ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:261

NIH助成の臨床試験、終了後30ヵ月以内の発表は半数以下

米国国立衛生研究所(NIH)の助成を受けた臨床試験が、試験終了後の適切な時期(30ヵ月以内)に査読審査のある生物医学雑誌に発表される割合は46%に過ぎず、試験終了後の追跡期間中央値である51ヵ月が経過しても32%が未発表のままであることが、米国・エール大学のJoseph S Ross氏らの調査で明らかとなった。企業がスポンサーの研究に関する大規模な調査では、臨床試験終了後、数年が経過しても25~50%が未発表のままであることが報告されている。一方、公的基金の出資による試験の公表パターンについてはほとんど知られていないという。BMJ誌2012年1月7日号(オンライン版2012年1月3日号)掲載の報告。

プライマリ・ケア保健師の導入が非伝染性疾患の管理に有効

訓練を受けた地域保健師が、確立されたガイドラインに基づいて行うイランのプライマリ・ケア・システム(「Behvarzシステム」と呼ばれる)は、非伝染性疾患の予防や管理に有効なことが、イラン・テヘラン医科大学のFarshad Farzadfar氏らの調査で示された。イランなどの中所得国では、非伝染性疾患やそのリスク因子が疾病負担の主な要因となっている。非伝染性疾患やそのリスク因子の地域住民レベルにおけるマネジメントが、プライマリ・ケア・システムによって可能か否かに関するエビデンスはほとんどないという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月9日号)掲載の報告。

DVTに対するカテーテル血栓溶解療法、血栓後症候群を抑制

腸骨大腿静脈の急性深部静脈血栓症(DVT)の治療では、低分子量ヘパリンやワルファリンによる標準的な抗凝固療法に血栓溶解薬を用いたカテーテル血栓溶解療法(CDT)を併用すると、標準治療単独に比べ血栓後症候群(PTS)の発生率や開存率が有意に改善することが、ノルウェー・オスロ大学病院のTone Enden氏が行ったCaVenT試験で示された。DVTに対する従来の抗凝固療法は、血栓の拡大や再発の予防には有効だが、血栓そのものは溶解させず、多くの患者がPTSを発症するという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月13日号)掲載の報告。

単純ヘルペスワクチン、HSV-1型とHSV-2型で有効性に違い

単純ヘルペスウイルス(HSV)ワクチンの有効性について、HSV-1型とHSV-2型への有効性に違いがあることが報告された。米国・セントルイス大学のRobert B. Belshe氏らが、両タイプ血清陰性の一般女性8,300例超を対象に、糖蛋白Dを含有するHSV-2サブユニットワクチンの有効性を検討した試験の結果で、HSV-1型の予防には効果が認められたが、HSV-2型の予防に対する有効性は認められなかったという。同ワクチンについての2つの先行研究(HSV抗体陽性と陰性の男女カップル対象、どちらが陽性かは問わない)では、抗体陰性の女性では、性器ヘルペス予防に関してタイプを問わず有効性が認められていた(HSV-1型73%、HSV-2型74%)。一方で、男性と、HSV-1型血清陽性の女性では有効性が認められていなかった。NEJM誌2012年1月5日号掲載報告より。

術後輸血戦略は制限的輸血が妥当

術後輸血戦略について、非制限的に行う輸血(自由輸血)が制限的輸血と比較して、術後の死亡率を低下したり回復を促進はしないことが、股関節手術を受けた心血管リスクの高い高齢患者を対象とした無作為化試験の結果、明らかにされた。また被験者の特性の一つでもあった心血管疾患の院内発生率も抑制できなかったことも示された。術後輸血については、ヘモグロビン閾値が論争の的となっている。そこで米国・ニュージャージー医科歯科大学のJeffrey L. Carson氏らは、より閾値の高い輸血者のほうが術後回復が促進されるかどうかについて検証した。NEJM誌2011年12月29日号(オンライン版2011年12月14日号)掲載報告より。

