医療一般|page:82

日本人統合失調症患者の下剤使用開始と関連する要因は

 抗精神病薬の一般的な副作用の1つに便秘がある。しかし、便秘をターゲットとした研究は、これまで行われていなかった。獨協医科大学の川俣 安史氏らは、同じ統合失調症患者を20年間さかのぼり、下剤使用開始と関連する要因を特定しようと試みた。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年9月12日号の報告。  2021年4月より各病院に通院する統合失調症患者14例を登録した。対象患者の2016、11、06、01年4月1日時点でのすべての処方箋データをレトロスペクティブに収集した。下剤の使用頻度の違いと傾向を特定するため、Bonferroni補正コクランQ検定およびコクラン・アーミテージ検定を用いた。20年にわたる下剤使用開始と関連する要因を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。

膀胱がんリスク、仕事での立位/歩行は座位より5割減~日本人集団

 身体活動と膀胱がんリスクとの関連については、アジア人集団では一貫していない。今回、大阪大学のHang An氏らが日本人の大規模コホートで検討したところ、とくに男性において、レクリエーションスポーツへの参加や仕事での立位/歩行の身体活動が膀胱がんリスクと逆相関していたことが示された。Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年10月6日号に掲載。  本研究は集団ベースの前向きコホート研究で、がん/心血管疾患の既往のない40~79歳の日本人5万374人について自己記入式質問票で身体活動に関する情報を取得し解析した。Cox比例ハザードモデルを用いて、潜在的交絡因子を調整後の膀胱がん発症のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。

高齢者での術後せん妄、原因は血液脳関門の透過性亢進か

 高齢者では、手術後にせん妄が生じ、それが深刻な合併症や苦痛を引き起こすことがあるが、その原因は不明であった。こうした中、新たな研究により、術後せん妄を発症する患者では、物質が脳に入るのを防ぐ細胞の層である血液脳関門の透過性が亢進していることが明らかになった。米デューク大学医学部麻酔学分野のMichael Devinney氏らによるこの研究結果は、「Annals of Neurology」に8月24日掲載された。  Devinney氏は、「この結果により、米国で毎年何百万人もの高齢者に影響を及ぼしている術後せん妄の問題に取り組むための道筋が整った。その意味で、本研究結果は重要だ」と話している。同氏はさらに、「術後に血液脳関門が開かないようにする方法や、関門を通過して脳に到達することができる物質を特定できれば、術後せん妄を予防する治療法の開発につなげることが可能になるかもしれない」と同大学のニュースリリースで述べている。

歯科医院で定期的な口腔メンテナンスを受けている人は歯を失いにくい

 一般歯科医院で歯科衛生士による口腔メンテナンスを受けている人を20年以上追跡した研究から、決められたスケジュール通りに受診している人ほど歯を失いにくいという有意な関連のあることが明らかになった。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野の安達奈穂子氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Dental Hygiene」に8月27日掲載された。  口腔メンテナンス受診率が高いほど歯の喪失が少ないことを示唆する研究結果は、既に複数報告されている。ただし、それらの研究は主として大学病院や歯周病専門歯科という限られた環境で行われた研究の結果であり、大半の地域住民が受診する一般歯科における長期的な歯科受療行動と、歯の喪失との関連については知見が少ない。これを背景として安達氏らは、一般歯科医院の患者データを用いて、以下の遡及的な解析を行った。

