医療一般|page:239

再発スコアの低いリンパ節転移陽性閉経後早期乳がん、術後化学療法は回避可能か(RxPonder)/SABCS2020

 リンパ節転移1~3個でオンコタイプDX乳がん再発スコアが0~25の閉経後早期乳がん患者において、術後内分泌療法への化学療法追加のベネフィットが認められなかったことが、RxPonder試験(SWOG S1007)の中間解析で示された。米国・エモリー大学のKevin Kalinsky氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。RxPonder試験は、米国国立がん研究所(NCI)の支援でSWOG Cancer Research Networkが主導している前向き無作為化第III相試験。

統合失調症治療におけるパリペリドン戦略の展望

 2020年10月22日(木)にヤンセンファーマ主催による、持続性抗精神病剤パリペリドンパルミチン酸エステル(商品名:ゼプリオンTRI)の製造販売承認メディアセミナーが開催され、統合失調症治療薬の安全性情報や統合失調症治療におけるパリペリドン戦略の展望、持効性注射剤の適正使用推進について語られた。  同社の研究開発本部クリニカルサイエンス統括部統括部長を務める藤野 忠弘氏は、「ゼプリオンTRIは国内で承認された最長の投与間隔となる注射剤であり、服薬負担を軽減し、社会復帰のために確実に治療を行うメリットがある。一方で副作用発現時に急な中止ができないため、適切な患者さんを選択し適正使用を図ることが重要となる」と述べた。

「523遺伝子を搭載した国内完結型がん遺伝子パネル検査」先進医療に承認/岡山大学

 新たながん遺伝子パネル検査に関する厚生労働省・先進医療技術【先進医療B】研究として、「国内完結型個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」が厚生労働省より承認され、2020年12月1日より、岡山大学病院が全国で初めて実施することになった。523遺伝子を搭載した国内では最多となるがん遺伝子パネル検査となる。  わが国で保険適応されている遺伝子パネル検査は2種類で、それぞれ114、324個の遺伝子を対象にしていた。しかし、がん種によっては十分な遺伝子が調べられないこともあった。

治療抵抗性うつ病発症リスクに関連する臨床的特徴と併存疾患

 うつ病患者の治療抵抗性うつ病(TRD)リスクを評価するため、臨床的特徴、初期の処方パターン、初期および生涯の併存疾患との関連について、台湾・国立台湾大学のShiau-Shian Huang氏らが調査を行った。BMC Psychiatry誌2020年11月17日号の報告。  うつ病入院患者3万1,422例を対象に、診断開始から10年以上のフォローアップを行った。TRDの定義は、2回以上の抗うつ薬治療レジメン変更または異なる2種類以上の抗うつ薬治療後の入院とした。人口統計学的共変量で調整した後、身体的および精神医学的併存疾患、精神疾患、処方パターンとTRDリスクとの関連を評価するため、多重ロジスティック回帰モデルを用いた。重要なTRD関連の臨床変数について、生存分析を実施した。

高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+パルボシクリブ、初回解析でiDFS改善みられず(PENELOPE-B)/SABCS2020

 術前化学療法後に浸潤性病変が残存している高リスクのホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性早期乳がん患者に対する、術後内分泌療法へのパルボシクリブ併用療法は、内分泌療法単独と比較して無浸潤疾患生存期間(iDFS)の有意な改善を示さなかった。ドイツ・German Breast GroupのSibylle Loibl氏が、第III相PENELOPE-B試験の初回解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 ・対象:タキサンを含む術前化学療法後に病理学的完全奏効が得られず、再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん患者(術前補助療法後の残存浸潤性病変有、CPS-EGスコア≧3または 2、ypN+、術前化学療法≧16週、最終手術日から16週未満または放射線療法完了後10週未満) ・試験群:術後療法として、パルボシクリブ(125mg1日1回×3週投与1週休薬の28日を1サイクルとして、13サイクル)+標準的内分泌療法 ・対照群:術後療法として、プラセボ(13サイクル)+標準的内分泌療法 ・評価項目: [主要評価項目]iDFS [副次評価項目]二次性原発浸潤性非乳がんを除くiDFS、遠隔無再発生存期間、全生存期間(OS)、安全性など ・層別化因子:リンパ節転移の有無(ypN0-1 vs.ypN2-3)、年齢(50歳以下 vs.50歳超)、Ki-67値(15%超 vs.15%未満)、地域(アジア vs.非アジア)、CPS-EGスコア(3以上 vs.2かつypN+)

