ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:86

PCI後プラスグレルのde-escalation法、出血リスクを半減/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行った急性冠症候群(ACS)患者に対し、術後1ヵ月間プラスグレル10mg/日を投与した後、5mg/日に減量する、プラスグレルをベースにしたde-escalation法は、1年間のネット有害臨床イベントを低減することが、韓国・ソウル大学病院のHyo-Soo Kim氏らが同国35病院2,338例を対象に行った「HOST-REDUCE-POLYTECH-ACS試験」の結果、示された。イベントリスクの低減は、主に虚血の増大のない出血リスクの減少によるものであった。PCI後のACS患者には1年間、強力なP2Y12阻害薬ベースの抗血小板2剤併用療法(DAPT)が推奨されている。同療法では早期の段階において薬剤の最大の利点が認められる一方、その後の投与期には出血の過剰リスクが続くことが知られており、研究グループは、抗血小板薬のde-escalation法が虚血と出血のバランスを均衡させる可能性があるとして本検討を行った。Lancet誌2020年10月10日号掲載の報告。

Pfizer社のCOVID-19ワクチン候補、第I相試験結果/NEJM

 BioNTechとPfizerが共同で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する2つのmRNAワクチン候補「BNT162b1」「BNT162b2」について、米国・ロチェスター大学のEdward E. Walsh氏らによる第I相プラセボ対照試験の結果が発表された。米国の若年成人(18~55歳)群と高齢者(65~85歳)群を対象とした評価者盲検用量漸増評価試験で、BNT162b2がBNT162b1に比べ安全性・免疫原性について優れる結果が得られたという。若年成人へのBNT162b1についてはすでに、ドイツと米国での試験結果が報告されており、同試験および今回の試験結果を踏まえて著者は、「BNT162b2を第IIおよび第III相の安全性・有効性評価試験を検討するワクチン候補として支持される結果が得られた」とまとめている。NEJM誌オンライン版2020年10月14日号掲載の報告。

虫垂炎治療、抗菌薬は切除術の代替となるのか/NEJM

 虫垂炎の治療では、抗菌薬治療の効果は虫垂切除術に対し非劣性であるが、抗菌薬治療を受けた患者10例当たり約3例(29%)が90日後までに虫垂切除術を受けており、虫垂結石を有する患者は虫垂切除術や合併症のリスクが高いことが、米国・ワシントン大学のDavid R. Flum氏らが実施した「CODA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年10月5日号に掲載された。60年以上も前(1956年)に、虫垂炎治療における虫垂切除術の代替治療として抗菌薬治療の有効性が報告されているが、長期にわたり虫垂炎の標準治療は虫垂切除術とされてきた。

レムデシビル、COVID-19入院患者の回復期間を5日以上短縮/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のJohn H. Beigel氏らは、「ACTT-1試験」において、レムデシビルはプラセボに比べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の回復までの期間を有意に短縮することを示し、NEJM誌オンライン版2020年10月8日号で報告した(10月9日に更新)。COVID-19の治療では、いくつかの既存の薬剤の評価が行われているが、有効性が確認された抗ウイルス薬はないという。  研究グループは、COVID-19入院患者の治療におけるレムデシビルの臨床的な安全性と有効性を評価する目的で、日本を含む10ヵ国が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を行った(米国NIAIDなどの助成による)。

五十肩の手術治療、理学療法に対する優越性示せず/Lancet

 凍結肩(frozen shoulder[五十肩]=adhesive capsulitis[癒着性関節包炎])の治療において、麻酔下肩関節授動術(manipulation under anaesthesia:MUA)、鏡視下関節包切離術(arthroscopic capsular release:ACR)および早期構造化理学療法(early structured physiotherapy:ESP)はいずれも、1年後の患者報告による肩の痛みや機能を大きく改善するが、これら3つの治療法に、臨床的に明確な優越性を示す差はないことが、英国・ヨーク大学のAmar Rangan氏らが実施した「UK FROST試験」で明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌2020年10月3日号に掲載された。MUAおよびACRによる外科的介入は、高価で侵襲的な治療であるが、その実臨床における効果は明確でないという。また、ESPは、英国のガイドラインの推奨や肩専門理学療法士によるエビデンスに基づいて、本研究のために開発された関節内ステロイド注射を含む非外科的介入で、外科的介入よりも迅速に施行可能であることからこの名で呼ばれる。

血漿ACE2濃度上昇が心血管イベントリスク増大と関連/Lancet

 血漿アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)濃度の上昇は主要な心血管イベントのリスク増大と関連することが、カナダ・マックマスター大学のSukrit Narula氏らによる「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究」において示された。ACE2は、レニン-アンジオテンシン系ホルモンカスケードの内因性の拮抗的調節因子であり、循環血中のACE2活性と濃度の上昇は、さまざまな心血管疾患を持つ患者の予後不良マーカーとなる可能性が示唆されていた。Lancet誌2020年10月3日号掲載の報告。  研究グループは、血漿ACE2濃度と、死亡および心血管疾患イベントのリスクとの関連を検証する目的で、PURE研究のデータを用いてケースコホート研究を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。

