医療一般|page:85

豆乳が認知症リスク低下と関連

 これまでの研究において、ミルク(milk)の摂取は認知機能低下を予防可能であるかが調査されてきた。しかし、その結果は一貫していない。その理由として、これまで研究の多くは、ミルクそれぞれの役割を無視していることが重要なポイントであると考えられる。そこで、中国・中山大学のZhenhong Deng氏らは、各種ミルクの摂取と認知症リスクとの関連を調査した。その結果、豆乳(soy milk)の摂取と認知症(とくに非血管性認知症)リスク低下との関連が認められた。Clinical Nutrition誌オンライン版2023年8月31日号の報告。

HER3-DXd、EGFR-TKIおよび化療耐性のEGFR陽性NSCLCに良好な抗腫瘍活性(HERTHENA-Lung01)/WCLC2023

 抗HER3抗体薬物複合体patritumab deruxtecan(HER3-DXd)のEGFR-TKI、プラチナ化学療法耐性のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する有効性が発表された。  EGFR‐TKIはEGFR変異のある進行期NSCLCの標準治療であるが、最終的に耐性が発現する。EGFR‐TKI耐性後はプラチナベースの化学療法が用いられるが、その効果は限定的である。  HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)であるHER3-DXdは、第I相結果でEGFR‐TKI に対する多様な耐性機構を持つEGFR変異陽性NSCLC において、管理可能な安全性と抗腫瘍活性が示されている。

夜型生活は糖尿病リスクを高める

 生活パターンが夜型の女性は、糖尿病になりやすいことを示すデータが報告された。生活習慣関連リスク因子の影響を調整しても、有意な差が認められるという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のSina Kianersi氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に9月12日掲載された。  この研究は、米国で行われている看護師対象研究(Nurses’ Health Study II)のデータを用いて行われた。2009年時点で、がん、心血管疾患、糖尿病の既往歴のなかった45~62歳の女性看護師6万3,676人を2017年まで追跡。アンケートで把握したクロノタイプは、35%が朝型、11%が夜型で、その他は朝型でも夜型でもないと判定されていた。

ディズニープリンセスが子どものセルフイメージに与える影響は?

 ディズニープリンセスが子どものセルフイメージ(自己認識)に与える影響について心配する親は少なくないかもしれない。しかし、米カリフォルニア大学デービス校のJane Shawcroft氏らによる新たな研究で、“Let it go(何もしないでおく)”で良いとする結果が示された。この研究結果は、「Psychology of Popular Media」に8月24日掲載された。  Shawcroft氏は、「子ども向けメディアに登場するキャラクターの約60%は男性や少年だ。ディズニープリンセスは、おそらく女性や少女のキャラクターとその物語に焦点を当てた子ども向けのメディアの中で、特によく知られているものの一つだろう」と話す。そして、「ディズニープリンセスは、体型がやせ過ぎている点やジェンダー・ステレオタイプが強調され過ぎている点がしばしば批判の対象になる。しかし、われわれはメディアを取り巻く状況をより幅広く考慮した上で、そこに認められる微妙な差異や子どもたちに与える影響について考えたかった」と研究背景について説明する。

放射線療法を受けたがん患者、精神疾患があると生存率が有意に低下

 がん患者に対する放射線療法の実施方法が患者の精神疾患(PD)の有無に影響されることはないが、PDがある患者の全生存率は、PDがない患者に比べて有意に低いとする研究結果が、「Clinical and Translational Radiation Oncology」5月号に掲載された。  ユトレヒト大学医療センター(オランダ)のMax Peters氏らは、matched-pair解析により、PDのあるがん患者とない患者での放射線療法のレジメンと全生存率の違いについて検討した。対象者は、電子患者データベース(EPD)より2015年から2019年の間に一カ所の三次医療機関で放射線療法を受けた患者の中から選出した、PDのあるがん患者88人(PD群)と、がんの種類とステージ、WHO-PS(World Health Organization Performance Status)またはKPS(Karnofsky Performance Status)で評価したパフォーマンスステータス、年齢、性別、放射線療法の前後に受けたがん治療を一致させたPDのない患者88人(対照群)。PD群には、統合失調症スペクトラム障害患者が44人、双極性障害患者が34人、境界性パーソナリティ障害患者が10人含まれていた。対象者の平均年齢(標準偏差)はPD群が61.0(10.6)歳、対照群が63.6(11.3)歳で、がん種は乳がん(27人、30.7%)、肺がん(16人、18.2%)、消化器がん(14人、15.9%)、頭頸部がん(10人、11.4%)、婦人科がん(6人、6.8%)、泌尿器がん(5人、5.7%)、脳腫瘍(4人、4.5%)、その他のがん(6人、6.8%)であった。