境界性パーソナリティ障害と自殺企図~10年間のフォローアップ調査

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、自殺企図などの自殺行動の強力なリスクである。自殺行動リスクに影響を及ぼす因子を明らかにすることは、適切な自殺予防介入を考えるうえで重要であろう。米国・ハーバード大学医学大学院のShirley Yen氏らは、BPD患者の自殺企図に関連する因子をプロスペクティブに調査するため、10年にわたるフォローアップによるCollaborative Longitudinal Study of Personality Disorders(CLPS)研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年11月18日号の報告。

「肺癌診療ガイドライン」改訂、会員アンケートから見えた改善点は?/日本肺癌学会2020

 2020年11月、「肺癌診療ガイドライン」改訂版が公開された。肺癌診療は新規薬剤が次々と承認され、ガイドラインが毎年改訂されるという特異な状況にある。11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では「肺癌診療ガイドライン(薬物):過去10年の軌跡とこれからの未来」と題し、ガイドライン作成・改訂のこれまでを振り返り、今後について議論するシンポジウムが行われた。  この中で国立がん研究センター東病院呼吸器内科の野崎 要氏は「ガイドラインは誰のものか?:アンケート結果報告」と題し、日本肺癌学会正会員(医師)の薬物療法従事者を対象に行ったアンケート結果を発表した。このアンケートは肺癌診療ガイドラインの使用実態を調査し、以後の改訂に活かすことを目的に、2020年6~10月にWeb上で行われたもの。有効回答数は540だった。

COVID-19の後遺症は女性のほうが多い/和歌山県

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、寛解後に後遺症が残ることが知られつつあり、わが国では国立国際医療研究センターなどから「Long-COVID:専門医が語る新型コロナ後遺症の実態」などの研究・発表が行われている。  地方レベルでは、和歌山県も11月に「新型コロナウイルス感染症の後遺症等のアンケート調査の結果について」の結果を公表している。 本稿では、アンケート内容の概要を記す。 目的:和歌山県における新型コロナウイルス感染者の退院後の症状や生活状況等を把握し、啓発や対策に繋げる 対象者:新型コロナウイルス感染者で9月14日時点で退院後2週間以上経過している者 方法:感染者の管轄保健所からの郵送もしくは聞き取り調査 対象者数:216人 回答者数:163人(性別 男性97:女性66) 回答率:75.5%

治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬増強療法

 治療抵抗性うつ病の臨床症状として、自殺念慮や重度の機能障害が認められることがしばしばある。治療抵抗性うつ病の治療に対し、使用可能な薬剤の中で、第2世代抗精神病薬が有用であることが報告されている。イタリア・ミラノ大学のFilippo Cantu氏らは、治療抵抗性うつ病に対する第2世代抗精神病薬増強療法の有効性を評価するため、臨床研究のレビューを行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年11月5日号の報告。  2000年1月~2020年3月に公表された、治療抵抗性うつ病に対する抗精神病薬増強療法を評価したすべてのランダム化比較試験を、PubMed、Medline、PsychINFOより包括的に検索した。選択基準を満たした研究は16件であった。

高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+アベマシクリブ、iDFS改善が継続(monarchE)/SABCS2020

 再発リスクの高いリンパ節転移陽性ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性の早期乳がんに対し、術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加の有効性を評価する第III相monarchE試験の追跡調査において、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の改善が引き続き示され、Ki-67値20%以上の患者での有意な改善が示された。米国・ピッツバーグ大学のPriya Rastog氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。  monarchE試験は中間解析(追跡期間中央値15.5ヵ月)でアベマシクリブ追加によるiDFSの有意な改善(p=0.0096、ハザード比[HR]:0.747、95%信頼区間[CI]:0.598~0.932)が報告されている。今回、iDFSの約390イベント発生後に計画されていた解析の結果が報告された。

日本人のCOVID-19による血栓症発症率は?

