ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:338

服毒に対する活性炭投与は死亡率を抑制しない

開発途上の農業国では、意図的な自己服毒に毒性の強い農薬や植物を用いるため、先進国に比べ致死率が10~50倍も高いという。今回、スリランカで実施された無作為化試験により、腸血管や腸肝循環の一時的な遮断を目的に自己服毒患者に対しルーチンに施行されている活性炭の投与は死亡率を抑制しないことが明らかとなった。英国Oxford大学熱帯医学研究所のMichael Eddleston氏らがLancet誌2008年2月16日号で報告した。

やっぱりメタボは癌になりやすい!?

体重超過(過体重:BMI 25~29.9kg/m2および肥満:BMI≧30 kg/m2)は、食道癌、膵癌、結腸・直腸癌、閉経後乳癌などの一般的に見られる癌の発症と関連することが示されている。今回、英国Manchester大学癌研究部門外科のAndrew G Renehan氏らが行った28万例を超える癌患者を対象としたメタ解析により、比較的まれな癌もBMIの増加と関連しており、性差や人種差が見られる癌も存在することが明らかとなった。Lancet誌2008年2月16日号掲載の報告。

超早期産児への経鼻的持続的陽圧呼吸法で気胸は増えるが換気日数は減少

早期産児の死亡と疾患の主因である気管支肺形成異常は、人工換気と酸素療法に関係している。オーストラリア・メルボルン市Royal Women's Hospital のColin J. Morley氏らは、出生直後の超早期産児に対して、経鼻的な持続的陽圧呼吸法(CPAP)と挿管による人工換気の比較研究を行った。CPAPは挿管法と比べて、死亡率や気管支肺形成異常に有意差はなく、気胸の発病率は逆に高まったが、酸素療法を受ける児は減り、人工換気日数も減少するという結果を得ている。NEJM誌2008年2月14日号より。

下肢血管形成術でパクリタキセル・コーティング・バルーン使用は再狭窄を有意に減少

薬剤溶出ステントは冠動脈の再狭窄を減少させるものの、末梢動脈での有効性は臨床試験では証明されていなかった。そのため下肢血管形成術における、パクリタキセルでコーティングされた血管形成術用バルーンと、血管造影剤に溶解したパクリタキセルの効用について調査が、エーベルハルト・カール大学(ドイツ)Gunnar Tepe氏らによって行われた。NEJM誌2008年2月14日号より。

組織レベルの潜在的な利益相反には継続して注意が必要

医学研究は、組織レベルの利益相反に影響される可能性があるが、これまでアメリカの医科大学が、組織レベルの利益相反(ICOI)を伴う課題にどう対処してきたかに関する全国的なデータはなかった。そこで米国医科大学協会(AAMC)のSusan H. Ehringhaus氏らが全国調査を実施。「潜在的な利益相反について倫理委員会(IRB)に報告する制度に不備がある」として、医学界は継続的に注意を払う必要性を強調している。JAMA誌2008年2月13日号より。

脊椎疾患にかかる医療費は増大しているが健康状態改善には寄与していない?

臨床において背部・頸部の疾患は最もよくみられる。しかし、これら疾患に費やされる医療費の傾向および健康状態評価との関連はこれまで調査されていない。ワシントン大学のBrook I. Martin氏らのグループは、1997年から2005年までの米国内の背部・頸部疾患による入院、外来受診、救急受診、薬局関連の医療費を推計するとともに、それらと健康状態評価との関連について調査を行った。JAMA誌2008年2月13日号より。

医療サービス開発への患者の参画は、質の改善をもたらすか

医療サービスの開発に患者や地域社会が参画すれば、よりよいサービスがもたらされアウトカムが改善すると考えられているが、サービスの質や有効性に対する患者参画の効果を示すエビデンスは少ないという。今回、ロンドン市で実施された脳卒中医療サービスの近代化プログラムにおける検討で、医療サービスの開発に患者が参画しただけではサービスの質は改善しないことが示された。英国King’s College LondonのNina Fudge氏がBMJ誌2008年2月9日号(オンライン版1月29日号)で報告した。

コーラなどのソフトドリンクは男性の痛風リスクを高める

砂糖で甘味を加えたソフトドリンク(コーラ、その他の炭酸飲料など)に多く含まれる果糖は血清尿酸値を上昇させることが知られているが、これらの飲み物や果糖と、痛風リスクの関連は明らかにされていない。カナダBritish Columbia大学バンクーバー総合病院のHyon K. Choi氏らは、大規模なコホート研究によってこれらの飲料が男性の痛風リスクを増大させることを確認、BMJ誌2008年2月9日号(オンライン版1月31日号)で報告した。

複数の微量栄養素補助剤を摂取した妊婦の子どもは発育がよい

開発途上国では、出生時の低体重が後年の小児の健康に及ぼす悪影響に関する研究が盛んだが、出生時体重の増加と小児の健康改善には明確な相関がないため、この課題を解決するための取り組みには困難がつきまとうという。Anjana Vaidya氏(母子研究所、カトマンズ、ネパール)らは、以前に実施した妊婦の栄養補助剤摂取に関する試験中に出生した子どもを追跡、妊娠中の複数の微量栄養素摂取の胎児への影響はその後も持続していることを確認した。Lancet誌2008年2月9日号掲載の報告。

