日本では、労働者のメンタルヘルスが問題となっている。公務員の労働環境は、過度なストレスを伴うことが多くなり、うつ病予防の必要性が増している。職場や家庭でのストレスに加えて、ソーシャルキャピタルがうつ病と関連していることが報告されている。敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、うつ病と職場でのストレスまたは家庭でのストレスの軽減に対する職場のソーシャルキャピタルの影響について調査を行った。BMC Public Health誌2021年4月14日号の報告。
対象は、富山県の日本人公務員3,015人(男性:1,867人、女性:1,148人)。うつ病、職場のソーシャルキャピタル、仕事の状況、職場でのストレス、ワークライフバランス、身体の健康状態に関するデータを収集した。
主な結果は以下のとおり。
・職場のソーシャルキャピタルが低い男女は、うつ病のオッズ比が高かった。
●職場のソーシャルキャピタルが低い男性(調整オッズ比:2.93、95%CI:2.16~3.98)
●職場のソーシャルキャピタルが低い女性(調整オッズ比:2.46、95%CI:1.74~3.49)
・職場のソーシャルキャピタルで調整した後、男性では、うつ病と役職の低さ、職場でのサポートの低さ、職場と家庭における中程度の問題との関連性が減少し、統計学的に有意な差は消失した。
・女性では、職場での中程度の管理によりうつ病と未婚状態との関連性は減少し、統計学的に有意な差は消失した。
・職場のソーシャルキャピタルの程度により層別化した場合のうつ病のオッズ比は、層別化前のオッズ比と比較し、職場のソーシャルキャピタルが低い男女は、長時間労働によるうつ病、職場と家庭での問題によるうつ病のオッズ比の増加が認められた。
著者らは「職場のソーシャルキャピタルは、男女共にうつ病に関連する職場と家庭のストレスの影響を軽減させる可能性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)