 合同COVID-19関連血栓症アンケート調査チームによる『COVID-19関連血栓症に関するアンケート調査』の結果が12月9日に発表された。それによると、日本人での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連血栓症の発症率は、全体では1.85%であることが明らかになった。  この調査は、COVID-19の病態の重症化に血栓症が深く関わっていることが欧米の研究で指摘されていることを受け、日本人COVID-19関連血栓症の病態及び診療実態を明らかにすることを目的として行われたもの。2020年8月31日までに入院したCOVID-19症例を対象とし、全国の病院399施設のうち109施設からCOVID-19患者6,082例に関する回答が寄せられた。

コロナ禍初期のがん治療キャンセル・変更患者、3人に1人

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが、がん患者にどれほど影響を与えているか。本稿では、オランダ・Netherlands Comprehensive Cancer Organisation(IKNL)のLonneke V van de Poll-Franse氏らが、コロナ禍において同国がん患者が、がん治療とフォローアップ治療(電話/ビデオ相談を含む)、ならびにウェルビーイングについてどのように認識しているかを調べ、一般健常者と比較評価した。その結果、がん患者の3人に1人がコロナ禍の最初の数週間でがん治療が変化したと報告し、長期アウトカムに関する監視が必要なことが示されたという。一方で、コロナ禍は、がん患者よりも一般健常者においてメンタルヘルスにより大きな影響を与えていることも報告された。JAMA Oncology誌オンライン版2020年11月25日号掲載の報告。

AYA世代のがん発生率、42年間で3割増

 AYA世代(15~39歳)のがんは、通常のがん集団とは異なる点が多いが、その疫学的特徴と傾向についてのデータは不足している。今回、米国・Penn State Cancer InstituteのAlyssa R.Scott氏らが、米国人口ベースの後ろ向き横断研究を実施したところ、AYA世代におけるがんの発生率は42年間で29.6%増加しており、腎がんが最も高い増加率だった。JAMA Network Open誌2020年12月3日号での報告。  研究者らは、1973年1月1日~2015年12月31日までのSurveillance、Epidemiology、and End Results(SEER)データベースのレジストリデータ(SEER9、18)を使用。最初の分析は、2019年1月1日~8月31日に実施された。

うつ病に対する音楽療法~メタ解析

 音楽療法や音楽医学がうつ病に及ぼす影響およびその影響に関連する潜在的な因子を調査するため、中国・Bengbu Medical UniversityのQishou Tang氏らが、検討を行った。PLOS ONE誌2020年11月18日号の報告。  2020年5月までにうつ病に対する音楽による介入の有効性を評価した研究を、PubMed(MEDLINE)、Ovid-Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、EMBASE、Web of Science、Clinical Evidenceより検索した。標準化された平均差(SMD)の推定には、変量効果モデルおよび固定効果モデルを用いた。

コロナは将来の肺がん死亡者数にも影響を及ぼす!?

 2020年11月30日、アストラゼネカ株式会社は、「緊急提言 新型コロナウイルス感染症流行下におけるがん検診の重要性~つづけよう、がん検診~」と題し、コロナ禍の肺がん検診の現状に関するメディアセミナーを開催した。  セミナーでは、光冨 徹哉氏(近畿大学)、弦間 昭彦氏(日本医科大学)、小西 宏氏(日本対がん協会)が登壇し、トークゲストとして三遊亭 圓楽氏が参加した。  新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2020年1月~7月のがん検診の受診者数が前年比で55%減少した。同年4月の緊急事態宣言発出時に、厚生労働省ががん検診の受診延期を要請したが、宣言解除後も受診者数が前年同期の水準まで回復していない。この現状について、光冨氏は、検診の受診を控えたために肺がんの発見が遅れ、将来、肺がんによる死亡者数が増加する事態を懸念した。

