医療一般|page:98

日本における抗認知症薬に関連する有害事象プロファイル

 抗認知症薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に関連する有害事象(ADE)の発生率は、5~20%と推定されており、さまざまな症状が認められる。しかし、各抗認知症薬のADEプロファイルの違いを検討した報告は、これまでなかった。帝京大学の小瀬 英司氏らは、抗認知症薬とADEプロファイルに違いがあるかを検討した。Die Pharmazie誌2023年5月1日号の報告。  医薬品副作用データベース(JADER)に基づき、データを収集した。2004年4月~2021年10月のADEデータを分析するため、レポートオッズ比(ROR)を用いた。対象薬剤は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンとした。最も発生頻度の高い有害事象の上位10件(徐脈、食欲不振、意識喪失、発作、変性意識状態、転倒、せん妄、嘔吐、失神、横紋筋融解症)を選択した。主要アウトカムはRORとし、副次的アウトカムは抗認知症薬に関連するADEの発現年齢および発生までの期間とした。

KRAS G12C変異陽性NSCLCに対するソトラシブ+化学療法の有効性(SCARLET)/ASCO2023

 KRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、KRAS G12C阻害薬であるソトラシブとカルボプラチン、ペメトレキセドとの併用療法が有用である可能性が示された。国内単群第II相試験として実施されたSCARLET試験の主要評価項目の解析結果として、和歌山県立医科大学の赤松 弘朗氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。  KRAS G12Cは進行非扁平上皮NSCLCのdruggableターゲットで、免疫チェックポイント阻害薬(±プラチナダブレット化学療法)、ソトラシブ、細胞障害性抗がん剤単剤が標準治療とされてきた。SCARLET試験では、化学療法治療歴のないKRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮NSCLCに対して、ソトラシブ、カルボプラチン、ペメトレキセドの併用療法の有効性と安全性について評価した。

小児への新型コロナワクチン、接種率を上げるために/ファイザー

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、5月8日に感染症法上の位置付けが5類に移行した。ワクチンや治療薬によってパンデミックの収束に貢献してきたファイザーは6月2日、「5類に移行した新型コロナウイルス感染症への対策や心構えとは~一般市民への最新意識調査の結果を交え~」と題してメディアに向けたラウンドテーブルを開催した。講師として石和田 稔彦氏(千葉大学 真菌医学研究センター感染症制御分野 教授)と舘田 一博氏(東邦大学 医学部 微生物・感染症学講座 教授)が登壇した。

新型コロナワクチン、午前に打つと効果が高い?

 概日リズム(体内時計)によってワクチンによる防御効果に差が出るという研究結果が報告された。米国・ワシントン大学のGuy Hazan氏らによる本研究はJournal of Clinical Investigation誌2023年6月1日号に掲載された。  研究者らは、イスラエルの大規模コホートに登録された1回以上COVID-19ワクチンを接種した151万5,754例(12歳以上、99.2%がファイザー製BNT162bを接種)を後方的に分析、ワクチンの接種時間とCOVID-19感染予防効果との関連を分析した。エンドポイントはブレークスルー感染、COVID-19関連の救急外来受診および入院だった。ワクチン接種の時間帯は、午前(8時~11時59分)、午後(12時~15時59分)、夜間(16時~19時59分)に分けた。年齢、性別、合併症の有無の差を調整するためにCox回帰を採用した。

高い身体活動レベルは慢性疼痛の軽減に役立つ?

 余暇の時間に行う身体活動(physical activity;PA)が慢性疼痛を軽減する上で有効な可能性を示した研究結果が、ノルウェーの研究グループにより報告された。身体的に活発な人では、座りがちな人よりも痛みに対する耐性(以下、疼痛耐性)が高く、また、PAレベルが高い人ほど、疼痛耐性レベルも高いことが明らかになったという。北ノルウェー大学病院(ノルウェー)のAnders Arnes氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS ONE」に5月24日掲載された。

HER2陽性胆道がんに対するzanidatamabの有用性(HERIZON-BTC-01)/ASCO2023

 HER2陽性胆道がんに対する抗HER2二重特異性抗体zanidatamabの有用性に関するデータが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・MDアンダーソンがんセンターのShubham Pant氏から発表された。  zanidatamabはHER2の細胞外部位のドメイン2とドメイン4に同時に結合する新規の二重特異性抗体であり、HER2の二量体形成の強力な抑制作用が示されている。今回の発表はアジアを中心に行われた国際共同の第IIb相試験HERIZON-BTC-01の結果である。 ・対象:ゲムシタビン含有レジメンの治療歴を有する局所進行または転移のあるHER2陽性胆道がん ・介入:HER2のIHC2+、3+症例(コホート1)     HER2のIHC0と1+症例群(コホート2)     zanidatamabは20mg/kgを2週間隔で投与し、2週間休薬の4週間サイクルで点滴した ・評価項目: [主要評価項目]独立評価委員会によるコホート1の奏効率 [副次評価項目]奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性など