STEMIの再入院リスク、米国は他の国のおよそ1.5倍

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)による再入院率は米国が最も高く、血行再建術実施のための再入院を除いても、オーストラリアや欧州などに比べ、およそ1.5倍に上ることが明らかにされた。退院30日以内の再入院のリスク因子としては、多枝病変であることが2倍と最も高かった。米国・デューク大学医療センター臨床研究所のRobb D. Kociol氏らが、約5,700人のSTEMI患者について行った事後比較の結果で、JAMA誌2012年1月4日号で発表した。

入院3時間までのトロポニンI検査の実施、急性心筋梗塞の早期診断に貢献の可能性

急性冠症候群(ACS)の疑いのある人に対し、高感度トロポニンI検査や従来型トロポニンI検査は入院後3時間までに行うことが、急性心筋梗塞の早期のルールアウトを容易なものとする可能性があることが報告された。また、入院時と3時間後までの測定値の変化を見ることで急性心筋梗塞の陽性的中率はいずれの方法でも約96%まで上がり、早期診断が可能となることも報告された。ドイツ・ハンブルグ大学心臓病センターのTill Keller氏らが、1,800人超のACSの疑いのある人について行った前向き試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月28日号で発表した。

遅延臍帯クランプにより新生児の鉄欠乏リスクが改善

遅延臍帯クランプは、早期臍帯クランプに比べ生後4ヵ月における鉄欠乏の発生を改善し、新生児貧血を抑制することが、スウェーデン・ホランド病院(ハルムスタード市)のOla Andersson氏らの検討で示された。出生時の臍帯クランプを2~3分遅らせて行うことで、胎盤から新生児への血流が増加する。鉄欠乏性貧血の発生頻度が高い国では、遅延臍帯クランプによって新生児の生後数ヵ月間の鉄の状態が改善することが示されているが、新生児黄疸や新生児心肺障害リスクの増大が示唆され、貧血には至らなくとも鉄の欠乏は幼児の発育不全を引き起こすことが知られている。BMJ誌2011年12月17日号(オンライン版2011年11月15日号)掲載の報告。

スタチンは感染症リスクを低減しない

オランダ・ユトレヒト大学のHester L van den Hoek氏らは、「スタチンは感染症リスクを低減する」との仮説を検証するためのメタ解析を行い、これを支持するエビデンスは得られなかったことを、BMJ誌2011年12月17日号(オンライン版2011年11月29日号)で報告した。スタチンは心血管疾患の予防や治療に広く用いられているが、抗炎症作用や免疫調整作用も有することが知られている。スタチン服用者は感染リスクが低下していることが、いくつかの観察試験で報告されているが、これらの試験のデータはバイアスを完全には排除しきれないという。

フォーリーカテーテルの陣痛誘発効果は、プロスタグランジンE2ゲルと同等

分娩時に子宮頸管の熟化不全がみられる妊婦では、フォーリーカテーテルによる陣痛誘発の効果は、膣内プロスタグランジンE2ゲルと同等だが母子の有害事象は少ない傾向にあることが、オランダ・Groene Hart病院のMarta Jozwiak氏らが行ったPROBAAT試験で示された。現在、欧米では分娩の20~30%で陣痛の誘発が行われている。陣痛誘発妊婦の多くは誘発開始時に子宮頸管熟化不全がみられ、これらの女性は帝王切開のリスクが高い。子宮頸管の熟化には、機械的方法としてフォーリーカテーテルが、薬物療法としてプロスタグランジンE1やE2製剤が使用されるが、有効性や安全性の違いは明らかにされていないという。Lancet誌2011年12月17日号(オンライン版2011年10月25日号)掲載の報告。

