ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:254

糖尿病有無別でみた低用量アスピリン服用と大出血リスクとの関連

アスピリン服用と大出血リスクとの関連について、人口ベースの大規模コホート研究の結果、アスピリン服用が胃腸や脳の大出血リスクと有意に関連することが示された。また、糖尿病患者と非糖尿病患者とで比較した結果、糖尿病の人は出血リスクが増大することが示されたが、アスピリン服用との独立した関連は認められなかったことが報告された。イタリア・Consorzio Mario Negri SudのGiorgia De Berardis氏らが、410万人のコホートについて行った試験で、JAMA誌2012年6月6日号で発表した。心血管イベント一次予防としての低用量アスピリン服用のベネフィットは、糖尿病有無による格差は比較的小さい。その差は出血リスクによって相殺されてしまう可能性があることから研究グループは、アスピリン服用と大出血リスクとの関連を糖尿病有無別で検討した。

電話によるうつ病の認知行動療法、対面療法よりも中断率は低いが……

大うつ病性障害に対する、電話による認知行動療法は、対面による同療法と比較して、治療アドヒアランスは改善されることが示された。一方で、両群18週治療後のフォローアップ6ヵ月時点の効果は同等であった。米国・ノースウエスタン大学のDavid C. Mohr氏らが、300人超について行った前向き無作為化比較試験の結果、報告したもので、JAMA誌2012年6月6日号で発表した。電話による認知行動療法の効果について、対面の場合との効果を比較した研究はほとんど行われていなかったという。

認知症患者の治療効果、物忘れクリニックvs.一般診療所

認知症患者の治療や介護の手配調整の有効性は、物忘れクリニックと一般診療所で差はないことが、オランダ・Radboud大学ナイメーヘン医療センターのEls J Meeuwsen氏らの検討で報告された。従来、物忘れクリニックは認知症の診断に重点を置いてきたが、特に抗認知症薬が臨床導入された1990年代以降、治療や介護手配への関与が急増している。しかし、物忘れクリニックによる認知症治療やフォローアップの有効性を直接的に示すエビデンスはない。英国は数年前、国による対認知症戦略を公表したが、集学的な物忘れ外来の全国的なネットワークの構築によってサービスやサポートへのアクセスのしやすさを提供することで、その目標を達成する意向だという。BMJ誌2012年6月2日号(オンライン版2012年5月15日号)掲載の報告。

心血管疾患リスク予測モデル、バイアスの影響が明らか

既存の心血管疾患リスク予測モデルは有用であり、これらモデルの直接比較はベネフィットをもたらすと考えられるが、比較試験の論文はアウトカムの選択バイアスや楽天主義バイアスの影響を受けていることが、ギリシャ・Ioannina大学のGeorge C M Siontis氏らの検討で示された。臨床での使用が推奨されている心血管疾患リスク予測モデルの中には、異なる集団やアウトカムに関して開発され、妥当性の検証が行われているものがある。最も一般的で広く普及しているリスクモデルでも、その識別、キャリブレーション、再分類に関する予測能はほとんど知られていないという。BMJ誌2012年6月2日号(オンライン版2012年5月24日号)掲載の報告。

亜鉛追加、乳児の重症細菌感染症に有効

重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児に対し、標準抗菌薬治療の補助療法として亜鉛を追加投与すると、治療不成功リスクが低減する可能性があることが、全インド医科学研究所(AIIMS)のShinjini Bhatnagar氏らの検討で明らかとなった。重症細菌感染症は開発途上国の乳児期早期の主要な死因である。標準的な抗菌薬治療に安価で入手しやすい介入法を追加することで、乳児死亡率の抑制が可能と考えられている。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版2012年3月31日号)掲載の報告。

頸動脈内膜中膜厚の年間増加率、心血管リスクを反映せず

頸動脈内膜中膜厚(cIMT)の年間増加率は一般人口の心血管リスクとは相関せず、臨床試験の代替指標としては使用できないことが、ドイツ・J W Goethe大学病院(フランクフルト)のMatthias W Lorenz氏らが実施したPROG-IMT試験で示された。cIMTは、早期のアテローム性動脈硬化の非侵襲的超音波検査の生物マーカーであり、一般集団において心血管イベントのリスクと正の相関を示す。すでに多くの臨床試験が、一般集団やリスク集団にみられるcIMTの変化は心血管イベントの発生リスクを反映するとの暗黙の前提の下で行われ、通常cIMTの年間増加率を指標に用いるが、これらの関連を検証した報告はほとんどないという。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版4月27日号)掲載の報告。

