医療一般|page:114

モデルナXBB対応コロナワクチン、BA.2.86「ピロラ」にも有効

 米国・Moderna社は9月6日付のプレスリリースにて、同社のXBB対応の新型コロナワクチンが、高度な変異のある新たな変異株のBA.2.86(通称:ピロラ)に対して、中和抗体をヒトで8.7倍増加させることを、同社の臨床試験データで確認したことを発表した。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、BA.2.86は、新型コロナワクチンを以前接種した人でも感染する可能性があり、新たなXBB対応ワクチンは重症化や入院を減らすのに有効な可能性があるという。

がんサバイバーの心不全発症、医療者の知識不足も原因か/日本腫瘍循環器学会

 9月30日(土)~10月1日(日)の2日間、神戸にて第6回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催される(大会長:平田 健一氏[神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野])。それに先立ち、大会長による学会の見どころ紹介のほか、実際にがんサバイバーで心不全を発症した女性がつらい胸の内を語った。  今回のメディアセミナーに患者代表として参加した女性は、10代で悪性リンパ腫の治療のために抗がん剤を使用。それから十数年以上経過した後に健康診断で乳がんを指摘されて乳房温存手術を受けたが、その後にリンパ節転移を認めたため、抗がん剤(計8コース)を行うことになったという。しかし、あと2コースを残し重症心不全を発症した。幸いにも植込み型補助人工心臓(VAD)の臨床試験に参加し、現在に至る。

脳卒中の診断、年齢の左桁バイアスはあるか

 人間には、年齢などの連続変数の左端の桁の数字に基づいて判断する傾向(left-digit bias:左桁バイアス)がある。このバイアスが医師の意思決定にも影響するのだろうか。最近の研究では、80歳の誕生日直前の患者より、直後の患者に冠動脈バイパス術を行う可能性が低かったことが示されている。今回、京都大学の福間 真悟氏らは、脳卒中に対する画像検査のオーダーに年齢の左桁バイアスが影響するかを検討した。その結果、男性患者に対してのみ、40歳前後でオーダーの不連続的な増加がみられ、医師の脳卒中リスクの推定に認知バイアスが存在することが示唆された。Social Science & Medicine誌2023年8月26日号に掲載。

コーヒー・緑茶で貯蔵鉄が減少、閉経後女性は多飲に注意?~J-MICC佐賀地区研究

 コーヒーや緑茶の摂取は、腸において鉄の吸収を阻害することにより、体内の貯蔵鉄の量を減少させると考えられている。貯蔵鉄が過剰となると酸化ストレスが増加し、心血管疾患やがんの発症リスクとなるため、コーヒーや緑茶の摂取がこれらのリスクを低下させる可能性が指摘されている。しかし、過剰摂取は鉄欠乏を招く可能性もある。そこで、南里 妃名子氏(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)佐賀地区の調査に参加した1万435人を対象として、コーヒー、緑茶の摂取量と血清フェリチン値との関係を検討した。その結果、男性および閉経後女性では、コーヒー、緑茶はいずれも摂取量が多いほど血清フェリチン値が低かった。閉経前女性では、緑茶の摂取量のみに同様の関連が認められた。また、閉経後女性において、コーヒーを1日3杯以上飲む人は飲まない人と比べて、鉄欠乏が多くみられた。本研究結果は、Frontiers in Nutrition誌2023年8月10日号に掲載された。

モーニングコーヒーでうつ病リスクが低下

 最近の研究では、カフェイン摂取がうつ病リスク低下と関連していることが示唆されている。しかし、どの時間帯でのカフェイン摂取がうつ病リスクと関連しているかは、よくわかっていない。中国・山東中医薬大学のJiahui Yin氏らは、さまざまな時間帯におけるカフェイン摂取とうつ病リスクとの関連を調査した。その結果、早朝にカフェインを摂取した人は、うつ病有病率が低く、早朝以外の時間帯にカフェインを摂取する人は、うつ病有病率が高いことを報告した。Journal of Affective Disorders誌11月号の報告。