植物状態の患者の意識をベッドサイドで検出する新たな脳波検査

植物状態と診断された患者の一部には、健常者と同様の脳波検査(EEG)反応が認められ、意識の存在が示唆されることが、カナダ・Western Ontario大学のDamian Cruse氏らの検討で示された。植物状態と診断された患者は覚醒している時間帯があるが、この間も自己および周囲の環境を意識していないようにみえる。一方、機能的MRI(fMRI)ではこれらの患者の中には意識のある例がいることが示されているが、多くの場合、費用や近接性(accessibility)の問題によりfMRIの使用は難しいに状況にあるという。Lancet誌2011年12月17日号(オンライン版2011年11月10日号)掲載の報告。

高リスクの永続性心房細動患者へのdronedarone投与:PALLAS

カナダ・Hamilton Health SciencesのStuart J. Connolly氏らPALLAS試験グループによる検討の結果、高リスクの永続性心房細動患者に対する抗不整脈薬dronedaroneは、心不全および脳卒中の発生率、心血管系が原因の死亡率を上昇することが示され、「dronedaroneはこれら患者に用いるべきではないことが示された」と結論する報告が発表された。dronedaroneは、間欠性心房細動においては洞調律を回復し入院や死亡を減らすことが認められている。また、心拍数および血圧を下げ、抗アドレナリン作用により心室性不整脈を抑える可能性が示されていたことから、dronedaroneは高リスクの永続性心房細動患者の重大血管イベントを減らすとの仮説を立て試験を行ったのだが、実証はされなかった。NEJM誌2011年12月15日号(オンライン版2011年11月14日号)掲載報告より。

強化スタチン治療中患者に対するナイアシン併用の付加効果は?:AIM-HIGH

アテローム硬化性心血管疾患を有するLDLコレステロール値が70mg/dL未満の患者に対して、スタチン治療に加えてナイアシンを併用投与した結果、HDLコレステロール値とトリグリセリド値は有意に改善されたが、臨床的ベネフィットの増加は認められなかったことが明らかにされた。心血管疾患を有する患者は、スタチン療法でLDL目標値が達成されても心血管リスクは残存する。一方で、シンバスタチンと拡張徐放性ナイアシン併用との検討で、シンバスタチン単独よりも併用投与のほうがHDL値を上げるのに優れることは知られるが、そのような残存リスク低減に優れるかどうかは明らかになっていなかった。報告は、米国・バッファロー大学のWilliam E. Boden氏ら「AIM-HIGH」試験グループの検討によるもので、NEJM誌2011年12月15日号(オンライン版2011年11月15日)にて掲載された。

40歳以上は2.4倍、血液型AB型は2倍など、死産リスクが明らかに:米国SCRN調査

米国で、妊娠診断時に入手した情報と死産との関連を調べた結果、母親が40歳以上だと同リスクは2.4倍、血液型がAB型だとO型に比べ2.0倍であることなどが明らかにされた。人種との関連では、黒人は白人と比べ死産リスクが2.1倍であることなども明らかになった。米国立小児保健発育研究所(NICHD)が死産という重大な公衆衛生問題に取り組むため組織した「The Stillbirth Collaborative Research Network」(SCRN)が、死産を経験した女性約600人についてケースコントロール研究を行い報告したもので、JAMA誌2011年12月14日号で発表した。

死産の原因、人種間差異が明らかに:米国SCRN調査

米国で、妊娠20週以降の死産の原因について調べたところ、産科的合併症が最も多く約29%、次いで胎盤異常が約24%に上ることなどが明らかにされた。米国立小児保健発育研究所(NICHD)が死産という重大な公衆衛生問題に取り組むため組織した「The Stillbirth Collaborative Research Network」(SCRN)が、死産を経験した女性約600人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月14日号で発表した。米国では、死産が妊娠160件につき1件の割合で発生しており、その総数は1年間の乳児死亡数にほぼ匹敵し、死産率は先進諸国と比べると高率で、過去10年間ほぼ横ばいで推移しているという。