筋肉量の多寡にかかわらずタンパク質摂取量が高齢者の全死亡リスクに関連

 日本人高齢者を対象とする研究から、タンパク質の摂取量が多いほど全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが低いという関連が示された。この関連は、筋肉量や血清アルブミンなどの影響を統計学的に調整してもなお有意であり、独立したものだという。東京都済生会中央病院糖尿病・内分泌内科の倉田英明氏(研究時点の所属は慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科)らの研究によるもので、詳細は「BMC geriatrics」に8月9日掲載された。  タンパク質摂取量と健康リスクとの関連については、動脈硬化や腎機能、またはサルコペニア(筋肉量・筋力の低下)、フレイル(要介護予備群)などの観点から研究されてきている。しかし、食文化の違いによるタンパク源の相違などの影響のため、それらの研究結果は一貫性が見られない。また、国内発の知見はいまだ少なく、かつサルコペニアやフレイルリスクを有する高齢者の筋肉量とタンパク質摂取量との関連を検討した研究が主体であって、地域在住一般高齢者の死亡リスクとの関連は明らかになっていない。

HIVの流行終結を目指す取り組みとは

 HIV感染症は、医療の進歩により、もはや死に至る病気ではなくなった。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、2030年までにHIV流行を終結する目標を発表しており、HIV流行終結に向けた対策は世界的に推進されている。一方、日本においては、HIV/エイズの適切な予防・検査・治療の推進に加え、誤解の解消と正しい情報の提供が喫緊の課題とされている。2023年10月5日、「2030年までのHIV流行の終結に向けた道筋とは」をテーマとした、ギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーが開催された。

日本における軽度認知障害とアルツハイマー病の疾病負荷

 軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病の予防や管理対策の開発には正確な疫学データが必要とされるが、日本ではこのようなデータが不足している。九州大学の福田 治久氏らは、日本における新規発症のMCIまたはアルツハイマー病患者の疾病負荷と進行について調査を行い、急速に高齢化が進む国においてMCIやアルツハイマー病は優先度の高い疾患であり、本結果は日本におけるこれらの疾病負荷や進行について重要な初の考察を提供するものである、とまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年9月9日号の報告。

月1回のノンアル飲料提供で飲酒量は減らせるか?/筑波大

 本邦では、男性40g/日以上、女性20g/日以上の純アルコール摂取量を生活習慣病のリスクを上昇させる飲酒量と定義している。しかし、この飲酒量で飲酒する人の割合を2019年と2010年で比較すると、男性では変化がなく、女性では有意に増加したと報告されている。そのため、さらなる対策が求められている。そこで、吉本 尚氏(筑波大学医学医療系 准教授)らの研究グループは、アルコール依存症の患者を除いた週4回以上の飲酒をする20歳以上の成人を対象として、ノンアルコール飲料の提供によりアルコール摂取量を減らすことが可能か検討した。その結果、ノンアルコール飲料の提供によりアルコール摂取量が減少し、提供期間終了後8週間においてもその効果が持続した。本研究結果は、BMC Medicine誌2023年10月2日号に掲載された。

糖尿病患者の下肢切断に関連する因子を特定

 糖尿病と新規診断された患者では、喫煙や身体活動量の少なさに加えて、高齢、男性、離婚などが下肢切断(lower-limb amputation;LLA)の潜在的リスク因子である可能性が明らかになった。オレブロ大学(スウェーデン)のStefan Jansson氏らが行った研究の結果であり、詳細は欧州糖尿病学会年次総会(EASD2023、10月2~6日、ドイツ・ハンブルク)で発表される予定。  糖尿病患者はLLAリスクが高いことが知られているが、そのリスク因子は十分に明らかになっているとは言えない。これには、LLAが糖尿病の主徴である高血糖だけでなく、合併症である血管障害、神経障害、易感染や、年齢、罹病期間、喫煙習慣、居住環境(同居者の有無)、医療環境など、さまざまな因子が関与して発症・進行することが一因として挙げられる。これを背景としてJansson氏らは、検討対象を糖尿病と新たに診断された集団に絞り込み、人口統計学的因子、社会経済的因子、生活習慣関連因子、および医療介入時の臨床評価指標を考慮して、LLAリスクを検討した。

超加工食品に含まれる人工甘味料がうつ病のリスクを高める?