限局性前立腺がん、積極的初回治療がQOL低下の引き金に/BMJ

 限局性前立腺がんに対して、積極的な初回治療を受けた患者は前立腺がんの診断を受けていない男性に比べ、概して自己申告QOLが長期にわたり低下しており、根治的前立腺摘出術を受けた男性はとくに性機能のアウトカムが不良であった。オーストラリア・Cancer Council New South WalesのCarolyn G. Mazariego氏らが、同国で最も人口の多いニューサウスウェールズ州で実施された大規模前向きコホート研究「New South Wales Prostate Cancer Care and Outcomes Study:PCOS」の解析結果を報告した。限局性前立腺がんは、過去20年にわたって診断後の生存率が増加してきているが、治療に関連した長期的なQOLアウトカムに関する研究はほとんどなかった。著者は、「医師および患者は、治療法を決定する際にこれら長期的なQOLのアウトカムを考慮する必要がある」とまとめている。BMJ誌2020年10月7日号掲載の報告。

ロピナビル・リトナビルはCOVID-19死亡リスクを下げない/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者において、ロピナビル・リトナビルによる治療は28日死亡率、在院日数、侵襲的人工呼吸器または死亡のリスクを低下しないことが、無作為化非盲検プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果、明らかとなった。英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏ら「RECOVERY試験」共同研究グループが報告した。ロピナビル・リトナビルは、in vitro活性、前臨床試験および観察研究に基づいてCOVID-19の治療として確立されていたが、今回の結果を受けて著者は、「COVID-19入院患者の治療として、ロピナビル・リトナビルの使用は支持されない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年10月5日号掲載の報告。

不規則な月経周期、早期死亡リスクを増大/BMJ

 18~22歳、29~46歳時の月経周期の乱れ(不規則でサイクル期間が長い)は、70歳未満の早期死亡リスクの増大と関連することが明らかにされた。同関連は喫煙女性で、わずかだが強いことも示されたという。米国・ハーバード大学医学大学院のYi-Xin Wang氏らが、同国の看護師を対象とした前向きコホート試験「Nurses’ Health Study(NHS、看護師健康調査)II」の被験者約8万例を対象に行った大規模試験で明らかにした。不規則で長期の月経周期は、生殖年齢の女性においてよくみられ、主要な慢性疾患リスクの上昇と関連していることが知られている。一方でそのエビデンスは脆弱であった。BMJ誌2020年9月30日号掲載の報告。

重症COVID-19の心停止、高齢なほど転帰不良/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者の院内心停止の発生は、とくに高齢者で頻度が高く、心肺蘇生(CPR)後の生存率は不良であることを、米国・ミシガン大学のSalim S. Hayek氏らが、米国68病院のICUに入室した5,000例超のCOVID-19重症患者を対象に行ったコホート試験で明らかにした。院内心停止を呈したCOVID-19重症患者は転帰不良であるとの事例報告により、同患者集団へのCPRは無益ではないかとの議論が持ち上がっている。このため研究グループは速やかにデータを集める必要があるとして本検討を行った。BMJ誌2020年9月30日号掲載の報告。

4価HPVワクチン、浸潤性子宮頸がんリスクを大幅に低減/NEJM

 スウェーデンの10~30歳の女児および女性は、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種により、浸潤性子宮頸がんのリスクが大幅に低く、同リスクは接種開始年齢が若いほど低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJiayao Lei氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。これまでに、子宮頸部高度異形成(Grade2または3の子宮頸部上皮内腫瘍[CIN2+、CIN3+])の予防における4価HPVワクチンの効能と効果が確認されている。一方、4価HPVワクチン接種と接種後の浸潤性子宮頸がんリスクとの関連を示すデータはなかったという。

アテゾリズマブ単剤、NSCLC1次治療でOS延長(IMpower110)/NEJM

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、アテゾリズマブ単剤はプラチナ製剤ベースの化学療法と比較して、組織型を問わず、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現量が多い患者の全生存(OS)期間を延長させることが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S. Herbst氏らが行った「IMpower110試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。PD-L1発現NSCLCで転移のある患者の1次治療において、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブはプラチナベースの化学療法と比較して、有効性と安全性が優れるか否かは明らかにされていなかった。

ダパグリフロジン、CKDの転帰を改善/NEJM

 慢性腎臓病(CKD)患者では、糖尿病の有無にかかわらず、SGLT2阻害薬ダパグリフロジンはプラセボと比較して、推算糸球体濾過量(GFR)の持続的な50%以上の低下や末期腎不全、腎臓または心血管系の原因による死亡の複合の発生リスクを有意に低下させることが、オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J L Heerspink氏らが行った「DAPA-CKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月24日号に掲載された。CKD患者は、腎臓や心血管系の有害な転帰のリスクが高いとされる。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病患者の大規模臨床試験において、糖化ヘモグロビンを低下させるとともに、腎臓や心血管系の転帰に良好な効果をもたらすと報告されている。一方、CKD患者における糖尿病の有無別のダパグリフロジンの有効性は知られていないという。