コロナワクチン、同じ腕に接種vs.違う腕に接種

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症ワクチン「BNT162b2」の2回接種レジメンでは上腕の三角筋に順次投与されるが、2回目の投与を同側の腕に行うか反対側の腕に行うかによる免疫学的影響については、これまでほとんど注意が払われてこなかった。ドイツ・ザールラント大学のLaura Ziegler氏らは、どちらの腕に投与するかがワクチンによって誘導される液性免疫および細胞性免疫に異なる影響を及ぼすかどうかを検討した観察研究の結果を、eBioMedicine誌2023年7月31日号に報告した。

プロスポーツチームを誘致した都市でインフルエンザによる死亡者数が増加

 プロスポーツチームを新たに誘致した都市では、インフルエンザによる死亡者数が急増するという研究結果が報告された。米ウェストバージニア大学ジョン・チェンバース・カレッジ・オブ・ビジネス&エコノミクスのBrad Humphreys氏らによる研究で、詳細は「Sports Economics Review」に6月8日掲載された。  新しい都市にプロスポーツチームを誘致する際には、多額の税金が投入されることが多い。研究グループによると、2000年以降、米国の州政府や地方自治体は、新しいスタジアムの建設に200億ドル(1ドル143円換算で約2兆8600億円)近く、年間にするとおよそ10億ドル(同約1430億円)を投じてきた。これらの投資は、主に政府が債券を発行して調達した補助金で賄われている。

日本人高齢者の歩行速度と軽度認知障害リスクとの関係

 これまでの研究では、歩行速度の低下と認知機能低下との関連が示唆されている。しかし、この関連が高齢者集団の年齢および性別の影響を受けるかは、よくわかっていない。慶應義塾大学の文 鐘玉氏らは、年齢、性別の影響を考慮し、軽度認知障害(MCI)と歩行速度との関連について調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2023年8月2日号の報告。  本横断研究には、2016~18年に65歳以上の日本人高齢者8,233人が登録された。性別、年齢により層別化した後、対象者の歩行速度を5分位に分類し、それぞれのMCI有病率の差を算出した。歩行速度別のMCI有病率、年齢および性別の影響を評価するため、ロジスティック回帰分析を用いた。

タンパク質摂取で筋肉痛は抑えられない

 レジスタンス運動(筋肉に繰り返し負荷をかける運動)の前後にタンパク質を摂取することは、運動後の回復とトレーニング効果を高める一般的な戦略である。一方、タンパク質摂取が運動誘発性筋損傷(EIMD:いわゆる筋肉痛)を抑制できるのかについて調査した、英国・ダーラム大学のAlice G. Pearson氏らによるシステマティックレビューの結果が、European Journal of Clinical Nutrition誌2023年8月号に掲載された。  研究者らはPubMed、SPORTDiscus、Web of Scienceで2021年3月までの関連論文を検索し、運動後の各時点(24時間未満、24時間、48時間、72時間、96時間)におけるタンパク質摂取の効果と、EIMDを計る間接的マーカーのヘッジズ効果量(ES)を算出した。

中国のゼロコロナ政策終了直後、超過死亡が急増か

 中国では、コロナパンデミックの開始から厳格なゼロコロナ政策によって罹患率と死亡率は低く抑えられていた。しかし、2022年12月のゼロコロナ政策の解除により、以降2ヵ月間、中国全土の30歳以上において推定187万人の超過死亡が発生したことが、米国・シアトルのFred Hutchinson Cancer Research CenterのHong Xiao氏らの研究チームによる調査で確認された。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。  本調査では、北京市の北京大学と精華大学、黒竜江省のハルビン工業大学の2016年1月1日~2023年1月31日までの職員の公開された訃報記事データが用いられた。訃報記事は、年齢、性別、役職、雇用形態(現職、退職)に関係なく、死亡したすべての職員が含まれ、掲載のプロセスはCOVID-19の流行前も流行中も一貫して行われていた。本データから30歳以上の死亡率の相対的変化を推定した。前COVID-19期(2016年1月~2019年12月)、ゼロコロナ政策期(2020年1月~2022年11月)、ポスト・ゼロコロナ政策期(2022年12月~2023年1月)の3つの期間に分け、負の二項回帰モデルを使用した。また、中国のインターネット検索エンジンBaiduにて、総検索量に対する死に関連するワード(葬儀社、火葬、埋葬など)の検索の頻度(Baidu指数:BI)の相対的変化も推計し、大学における30歳以上の死亡率との相関関係も分析した。さらに、これらの数値を基に、中国のその他の地域における超過死亡率を算出した。