新生児脳症に対する低体温療法後の長期アウトカム

新生児脳症に対する低体温療法の有効性に関する無作為化試験の長期アウトカムが報告された。6~7歳時点における死亡またはIQスコア70未満の複合エンドポイント発生率は、通常治療群より全身低体温療法群のほうが低かったものの、有意差は認められなかったという。ただし、低体温療法群のほうが死亡率が低く、生存例における重度障害の発生率の増大は認められなかった。米国・ミシガン小児病院のSeetha Shankaran氏らによる本検討は、これまでに18~22ヵ月時点での早期報告が行われており、その時点では死亡率および中等度~重度障害発生の有意な低下が示されていた。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。

サルモネラ感染の拡大、通販で購入したひな鳥が原因と特定

2005年に特定されたヒトサルモネラモンテビデオ感染症の集団発生について、米国CDCのNicholas H. Gaffga氏らが、感染源を特定し予防対策を講じる調査を行った結果、通信販売専門の孵化場から出荷されたひな鳥との接触が原因であったことが報告された。感染したのは主に幼児で、孵化場への介入により、ヒトへの感染は減少したが根絶には至らず、「生きているひな鳥からのサルモネラ菌伝播を断つことは難しいことが示された」と結論している。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。

術前化学放射線療法、治癒の可能性ある食道・胃接合部がん患者の生存率を改善

切除可能な腫瘍を有する食道がんまたは食道胃接合部がん患者に対し、術前に化学放射線療法を行った結果、生存率の改善が認められたこと、有害事象発生率は許容範囲であったことが、オランダ・エラスムス大学医療センターのP. van Hagen氏らによる第3相多施設共同無作為化試験の結果、報告された。数十年間討議されてきた術前化学放射線療法は、これまでは試験結果が不良であったこともあり否定的であったが、同グループによる第2相試験では、毒性作用が低く、切除を受けた患者全員がR0(1ミリ以内の腫瘍なし)を達成していた。第3相試験では、術前に化学放射線療法を施行する群と手術単独群とを比較検討した。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群、持続気道陽圧療法で高血圧リスク低下

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は高血圧発症リスクを増大するが、持続気道陽圧療法(CPAP)によりそのリスクが低下することが、明らかにされた。スペイン・Miguel Servet大学病院のJose M. Marin氏らが約12年間追跡した前向きコホート研究の結果による。OSA患者では高血圧を呈する人が大勢を占める。これまで短期試験では、CPAPが同患者の高血圧リスクを低下することは示されていた。JAMA誌2012年5月23・30日合併号掲載報告より。

国家的「手洗いキャンペーン」が医療従事者関連感染症を低減:英国

イングランドとウェールズでは2004年に、全国のNHS傘下病院の医療従事者に対し、「手洗いキャンペーン(Cleanyourhands campaign)」が開始された。背景には、MRSAやMRSSなどの感染症蔓延の報告に対する懸念、一方の医療従事者の手洗いコンプライアンスが低率という報告があったこと、それらの前提として医療従事者の手指を媒介として患者から患者への感染拡大の可能性があったことなどによるという。キャンペーンは、2008年までに3回にわたって発動され、その効果について、英国・University College London Medical SchoolのSheldon Paul Stone氏らが前向き調査にて評価をした。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月3日号)掲載報告より。

手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。

世界各国受刑者における過体重・肥満の有病率と身体活動度

英国・オックスフォード大学のKatharine Herbert氏らは、これまで行われていなかった刑務所に収監されている受刑者について、栄養的に貧しい食事や不十分な運動がもたらす過体重や肥満の有病率についてシステマティックレビューで評価を行った。Herbert氏らは本研究の目的について「肥満などの非感染性疾患(NCD)は、低・中所得国や受刑者といった社会的不利な条件にある階層に偏って負荷がかかっている。受刑者についての評価は行われたことがなく、現在のエビデンスを総合し、今後の研究活動・領域を明らかにするため」としている。Lancet誌2012年5月26日号掲載報告より。

耳鳴り順応療法、耳鳴りに悩む人のQOLを改善

 耳鳴り症状に対し、通常ケアと比較して認知行動療法が、健康関連QOLや耳鳴り重症度を改善することが、オランダ・マーストリヒト大学のRilana F F Cima氏らによる無作為化試験の結果、報告された。耳鳴り症状を呈する成人は最高で21%にも達し、最も苦痛で消耗が激しい聴覚医学的問題の1つとされている。しかし臨床的治癒を導く標準療法がないため、コスト高で長期にわたる治療となりやすい。そこでCima氏らは、認知行動療法による段階的ケアアプローチの効果について通常ケアと比較する評価を行った。Lancet誌2012年5月26日号より。