COVID-19、ECMO導入患者の院内死亡率は?/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)を導入された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、装着から90日後の推定死亡率、および入院中の患者を除く最終的に死亡または退院となった患者の死亡率はいずれも40%未満であり、これは世界の多施設のデータであることから、COVID-19患者で一般化が可能な推定値と考えられることが、米国・ミシガン大学のRyan P. Barbaro氏らExtracorporeal Life Support Organization(ELSO)の検討で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年9月25日号に掲載された。いくつかの大規模な医療組織では、COVID-19関連の急性低酸素性呼吸不全患者に対してECMOによる補助が推奨されている。一方、COVID-19患者でのECMO使用に関する初期の報告では、きわめて高い死亡率が示されているが、COVID-19患者におけるECMO使用に関する大規模な国際的コホート研究は行われていなかった。

EGFR変異NSCLCの術後補助療法、オシメルチニブでDFS改善(ADAURA)/NEJM

 EGER変異陽性StageIB~IIIA非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法において、オシメルチニブはプラセボと比較して無病生存(DFS)期間を有意に延長した。中国・Guangdong Provincial People's HospitalのYi-Long Wu氏らが、国際共同無作為化二重盲検第III相試験「ADAURA試験」の結果を報告した。オシメルチニブは、未治療のEGER変異陽性進行NSCLCに対する標準治療であるが、術後補助療法としてのオシメルチニブの有効性と安全性については不明であった。NEJM誌オンライン版2020年9月19日号掲載の報告。

新型コロナ、米国成人の抗体陽性率は約9%/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの第1波の期間中に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への抗体を獲得していた米国成人集団は10%に満たず、抗体保有者で診断を受けていたのも10%未満であった。米国・スタンフォード大学のShuchi Anand氏らが、米国の透析患者を対象としてSARS-CoV-2抗体陽性率を検証した横断研究の結果を報告した。米国の透析患者の多くが毎月定期的に検査を受けており、実用的で偏りなく繰り返しSARS-CoV-2血清陽性率を評価することが容易であった。検討では、4つの層別(年齢、性別、地域、人種/民族)の推定値も算出し、それらの結果を踏まえて著者は、「SARS-CoV-2の伝播を抑える公衆衛生の取り組みは、とくに人種/民族的マイノリティーと人口密度の高いコミュニティーを対象とする必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2020年9月25日号掲載の報告。

KRASG12C阻害薬sotorasib、進行固形がんに有望/NEJM

 複数の前治療歴のあるKRAS p.G12C変異が認められる進行固形腫瘍の患者に対し、sotorasibは、有望な抗腫瘍活性を示したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDavid S. Hong氏らによる第I相臨床試験の結果、報告された。Grade3または4の治療関連毒性作用の発生は11.6%であった。sotorasibは、開発中のKRASG12Cを選択的・不可逆的に標的とする低分子薬。KRAS変異をターゲットとしたがん治療薬は承認されていないが、KRAS p.G12C変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)では13%、大腸がんやその他のがんでは1~3%で発生が報告されているという。NEJM誌2020年9月24日号掲載の報告。

Moderna社のコロナワクチン、高齢者に安全・有効か/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とModerna(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)が共同で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチン「mRNA-1273」について、56歳以上の高齢者を対象にした第I相臨床試験の結果が明らかにされた。米国・エモリー大学のEvan J. Anderson氏らによる検討で、主な有害事象は軽度~中等度であり、2回接種後全例で中和抗体が検出。抗体結合・中和抗体力価は100μg用量群が25μg用量群よりも高値であることが示された。mRNA-1273については、すでに18~55歳を対象にした第I相臨床試験で安全性と被験者全例で中和抗体が検出されたことが報告されている。今回の結果を踏まえて著者は、「第III相臨床試験では100μg用量を用いることが支持された」と述べている。NEJM誌オンライン版2020年9月29日号掲載の報告。

CAR-T細胞製剤liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫でCR53%/Lancet

 CD19を標的とする自家キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)製剤lisocabtagene maraleucel(liso-cel)は、さまざまな組織学的サブタイプや高リスクの病型を含む再発・難治性の大細胞型B細胞性リンパ腫患者の治療において、高い客観的奏効率をもたらし、重度のサイトカイン放出症候群や神経学的イベントの発生率は低いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJeremy S. Abramson氏らが行った「TRANSCEND NHL 001試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年9月19日号に掲載された。liso-celは、さまざまなサブタイプの再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫で高い奏効率と持続的な寛解が報告されているが、高齢者や併存疾患を持つ患者、中枢神経リンパ腫などの高リスク集団のデータは十分でないという。

週1回の基礎インスリン、1日1回と同等の血糖降下作用/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、insulin icodecの週1回投与は、インスリン グラルギンU100の1日1回投与と同程度の血糖降下作用を発揮し、安全性プロファイルは同等で低血糖の頻度も低いことが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行った「NN1436-4383試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月22日号に掲載された。基礎インスリン注射の回数を減らすことで、2型糖尿病患者の治療の受容やアドヒアランスが改善される可能性があると考えられている。insulin icodecは、糖尿病治療のために開発が進められている週1回投与の基礎インスリンアナログ製剤で、最高濃度到達時間は16時間、半減期は約1週間とされる。