 調理済みで加工度の高い食べ物や飲み物は、手軽で、安く、おいしいかもしれない。しかし新たな研究の結果、高度に加工された「超加工食品」が、うつ病のリスクと関連していることが示唆された。超加工食品を大量に摂取する人は、うつ病のリスクが約50%高くなる可能性があり、特に人工甘味料との関連が大きいという。米マサチューセッツ総合病院の消化器科副医長で、米ハーバード大学医学大学院教授のAndrew Chan氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に9月20日掲載された。

感染対策の体温報告や出張制限は「不当な扱い」と捉えられがち

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に職場で実施された対策の中で、毎日の体温測定の結果報告や出張制限などは、労働者から「不当な扱い」と捉えられがちだったことが分かった。産業医科大学第2内科の塚原慧太氏、同大学環境疫学研究室の藤野善久氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に7月7日掲載された。著者らは、「パンデミックが長期化して職場では対策疲れが生じている。Withコロナとなった今、労働者にあまり負担をかけずに持続可能な感染対策を策定する必要があり、本研究の結果を生かせるのではないか」と語っている。

アセトアミノフェンの処方拡大へ、心不全などの禁忌解除で添付文書改訂/厚労省

 アセトアミノフェン含有製剤の添付文書について、2023年10月12日、厚生労働省が改訂を指示し、「重篤な腎障害のある患者」「重篤な心機能不全のある患者」「消化性潰瘍のある患者」「重篤な血液の異常のある患者」及び「アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者」の5集団に対する禁忌解除を行った。添付文書における禁忌への記載が、成書やガイドラインで推奨される適切な薬物治療の妨げになっていたことから、今年3月に日本運動器疼痛学会が禁忌解除の要望を厚生労働省に提出していた。

双極性障害のリスク基準を満たす患者の長期的な発症率

 双極性障害の発症を予測することができれば、予防的治療が容易になる可能性がある。リスク評価尺度の中でもBipolar At-Risk(BAR)は、臨床コホートにおいて最初の1年間での双極性障害発症を予測するうえで有用であることが示唆されているが、BARが長期的な発症と関連しているかは、明らかになっていない。オーストラリア・メルボルン大学のAswin Ratheesh氏らは、10~13年間のフォローアップ期間を通じて、BARと双極性障害発症との関連を評価した。その結果、メンタルヘルスに問題を抱えている人のうち、BAR基準を満たす人は、そうでない人と比較し、10年以上にわたり双極性障害の発症リスクが有意に高いことが確認された。JAMA Network Open誌2023年9月5日号の報告。

高血圧治療補助アプリで8mmHgも降圧、治療効果のある患者とは

 CureApp HT高血圧治療補助アプリ(以下、治療アプリ)が保険収載、処方が開始してから1年が経過した。現在までの治療効果について、株式会社CureAppが「スマート降圧療法RWD発表記者会見」において、全国の医療機関で処方された治療アプリに入力された血圧データの解析結果を説明した。  本データ解析によると、全体集団における12週後の収縮期血圧の変化は起床時では8.8mmHg、就寝前では8.5mmHgの低下がみられた。これについて同社取締役の谷川 朋幸氏は「治験で検証されていなかった65歳以上の患者を含む、幅広い患者集団において薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによるスマート降圧療法の効果が示された」とコメント。また、薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによる実臨床での降圧データの公開は世界初である。

減量目的のGLP-1作動薬、消化器有害事象リスクが増加か/JAMA

 GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として用いられるが、体重減少の目的にも用いられている。糖尿病患者において消化器有害事象のリスクが増加していることが報告されており、2023年9月22日に米国食品医薬品局(FDA)よりセマグルチドについて、腸閉塞の注意喚起が追加された。しかし、GLP-1受容体作動薬の体重減少効果を検討した臨床試験はサンプル数が少なく、追跡期間が短いため、これらの有害事象を収集する試験デザインにはなっていない。

