ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:186

血圧管理は脳出血の再発を抑制するか/JAMA

 脳出血(ICH)発症後の生存例では、適切な血圧管理により再発リスクが改善することが、米国・マサチューセッツ総合病院のAlessandro Biffi氏らの検討で明らかとなった。ICHは、主に細動脈硬化と脳アミロイド血管障害(CAA)によるものに分けられ、細動脈硬化関連ICHのほとんどが脳の深部構造で発症するのに対し、CAA関連ICHは皮質~皮質下領域(脳葉)にほぼ限定される。ICH生存例は再発リスクが高く、一般に再発ICHは初発ICHよりも重症であるため、2次予防戦略の改善が重要とされる。一方、非脳葉型ICHの再発の予防では血圧管理が重要とされるが至適な降圧に関するデータはほとんどなく、脳葉型ICHにおける降圧の役割はほとんど知られていないという。JAMA誌2015年9月1日号掲載の報告。

急性STEMIへのPCI前シクロスポリンは効果なし/NEJM

 急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対するプライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)前のシクロスポリン静注投与は、1年後の臨床的アウトカム改善には結び付かず、有害な左室リモデリングを予防しないことを、フランス・Arnaud de Villeneuve大学付属病院のThien-Tri Cung氏らが、多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果、報告した。先行研究により、PCI前のシクロスポリン投与により、再灌流傷害の軽減および心筋梗塞のサイズ縮小が期待されていた。NEJM誌2015年9月10日号(オンライン版2015年8月30日号)掲載の報告より。

CHA2DS2-VAScスコア、心不全患者にも有用/JAMA

 心房細動(AF)患者の脳卒中リスク層別化に有用なCHA2DS2-VAScスコアが、AFの有無を問わない心不全(HF)患者にも有用であることが明らかにされた。デンマーク・オールボー大学のLine Melgaard氏らによる検討の結果、同患者でスコアと虚血性脳卒中、血栓塞栓症、死亡のリスクとの関連がみられたという。また、非AF患者のほうがAFを有する患者と比べて、同スコアが高いほど血栓塞栓症の合併絶対リスクが高いことも認められた。一方で、予測精度は中程度であり、HF患者におけるスコアの臨床的な有用性は確定的なものではないと著者は述べている。JAMA誌2015年8月30日号掲載の報告より。

ジゴキシンは本当に死亡を増大するのか/BMJ

 ジゴキシン(商品名:ジゴシンほか)使用と死亡との関連は認められず、一方で入院減少との関連が認められたことを、英国・バーミンガム大学循環器サイエンスセンターのOliver J Ziff氏らが報告した。ジゴキシンは心不全患者の症状軽減や心房細動患者の心拍数コントロールに用いられる頻度が高いが、最近の観察研究で死亡増大との関連が指摘されていた。研究グループは、すべての観察研究、無作為化試験を対象に試験デザインや方法を考慮しつつ、ジゴキシンの死亡および臨床的アウトカムへの影響を明らかにするシステマティックレビューとメタ解析を行った。BMJ誌オンライン版2015年8月30日号掲載の報告。

栄養サプリメントは認知機能に影響せず/JAMA

 米国立眼研究所(NEI)のEmily Y. Chew氏らは、加齢黄斑変性(AMD)を有する高齢者を対象とした試験(AREDS2)被験者について、栄養サプリメント[長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)やルテイン/ゼアキサンチンを含む]の認知機能への効果について評価を行った。その結果、プラセボと比較してスコアの年次変化に統計的に有意な差は認められなかったことを報告した。これまで観察的研究データにおいて、食事による飽和脂肪酸の高摂取と野菜の低摂取がアルツハイマー型認知症のリスク増大と関連する可能性が示唆されており、研究グループは今回、本検討を行った。JAMA誌2015年8月25日号掲載の報告より。

小児の院内心停止、アドレナリン投与早いほど転帰良好/JAMA

 小児院内心停止に対するエピネフリン(アドレナリン)の早期投与は、生存退院率や自己心拍再開率など、アウトカムを有意に改善することが示された。米国のベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのLars W. Andersen氏らが、約1,600例の小児患者について行った試験の結果、明らかにした。これまでの検討では、成人患者について、院内心停止患者に対するエピネフリン投与の遅延が生存率低下に関与していることは知られていたが、小児患者については不明であった。JAMA誌2015年8月25日号掲載の報告より。

てんかんの妊婦、流産や帝王切開のリスク増大/Lancet

 てんかんを持つ妊婦は、てんかんのない妊婦に比べ、自然流産リスクは約1.5倍、分娩誘発は約1.7倍、帝王切開は約1.4倍に増大するなど、妊娠合併症や新生児合併症リスクが増加することが明らかにされた。アルゼンチン・Centro Rosarino de Estudios PerinatalesのLuz Viale氏らが、てんかんを持つ妊婦を対象に行った38件の観察試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2015年8月25日号掲載の報告。