カボザンチニブ+アテゾリズマブ、去勢抵抗性前立腺がんのPFSを有意に改善/武田

 武田薬品工業は、既治療の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対し、カボザンチニブ(商品名:カボメティクス)とアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の併用療法を評価する第III相CONTACT-02試験において、同併用療法が主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したと発表した。  CONTACT-02試験は、1種類の新規ホルモン療法による1回の前治療歴があるmCRPCを対象に、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用投与を、2剤目の新規ホルモン療法(アビラテロン+プレドニゾンまたはエンザルタミド)と比較検討する国際共同臨床第III相ランダム化非盲検比較対照試験。主要評価項目はPFSおよびOSである。

小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法の5年生存率(IMpower133/IMbrella A)

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対するアテゾリズマブ+化学療法の1次治療による5年生存率は12%であると示された。  世界肺癌学会(WCLC2023)で、米国・ジョージタウン大学のStephen V. Liu氏らが発表した、第III相IMpower133試験と第4相IMbrella A試験の統合解析で明らかになった。小細胞肺がんに対する免疫治療の長期生存データが示されたのは初めて。  既報での化学療法単独の5年全生存(OS)率は約2%、OS中央値は約12ヵ月とされる。  IMbrella A試験は、オープンラベル非無作為化多施設長期観察試験。対象は、IMpower133試験におけるアテリズマブ+化学療法(カルボプラチン+エトポシド)群の中で、アテゾリズマブ継続または生存追跡が行われていた患者18例。

労働者の不眠症に対し認知行動療法は有効か?~メタ解析

 不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、第1選択の治療として推奨されているが、労働者の不眠症に対する有効性は、よくわかっていない。東京医科大学の高野 裕太氏らは、労働者の不眠症状のマネジメントにおけるCBT-Iの有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Sleep Medicine Reviews誌オンライン版2023年8月22日号の報告。  3つの電子データベース(PubMed、PsycINFO、Embase)より文献検索を行った。  主な結果は以下のとおり。 ・21件の研究をメタ解析に含めた。 ・全体としてCBT-Iは、対照群と比較し、不眠症状の有意な改善が認められた。

過去30年で50歳未満のがん患者が大幅に増加

 50歳未満のがん患者が世界的に急増しているとの研究結果が報告された。過去30年間で、この年齢層の新規がん患者が世界で79%増加しており、また、若年発症のがんによる死亡者数も28.5%増加したことが明らかになったという。英エディンバラ大学のXue Li氏らによるこの研究の詳細は、「BMJ Oncology」に9月5日掲載された。  研究グループによると、がんは高齢者に多い疾患であるが、1990年代以降、世界の多くの地域で50歳未満のがん患者の数が増加していることが複数の研究で報告されているという。Li氏らは、2019年の世界の疾病負担(Global Burden of Disease;GBD)研究のデータを用いて、若年発症のがんの世界的な疾病負担について検討した。GBD 2019から、204の国と地域における14〜49歳の人での29種類のがんの罹患率や死亡率、障害調整生存年(DALY)、リスク因子に関するデータを抽出し、1990年から2019年の間にこれらがどのように変化したかを推定した。

10代前半男子の喫煙、将来の子どものDNAに悪影響

 10代前半での男児の喫煙は、将来の子どものDNAに悪影響を与え、子どもの喘息、肥満、肺機能低下のリスクを高めることが、新たな研究で明らかにされた。英サウサンプトン大学のNegusse Kitaba氏らによるこの研究の詳細は、「Clinical Epigenetics」に8月31日掲載された。  この研究では、RHINESSA試験参加者875人(7〜50歳、男性457人、女性418人)を対象にエピゲノムワイド関連研究(EWAS)を実施してDNAメチル化パターンを調べ、参加者の母親が妊娠する前の父親の喫煙との関連を検討した。参加者のうちの328人では、父親が母親の妊娠前(参加者の出生年より2年以上前)に喫煙を開始しており、うち64人では、父親の喫煙開始年齢が15歳未満だった。なお、DNA分子にメチル基が付加されるDNAメチル化は、DNAの配列を変更せずに遺伝子の機能を制御するプロセス(エピジェネティクス)の主要素であり、主に遺伝子の発現を抑制する役割を果たす。