多くの人は受動喫煙に気が付いていない

 自分は副流煙(他人が吸っているタバコの燃焼部分から立ち上る煙)にさらされていないと思っている人の多くが、実際には副流煙にさらされている(受動喫煙)ことが、米国成人を対象に行われた新たな研究で明らかになった。血液検査では、調査対象者の半数以上が過去数日内に副流煙にさらされていたことが示されたにもかかわらず、大半はその自覚がなかったのだ。米フロリダ大学College of Public Health and Health ProfessionsのRuixuan Wang氏らによるこの研究の詳細は「Nicotine & Tobacco Research」に8月30日掲載された。

腫瘍径の小さいER+/HER2-乳がんへの術後ホルモン療法は必要か

 マンモグラフィ検査の普及により、腫瘍径の小さな乳がんの検出が増加した。エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)のT1a/bN0M0乳がんにおける術後内分泌療法(ET)の必要性は明らかでない。広島大学の笹田 伸介氏らは同患者における術後ETの有効性を評価、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月9日号に報告した。  本研究では、2008年1月~2012年12月にJCOG乳がん研究グループ42施設で手術を受けたER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者のデータを後ろ向きに収集した。術前補助全身療法を受けた患者とBRCA陽性患者は除外された。主要評価項目は遠隔転移の累積発生率で、両側検定が用いられた。

クロザピン治療中の治療抵抗性統合失調症の喫煙患者、再発リスクにバルプロ酸併用が影響

 喫煙習慣とバルプロ酸(VPA)併用がクロザピンによる維持療法の臨床アウトカムに及ぼす影響を調査した研究は、これまでなかった。岡山県精神科医療センターの塚原 優氏らは、クロザピンを投与している治療抵抗性統合失調症患者の退院1年後の再発に対する喫煙習慣とVPA併用の影響を調査するため、本研究を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年9月8日号の報告。  日本国内の2つの3次精神科病院において入院中にクロザピン投与を開始し、2012年4月~2022年1月に退院した治療抵抗性統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。再発の定義は、退院1年間の精神疾患増悪による再入院とした。喫煙習慣とVPA併用が再発に及ぼす影響の分析には、多変量Cox比例ハザード回帰分析を用いた。喫煙習慣とVPA併用との間の潜在的な相互作用を調査するため、サブグループ解析を行った。

NSAIDなどを服用している高齢者、運転に注意

 認知機能が正常な高齢者の服用薬と、長期にわたる運転パフォーマンスとの関連を調査した前向きコホート研究の結果、抗うつ薬や睡眠導入薬、NSAIDsなどを服用していた高齢者は、非服用者と比べて時間の経過とともに運転パフォーマンスが有意に低下していたことを、米国・ワシントン大学のDavid B. Carr氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月29日号掲載の報告。  米国運輸省と米国道路交通安全局は、90種類以上の薬剤が高齢ドライバーの自動車事故と関連していることを報告している。しかし、自動車事故リスクの上昇が薬剤の副作用によるものなのか、治療中の疾患によるものなのか、ほかの薬剤や併存疾患によるものなのかを判断することは難しい。そこで研究グループは、認知機能が正常な高齢者において、特定の薬剤が路上試験における運転パフォーマンスと関連しているかどうかを前向きに調査した。

発症後の狂犬病を治療できる薬の開発は近い?

 狂犬病では、原因である狂犬病ウイルス(rabies virus;RABV)が中枢神経系(CNS)に侵入すると、ほとんどの場合死に至る。しかし、米ユニフォームド・サービス大学免疫学教授のBrian Schaefer氏らが、発症後の狂犬病でさえも治療可能な、効果的で簡単な治療法を開発したとする研究結果を、「EMBO Molecular Medicine」に9月28日発表した。マウスを用いた実験で、モノクローナル抗体F11により、致死量のRABVからマウスを守れることが示されたという。Schaefer氏は、「これは、狂犬病に対する初めての実用的な治療法と言えるだろう」と話している。