世界の疾病負担は改善しているか:GBD 2013の最新知見/Lancet

 2012年、「世界の疾病負担(Global Burden of Disease:GBD)」の最初の調査(1993年)以降、初めての全面改訂の結果が公表された。この取り組みはGBD 2010研究と呼ばれ、世界187ヵ国の死亡および疾病の原因の情報に基づき、1990年と2010年の国別の障害調整生命年(disability-adjusted life-years:DALY)および健康調整平均余命(health-adjusted life expectancy:HALE)を報告している。その後、GBDは必要に応じて毎年更新することとなり、GBD 2013研究については、すでに国別の損失生存年数(years of life lost; YLL)や障害生存年数(years lived with disability; YLD)などのデータが公表されており、今回は最新の解析結果が報告された。Lancet誌オンライン版2015年8月27日号掲載の報告。

高齢者の認知機能に運動は影響しない?/JAMA

 ほとんど体を動かさない高齢者(sedentary older adults)を対象に、24ヵ月にわたる適度な運動プログラム介入 vs.健康教育プログラム介入を比較した結果、総合/特定領域認知機能の改善について有意な差はみられなかったことが示された。Kaycee M. Sink氏らが1,635例を対象に行った無作為化試験LIFEの結果、報告した。JAMA誌2015年8月25日号掲載の報告より。

バルサルバ法の上室頻拍への効果、体位修正で改善/Lancet

 上室頻拍の緊急治療法として推奨されるバルサルバ法について、施行時体位の修正により効果が改善することが示された。標準法では息こらえ時の体位は半臥位だが、修正法は息こらえ時に仰向け下肢挙上の姿勢に体位を変換するというもの。英国・王立デヴォンエクセター病院NHS財団トラストのAndrew Appelboam氏らが無作為化試験を行い報告した。バルサルバ法は、上室頻拍時の国際的に推奨される緊急治療法だが、臨床における効果は乏しく(5~20%)、アデノシンなど他の治療を必要とし、患者が不快感を感じることも多いとされる。Lancet誌オンライン版2015年8月24日号掲載の報告より。

肺高血圧症への併用療法、初期治療にも有効/NEJM

 肺動脈肺高血圧症(PAH)に対する初期治療として、アンブリセンタン(商品名:ヴォリブリス)+タダラフィル(同:アドシルカ)の併用療法は、それぞれの単独療法と比較して、臨床的に失敗のイベントリスクが有意に低いことが示された。イタリア・ボローニャ大学のN. Galie氏らAMBITION研究グループが報告した。PAHに対する併用療法の有効性については、アドオン療法としての評価はされていたが、初期治療の長期転帰については検討されていなかった。NEJM誌2015年8月27日号掲載の報告より。

ベムラフェニブ、悪性黒色腫以外のBRAF V600変異陽性がんにも有効/NEJM

 ベムラフェニブ(商品名:ゼルボラフ)はBRAF V600キナーゼの選択的阻害薬で、BRAF V600変異陽性の転移性悪性黒色腫の標準治療である。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDavid M. Hyman氏らは、今回、本薬はBRAF V600変異陽性の他のがん腫にも有効であることを確認しことを報告した。近年、BRAF V600変異は悪性黒色腫以外のさまざまながん腫で発現していることがわかっているが、半数以上は変異陽性率が5%未満であるため疾患特異的な試験を行うのは困難だという。本研究では、「basket試験」と呼ばれる新たな試験デザインが用いられている。このアプローチでは、同じバイオマーカーの発現がみられる組織型の異なる多彩ながん腫において、抗腫瘍活性のシグナル伝達の検出と薬剤感受性の評価が同時に可能で、生物統計学的デザインの柔軟性が高いため希少がんでの抗腫瘍活性の同定に有用であり、新たな治療法を迅速に評価できるとされる。NEJM誌2015年8月20日号掲載の報告より。

難治性多発性骨髄腫、新規CD38標的薬が有望/NEJM

  有効な治療選択肢がほとんどなく治療がきわめて困難な難治性の多発性骨髄腫の患者に対して、daratumumabは単剤で良好な安全性プロファイルを示し、有望な効果を発揮することが、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのHenk M Lokhorst氏らの検討で明らかとなった。プロテアソーム阻害薬や免疫調節薬は多発性骨髄腫の転帰を改善するが、多くの患者が再発し、再発後の予後はきわめて不良である。一方、多発性骨髄腫細胞で過剰発現がみられるCD38は、本疾患の治療標的となる可能性が示唆されている。daratumumabは、CD38を標的とするヒトIgG1κモノクローナル抗体で、前臨床試験では多彩な機序を介してCD38発現腫瘍細胞の標的細胞死を誘導することが確認されていた。NEJM誌オンライン版2015年8月26日号掲載の報告。

思春期の電子タバコ使用が喫煙開始年齢を早める?/JAMA

 米国ロサンゼルスの高校生(14歳)を対象とした追跡調査の結果、eシガレット(電子タバコ)を吸ったことがあると回答した学生は、吸ったことがないと回答した学生と比べて、翌年中にタバコ(葉巻、水タバコを含む可燃性のもの)を吸い始める人が多い傾向が明らかになった。南カリフォルニア大学のAdam M. Leventhal氏らによる報告で、著者は「電子タバコ使用がタバコを吸い始めることと関連しているのかについて、さらなる調査研究が必要だ」と述べている。米国の若者の間では、電子タバコによるニコチン曝露がますます一般的になってきているという。JAMA誌2015年8月18日号掲載の報告より。

