ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:33

デュアルチャンバー型リードレスペースメーカー、安全性を確認/NEJM

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのReinoud E. Knops氏ら「Aveir DR i2i試験」グループは、デュアルチャンバー型リードレスペースメーカーシステムが安全性の主要エンドポイントを達成し、移植後3ヵ月間、適切な心房ペーシングと確実な房室同期が得られたことを報告した。シングルチャンバー型リードレスペースメーカーでは心房ペーシングや確実な房室同期が得られないが、右心房と右心室にそれぞれデバイスを経皮的に植え込むデュアルチャンバー型リードレスペースメーカーシステムは、より幅広い適応症の治療選択肢となることが期待されていた。NEJM誌オンライン版2023年5月20日号掲載の報告。

せっけん手洗いで、低中所得国の急性呼吸器感染症が減少/Lancet

 低中所得国において、せっけんによる手洗い励行の介入は急性呼吸器感染症(ARI)を減少可能であることが示された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のIan Ross氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。ARIは、世界的に罹患および死亡の主な原因で、ARIによる死亡の83%は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以前の低中所得国で発生していたという。結果を踏まえて著者は、「低中所得国においてせっけんによる手洗いはARIによる大負荷を防ぐのに役立つと考えられる」とまとめている。Lancet誌2023年5月20日号掲載の報告。

小児喘息の罹患率や症状、居住環境が影響/JAMA

 米国都市部の貧困地域に居住する子供たちにおける、不釣り合いに高い喘息罹患率には、構造的人種主義が関与しているとされる。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のCraig Evan Pollack氏らは、MAP研究において、住宅券(housing voucher)と低貧困地域への移住支援を提供する住宅移動プログラムへの参加が、小児の喘息罹患率や症状日数の低下をもたらすことを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年5月16日号で報告された。  MAP研究は、2016~20年に家族がBaltimore Regional Housing Partnership(BRHP)の住宅移動プログラムに参加した、持続型喘息を有する5~17歳の小児123例を対象とする前向きコホート研究である(米国国立環境健康科学研究所[NIEHS]の助成を受けた)。

女性の尋常性ざ瘡、スピロノラクトンが有効/BMJ

 尋常性ざ瘡の女性患者の治療において、カリウム保持性利尿薬スピロノラクトンはプラセボと比較して、12週時の尋常性ざ瘡特異的QoL(Acne-QoL)の症状スコアが良好で、24週時にはさらなる改善が認められ、標準的な経口抗菌薬の代替治療として有用な可能性があることが、英国・サウサンプトン大学のMiriam Santer氏らが実施した「SAFA試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年5月16日号に掲載された。  SAFAは、イングランドおよびウェールズの10施設で実施された実践的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年6月~2021年8月の期間に参加者の募集が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。

心不全の入院後30日死亡率、国の経済レベルで3~5倍/JAMA

 世界40ヵ国の心不全(HF)患者2万3,341例を登録したG-CHFレジストリ研究の結果、HFの病因、治療、転帰には国の経済レベルによって差があることを、カナダ・マックマスター大学のPhilip Joseph氏らG-CHF Investigatorsが報告した。HFに関する疫学研究の多くは高所得国で実施されており、中・低所得国での比較可能なデータは限られていた。著者は、「今回のデータは、世界的にHFの予防と治療の改善に取り組むうえで有用と考えられる」とまとめている。JAMA誌2023年5月16日号掲載の報告。

再発急性扁桃炎の咽頭痛への有効性、摘出術vs.保存的治療/Lancet

 成人の再発性急性扁桃炎に対する扁桃腺摘出術は、保存的治療と比較して臨床的に有効であり、費用対効果も優れることが、英国・ニューカッスル大学のJanet A. Wilson氏らが同国の国民保健サービス(NHS)国立健康研究所(NIHR)からの委託を受け、英国内27施設で実施した実用的多施設共同無作為化非盲検比較試験「NATTINA試験」の結果で示された。扁桃腺摘出術は、成人の急性扁桃炎患者に一般的に行われているが(英国では年間約1万6,000件)、エビデンスは十分でない。また、扁桃腺摘出術は減少しているが、半面で急性扁桃腺炎の合併症による成人の入院が増加している現状があった。Lancet誌オンライン版2023年5月17日号掲載の報告。

白内障手術の有効性・安全性、両眼同時vs.片目ずつ/Lancet

 高齢者の白内障手術において、両眼同時手術(immediate sequential bilateral cataract surgery:ISBCS)は片眼ずつを別の日に行う従来の待機的手術(delayed sequential bilateral cataract surgery:DSBCS)との比較において、有効性は非劣性、安全性は同等であり、費用対効果は優れることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのLindsay Spekreijse氏らによる多施設共同無作為化非盲検非劣性試験「bilateral cataract surgery in the Netherlands study:BICAT-NL試験」の結果で示された。著者は、「厳格な適格基準を適用すれば、国家のコストは年間2,740万ユーロ(3,450万米ドル)削減できる可能性があり、ISBCSが支持される」とまとめている。高齢化が進む中、将来、白内障治療を確実に受けられるようにするためには、効率性の改善が必要とされていた。Lancet誌オンライン版2023年5月15日号掲載の報告。

