医療一般|page:116

ベンゾジアゼピンや気分安定薬の併用率低下に長時間作用型注射剤は寄与するか

 統合失調症は、再発と寛解を繰り返す慢性疾患である。治療には主に抗精神病薬が用いられ、その剤形には経口剤または長時間作用型注射剤(LAI)がある。さまざまな理由で気分安定薬やベンゾジアゼピンが補助療法として頻用されるが、国際的なガイドラインで推奨されることはめったにない。ルーマニア・トランシルバニア大学のAna Aliana Miron氏らは、慢性期統合失調症患者を対象に、抗精神病薬の剤形が気分安定薬やベンゾジアゼピンの併用に及ぼす影響を明らかにするため、観察的横断研究を実施した。その結果、安定期統合失調症患者に対する気分安定薬およびベンゾジアゼピンの長期併用率は、抗精神病薬の剤形とは関係なく高いままであることが示唆された。

初回化学療法反応後の維持療法としてのCDK4/6阻害薬の有用性/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)患者に対する初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法が、有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示したことを、大阪国際がんセンターの藤澤 文絵氏が第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。  MBC乳がんに対するベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後の維持療法として、内分泌療法(+カペシタビンあるいはベバシズマブ併用)の有用性が国内多施設無作為化第II相試験(KBCSG-TR12141)、BOOSTER試験2))で報告されている。しかし、内分泌療法+CDK4/6阻害薬併用維持療法の有効性と安全性に関するデータは十分ではない。そこで、藤澤氏らはMBC患者における初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法+CDK4/6阻害薬の安全性と有効性を調査した。

アナモレリン投与、日本人5,000例のリアルワールドデータ/日本臨床腫瘍学会

 グレリン様作用薬アナモレリン(商品名:エドルミズ)は、2021年1月に非小細胞肺がん(NSCLC)、胃がん、膵臓がん、大腸がんに伴う悪液質治療として国内で保険承認された。2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)において、室 圭氏 (愛知県がんセンター 副院長/薬物療法部長)が国内の患者約5,000例を対象とした市販後全例調査(PMS)の中間解析結果を発表した。

糖尿病治療による心血管/心不全リスクへの効果の違い~メタ解析

 糖尿病治療による心血管および心不全リスクへの効果は試験により大きく異なる。今回、医学研究所北野病院(大阪市)の長谷部 雅士氏らがランダム化心血管アウトカム試験35試験のメタ解析およびメタ回帰分析により、糖尿病治療は主要有害心血管イベント(MACE)をHbA1cに依存して減少させる一方、心不全リスクは体重に依存して減少することがわかった。Cardiovascular Diabetology誌2023年3月19日号に掲載。  本研究では、2023年1月25日までPubMedとEMBASEで2型糖尿病または前糖尿病患者におけるMACEと心不全アウトカムの両方を報告する糖尿病治療(生活習慣改善、薬剤)のすべてのランダム化比較心血管アウトカム試験を検索し、35試験(計25万6,524例)を同定した。ランダム効果メタ解析に続いてメタ回帰分析を行い、各アウトカムに対するHbA1cまたは体重減少の影響を評価した。

営利目的のホスピスはケアの質が低い傾向

 営利目的のホスピスで終末期を過ごす患者は、非営利目的のホスピスで過ごす患者に比べて受けるケアの質が格段に劣ることが、新たな研究で報告された。米ランド研究所のRebecca Anhang Price氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に2月27日掲載された。  ホスピスケアは死期の迫った患者とその家族の生活の質(QOL)の向上に焦点を当てるもので、患者の余命が6カ月以下と予想される場合に適格とされる。ホスピスの多くは地域ベースで自発的に始まったサービスであったが、営利目的のホスピスの数は、2000年以降20年で5倍以上に増えた。また、ホスピス全体に営利目的のホスピスが占める割合も、2000年の約30%から2020年には73%となっている。以前の研究では、営利目的のホスピスは非営利目的のホスピスに比べ、スタッフの数が少ない点や技能が低い点などが指摘されている。