肝細胞がんデュルバルマブ+トレメリムマブの1次治療、免疫介在性有害事象とOS の関係(HIMALAYA)/ASCO2023

 切除不能肝細胞がん(uHCC)に対する1次治療として抗PD-L1抗体デュルバルマブと抗CTLA-4抗体トレメリムマブの併用は、免疫介在性有害事象(imAE)発生の有無にかかわらず、全生存期間(OS)の延長を示していた。第III相のHIMALAYA試験の探索的解析の結果として、香港humanity and health clinical trial centerのGeorge Lau氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)にて発表した。

双極性障害患者の入院期間に影響を及ぼす要因

 双極性障害患者の入院期間やそれに影響を及ぼす因子を特定するため、 中国・首都医科大学のXiaoning Shi氏らは、本検討を行った。その結果、入院期間の長い双極性障害患者は、自殺リスクが高く、複雑な多剤併用が行われていた。入院期間を短縮するためには、うつ病エピソードの適切な管理と機能的リハビリテーションが有用な可能性がある。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月19日号の報告。  双極I型障害またはII型障害患者を対象に多施設共同観察コホート研究を実施した。2013年2月~2014年6月に中国6都市、7施設より募集した外来患者520例を、継続的なサンプリングパターンを用いてフォローアップ調査を行った。本研究は、12ヵ月のレトロスペクティブ期間と9ヵ月のプロスペクティブ期間で構成された。対象患者の人口統計学的特徴および臨床的特徴を収集した。入院期間(プロスペクティブ期間の入院日数)の影響を及ぼす因子の分析には、ポアソン回帰を用い、入院期間(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間)の分析には、線形回帰分析を用いた。性別、年齢、教育年数、職業的地位、在留資格、精神疾患の家族歴、薬物乱用の併存、不安障害の併存、自殺企図の回数(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間での発生回数)、初回エピソード特性、双極性障害のタイプ(I型またはII型)を変数として用いた。

夜型人間は本当に寿命が短い人の特徴なのか

 近年、「朝活」と称し、朝からスポーツや趣味、習い事などを行う朝型人間が増えてきている。その一方で、夜にならないと勉強も仕事も調子が出ないという夜型人間も多い。こうしたクロノタイプ(時間的特性)が健康に影響をもたらすかどうかは長く議論されてきた。過去には、夜型人間について全死因死亡率および心血管死亡率のわずかな増加が示唆されたという研究報告もある。  では、長期におよぶ追跡調査でもこの結果は変わらないものであろうか。

感染対策義務のない学会参加、コロナ感染はどれくらい?

 対面式の学術集会参加後の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率を調べた報告はあるが、オミクロン株流行期に開催された感染対策義務のない学術集会参加後のSARS-CoV-2感染率は報告されていない。そこで、Saarland University Medical CenterのAlaa Din Abdin氏らは、オミクロン株流行期に感染対策義務なしで開催された、ドイツ眼科学会年次総会2022の参加者4,463人を対象として、学術集会参加後のSARS-CoV-2感染率と感染に関連する因子を検討した。その結果、調査対象者の8%が学術集会後にSARS-CoV-2検査陽性となり、ほかの研究で報告されている割合(0~1.7%)よりも高かった。また、過去にSARS-CoV-2感染歴があると学術集会での感染は少なく、民泊利用者は感染が多かった。

難治性うつ病に対するケタミンの効果、ショック療法に劣らず

 治療抵抗性の大うつ病性障害(以下、うつ病)に対する治療法として、ケタミンの静脈内投与が電気けいれん療法(ECT)の代わりになり得る可能性のあることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のAmit Anand氏らによる臨床試験で示された。詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に5月24日掲載された。  現在、さまざまな薬物療法や精神療法を試しても奏効しない治療抵抗性のうつ病患者に対しては、「ショック療法」とも呼ばれているECTが施行されることがある。これは、脳に電気刺激を与えて一時的なけいれんを誘発する治療法だ。ECTは、これまで80年にわたってうつ病の治療に用いられてきており、有効かつ即効性があると考えられている。

補聴器の使用が認知機能低下リスクの低減に関連

 難聴患者では、補聴器の使用が長期的な認知機能低下のリスク低減に関連することが、「JAMA Neurology」に12月5日報告された。  シンガポール国立大学(シンガポール)のBrian Sheng Yep Yeo氏らは、補聴器・人工内耳と認知機能低下や認知症との関連について、システマティックレビューとメタアナリシスを実施。対象は31件の研究(13万7,484人)で、このうち19件を定量分析の対象とした。  難聴と認知機能低下との長期的な関連を調べた8件の研究(対象者12万6,903人、追跡期間2~25年)のメタアナリシスにおいて、補聴器を使用している患者では未矯正の患者に比べて、認知機能低下のリスクが有意に低いことが判明(ハザード比0.81)。聴力回復と短期的な認知テストスコアの変化を調べた11件の研究(対象者568人)のメタアナリシスでは、補聴器使用後にスコアの改善が見られた(平均値比1.03)。