中等~重度RAへのperesolimab、疾患活動性スコアを改善/NEJM

 中等度~重度の関節リウマチ(RA)患者を対象とした第IIa相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、peresolimabの有効性が示されたことを、米国・イーライリリーのJay Tuttle氏らが報告した。peresolimabは、内因性プログラム細胞死1(PD-1)阻害経路を刺激するようにデザインされたヒト化IgG1モノクローナル抗体である。この経路の刺激は、自己免疫疾患または自己炎症性疾患の新たな治療アプローチとなる可能性がある。今回の結果は、PD-1受容体の刺激がRA治療に有効であることを示唆するエビデンスを提供するものであり、著者は「RAに対するperesolimabの有効性と安全性を検証する、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2023年5月18日号掲載の報告。

IPF標準治療へのziritaxestat追加、努力肺活量への影響は?/JAMA

 特発性肺線維症(IPF)でピルフェニドンまたはニンテダニブの標準治療を受けている患者、あるいは標準治療を受けていない患者において、開発中の新規オートタキシン阻害薬ziritaxestatの追加は、プラセボとの比較で臨床アウトカムを改善しなかったことが、2つの第III相無作為化試験で示された。米国・南カリフォルニア大学のToby M.Maher氏らが26ヵ国で行った「ISABELA 1試験」と「ISABELA 2試験」の結果で、両試験ともにデータ・安全性委員会の判定で早期に終了となった。IPFについては効果的で忍容性良好な治療の開発が待ち望まれている。JAMA誌2023年5月9日号掲載の報告。

分娩後異常出血、ドレープによる早期検出と一連の初期治療が有効/NEJM

 分娩後異常出血について、調整後採血ドレープによる早期検出と、子宮マッサージ、オキシトシンやトラネキサム酸投与といった治療バンドルにより、重度分娩後異常出血や出血による開腹手術または母体死亡の複合リスクの低下に結び付くことが示された。世界保健機関(WHO)のIoannis Gallos氏らが、ケニア、ナイジェリアなど80の病院を対象に行った国際クラスター無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年5月9日号掲載の報告。  研究グループは、経膣分娩を行った女性を対象に、分娩後異常出血に関する多種の介入を評価した。介入は、分娩後異常出血の早期検出を目的とした、調整後採血ドレープと初期バンドル治療(子宮マッサージ、オキシトシン、トラネキサム酸、静脈内輸液、検査、エスカレーション)で、介入群の病院に対しては実施戦略によるサポートを行った。対照群の病院では、通常ケアが行われた。

進行腎細胞がん1次治療、カボザンチニブ+NIVO+IPIがPFS改善(COSMIC-313)/NEJM

 予後予測分類が中リスクまたは高リスクで未治療の進行腎細胞がん患者において、チロシンキナーゼ阻害薬カボザンチニブとニボルマブ+イピリムマブの併用療法はニボルマブ+イピリムマブと比較して、1年時の無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したが、Grade 3/4の有害事象の頻度は高かったことが、米国・ハーバード大学医学大学院のToni K. Choueiri氏らが実施した「COSMIC-313試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年5月11日号で報告された。  COSMIC-313試験は、北米、欧州、南米、アジアなどの諸国の施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年6月~2021年3月の期間に患者の無作為割り付けが行われた(米国・Exelixisの助成を受けた)。

膵頭十二指腸切除後の手術部位感染予防、TAZ/PIPCが有用/JAMA

 適応症を問わず、開腹による膵頭十二指腸切除術後の手術部位感染(SSI)の予防において、セフォキシチン(国内販売中止)と比較して、広域スペクトラム抗菌薬ピペラシリン・タゾバクタムは、術後30日の時点でのSSIの発生率を有意に抑制し、術後の敗血症や膵液瘻の発生頻度も低いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのMichael I. D'Angelica氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年5月9日号に掲載された。  本研究は、レジストリ連携の実践的な非盲検多施設無作為化第III相試験であり、2017年11月~2021年8月の期間に、米国とカナダの26施設(外科医86人)で患者の登録が行われた(米国NIH/NCIがんセンター研究支援助成などの助成を受けた)。

進行CLLの1次治療、ベネトクラクス併用療法vs.免疫化学療法/NEJM

 進行慢性リンパ性白血病(CLL)で全身状態が良好な患者(すなわち併存病態の負担が少ない患者:fit patient)の1次治療として、ベネトクラクス+抗CD20抗体オビヌツズマブの併用療法は、イブルチニブ併用の有無にかかわらず、免疫化学療法よりも優れることが、ドイツ・ケルン大学のBarbara Eichhorst氏らによる第III相非盲検無作為化試験で示された。これまでに、同患者への1次治療としてのベネトクラクスと抗CD20抗体の併用について評価した無作為化試験は行われていなかった。NEJM誌2023年5月11日号掲載の報告。

