ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:264

専門病棟での集学的管理プロトコールが急性期脳卒中の予後を改善

急性期脳卒中専門病棟における看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールの実践により、退院後の良好な患者アウトカムがもたらされることが、オーストラリア・カソリック大学看護学研究所のSandy Middleton氏らが行ったQASC試験で示された。組織化された脳卒中専門病棟は脳血管イベントによる死亡や身体機能障害を低減するが、長期的な患者の回復に重要なことが知られているにもかかわらず十分な管理が行われていない因子として、発熱、高血糖、嚥下障害が挙げられるという。同氏らは、これら3つの因子のエビデンスに基づく集学的な管理プロトコールを専門病棟で遂行するための標準化された教育プログラムを開発した。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月12日号)掲載の報告。

重症型急性アルコール性肝炎に対するプレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法

 死亡率が高い重症型急性アルコール性肝炎について、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法が生存率を改善するかについて検討した試験が行われた。結果、1ヵ月生存率は上昇したが、主要転帰とした6ヵ月生存率は改善されなかったという。フランス・Picardy大学のEric Nguyen-Khac氏らが、174例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。同疾患患者の死亡率は、グルココルチコイド治療を行っても6ヵ月以内の死亡率が35%と高い。NEJM誌2011年11月10日号掲載報告より。

2011年初夏にドイツで大流行したO104:H4の疫学的プロファイル

ドイツでは、2011年5月、6月、7月に、志賀毒素産生性大腸菌O104:H4による胃腸炎および溶血性尿毒症症候群(HUS)が大流行した。その疫学的プロファイル調査の結果、同定された大腸菌株は通常のO104:H4ではみられないタイプであったこと、HUS発生が主に成人の女性で多かったことが明らかにされた。ドイツ・Robert Koch研究所Christina Frank氏らHUS研究チームによる。同大流行は、もやしの消費が媒介となった可能性が最も高いとされている。NEJM誌2011年11月10日号(オンライン版2011年6月22日号)掲載報告より。

冠動脈血行再建術後の心臓負荷試験、医師の報酬体系の違いで実施率が増減

冠動脈血行再建術後の心臓負荷試験の実施率は、医師の報酬体系に関連しており、技術料・診断料ともに請求する医師は、どちらも請求しない医師に比べて、核ストレステストの実施率は2.3倍、心エコー検査実施率は12.8倍に、それぞれ増大することが報告された。米国・デューク大学のBimal R. Shah氏らが、冠動脈血行再建術後に外来診察を受けた約1万8,000人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月9日号で発表した。

EC-ICバイパス術、2年再発性同側性虚血性脳卒中のリスクを低下せず

症候性アテローム動脈硬化性内頸動脈閉塞(AICAO)で同側性脳虚血の認められる人に対し、抗血栓療法に加えて頭蓋外-頭蓋内(EC-IC)バイパス術を行っても、2年長期の再発性同側性虚血性脳卒中のリスク減少にはつながらないことが示された。米国・ノースカロライナ大学のWilliam J. Powers氏らが、約200人を対象に行った無作為化非盲検試験の結果で、JAMA誌2011年11月9日号で発表した。

ダビガトラン、非弁膜症性心房細動患者で良好なbenefit-harmバランス示す

 トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)は非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンに比べ有益性(benefit)と有害性(harm)のバランスが優れることが示唆されている。今回、これを裏付ける知見が、イギリスBangor大学のJoshua Pink氏らが実施した定量的なbenefit-harm解析および経済的解析によって示された。ダビガトランは、非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンと代替可能な血栓予防薬とされるが、適正用量、benefit-harmバランス、費用対効果は明確にされておらず、費用対効果については相反する結果が報告されているという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月31日号)掲載の報告。

医師の専門性認定、患者や同僚医師の評価に基づく判定は慎重に

医師の専門性を患者や同僚医師の評価に基づいて判定する場合、当該医師や評価者の背景因子に起因する組織的バイアスが生じる可能性があるため注意を要することが、英国・ペニンシュラ医科歯科大学のJohn L Campbell氏らの調査で示された。王立医師協会(GMC)は、イギリスの医師が医師免許を継続して保持するには妥当性を再確認する必要があり、そのためには最新かつ実臨床に即した医療を提供可能なことを示すよう提言している。医師による認定の申請を判定するには、患者や他の同僚医師からの多岐にわたる評価がエビデンスの重要な情報源になるという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月27日号)掲載の報告。

厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除マージンは2cmで十分か?

厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除術では、切除マージンは2cmで十分であることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のPeter Gillgren氏らの検討で示された。悪性黒色腫は、近年、主に白人において罹患率および死亡率が増加傾向にあり、診断年齢は低下する傾向にある。標準的治療は切除術だが、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの悪性黒色腫を切除する際の病巣辺縁からの最適な切除マージンについては、議論が多く確立された知見はないという。Lancet誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月24日号)掲載の報告。

新たなサーファクタント治療が早産児の人工呼吸器適応を低減

持続的気道陽圧法(CPAP)で自発呼吸が保持されている早産児では、細いカテーテルを用いたサーファクタント治療によって人工呼吸器の適応が低減することが、ドイツLubeck大学のWolfgang Gopel氏、Cologne大学のAngela Kribs氏らが実施したAMV試験で示された。サーファクタント治療は、通常、呼吸窮迫症候群の治療のために人工呼吸器を装着された早産児に気管内チューブを介して施行されるが、挿管せずに安定状態が保持されている早産児にはCPAPの不利益を考慮してこの治療は行われない。一方、ドイツの新生児集中治療施設では、気管内挿管や人工呼吸器を必要としないサーファクタント治療(治療中のみ気管内に細いカテーテルを留置してCPAPを行いながら施行)が広く普及しつつあるという。Lancet誌2011年11月5日号(オンライン版2011年9月30日号)掲載の報告。

ヘルスケア施設関連C. difficile感染と保菌、宿主因子と病原菌因子が異なる

 ヘルスケア施設関連での集団下痢症の主な原因であるClostridium difficile(C. difficile)感染症について、感染と保菌では、宿主因子および病原菌因子が異なることが明らかにされた。施設関連の同感染については、無症候でも保菌が認められる場合がある。カナダ・McGill大学ヘルスセンターのVivian G. Loo氏らが、カナダの6つの病院で15ヵ月間にわたり、C. difficile感染症患者と保菌患者の宿主因子および細菌因子の同定を行った前向き研究の結果、報告した。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。

第VIII因子インヒビター重症血友病A患者に対するAICCの予防的投与戦略

第VIII因子インヒビターを有する重症血友病A患者に対し、乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体(AICC、商品名:ファイバ)を予防的に投与することで、関節内出血およびその他の部位での出血頻度が有意に低下することが明らかになった。予防的投与の安全性も確認された。米国・チュレーン大学ルイジアナセンターのCindy Leissinger氏らによる前向き無作為化クロスオーバー試験「Pro-FEIBA」からの報告による。同患者は、重篤な出血性合併症リスク、末期関節症への進行リスクが高いことが知られる。AICCがそうした患者に対し出血を予防する可能性についてはこれまで散発的な報告はなされていたが、最適な投与方法については確立されていなかった。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。

臓器移植レシピエントのがん発症リスクは2倍以上、最大は非ホジキンリンパ腫の7.5倍

臓器移植を受けた人(レシピエント)のがん発症リスクは、一般の人の2倍以上に増大することが明らかにされた。32種類のがんについてレシピエントの発症リスク増大が認められ、なかでも最も発症頻度が高かったのは非ホジキンリンパ腫で、発症リスクは約7.5倍に上った。米国国立がん研究所(NCI)のEric A. Engels氏らが、約18万人のレシピエントと、13州のがんに関する登録簿を調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月2日号で発表した。これまでの研究から、レシピエントは、免疫機能低下や臓器ウイルス感染が原因で、がんの発症リスクが増大することは知られていた。

胸部X線による肺がん検診、肺がん死亡率低下に効果なし

胸部X線による年1回の肺がん検診は、肺がん死亡率を低下しないと結論する報告が発表された。米国・ミネソタ大学のMartin M. Oken氏らが、15万人超を対象に行われた、がんスクリーニング無作為化比較試験「PLCO」から肺がんスクリーニング4年間の追跡結果を解析した結果で、JAMA誌2011年11月2日号(オンライン版2011年10月26日号)で発表した。胸部X線による肺がん検診の死亡率に対する有効性は、これまで明らかにされていなかった。

英国電子カルテ・NHS医療記録サービス、臨床家の利益は限定的、患者の利益は不明

英国で国家的IT戦略の一つとして2002年により導入が開始された2次急性期病院への電子カルテシステム「NHS医療記録サービス」について、エジンバラ大学集団保健センターeHealth研究グループのAziz Sheikh氏らが、早期導入した12病院の状況の長期質的評価を行った。結果、サービス実行には時間がかかり骨が折れるものであること、臨床家にとって利益は限定的で、患者にとっては明確な利益が不明であったという。英国の全377病院は2010年末までに同システムを導入しなければならなかったが、稼働は5つに1つの病院にとどまっており、今後の進め方について見直しの議論が進められているという。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月17日号)掲載報告より。

