医療一般|page:336

知らずに食べている超悪玉脂肪酸、動脈硬化学会が警鐘

 農林水産省がトランス脂肪酸(TFA)に関する情報を掲載してから早10年。残念なことに、トランス脂肪酸に対する日本の姿勢には進展が見られない。2018年10月31日、動脈硬化学会が主催するプレスセミナー「トランス脂肪酸について」が開催され、丸山 千寿子氏(日本女子大学家政学部食物学科教授)、石田 達郎氏(神戸大学大学院医学研究科特命教授)がTFA摂取によるリスクに警鐘を鳴らした。  TFAと飽和脂肪酸を同量摂取して比較した場合、TFAは飽和脂肪酸と比べ動脈硬化の発症を10倍も増やし、糖尿病の原因となるインスリン抵抗性の悪化などを引き起こす。そのため、TFAは超悪玉脂肪酸とも呼ばれている。にもかかわらず、なぜ、TFAがいまだに食品に使用されているのだろうか。石田、丸山の両氏は「現時点では日本人において、直接その有害性を証明した根拠が少ないため」とコメント。

在宅医療で使う漢方薬の役割と活用法

 2018年10月24日、漢方医学フォーラムは、都内で第138回目のプレスセミナーを開催した。当日は、在宅医療における漢方薬の役割について講演が行われた。  講演では、北田 志郎氏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 准教授/あおぞら診療所 副院長)を講師に迎え、「地域包括ケアシステムと漢方~“暮らしのなかでいのちを支える” 在宅医療で発揮される漢方薬の役割~」をテーマに講演が行われた。

免疫CP阻害薬、心血管障害スクリーニングの結果/腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の免疫関連有害事象(irAE)としての心血管障害は、報告数は少ないものの、発症すると重篤化する。しかし、真の発生頻度や種類、発生時期については明らかになっていない。国際医療福祉大学三田病院の古川 明日香氏らは、腫瘍循環器学会において、同院の腫瘍循環器外来におけるICI使用時における心血管障害イベントのスクリーニングの意義について発表した。  スクリーニングの検証は、Active Screening Protocolを作成して行われた。このProtocolは、ICI投与開始前に腫瘍循環器外来を予約。ベースライン(投与開始前)、開始後定期的に、血液学的検査(CK、CK-MB、トロポニンI、BNP、D-dimerなど)、心電図、胸部レントゲン、心エコー検査のフォローアップを行うというもの。

アルツハイマー病治療薬メマンチンの有効性と安全性

 現在、アルツハイマー病に対する薬物治療には5つの選択肢が存在する。コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンによる治療、メマンチン治療およびメマンチンとコリンエステラーゼ阻害薬の併用療法である。最良の治療方法の選択は、ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析によって得られたエビデンスに基づいている。藤田医科大学の松永 慎史氏らは、アルツハイマー病の薬物治療における安全性と有効性に関するメタ解析のエビデンスを用いて、これらの治療法のリスクとベネフィットの分析を行った。Expert Opinion on Drug Safety誌2018年10月号の報告。

50歳以上で増加の加齢黄斑変性、最新レジメンが患者と介助者を救う

 失明の原因第4位である加齢黄斑変性(AMD)。日本人の場合、50歳以上の男性の有病率が高く、なかでもリスクの高い滲出型になりやすいとの報告がある。2018年10月16日にバイエル薬品が主催するプレスセミナー「中途失明を引き起こす疾患・滲出型加齢黄斑変性治療の新しいあり方~日本人患者さんにおける最新エビデンスより~」が開催され、高橋 寛ニ氏(関西医科大学眼科教室主任教授)と塙本 宰氏(小沢眼科内科病院)が登壇し、新たな治療レジメンと地方における治療継続の是非を語った。

ローカルケアセンターの支援プログラム利用患者におけるアリピプラゾール持効性注射剤のアドヒアランス評価

 アリピプラゾール持効性注射剤(LAI)のためのASSUREプログラムのような患者支援プログラムは、統合失調症患者に対しLAIを含む医薬品の使用を支援できるよう考えられている。米国・大塚ファーマシューティカルD&C Inc.のMallik Greene氏らは、ローカルケアセンター(LCC)でのプログラムを利用している患者におけるアリピプラゾールLAIのアドヒアランスを評価するため、検討を行った。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2018年10月16日号の報告。

オラパリブ、新規診断の進行卵巣がんに前例なき効果(SOLO1)/NEJM・ESMO2018

 新規診断された進行卵巣がんのほとんどは、手術とプラチナベース化学療法による標準治療実施後、3年以内に再発する。PARP阻害薬オラパリブの有用性は再発症例に対しては確立されている。しかし、新規診断例の維持治療については十分ではない。そこで、新規診断されたBRCA1/2変異陽性の進行卵巣がんで、プラチナベースの導入治療に完全奏効(CR)または部分奏効(PR)した患者に対する、オラパリブの維持治療の有効性を評価する国際第III相SOLO1試験が行われた。試験の結果は、ミュンヘンでの欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で発表され、同時にN Engl J Med誌2018年10月21日号に掲載された。

コーヒーが酒さを予防する?