新型コロナワクチン接種ガイダンスを改訂/WHO

 世界保健機関(WHO)は3月28日付のリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種ガイダンスを改訂したことを発表した。今回の改訂は、同機関の予防接種に関する専門家戦略アドバイザリーグループ(SAGE)が3月20~23日に開催した会議を受け、オミクロン株流行期の現在において、ワクチンや感染、またはハイブリッド免疫によって、世界的にすべての年齢層でSARS-CoV-2の抗体保有率が増加していることが考慮されたものとなる。SARS-CoV-2感染による死亡や重症化のリスクが最も高い集団を守ることを優先し、レジリエンスのある保健システムを維持することに重点を置いた、新たなロードマップが提示された。

肺がん骨転移へのゾレドロン酸8週ごと投与/日本臨床腫瘍学会

 肺がん骨転移に対するゾレドロン酸8週ごと投与の結果を、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で、大阪国際がんセンターの田宮 基裕氏が発表した。  ゾレドロン酸は、固形がんのがん骨関連事象(SRE)や症状緩和には欠かせない薬物である。一方、顎骨壊死などの重篤な有害事象の発現リスクも見逃せない。そのため、投与間隔の長短による、有効性と安全性の違いが研究されている。田宮氏が発表した無作為オープンラベル第II相試験(Hanshin Cancer Group0312)は、添付文書用法である3〜4週ごとと、8週ごとを比較したもの。

m-FOLFOXIRI+セツキシマブ、RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんに有用/日本臨床腫瘍学会

 DEEPER試験は未治療の切除不能転移RAS野生型大腸がんの患者を対象に、m-FOLFOXIRI+セツキシマブの有効性と安全性をm-FOLFOXIRI+ベバシズマブと比較して検証することを目的とした無作為化第II相試験である。すでにセツキシマブ群が主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)を有意に改善したことが報告されている。2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、本試験における最終登録から3年後の解析結果を、辻 晃仁氏(香川大学 医学部臨床腫瘍学講座)が発表した。

双極性障害患者の肥満と脳皮質形態との関連~ENIGMA研究

 双極性障害を含む重度の精神疾患患者では、とくに肥満が顕著に認められる。双極性障害と肥満のいずれにおいても標的となりうる器官は脳であると考えられるが、双極性障害における脳皮質の変化と肥満との関係については、これまでよくわかっていなかった。カナダ・ダルハウジー大学のSean R. McWhinney氏らは、双極性障害患者の肥満と脳皮質形態との関連について調査を行った。その結果、双極性障害患者はBMIが高いほど脳の変化が顕著であることが示唆され、双極性障害とも関連する脳領域において、高BMIには大脳皮質全体で表面積ではなく皮質厚の薄さと一貫した関連があることが認められた。Psychological Medicine誌オンライン版2023年2月27日号の報告。

新しい乳がん画像診断技術は標準的なマンモグラフィよりも有用な可能性

 トモシンセシスと呼ばれる新しい画像診断技術を乳がんのスクリーニング検査(乳がん検診)に利用することで、より多くの乳がんを発見でき、また、要精検率が低く、精密検査での陽性的中率は高いことが、米ペンシルベニア大学病院乳房画像診断部門のEmily Conant氏らが実施した大規模研究で示された。Conant氏は、「トモシンセシスは標準医療となりつつあり、通常は保険が適用される。トモシンセシスの装置がある医療機関を探してみてほしい」と呼びかけている。この研究結果は、「Radiology」に3月14日掲載された。