糖尿病教育入院後の血糖管理に性格特性の一部が独立して関連

 糖尿病教育入院患者を対象として、性格特性と退院後の血糖コントロール状況との関連を検討した結果が報告された。ビッグファイブ理論に基づく5因子のうち、神経症傾向のスコアと、退院3カ月後、6カ月後のHbA1c低下幅との間に、独立した負の相関が見られたという。宮崎大学医学部血液・糖尿病・内分泌内科の内田泰介氏、上野浩晶氏らの研究によるもので、詳細は「Metabolism Open」6月発行号に掲載された。  糖尿病は患者の自己管理が治療(血糖管理)の良し悪しを大きく左右する疾患であり、その自己管理をどの程度徹底できるかは、個々の患者の性格特性によってある程度左右される可能性が考えられる。ただし、過去に行われたこのトピックに関する研究結果は一貫しておらず、議論の余地が残されている。また、それらの研究は主として外来患者を対象に実施されてきている。

新クラスの血友病A治療薬「オルツビーオ」製造販売承認を取得/サノフィ

 サノフィは2023年9月25日付のプレスリリースで、高い血液凝固第VIII因子活性を長く維持するファースト・イン・クラスの高活性維持型血液凝固第VIII因子製剤オルツビーオ(一般名:エフアネソクトコグ アルファ[遺伝子組換え])の製造販売承認を取得したことを発表した。  血友病Aは生涯続く希少疾患で、血液凝固因子の欠乏により血液が凝固する機能が損なわれ、関節における過度の出血や自然出血により関節障害や慢性疼痛が現れ、生活の質(QOL)が損なわれる恐れがある。血友病Aの重症度は血液中の凝固因子活性レベルで評価され、出血リスクと血液凝固因子活性レベルは逆相関の関係にある。

日本人NSCLCのオシメルチニブ早期減量は脳転移の発生/進行リスク

 肺がんは初診時に脳転移が発生していることも多く、非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち20~40%は治療経過中に脳転移が発生するとされている1,2)。EGFR変異はNSCLC患者はEGFR変異があると脳転移のリスクが上昇するとされており、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の脳転移制御に対する役割が注目されている。そこで、日本医科大学付属病院の戸塚 猛大氏らの研究グループは、オシメルチニブの早期減量が脳転移に及ぼす影響を検討した。その結果、オシメルチニブの早期減量は脳転移の発生または進行のリスクであり、治療開始前に脳転移がある患者、75歳以下の患者でリスクが高かった。本研究結果は、Cancer Medicine誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。

COVID-19罹患後に高血圧リスク上昇の懸念

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患後の人は、高血圧の新規発症リスクが高いことを示唆するデータが報告された。そのリスクの程度は、インフルエンザ感染後に認められる高血圧発症リスクよりも高いという。米アルバート・アインシュタイン医科大学モンテフィオーレ医療センターのTim Duong氏らの研究によるもので、詳細は「Hypertension」に8月21日掲載された。  高血圧患者はCOVID-19罹患時の重症化リスクが高い傾向のあることが知られているが、その反対にCOVID-19罹患が高血圧発症リスクを押し上げるのか否かは、従来明らかでなかった。論文の上席著者であるDuong氏によると、「COVID-19罹患後に高血圧リスクが上昇することを示したのは、恐らく本研究が初めて」という。

平熱は人によってさまざま

 人間の「平熱」は37.0℃だと長らく考えられてきた。しかし、新たな研究で、体温には個人差があり、誰にでも当てはまるような平均体温というものは実際には存在しないことが明らかになった。人間の体温は、年齢、性別、身長や体重によって異なり、また1日の中でも時間帯によって変動することも示されたという。米スタンフォード大学医学部教授のJulie Parsonnet氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に9月5日掲載された。