 カフェインには血管拡張抑制作用や免疫抑制作用があることが知られている。この作用は酒さのリスクを低下させるが、コーヒーの熱が酒さの紅潮を引き起こす可能性もある。しかし、酒さとコーヒーなどによるカフェイン摂取との関連性については、よくわかっていない。中国・青島大学のSuyun Li氏らは、看護師健康調査II(Nurses' Health Study II:NHS II)のデータを解析し、コーヒーからのカフェイン摂取量が酒さの発症リスクと逆相関していたことを明らかにした。著者は、「今回の結果は、酒さを予防する手段として、カフェインの摂取制限を支持するものではない。カフェインがもたらす作用機序を解明し、他の集団でも同じ結果が観察されるか、酒さのサブタイプでカフェインとの関係性が異なるのかについて、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年10月17日号掲載の報告。

統合失調症と双極性障害における退院後早期の精神科受診と再入院リスクに関する研究

 東京都医学総合研究所の奥村 泰之氏らは、統合失調症もしくは双極性障害の入院患者において、退院後早期の精神科受診が再入院リスクの減少と関連するかについて検討を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2018年10月9日号の報告。  レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。2014年4月~2015年3月に、精神病床へ新規入院した65歳未満の統合失調症または双極性障害患者4万8,579例を対象に、入院の180日前から退院の210日後までフォローアップ調査を行った。主要アウトカムは、退院後180日間(31~210日)での精神病床への再入院とした。

FOLFOXIRI+BV、大腸がん1~2次治療で優越性(TRIBE2)/ESMO2018

 切除不能大腸がんにおいて、1~2次治療でのFOLFOXIRI+ベバシズマブ(BV)の併用療法が、FOLFOX+BV→FOLFIRI+BVの治療シークエンスと比較して良好なアウトカムを示したことが明らかになった。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、イタリア・ピサ大学のChiara Cremolini氏が発表した第III相TRIBE2試験の中間解析結果より。  TRIBE2試験は、切除不能大腸がんの1~2次治療における3剤併用+BVと2剤併用+BVの有効性を比較する非盲検無作為化第III相試験。被験者は、 Arm A:FOLFOX+BV→維持療法として5-FU+BV(PDまで)→FOLFIRI+BV→5-FU+BV(PDまで)

胆道がん1次治療、GEM・CDDP・S-1トリプレットの可能性/ESMO2018

 ゲムシタビン+シスプラチン(GC)は、長年にわたり凌駕されることのない、進行胆道がん1次治療の標準治療である。しかし、ASCO-GI2018で発表された、わが国の第II相試験では、ゲムシタビン+S-1のGCに対する非劣性が示された。ミュンヘンでの欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)では、GC+S-1(GCS)とGCを比較した第III相KHBO-1082-MITSUBA試験の結果が大阪大学の坂井大介氏により発表された。  KHBO-1401-MITSUBA試験は、GCSのGCに対する優越性を検証する多施設オープンラベル比較試験。  

境界性パーソナリティ障害の特性と自殺リスクに対する睡眠の役割

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、自殺リスクや睡眠に関する問題(不眠症や悪夢を含む)と高率に関連している。米国・ミシシッピ州立大学のHilary L. DeShong氏らは、不眠症および/または悪夢を介する自殺リスクに対するBPDの特性の潜在的な間接的影響を評価するため、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2018年10月9日号の報告。  Amazon's Mechanical Turkより参加者を募集し、オンラインで281例の研究を完了した。参加者より、BPD特性、BPD症状、自殺リスク(自殺念慮歴、自殺企図歴)、不眠症、悪夢に関連する苦痛や障害を測定した。

てんかんを正しく診断するために

 てんかんはあらゆる年代で100人に1人程度発症する身近な病気だ。ただし約7割は治療により発作なく日常生活が送れる。つまり、てんかんは決して珍しい病気でも、治療が難しい病気でもない。しかし、てんかん発作に対する誤ったイメージが要因で、適切に診断されないことは多い。適切な診断には、まずさまざまな発作があることを知り、てんかんに対する正しい知識を持つことが重要である。  今回、こうした見落としやすい発作の理解を促す目的で、「てんかんの正しい診断をサポートするために~知っておきたい、てんかん発作のいろいろ~」と題するセミナーが都内にて開かれ、さまざまなてんかん発作の特徴などが語られた(主催:大塚製薬株式会社、ユーシービージャパン株式会社)。

日本人高齢者のうつ病に対する身体活動の影響

 座位行動(sedentary behaviour:SB)を減らし、身体活動(physical activity:PA)を増やすことは、うつ病の減少との関連が示されている。しかし、SBがPAに置き換えられた際の高齢者におけるうつ病の潜在的なベネフィットに関する研究は、あまり行われていなかった。文化学園大学の安永 明智氏らは、日本人高齢者におけるうつ病と、客観的に評価されたSB、軽度PA(LPA)および中等度~高度PA(MVPA)との関連性を評価し、SBをPAに置き換える影響について検討を行った。BMJ Open誌2018年9月25日号の報告。