ER+/HER2-早期乳がんの細胞増殖抑制効果、giredestrant vs.アナストロゾール(coopERA BC)

coopERA BC試験は、2週間のgiredestrant治療がアナストロゾールよりも強い細胞増殖抑制効果を示すかどうかを検証するためにデザインされた非盲検無作為化対照第II相試験。世界11ヵ国59ヵ所の病院または診療所で実施された。2021年の欧州臨床腫瘍学会で中間解析が報告され、今回は主要解析と最終解析が報告された。  対象は、cT1c~cT4a-c、閉経後、ER+、HER2-、未治療の早期乳がんで、ECOG PS 0/1、Ki67≧5%の患者であった。参加者は、window of opportunity phaseとして1~14日目にgiredestrant 30mgを1日1回経口投与する群と、アナストロゾール1mgを1日1回経口投与する群に無作為に1対1に割り付けられた。

米FDAが産後うつ病の経口治療薬Zurzuvaeを承認

 米食品医薬品局(FDA)は8月4日、産後うつ病(PPD)に対する初めての経口治療薬としてZurzuvae(一般名zuranolone)を承認した。Zurzuvaeの1日当たりの推奨用量は50mgで、毎夕14日間、脂肪の多い食事とともに摂取する。産後うつに対する治療薬としては、2019年にZulresso(一般名ブレキサノロン)がFDAにより承認されている。この承認は画期的ではあったが、Zulressoは、医療機関で医療従事者による点滴投与が必要な上に、点滴には60時間もの時間を要する。

ノボノルディスク社がセマグルチドを含むとする配合剤の排除に向けた動き

 ノボノルディスク社は、セマグルチドを含むと主張する配合剤を排除する動きを開始した。米食品医薬品局(FDA)未承認の配合剤を販売している企業に対する訴訟や、同社製品とそれらの薬剤を識別する方法の情報提供を進めていくという。同社発のステートメントおよびプレスリリースでは、配合剤を使用している一部の調剤薬局、減量クリニック、医療型スパに対して、「セマグルチドを含むと主張する虚偽の広告、商標侵害、FDA未承認の調合製品の違法販売をやめるよう指示している」と述べられている。

Guardant360 CDx、HER2変異陽性NSCLCにおけるT‐DXdのコンパニオン診断として承認/ガーダントヘルスジャパン

 ガーダントヘルスジャパンは、がん化学療法後に増悪したHER2遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ、以下 T-DXd)の適応判定補助を目的としたコンパニオン診断として、リキッドバイオプシー「Guardant360 CDx がん遺伝子パネル」(Guardant360 CDx)に対する製造販売承認事項一部変更承認を2023年8月28日付で厚生労働省から取得した。  HER2遺伝子変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)の70%を占める、非扁平上皮NSCLCの2〜4%を占める。

第一三共のコロナワクチン、XBB.1.5対応を一変承認申請、2価は第III相で主要評価項目達成

 第一三共は9月6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する同社が開発中の2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)mRNAワクチン「DS-5670」について、追加免疫を対象とした国内での第III相臨床試験で、主要評価項目を達成したことを発表した。また、翌7日付のプレスリリースにて、DS-5670の12歳以上の追加免疫に対するオミクロン株XBB.1.5系統対応の1価mRNAワクチンについて、日本における製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったことも発表した。DS-5670については、「SARS-CoV-2による感染症の予防」の適応で、追加免疫を対象に起源株1価ワクチンとして2023年8月に製造販売承認を取得している。