1~3歳のピーナッツアレルギー児、パッチ療法の有用性を検証/NEJM

 ピーナッツアレルギーの1~3歳児において、12ヵ月間にわたるピーナッツパッチを用いた経皮免疫療法はプラセボと比べて、脱感作の児の増加、症状を引き起こすピーナッツ量の増量という点で優れていたことが示された。米国・コロラド大学のMatthew Greenhawt氏らが第III相の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。ピーナッツアレルギーの4歳未満児に対する承認された治療法はなく、これまでピーナッツアレルギー幼児へのピーナッツパッチによる経皮免疫療法の有効性と安全性は確認されていなかった。NEJM誌2023年5月11日号掲載の報告。

医療者の不足する地域は死亡率が高い/BMJ

 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ―「すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」(厚生労働省)―を2030年までに達成するには、健康を促進または改善するさまざまな職業の保健医療人材(Human Resources for Health:HRH)が重要であるが、HRHの不平等は過去30年間で世界的に減少しているものの依然として残っており、全死亡率およびほとんどの死因別死亡率は、医療従事者とくにHIV/AIDS・性感染症、母体・新生児疾患、糖尿病、腎臓病といった、優先疾患におけるいくつかの特定のHRHが限られている国・地域で相対的に高いことが、中国・北京大学のWenxin Yan氏らの調査で示された。著者は、「本結果は、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するために、公平性を重視した医療人材政策の策定、医療財政の拡大、不十分なHRHに関連した死亡を減少するための標的型対策の実施に向けた政治的取り組み強化の重要性を浮き彫りにしている」とまとめている。BMJ誌2023年5月10日号掲載の報告。

既治療大腸がん、FTD/TPIへのベバシズマブ上乗せでOS延長/NEJM

 切除不能な進行・再発大腸がん患者において、トリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)+ベバシズマブ併用療法はFTD/TPI単独療法と比較して、全生存期間(OS)を延長することが確認された。オーストリア・ウィーン医科大学のGerald W. Prager氏らが、13ヵ国87施設で実施された第III相無作為化非盲検実薬対照比較試験「SUNLIGHT試験」の結果を報告した。これまでの第III相試験において、FTD/TPIは転移のある大腸がん患者のOSを延長することが示されていた。また、第II相単群および無作為化試験の予備データから、ベバシズマブにFTD/TPIを追加することで生存期間が延長する可能性が示唆されていた。NEJM誌2023年5月4日号掲載の報告。

閉経後の骨粗鬆症治療薬、69試験のネットワークメタ解析で効果比較/BMJ

 閉経後女性への骨粗鬆症治療薬の大部分にベネフィットがあることが、デンマーク・Bispebjerg and Frederiksberg HospitalのMina Nicole Handel氏らによる69試験・被験者総数8万例超を対象としたシステマティックレビューとメタ解析で明らかにされた。骨形成促進薬はビスホスホネートよりも、ベースラインのリスク指標にかかわらず、臨床的骨折および脊椎骨折の予防に有効であることが示された。著者は、「今回の分析結果は、骨折リスクの高い患者への骨形成促進薬による治療を制限する、臨床的エビデンスはないことを示すものであった」とまとめている。BMJ誌2023年5月2日号掲載の報告。

重症アルコール性肝炎に抗菌薬予防投与は有効か?/JAMA

 重症アルコール性肝炎の入院患者に対する抗菌薬の予防的投与のベネフィットは明らかになってないが、フランス・Lille大学のAlexandre Louvet氏らが292例を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、60日全死因死亡率を改善しないことが示された。著者は、「今回示された結果は、重症アルコール性肝炎で入院した患者の生存改善に対して抗菌薬の予防的投与を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2023年5月9日号掲載の報告。

早期妊娠糖尿病への即時治療、児と母体の予後は?/NEJM

 妊娠20週以前の妊娠糖尿病女性において、即時治療は治療を延期または行わない場合と比較して、新生児の有害なアウトカムの複合の発生をある程度は抑制するものの、妊娠関連高血圧や新生児の除脂肪体重には差がないことが、オーストラリア・ウエスタンシドニー大学のDavid Simmons氏らが実施した「TOBOGM試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年5月5日号で報告された。  TOBOGM試験は、オーストラリア、オーストリア、スウェーデン、インドの17病院が参加した無作為化対照比較試験であり、2017年5月~2022年3月の期間に患者の登録が行われた(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]などの助成を受けた)。

夜間・24時間血圧、死亡リスク予測に有用/Lancet

 先行研究で24時間自由行動下血圧は、診察室血圧よりも包括的な血圧の評価が可能であり、診察室血圧や家庭血圧に比べ健康アウトカムをよりよく予測すると報告されている。英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らは、今回、スペインのレジストリーデータを用いた検討で、とくに夜間の自由行動下血圧は診察室血圧と比較して、全死因死亡や心血管死のリスクに関して有益な情報をもたらすことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月5日号に掲載された。