がん悪液質とグレリン様作用薬

 近年、グレリン様作用薬が、がん患者の悪液質症状の改善・軽減効果を示すことが大規模臨床試験で報告され注目を浴びている。そのような中、がん悪液質とグレリンの関係について、日本臨床栄養学会総会・日本臨床栄養協会総会の第16回大連合大会において、国立がん研究センター東病院の光永 修一氏が発表した。  がん悪液質は「通常の栄養サポートでは完全に回復することが困難で、進行性の機能障害をもたらし、著しい筋組織の減少を特徴とする複合的な代謝機能障害」(EPCRCガイドライン)と定義される。診断については、「(がん患者における)過去6ヵ月間で5%を超える体重減少がある」「BMI 20未満の患者で2%を超える体重減少がある」または「2%を超える体重減少とサルコペニアを認める」という基準が国際的コンセンサスを得ている。

心房細動発症後のがん発症率高い、肺がんは8倍にも

 デンマークの約5万5千人のコホート研究で、心房細動(AF)発症がその後の高いがん発症率に関連し、とくにAF診断後90日以内のがん発症率が高かったことを、デンマーク・Silkeborg Regional HospitalのNicklas Vinter氏らが報告した。Journal of the American Heart Association誌2018年9月4日号に掲載。  本研究は、Danish Diet, Cancer and Health studyにおいてベースライン時にAFおよびがんに罹患していなかった、男性2万6,222人および女性2万8,879人における集団ベースのコホート研究。参加者のAFの発症(Danish National Patient Registry)およびその後のがんの発症(Danish Cancer Registry)を2013年まで追跡した。新規発症したAFを時間依存性曝露としてCox比例ハザードモデルを使用した。

オピオイド治療がん患者の便秘、2週間で5割超(OIC-J)/ESMO2018

 オピオイド誘発性便秘 (OIC)はオピオイド鎮痛治療で頻繁にみられる副作用であるが、その発症頻度を前向きに評価した研究はない。そのような中、オピオイド鎮痛薬治療を行ったがん疼痛患者を対象に、わが国のOICの発症頻度を調査したOIC-J研究が行われ、その結果を群馬県立がんセンターの今井久雄氏らが、ドイツ・ミュンヘンにおける欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で発表した。  OIC-J研究は、多施設共同前向き観察研究。対象は、強オピオイド鎮痛薬治療を受けた20歳以上のがん疼痛患者(登録前の7日間に3回以上の排便あり)である。オピオイド鎮痛薬治療開始時から14日間の登録患者の排便習慣を記録し、OIC発症割合を調査した。主要評価項目はROME IV診断基準によるOIC発症割合。副次評価項目は、Bowel Function Index (BFI、スコア>28.8)、自発的排便回数([spontaneous bowel movement、以下SBM]、<3/週)、および医師診断によるOIC発症割合である。観察期間中の便秘治療は許容されている。

同居家族と産後うつ発症リスクとの関連

 産後うつ病(postpartum depression:PPD)には、多くの心理社会学的および生物学的なリスク因子がある。しかし、同居家族とPPDリスクとの関連性については検討されていなかった。大阪医科大学の本庄 かおり氏らは、日本人女性における同居家族と出産1ヵ月後のPPDリスクとの関連性を調査し、この関連性が、家計収入やパートナーの育児への関与によって影響を受けるかについて検討を行った。Social Science & Medicine誌オンライン版2018年10月2日号の報告。  対象は、日本人女性8万6,490例。データは、2011年に開始された大規模全国コホート研究である「子どもの健康と環境に関する全国調査(Japan Environment and Children's Study:JECS)」より抽出した。主要予測因子は、妊娠第1三半期における同居家族(パートナー、実親[たち]、義親[たち]、子供[たち])とした。

ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H/dMMR大腸がん1LでORR60%(CheckMate-142)/ESMO2018

 MSI-H/dMMの転移を有する大腸がん(mCRC)患者の1次治療として、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法が持続的な治療効果を示したことが明らかになった。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、米国・USC Norris Comprehensive Cancer CenterのHeinz-Josef Lenz氏により第II相CheckMate-142試験の新たな解析結果が発表された。  なお、米国では同試験別コホートからのデータに基づき、化学療法歴のある上記患者対象にニボルマブ単剤療法が2017年8月、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が2018年7月に、米国食品医薬品局(FDA)からそれぞれ承認されている。

アジア人でより有効、進行肺がんへのプラチナ+ペメトレキセド+アテゾリズマブ(IMpower132)/ESMO 2018

 Stage IV非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療におけるペメトレキセドとプラチナ製剤の併用療法、およびペメトレキセドによる維持療法へのPD-L1阻害薬アテゾリズマブの上乗せ効果を検討した第III相IMpower132試験では、アテゾリズマブ併用群で無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことがすでに発表されている(5.2ヵ月 vs.7.6ヵ月、ハザード比[HR]:0.60、95%信頼区間[CI]:0.49~0.72、p<0.0001)。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)では、本試験のサブグループ解析結果が、フランス・エクス=マルセイユ大学のFabrice Barlesi氏により発表された。