影響力のある医学雑誌の名誉著者とゴースト著者の出現率は21%

JAMA(米国医師会雑誌)サーベイ調査専門家のJoseph S Wislar氏らが2008年刊行の主要な医学専門誌6誌の掲載論文について調査した結果、21%で名誉著者およびゴースト著者の存在が認められたことを報告した。名誉著者、ゴースト著者の存在、関連した透明性やアカウンタビリティの欠如は、サイエンス誌、研究者、教育研究機関にとって大きな課題となっている。本論はWislar氏らが、1996年当時と現状とを比較することを目的に行った調査の結果で、BMJ誌2011年12月10日号(オンライン版2011年10月25日号)に掲載された。

小児脱水への急速補液、標準補液以上の臨床ベネフィット認められず

小児胃腸炎に伴う脱水への点滴による水分補給について、急速補液(60mL/kg)が標準補液(20mL/kg)よりも臨床ベネフィットがあるとは認められないことが報告された。急速補液は、エビデンスは不十分だが有効だとして臨床診療に組み込まれており、救急医学の主要な教科書で推奨されている。しかし、リスクが伴う処置であり、最近のアフリカの発熱を呈した小児を対象としたボーラス救急蘇生試験では死亡増大のため試験が早期中止となった。またリスク回避のため事前に電解質測定の必要性が示唆されているが、米国小児救急医療の現場で同測定をルーチンに行っている医師は30%と報告されている。こうしたことから、カナダ・トロント小児科病院のStephen B Freedman氏らは、急速補液が標準補液と比べて臨床的に意義あるアウトカム改善児の増大に寄与するのか評価を行った。BMJ誌2011年12月10日号(オンライン版2011年11月17日号)掲載報告より。

スタチンは治療終了後も長期に効果が持続:HPSの長期追跡結果

長期(5年)のシンバスタチン(商品名:リポバスなど)治療によるLDLコレステロール低下療法は、血管イベントの絶対低下率を改善し、そのベネフィットは治療終了後も少なくとも5年間は新たなリスクをもたらすことなく持続することが、イギリスで実施されたHeart Protection Study(HPS)の長期追跡の結果から明らかとなった。HPSや他の大規模臨床試験の結果により、スタチンは5年間の治療でLDLコレステロールを1mmol/L低下させ、高齢患者や低脂質値患者を含む広範な集団の血管死、血管疾患を約25%低減することが示されている。一方、疫学試験の長期的観察では特定のがんや非血管死、非血管疾患の罹患率が上昇することが指摘され、5年以上のスタチン治療により発がんや他の有害事象が増加する可能性が示唆されている。Lancet誌2011年12月10日号(オンライン版2011年11月23日号)掲載の報告。

患者幹細胞を播種した人工気道の移植に成功

患者の自己幹細胞を播種したナノ複合材料で組織工学的にテーラーメードされた人工気道の移植に、スウェーデン・カロリンスカ研究所のPhilipp Jungebluth氏らが成功した。気管腫瘍患者の多くが診断時には切除不能な大きさに達しており、5年生存率は約5%と予後不良だが、安全な気管の再建は困難なため切除可能な場合でも腫瘍の完全切除率は60%に満たないという。同氏らは、2008年に患者の幹細胞を播種したドナー気管の移植を行っているが、サイズが合わないなどの限界があったという。Lancet誌2011年12月10日号(オンライン版2011年11月24日号)掲載の報告。

腎細胞がんに対するセカンドライン治療の第III相試験、axitinib対ソラフェニブ

新規の分子標的薬であるaxitinibは、進行腎細胞がんに対するセカンドライン治療の標準的治療薬であるソラフェニブに比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、新たな選択肢となる可能性があることが、米国・Cleveland Clinic Taussig Cancer InstituteのBrian I Rini氏らが行ったAXIS試験で示された。毎年、世界で約17万人が腎細胞がんと診断され、7万2,000人が死亡している。多くが切除不能な進行病変として発見され、局所病変の多くは再発し、化学療法薬やサイトカイン製剤に抵抗性を示す頻度も高い。進行腎細胞がんの治療は分子標的薬の登場によって激変したが、現在まで分子標的薬同士の効果を比較した第III相試験の報告はされていなかった。Lancet誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月4日号)掲載の報告。