女性や北国の人、ビタミンD摂取量が多いほど死亡リスクが低い

 ビタミンDの摂取量が多い女性は死亡リスクが低いことが、日本人を対象とする研究から明らかになった。福岡女子大学国際文理学部食・健康学科の南里明子氏らが、国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)のデータを解析した結果であり、詳細は「European Journal of Epidemiology」に1月31日掲載された。高緯度地域の居住者、カルシウム摂取量の多い人などでも、ビタミンD摂取量が多い群では少ない群に比べ死亡リスクが低い傾向があるという。  ビタミンDが骨の健康に重要であることは古くから知られている。しかし近年はそればかりでなく、血液中のビタミンDレベルの低さが、がんや循環器疾患、糖尿病、抑うつ、新型コロナウイルスを含む感染症など、さまざまな疾患の罹患リスクや死亡リスクの高さと関連のあることが報告されてきている。ただしビタミンDは、皮膚に紫外線が当たった時に多く産生されるため、食事からの摂取量と血液中のビタミンレベルとの相関が、ほかの栄養素ほど高くない。その影響もあり、ビタミンDの摂取量と死亡リスクとの関連についてのこれまでの研究結果は一貫性を欠いている。

難治転移大腸がんへのfruquintinib、日本人患者にも有用/日本臨床腫瘍学会

 転移のある大腸がん患者に対する血管内皮増殖因子受容体 (VEGFR) -1、2、3を標的とするfruquintinibの有効性を示したFRESCO-2試験。本試験における日本人サブグループの解析結果を、2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、国立がん研究センター東病院の小谷 大輔氏が発表した。  FRESCO-2試験は米国、欧州、オーストラリア、日本で実施された国際共同第III相試験であり、fruquintinib+最善の支持療法(BSC)またはプラセボ+BSCに2:1で無作為に割り付けられた。fruquintinib(F群)またはプラセボ(P群)を1日1回投与(5mgを28日周期で3週間投与し、1週間休薬)した。主要な患者選択基準には、標準化学療法が不応または不耐であること、抗VEGF 療法歴を有すること、RAS野生型の場合は抗EGFR療法歴を有すること、適応がある場合は免疫チェックポイント阻害薬またはBRAF阻害薬治療歴を有すること、またトリフルリジン/チピラシルとレゴラフェニブの両方もしくはいずれかの治療歴を有することが含まれた。

CDK4/6阻害薬+内分泌療法、HER2低発現乳がんでの有効性/日本臨床腫瘍学会

 HER2低発現とHER2ゼロの進行乳がん患者において、CDK4/6阻害薬および内分泌療法の効果を比較した結果、両群の無増悪生存期間(PFS)中央値や内分泌療法の治療成功期間(TTF)中央値に有意差はなかったことを、大阪市立総合医療センターの大森 怜於氏が、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。  内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用は、ホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行・再発乳がんの標準治療となっている。HER2低発現(IHC1+またはIHC2+/ISH-)は新たに注目されている分類だが、HER2低発現乳がんに対する研究はまだ限られている。

不眠症に対する認知療法、行動療法、認知行動療法の長期有効性比較

 不眠症を軽減するためには、長期的な治療が重要である。米国・カリフォルニア大学バークレー校のLaurel D. Sarfan氏らは、不眠症治療に対する認知療法(CT)、行動療法(BT)、認知行動療法(CBT)の長期的な有効性について、相対的に評価した。その結果、セラピストによるCBT、BT、CTの提供は、長期にわたり不眠症による夜間および日中の症状を改善させる可能性が示唆された。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌オンライン版2023年2月23日号の報告。

新型コロナワクチン接種後のアレルギー反応は本物?