望まない妊娠回避にはピル・パッチ・リングよりもIUD・インプラントを

望まない予定外の妊娠を回避するためには、子宮内避妊器具(IUD)など長期作用型可逆性避妊法を普及することが10代女性および若年女性を問わず有効であるとの報告が、米国・ワシントン大学医学部のBrooke Winner氏らが大規模な無作為化試験を行い発表した。米国では、予定外妊娠が他の先進国と比べて多く、その半数は避妊方法の誤った使用あるいは不適切な使用によるものとされている。Winner氏らは、米国では一般的な避妊方法として経口薬が用いられているが、イギリスやフランスではIUDなどの普及率が高く、予定外妊娠の割合も低いことに着目。また、予定外妊娠に関する大規模な前向き試験データがないことから、長期作用型可逆性避妊法と一般的な避妊法との避妊失敗率を比較した。NEJM誌2012年5月24日号掲載報告より。

特発性静脈血栓塞栓症の再発予防にアスピリン投与は臨床的ベネフィットあり

誘因が認められない非誘発性静脈血栓塞栓症を発症した患者に対し、アスピリン投与は、出血リスクを明らかに増大することなく再発リスクを有意に減らすことが報告された。イタリア・ペルージャ大学のCecilia Becattini氏らが行った無作為化試験の結果による。非誘発性静脈血栓塞栓症患者では、経口抗凝固療法中止後2年以内に再発する人が約20%を占め、抗凝固療法を延長することで再発は予防し得るものの、出血リスクが増大することが報告されていた。一方アスピリンの再発予防へのベネフィットについては、明らかになっていなかった。NEJM誌2012年5月24日号掲載報告より。

高齢者介護施設での身体拘束、ガイドラインや行動理論による介入で減少

高齢者介護施設(nursing home)に対し、ガイドラインや行動理論による介入を行うことで、身体拘束を受ける入所者の割合が減少することが示された。ドイツLubeck大学のSascha Kopke氏らが、36ヵ所の高齢者介護施設について行った集団無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年5月23・30日合併号で発表した。ドイツでは、身体拘束は法的に規制されており、また身体拘束の有効性と安全性についてエビデンスがないにもかかわらず、多くの高齢者介護施設でいまなお行われている現状だという。また米国の高齢者介護施設では20%で身体拘束が行われているとの報告もあるという。

日中眠気を伴わない睡眠時無呼吸症候群に対する持続気道陽圧療法

持続的気道陽圧(CPAP)療法は症候性閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の第一選択治療だが、昼間に眠気を伴わない場合は同法を行っても、体高血圧症や心血管イベント発生リスクの減少にはつながらないことが明らかにされた。スペイン・Arnau de Vilanova大学病院のFerran Barbe氏らが、700人超について行った無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年5月23・30日合併号で発表した。これまでCPAP療法の有効性について、症状の有無により違いがあるかどうかは明らかでなかった。

妊婦への新型インフルエンザワクチン接種、胎児死亡との関連認められず

妊婦への不活化新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種に関して、胎児死亡リスク増大のエビデンスは見つからなかったことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのBjorn Pasternak氏らによる約5.5万人の妊婦を被験者とするデンマーク全国登録コホート研究の結果、示された。2009パンデミック当時、新型インフルエンザに罹患した妊婦の罹病率、死亡率が増大し、妊娠アウトカムが不良となることが認められたことから、その後、多くの国で、新型インフルエンザワクチン接種キャンペーンのターゲットに妊婦を含んでいる。Pasternak氏らは、ワクチン接種が胎児死亡と関連しないかを国民ベースで検証した。BMJ誌2012年5月19日号(オンライン版2012年5月2日号)掲載報告より。

10代うつ病患者の治療はファンタジーゲームで?

うつ病の認知行動療法のパソコン用ソフトとして開発された「SPARX(Smart, Positive, Active, Realistic, X-factor thoughts)」は、ファンタジーゲーム様式が特徴で、4~7週間にわたって提供される7つのモジュールを克服していくというものである。その治療効果について、ニュージーランド・オークランド大学のSally N Merry氏らによる12~19歳のティーンエイジャーを対象とした多施設無作為化非劣性試験の結果、プライマリ・ケアにおいて対面カウンセリングといった通常ケアの代替療法となり得るものであることが示された。Merry氏らは、「治療が必要にもかかわらず介入が行われていない患者を対象に適用していくことができるだろう」とまとめている。これまでパソコンソフトを活用した認知行動療法は成人についてはその効果が認められていたが、ティーンエイジャーにおける効果は明らかではなかった。BMJ誌2012年4月19日号より。