周術期のトラネキサム酸投与、前立腺がん手術においても輸血率を有意に低下

前立腺がんに対する開腹式の根治的恥骨後式前立腺摘除術は、腹腔鏡手技が普及後もなお標準的手術療法である。ただしこの処置で最も多い重大な合併症が、術中・術後の出血で、実際多くの患者が輸血を必要とする。イタリア・Vita-Salute San Raffaele大学のAntonella Crescenti氏らは、術中に止血剤の低用量トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)を用いることで輸血率が低下するかどうか、二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。結果、安全で輸血率低下に有効であることが示された。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月19日号)掲載報告より。

プライマリ・ケア施設でのCD4ポイント・オブ・ケア検査、HIV陽性例の治療前追跡不能率が低下

HIV陽性例におけるCD4細胞検査を、検査施設ではなくプライマリ・ケアの現場でのポイント・オブ・ケア検査とすることで、患者登録後の迅速なCD4ステージングが可能となり、抗レトロウイルス療法開始前に追跡不能となる患者が減少したことが、モザンビークInstituto Nacional da SaúdeのIlesh V Jani氏らの調査で明らかとなった。低所得国では抗レトロウイルス療法開始前に追跡不能となるHIV陽性例が増加しており、治療普及上の課題となっている。追跡不能となった患者を見つけ出すことは困難で、費用がかかり、非効率的でもあるため、追跡不能の防止に焦点を当てた検討が進められている。Lancet誌2011年10月29日号(オンライン版2011年9月26日号)掲載の報告。

プライマリ・ケアにおける腰背部痛治療、予後リスクによる層別化管理法が有効

プライマリ・ケアにおける腰背部痛の治療では、予後のスクリーニングに基づく層別化管理法(http://www.keele.ac.uk/sbst/)が現在の最良の治療法よりも有効な可能性があることが、イギリス・キール大学のJonathan C Hill氏らの検討で示された。腰背部痛は、現在も世界中でプライマリ・ケアにおける大きな課題となっており、最近では、従来のすべての患者を一律に管理する戦略は患者の不均一性を無視しているため最適な治療とはいえないと考えられている。著者らが開発した予後のリスクで層別化(低、中、高リスク)した管理モデルは、画一的な治療アプローチを超えて、プライマリ・ケアにおいて臨床的、経済的なベネフィットをもたらすものと期待されていた。Lancet誌2011年10月29日号(オンライン版2011年9月29日号)掲載の報告。

4価HPVワクチン、男性同性愛者の肛門上皮内腫瘍予防に有効

男性との性交渉を持つ男性のHPV感染関連の肛門上皮内腫瘍に対する、4価HPVワクチンの有効性と安全性を検討した試験の結果、グレード2または3の腫瘍の発生率低下が認められ、安全性プロファイルも良好であり、肛門がんリスクの低下に役立つ可能性が示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJoel M. Palefsky氏らが、ワクチンに関する大規模無作為化試験に参加した男性との性交渉を持つ男性602例についてサブ解析を行った結果、報告した。肛門がんは男女ともに増えており、特に男性との性交渉を持つ男性で増大している。HPV-16、-18を主としたHPV感染によって引き起こされる肛門がんは、先行して高度な(グレード2または3)肛門上皮内腫瘍が認められることから、本検討が行われた。NEJM誌2011年10月27日号掲載より。

COPDでは末梢気道の狭窄と閉塞が肺気腫性の組織破壊よりも先行している

COPDでは、肺気腫性の組織破壊が発生する以前に、末梢気道(直径2mm未満)の狭窄および閉塞が起こっていることが明らかにされた。カナダのブリティッシュ・コロンビア大学ジェイムズ・ホッグ研究センターのJohn E. McDonough氏らがCOPD患者のCT所見および肺移植後の肺所見などで末梢気道閉塞と肺気腫性組織破壊との関連について検討した結果、報告したもので、McDonough氏は、「この結果は、COPDでは、肺気腫性の組織破壊が始まる以前に末梢気道の狭窄と閉塞が、末梢気道抵抗の報告を増大する要因となっている可能性があることを示すものだ」と結論している。NEJM誌2011年10月27日号掲載報告より。

現在・元ヘビースモーカーへの低線量CT肺がんスクリーニングで、COPD検出可能

現在および以前にヘビースモーカーであった人に対する、低線量CT肺がんスクリーニングは、感度63%、特異度は88%と、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を検出可能であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのOnno M. Mets氏らが、1,140人を対象に行った前向き横断試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月26日号で発表した。