 ファイザー社製またはモデルナ社製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種後のアナフィラキシーの発生率は、他のワクチンでの発生率に比べると高い。こうした中、この現状に疑問を投げかける小規模臨床試験の結果が報告された。同試験では、予防接種ストレス関連反応(ISRR)の症状の多くがアナフィラキシーの症状と酷似しているため、新型コロナワクチンでは、ワクチン接種後に生じたISRRがアナフィラキシーとして報告されるケースが多い可能性が示唆されたという。米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のMuhammad Khalid氏らが実施したこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI 2023、2月24〜27日、米サンアントニオ)で発表されるとともに、その要旨が「The Journal of Clinical Immunology」2月号(増刊号)に掲載された。

糖尿病患者、女性は男性より静脈血栓塞栓症を発症しやすい

 糖尿病患者は非糖尿病者よりも静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高いこと、特に女性患者でリスク差が大きく、かつ男性糖尿病患者との比較でもリスク差がある可能性を示すデータが報告された。ウィーン医科大学(オーストリア)のCarola Deischinger氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」12月号に掲載された。  糖尿病と心血管疾患(CVD)リスクとの関連については豊富なエビデンスがあり、糖尿病に伴う凝固亢進状態はCVDのみならずVTEリスクも押し上げることが想定される。ただし、糖尿病とCVDの関連に比べ、糖尿病とVTEに関するエビデンスはまだ十分でない。特に、性差についてはほとんど分かっていない。

ハダカデバネズミは生涯にわたって妊娠可能

 ハダカデバネズミには、さまざまな面で他の哺乳類にはない特徴があるが、とりわけ生涯にわたって妊娠可能な状態が続くという点は例外的である。米ピッツバーグ大学のMiguel Brieno-Enriquez氏らは、こうしたハダカデバネズミの妊孕性の背景にある理由を突き止めることで、不妊に悩む人間のカップルに対する新たな治療法への道を見出せる可能性があると考え、研究を実施。その結果を、「Nature Communications」2月21日号に発表した。  Brieno-Enriquez氏は、「ハダカデバネズミは最も風変わりな哺乳類だ。例えば、体の大きさはマウスと同程度なのに、その寿命は30年以上であり、げっ歯類の中で最も寿命が長い。また、がんに罹患することはほぼ皆無で、痛みを感じることもない。さらに、地下で群れをなして生息し、女王ネズミだけが子を生むことができる。しかし、私を最も驚かせたのは、ハダカデバネズミが高齢になっても妊孕性が低下することなく、子どもを生み続けることだった」と同大学のニュースリリースで語っている。そして、「われわれは、どうしたらそれが可能になるのかを明らかにしたいと考えた」と研究背景について話す。

日本化薬のペメトレキセドGE、非小細胞肺がんの術前補助療法の適応取得

 日本化薬は、2023年3月27日、厚生労働省よりペメトレキセド点滴静注液100mg「NK」・同500mg「NK」・同800mg「NK」、ペメトレキセド点滴静注用100mg「NK」・同500mg「NK」・同800mg「NK」について、「扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌における術前補助療法」に対する効能・効果、ならびに用法・用量に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。

ICIの継続判断にも有用、日本初のOnco-cardiologyガイドライン発刊

 本邦初となる『Onco-cardiologyガイドライン』が第87回日本循環器学会学術集会の開催に合わせて3月10日に発刊された。これまで欧州ではESC(European Society of Cardiology、欧州心臓病学会)などがガイドラインを作成・改訂しており、国内でもガイドライン発刊が切望されていたことから、日本臨床腫瘍学会と日本腫瘍循環器学会が協働しMindsに準拠したものを作成した。今回、学術集会の会長企画シンポジウム6「OncoCardiology:診断と治療Up-to-Date」において、ガイドライン(以下、GL)のポイントについて発表された。

T-DXd、HER2低発現乳がんに適応拡大/第一三共

 第一三共は2023年3月27日、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、「化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳癌」の効能又は効果に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  本適応は、2022年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO2022)で発表された、化学療法による前治療を受けたHER2低発現の乳がん患者を対象としたグローバル第III相試験(DESTINY-Breast04)の結果に基づくもので、2022年6月に国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、優先審査品目に指定されていた。国内において初めてHER2低発現の乳がんを対象に承認された抗HER2療法となる。