Long-COVID:専門医が語る新型コロナ後遺症の実態

 国立国際医療研究センターの研究チームが、COVID-19回復者を追跡調査し、後遺症に焦点を当てた論文が10月に発表された(新型コロナ後遺症、4ヵ月後も続く例や遅発性の脱毛例も/国際医療研究センター)。それによると、発症から120日超の時点でも依然続く呼吸苦や倦怠感、咳などを訴えたり、数ヵ月後になって脱毛を経験したりした人がいたことがわかった。国内においては、COVID-19感染者の増加数において3度目のピークを迎えているとみられる昨今。臨床では急性期への対応が間違いなく喫緊の課題だが、感染症専門医らが「きわめて特異的」と評するCOVID-19回復後に長く続く後遺症、いわゆる“Long-COVID”はどのようなものなのか。冒頭論文の責任筆者である森岡 慎一郎氏(国際感染症センター)に話を伺った。

日本における自閉症の特徴を有する女性の産後うつ病と虐待リスク

 自閉症の特徴を有する女性が、出産後に母親となり、どのような問題に直面するかはあまりわかっていない。順天堂大学の細澤 麻里子氏らは、出産前の非臨床的な自閉症の特徴と産後うつ病および産後1ヵ月間の子供への虐待リスクとの関連、これらに関連するソーシャルサポートの影響について、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年11月5日号の報告。  日本全国の出生コホートである子どもの健康と環境に関する全国調査(Japan Environment and Children's Study)より、精神疾患の既往歴のない単胎児の母親7万3,532人を対象とした。自閉症の特徴は、簡易自閉症スペクトラム指数日本語版を用いて、妊娠第2三半期/第3三半期に測定した。対象者を、自閉症スコアに基づき3群(正常、中等度、高度)に分類した。産後うつ病はエジンバラ産後うつ病尺度日本語版を、子供の虐待は自己報告を用いて、出産1ヵ月後に測定した。妊娠中のソーシャルサポートは、個々に収集した。データ分析には、ポアソン回帰を用いた。

抗CD38抗体ダラツムマブ、全身性ALアミロイドーシスに国内承認申請/ヤンセン

 ヤンセンファーマは、2020年12月2日、ダラツムマブについて、「全身性ALアミロイドーシス」の適応取得を目的とした製造販売承認を申請したと発表。  全身性ALアミロイドーシスは国の指定難病で、2014年に実施された全国疫学調査による国内推定患者数は、3,200例とされている。異常形質細胞より産生されるアミロイド蛋白の沈着により多臓器障害を引き起こし、その臓器障害により生存率の低下や疾患の転帰に影響を及ぼす予後不良の疾患である。  全身性ALアミロイドーシスの治療は、その病態が多発性骨髄腫と類似しているため、自己造血幹細胞移植(ASCT) や悪性形質細胞を標的とする薬物療法(抗形質細胞療法)が実施されており、国内外のガイドラインで推奨されている。

インフルとの鑑別を追記、COVID-19診療の手引き第4版/厚生労働省

 12月4日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4版」を公開した。  同手引きは診療の手引き検討委員会が中心となって作成され、第1版は3月17日に、第2版は5月18日に、第3版は9月4日に公表され、随時最新の内容に更新している。  今回の改訂では、日本産科婦人科学会の協力を得て、臨床像や院内感染対策の更新を図ったほか、検査法、薬物療法などに関する新しい知見や行政対応に関する情報を反映させている。

フィナステリドの副作用、45歳以下では自殺傾向・うつとの関連が顕著

 インターネットやテレビで男性型脱毛症(AGA)治療の広告を目にしない日はないだろう。脱毛症の治療は身近なものになってきているが、脱毛症および良性前立腺肥大症(BPH)治療に使用されるフィナステリドについて、自殺傾向やうつ増大との関連が認められることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDavid-Dan Nguyen氏らにより報告された。同治療におけるフィナステリドの有害事象は議論の的となっており、使用男性の自殺企図または自殺例が報告されるようになったのは2012年ごろであったが、今回の検討では、45歳以下の脱毛症患者において、自殺傾向や心理的有害事象との顕著な関連性が認められたという。著者は、「今回の研究結果は、若年の患者にフィナステリドを処方する際は、自殺傾向、うつ、不安症のリスクを考慮する必要があることを示唆するものであった」と述べる一方で、「本研究によってバイアスがかかる可能性があり、さらなる調査が必要である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。