がんに関する質問へのAIの回答は信頼できるのか

 人工知能(AI)は、特にがん治療に関しては、必ずしも正確な健康情報を提供するわけではない可能性が、2件の研究で示唆された。これらの研究は、がん治療に関するさまざまな質問に対してAIチャットボットが提供する回答の質を検討したもので、両研究とも「JAMA Oncology」に8月24日掲載された。  1件目の研究は、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院および米ハーバード大学ダナファーバーがん研究所のDanielle Bitterman氏らが実施したもので、2022年11月に発表されたChatGPTに焦点を当てたもの。研究グループは、ゼロショットプロンプティング(あらかじめ情報を伝えずに直接質問を提示すること)のテンプレートを4種類作成し、これを用いて、がん(乳がん、前立腺がん、肺がん)の診断に関する26種類の記述(がん種、がんの進展度などの情報を伴う場合と伴わない場合あり)に対して、計104個の質問を作成した。ChatGPTは2021年9月までの情報に基づくものであるため、ChatGPTの出した回答は、2021年の全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)ガイドラインと照合して、「治療法はいくつ提示されたか」などの5つの基準で評価し、4人のがん専門医のうちの3人の評価が一致した場合を、ガイドラインとChatGPTによる評価が一致したと見なした。

統合失調症患者における10年間の心血管疾患リスク

 心血管疾患(CVD)は、統合失調症患者の最も頻度の高い死亡原因の1つである。トルコ・Kahta State HospitalのYasar Kapici氏らは、統合失調症患者における10年間のCVDリスクと臨床症状との関連を調査した。その結果、統合失調症患者の罹病期間、BMI、陰性症状の重症度はCVDのリスク因子である可能性が示唆された。Noro Psikiyatri Arsivi誌2023年1月13日号の報告。  対象は、統合失調症と診断された患者208例。統合失調症の症状および重症度の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。10年後のCVDリスクの算出には、QRISK3モデルを用いた。

通院時間増で遺伝子異常にマッチした治験参加率が低下/国立がん研究センター

 病院までの移動時間によって、包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)検査後の遺伝子異常にマッチした治験参加率に差が出るという。国立がん研究センター中央病院 先端医療科の上原 悠治氏、小山 隆文氏らによる研究結果が、JAMA Network Open誌2023年9月15日号に掲載された。  研究者らは、病院(国立がん研究センター中央病院)までの移動時間または距離が、CGP検査後の遺伝子異常にマッチした治験参加率と相関するかを評価する、後ろ向きコホート研究を行った。

強迫症併発双極性障害に対する補助療法、アリピプラゾールvs.リスペリドン

 強迫症は、慢性的な強迫症状の増減を伴う精神疾患であり、双極性障害に併発した強迫症の治療については、依然として困難である。イラン・Babol University of Medical SciencesのFaezeh Khorshidian氏らは、強迫症を併発する双極性障害患者の躁、うつ、強迫症の治療において、バルプロ酸ナトリウムの補助療法としてのリスペリドンおよびアリピプラゾールの安全性および有効性を比較するため、本研究を実施した。その結果、強迫症併発双極性障害に対するアリピプラゾールまたはリスペリドン補助療法は、どちらも効果的であり、生命を脅かす重篤な副作用は認められず、とくにアリピプラゾールは、リスペリドンよりも効果的な薬剤である可能性が示唆された。Health Science Reports誌2023年8月27日号の報告。

精神的苦痛の大きい白斑患者の特徴

 米国・Incyte CorporationのKristen Bibeau氏らが17ヵ国の白斑患者を対象に、白斑とQOL、メンタルヘルスとの関連性を調べる定性的研究を行った。その結果、世界的に白斑患者は、感情的幸福感(emotional well-being)、日常生活、心理社会的健康に大きな影響を受けていることが示された。その負荷は体表面積(BSA)5%超の病変を有する患者、肌の色が濃い患者、顔や手に病変がある患者で最も大きかった。また、本研究から、患者が振る舞いを変えたこと、明らかな不満を表出していたこと、うつ病と一致する症状を有していたことが示唆され、著者らは、これらが過小診断されている可能性があるとしている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年8月30日号掲載の報告。