アプロチニン自体は術後腎機能低下要因ではない

手術の際、出血抑制(組織の接着・閉鎖)に使用される線溶系抑制剤アプロチニンは近年、心臓手術に用いた際の腎毒性の有無が議論となっているが、「ACE阻害薬服用者にoff-pumpで手術を施行した場合にのみ、アプロチニンは術後腎障害リスクを増加させる」可能性を指摘する論文が、Lancet誌2008年2月9日号に掲載された。英国Bristol Royal InfirmaryのRonelle Mouton氏らによるレトロスペクティブ(振り返り)観察研究である。

多因子介入が2型糖尿病の死亡率に与える影響

厳密な血糖コントロール、レニン-アンジオテンシン系遮断薬、アスピリン、脂質降下薬による集中的な多因子介入が、2型糖尿病でミクロアルブミン尿症を合併した患者の非致死性心血管疾患リスクを減少させることが明らかとなっている。この多因子介入が全原因死亡率と心血管系の原因による死亡率に影響を与えるかどうかについて、ステノ2研究(Steno-2 Study)の追跡調査結果が報告された。NEJM誌2008年2月7日号より。

心筋梗塞患者の初回経皮的冠動脈介入には血栓吸引の併用を

ST上昇型心筋梗塞患者に対する初回経皮的冠動脈介入(PCI)は、梗塞責任動脈の開通に効果的だが、介入で生じたアテローム血栓の破片が微小血管を閉塞し、心筋再潅流を減少させることがある。このため初回PCIで血栓吸引(Thrombus Aspiration)を併用することが、従来のPCI処置より優れているのではないか。オランダ・フローニンゲン大学病院のTone Svilaas氏らが検証した。NEJM誌2008年2月7日号より。

急性冠症候群後のクロピドグレル投与中止は短期リスクを増大

不安定狭心症のイベント再発防止に使われる抗血小板薬クロピドグレルの投与中止が患者の短期リスクを増大させるかどうかはわかっていない。アメリカ・デンバー退役軍人病院P. Michael Ho氏らのグループは、全米の急性冠症候群(ACS)患者を対象に、クロピドグレル投与中止後の有害事象発生率の評価を行った。JAMA誌2008年2月6日号より。

認知症発症後の生存期間は4.5年――イングランド/ウェールズの場合

Jing Xie氏(ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア科、イギリス)によれば、認知症は死亡リスクを増大させるが、イングランド/ウェールズ地方における認知症患者の生存期間は明らかにされていない。同氏らの研究グループは、認知症発症後の生存期間を推計し、さまざまな背景因子ごとに解析を行った。その結果、フォローアップ期間14年における認知症発症後の推計生存期間中央値は4.5年であり、性別、発症年齢、機能障害が生存期間に有意な影響を及ぼした。BMJ誌2008年2月2日号(オンライン版2008年1月10日号)掲載の報告。

新生児治療室における医原病の実態

入院患者では医原病が重要な問題との認識が高まっているが、高リスク新生児治療室における医原病の疫学データはほとんどないという。Isabelle Ligi氏(地中海大学La Conception病院新生児科、マルセイユ、フランス)らが実施したプロスペクティブなコホート研究の結果、新生児では医原病の発生頻度が高く、重症例も多いことが明らかとなった。Lancet誌2008年2月2日号掲載の報告。

救急外来受診例の約半数に深部静脈血栓リスク。予防は不十分

救急外来を受診後入院例で、外科的治療の適応となった患者の6割以上、内科的治療適応例の4割以上が、深部静脈血栓(DVT)のリスクを有しているが、それらのうち深部静脈塞栓(DVE)の予防措置を受けていたのは50.2%だった──とする国際的横断研究の結果がLancet誌2008年2月2日号に掲載された。研究の名称はENDORSE(Epidemiologic International Day for the Evaluation of Patients at Risk for Venous Thromboembolism in the Acute Hospital Care Setting)。King’s College Hospital(英国)のAlexander T Cohen氏らによる論文である。

ワールドカップ・サッカー期間中の心血管イベントは普段の2倍以上だった

自国チームが出場するサッカーの試合観戦に期待と不安を抱いて臨むのは皆同じ。2006年6月9日から7月9日にかけてドイツで開催された国際サッカー連盟(FIFA)主催のサッカー・ワールドカップは、情動ストレスと心血管イベント発生率との因果関係を調べる絶好の機会となった。ドイツ・ミュンヘンにあるMedizinische Klinik und Poliklinik IのUte Wilbert-Lampen氏らによる研究報告は、NEJM誌2008年1月31日号に掲載されている。

腹部大動脈瘤に対する血管内治療と開腹手術の長期比較は一長一短

腹部大動脈瘤の血管内治療は開腹手術より、周術期における死亡率と罹患率が低いことは、すでに無作為化試験で示されているが、より長期の生存率では両者に違いはない。これまで長期にわたる住民ベースの大規模な比較調査も行われていなかった。そこでベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのMarc L. Schermerhorn氏らが、腹部大動脈瘤の治療をメディケアで受給した患者集団を最長4年余にわたって追跡した。NEJM誌2008年1月31日号より。