各固形がんにおけるHER2低発現の割合は/Ann Oncol

 新たに定義されたカテゴリーであるHER2低発現(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+)は、多くの固形がんで認められることが明らかになった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBurak Uzunparmak氏らによるAnnals of Oncology誌オンライン版2023年8月22日号掲載の報告より。  本研究では、進行または転移を有する固形がん患者4,701例を対象に、IHC法によるHER2発現状態を評価した。また乳房と胃/食道の原発および転移腫瘍のペアサンプルにおいて、IHC法およびISH法によるHER2発現状態を評価した。

医師によるコロナのデマ情報、どう拡散された?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、ソーシャルメディア(SNS)上で、ワクチン、治療法、マスクなどに関する誤った医療情報が広く拡散されたことが社会問題となった。このような誤情報の拡散には、一部の医師も関わっていたことが知られている。COVID-19の誤情報について、情報の種類や、利用されたオンラインプラットフォーム、誤情報を発信した医師の特徴を明らかにするために、米国・マサチューセッツ大学のSahana Sule氏らの研究チームが調査を行った。JAMA Network Open誌2023年8月15日号に掲載の報告。

摂食障害に対する精神薬理学的介入~メタ解析

 神経性やせ症(AN)、神経性過食症(BN)、過食性障害(BED)といった、主な摂食障害の精神薬理学に関連する体重変化および感情の精神病理学的アウトカムを評価するため、イタリア・University of Naples Federico IIのMichele Fornaro氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、摂食障害ごとに薬剤の有効性が異なることが確認された。著者は、今後、体重以外のさまざまな精神病理学的および心臓代謝系のアウトカムを記録する研究、とくに確立された心理療法の介入を検証する研究が求められる、としている。Journal of Affective Disorders誌2023年10月1日号の報告。

自分の仕事が社会的に無意味と感じている人はあなただけではない

 自分の仕事が無意味だと感じたことがあるだろうか。チューリッヒ大学(スイス)のSimon Walo氏による研究から、自分の仕事は社会にとってほとんど、あるいは全く重要ではないと感じている人の割合が19%にも上ることが示された。このような考えを持つ人は、特に金融、営業、管理職の人で多かったという。この研究結果は、「Work, Employment and Society」に7月21日掲載された。  自分の仕事が社会的に無意味だと考えている人が多いことは、過去の研究で報告されている。この現象の理由の説明として、さまざまな理論が提唱されているが、その代表格が、米国の人類学者であるDavid Graeber氏が提唱した「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)理論」である。この理論では、世の中には無意味な仕事が存在し、それが一部の職種に目立つことが主張されている。Walo氏は、「従業員が、自分の仕事が社会的に無意味と感じているかどうかを評価するのは非常に複雑な問題であり、さまざまな角度からアプローチする必要がある」と述べている。また、「それは、Graeber氏が主張するように、仕事の実際の有用性とは必ずしも関係のない、さまざまな要因に左右されるものだ。例えば、労働条件の悪さが原因で、自分の仕事に社会的な意味を見出せないケースも考えられる」と付け加える。一方、他の研究では、人々は、自分の仕事の内容ではなく、それが毎日、決まった手順で繰り返し行うルーチンワークであり、自律性や優れた管理のないことから無意味だと考える可能性が指摘されている。

ER+/HER2-乳がん、Ki-67と21遺伝子再発スコアの関連

 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)乳がんにおいて、21遺伝子再発スコア(RS)高値とKi-67高値はどちらも予後不良因子であるが、これらのバイオマーカーによる違いが指摘されている。今回、韓国・Hallym UniversityのJanghee Lee氏らは、ER+/HER2-乳がん患者におけるKi-67とRSとの関連、Ki-67と無再発生存期間(RFS)との関連を調べた。その結果、Ki-67とRSに中等度の相関が観察され、RSの低い患者においてKi-67高発現がsecondary endocrine resistanceリスク上昇と関連していた。JAMA Network Open誌2023年8月30日号に掲載。