ステント内再狭窄の至適治療戦略は?/Lancet

 ステント内再狭窄(ISR)の経皮的治療について、エベロリムス薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈介入(PCI)と薬剤コーティングバルーン(drug-coated balloons:DCB)治療の2つが、考慮すべき治療戦略であることが、スイス・ベルン大学病院のGeorge C M Siontis氏らによるネットワークメタ解析の結果、示された。その理由について著者は、「前者は、血管造影の径狭窄率が最も良好である。後者は、新たなステント層を追加することなく良好な成績が得られるからだ」と述べている。薬剤溶出ステントを用いたPCIは、未治療の冠動脈狭窄症の標準治療となっている。しかし、これまでベアメタルステントや薬剤溶出ステントのISRに対する至適治療は確立されていなかなった。Lancet誌2015年8月15日号掲載の報告より。

肥満を引き起こす遺伝子のメカニズムが判明/NEJM

 ゲノムワイド研究の進展により、疾患関連の遺伝子座の特定が可能となっている。FTO遺伝子座は、肥満症との遺伝的関連が最も強いことが知られているが、その関連メカニズムは明らかになっていない。米国ハーバード・メディカル・スクールのMelina Claussnitzer氏らは、ヒトおよびマウスを用いた検討から、脂肪細胞の熱産生抑制と関連するFTOアレル遺伝子の存在、およびその基本メカニズムを明らかにした。NEJM誌オンライン版2015年8月19日号掲載の報告。

がん患者の再発VTEへのtinzaparin vs.ワルファリン/JAMA

 急性静脈血栓塞栓症(VTE)を呈した担がん(active cancer)患者に対し、低分子ヘパリン製剤tinzaparinは、ワルファリンとの比較においてVTE再発を抑制しなかったことが報告された。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAgnes Y. Y. Lee氏らが、900例を対象とした国際多施設共同無作為化試験の結果、報告した。複合アウトカム評価による本検討では、全死因死亡と重大出血抑制との関連は示されなかったが、臨床的に意味のある非重大出血の抑制は認められた。著者は、「再発VTリスクが高い患者で結果が異なるかについて、さらなる検討を行う必要がある」と述べている。JAMA誌2015年8月18日号掲載の報告。

リラグルチド、肥満糖尿病患者の減量に有効/JAMA

 過体重/肥満(BMI 27.0以上)の2型糖尿病患者へのリラグルチド皮下注3.0mg(商品名:ビクトーザ)1日1回投与は、プラセボと比較して56週の間、有意な体重減少が認められ、5%以上または10%超の減量達成者の割合も有意に多かったことが示された。英国・レスター大学のMelanie J. Davies 氏らが、二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験の結果、報告した。体重の5~10%減少は、2型糖尿病および糖尿病関連の合併症を改善することが示唆されているが、現時点では、安全性、有効性が認められた体重コントロール薬はない。著者は今回の結果を踏まえて、さらなる検討を行い、より長期的に有効性、安全性を評価する必要があるとまとめている。JAMA誌2015年8月18日号掲載の報告。

少量飲酒でも発がんリスクは上昇する?/BMJ

 米国人では、大量飲酒は何種かのがんリスクを上昇することが知られている。ハーバードTHチャン公衆衛生大学院のYin Cao氏らは今回、少量~中等量の飲酒(女性1日1杯、男性1日1~2杯)により、有意差はないものの発がんリスクがわずかに上昇することを確認した。一方で、喫煙と独立した飲酒の役割は明らかになっていない。米国では非喫煙者が増加しているが、先行研究で喫煙は、飲酒ががんに及ぼす影響を部分的に促進する可能性があることが示されているものの、非喫煙者に喫煙者に関する知見をそのまま当てはめることはできないという。BMJ誌オンライン版2015年8月18日号掲載の報告より。

H.pylori除菌治療、最も有効なレジメンは?/BMJ

 複数あるヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)除菌治療の有効性と忍容性について、中国・安徽医科大学のBao-Zhu Li氏らが、システマティックレビューとネットワークメタ解析により評価を行った。結果、14種類の除菌治療に関するデータが入手でき、解析の結果、標準治療とされている抗菌薬3剤併用7日間の効果が最も低く、最も有効であるのは、併用療法(抗菌薬3剤+PPI阻害薬)で、次いで抗菌薬3剤+生菌10~14日間、レボフロキサシンベースのトリプル治療10~14日間、ハイブリッド治療14日間、逐次的治療10~14日間であることが示唆された。標準治療は除菌効果が低いとして、多くの新たなレジメンが導入され、効果が高いものがあることも報告されている。しかし、各治療間の比較や最適な治療を特定する検討はこれまで限定的であった。BMJ誌オンライン版2015年8月19日号掲載の報告。