象として認知機能改善介入を評価した研究を抽出した。主要アウトカムは、介入後に検証した衝動的な行動または選択に関する認知機能スコアの減少とした。バイアスリスクは、Cochrane Collaborationツールを用いて評価し、選択した研究よりプールした推定値を決定した。衝動的な行動および選択の結果について、ランダム効果分析を実施し、モデレーター分析を行った。

NSCLC1次治療、ペムブロリズマブ単剤の5年追跡結果(KEYNOTE-024)/JCO

 未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象にペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)単剤と化学療法を比較した第III相KEYNOTE-024試験の5年追跡結果が発表された。 ・対象:転移を有する未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)NSCLC患者(305例) ・試験群:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと(154例) ・対照群:治験担当医が選択したプラチナベース化学療法 4~6サイクル(151例) ・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、[副次評価項目]OSなど  主な結果は以下のとおり。

RAAS系阻害薬と認知症リスク~メタ解析

 イタリア・東ピエモンテ大学のLorenza Scotti氏らは、すべてのRAAS系阻害薬(ARB、ACE阻害薬)と認知症発症(任意の認知症、アルツハイマー病、血管性認知症)との関連を調査するため、メタ解析を実施した。Pharmacological Research誌2021年4月号の報告。  MEDLINEをシステマティックに検索し、2020年9月30日までに公表された観察研究の特定を行い、RAAS系阻害薬と認知症リスクとの関連を評価した。ARB、ACE阻害薬と他の降圧薬(対照群)による認知症発症リスクを調査または関連性の推定値と相対的な変動性を測定した研究を抽出した。研究数および研究間の不均一性に応じて、DerSimonian and Laird法またはHartung Knapp Sidik Jonkman法に従い、ランダム効果プール相対リスク(pRR)および95%信頼区間(CI)を算出した。同一研究からの関連推定値の相関を考慮し、線形混合メタ回帰モデルを用いて検討した。