Long COVIDに早期メトホルミン投与が有効

 Long COVID(いわゆる新型コロナ後遺症)は、倦怠感や味覚症状など多岐にわたる症状があり、世界中で多くの人が苦しんでいるものの、現時点で確立された治療法はない。米国・ミネソタ大学、Carolyn T Bramante氏らは、COVID-19感染直後の外来患者に、メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミンの単独投与と併用投与を行い、COVID-19の重症化予防とLong COVIDのリスク低減効果を評価した研究を行った。  米国の6施設で行われたこの第III相無作為化四重盲検プラセボ対照COVID-OUT試験において、3剤に重症化予防効果がなかったことはすでに報告されているが、本試験のLong COVIDのリスク低減効果の分析がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年6月8日号に掲載された。

抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者における双極性障害への進展

 これまでの研究で、抗うつ薬耐性と双極性障害への進展には正の相関があるといわれている。しかし、この関連性に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの抗うつ薬クラスの影響は、まだ調査されていない。台湾・国立陽明交通大学のJu-Wei Hsu氏らは、これらの関連性を評価するため本検討を行った。その結果、青少年から若年成人の抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者、とくにSSRIとSNRIの両方に対して治療反応が不十分な患者では、その後の双極性障害リスクが有意に高いことが確認された。European Neuropsychopharmacology誌2023年9月号の報告。

COPD患者の生存率向上につながり得る治療標的が明らかに

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の多くに気道の閉塞をもたらす粘液栓(粘液の塊)が、COPD治療の新たな標的となり得ることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院呼吸器・救命医療部門のAlejandro Diaz氏らによる研究で示された。この研究結果は、米国胸部学会(ATS 2023、5月19〜24日、米ワシントン)で発表され、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に5月21日同時掲載された。  米国では、COPDは4番目に多い死因であり、その有病者数は1590万人に上る。COPDの原因としては、喫煙や長期間にわたる大気汚染への曝露などが挙げられる。COPDはそうしたものへの曝露を避けることで進行を遅らせることはできるが、治癒は不可能だ。さらに、研究グループによると、COPD患者の死亡に影響を与える要因に関しては、現時点ではほとんど分かっていない。その上、死亡に関係する要因の全てが症状として現れるわけではないという。

大腸がんリスクの低い人では便検査を用いた3年間隔での大腸がん検診が適切か

 平均的な大腸がんリスクのある人では、マルチターゲット便DNA検査(mt-sDNA)を用いた大腸がん検診は、3年間隔が臨床的に適切なようであるとの研究結果が、「Cancer Prevention Research」2月号に掲載された。  米インディアナ大学のThomas F. Imperiale氏らは、3年間隔でのmt-sDNAの臨床的有用性を検討。解析対象は、医療従事者によりmt-sDNAが適格と判定された大腸がん検診の候補者2,044人(2015年4月~2016年7月)で、mt-sDNA陽性例は大腸内視鏡検査を受け、陰性例は3年間、毎年追跡された。

シフト勤務による健康への影響は男性に強く生じる可能性

 就労時間帯が変化するシフト勤務によって生じる体への負担は、女性よりも男性で大きい可能性が報告された。米ペンシルベニア大学ペレルマン医学部のGarret FitzGerald氏らの研究によるもので、詳細は「Science Translational Medicine」に5月17日掲載された。  FitzGerald氏らの研究は、実験用マウスと人間を対象とした二つのパートから成る。まずマウスを用いた研究では、昼夜のサイクルを変化させて飼育すると、オスでは血圧、腸内細菌叢、遺伝子の発現など、さまざまな評価指標に大きな混乱が認められた。対照的にメスのマウスは、そのような変化が少なかった。

転移乳がんへのカペシタビン、固定用量vs.標準用量(X-7/7)/ASCO2023

 転移を有する乳がん(MBC)患者を対象としたX-7/7試験において、カペシタビンの固定用量(1,500mg 1日2回 7日間投与後7日間休薬)は、体表面積に基づく用量(1,250mg/m 1日2回 14日間投与後7日間休薬)と比較して、無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)に差はなく、手足症候群などの有害事象の発生率が低かったことを、米国・カンザス大学がんセンターのQamar J. Khan氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

CKD-MBDガイドライン改訂に向けたデータの吟味/日本透析医学会

 日本透析医学会による慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドラインが発表されてから10年以上が経過し、これまでに多くのデータが蓄積されてきた。そのデータを吟味し、今後のガイドラインのアップデートにつなげる目的として、2023年6月16日、日本透析医学会学術集会・総会のシンポジウム1「CKD-MBDガイドライン改訂に必要なデータを吟味する」にて、8名の医師からその方向性に関する報告と提案があった。

TKI耐性EGFR陽性NSCLCに対するペムブロリズマブ+化学療法の最終解析(KEYNOTE-789)/ASCO2023

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)耐性のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブと化学療法の併用は、統計学的に有意な生存ベネフィットを示さなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、国立台湾大学病院のJames Chih-Hsin Yang氏が発表した、国際共同二重盲検第III相KEYNOTE-789試験の最終解析の報告である。