ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:122

後天性血栓性血小板減少性紫斑病の治療にcaplacizumabが有望/NEJM

 後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)の治療において、caplacizumabはプラセボに比べ、迅速に血小板数を正常化し、再発率を抑制することが、英国・University College London HospitalsのMarie Scully氏らが行ったHERCULES試験で示された。aTTPでは、von Willebrand因子の切断酵素であるADAMTS13の免疫介在性の欠損により、von Willebrand因子マルチマーが血小板や微小血栓に無制限に粘着可能となり、その結果として血小板減少、溶血性貧血、組織虚血が引き起こされる。caplacizumabは、抗von Willebrand因子ヒト化二価単一可変領域免疫グロブリンフラグメントであり、von Willebrand因子マルチマーと血小板の相互作用を阻害するという。NEJM誌オンライン版2018年1月9日号掲載の報告。

ノンシュガー甘味料の健康への影響~メタ解析/BMJ

 ドイツ・フライブルク大学のIngrid Toews氏らによる無作為化/非無作為化比較試験および観察試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果、ノンシュガー甘味料(non-sugar sweeteners:NSS)の摂取群と非摂取群とでほとんどの健康上のアウトカムに差はみられないことが示された。ただし、著者は「NSSの摂取が有益であるという有力な証拠はなく、NSS摂取の潜在的な有害性が排除されたわけではない」とまとめている。これまでの研究では、NSS摂取による健康への影響(体重、糖尿病、がん、口腔衛生など)が示唆されていたが、一貫したエビデンスは得られていなかった。BMJ誌2019年1月2日号掲載の報告。

心筋梗塞患者、薬剤費負担なしの継続支援策は有効か/JAMA

 心筋梗塞(MI)患者において、P2Y12阻害薬の薬剤費の一部自己負担を補う商品券(バウチャー)を提供した場合、商品券を提供しなかった場合と比較して、患者報告によるP2Y12阻害薬服薬継続率の増加は3.3%であり、1年時における主要有害心血管イベント(MACE)について有意な低下は認められなかった。米国・Duke Clinical Research InstituteのTracy Y. Wang氏らが、18歳以上の急性MI患者を対象に、薬剤費自己負担の障壁を取り除くことによるP2Y12阻害薬服薬継続率とMACEリスクを検討した無作為化試験「ARTEMIS(Affordability and Real-World Antiplatelet Treatment Effectiveness After Myocardial Infarction Study)」の結果を報告した。ガイドラインではMI後1年間のP2Y12阻害薬治療が推奨されているが、推奨よりも早く中断する患者が多く、その理由として費用の問題が大きいことが推察されていた。JAMA誌2019年1月1・8日号掲載の報告。

血中hsCRP高値の現・元喫煙者、肺がんリスク高い/BMJ

 血中高感度C反応性蛋白(hsCRP)が高値の元喫煙者および現喫煙者は、肺がんリスクが高いことが示された。一方で、hsCRP値と肺腺がんリスクの関連は認められず、hsCRP値は、原因となるリスク因子ではなく肺がんの診断前マーカーとなりうる可能性が示されたという。国際がん研究機関(IARC、本部:フランス)のDavid C. Muller氏らが、20のコホート試験を基に行った、コホート内ケースコントロール試験の結果で、BMJ誌2019年1月3日号で発表した。先行研究では、CRPは全身性炎症のマーカーで、肺がんリスクと関連することが示されていた。しかし、喫煙状態別(喫煙歴なし、元喫煙、現喫煙)の関連について正確な推定値を示すことが可能な規模の試験はなかった。

急性STEMI、PCI中の早期にアルテプラーゼ投与は有効か/JAMA

 発症後6時間以内の急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中の補助的な低用量アルテプラーゼ冠動脈内投与は、微小血管閉塞量を低下しないことが示された。英国・グラスゴー大学のPeter J. McCartney氏らが440例の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年1月1・8日号で発表された。微小血管閉塞は概して、急性STEMI患者に影響を及ぼし、有害転帰と関連することが知られる。著者は「試験の結果は、このような治療法を支持しないものだった」とまとめている。

変形性膝関節症の痛み、薬物療法の長期効果は/JAMA

 変形性膝関節症患者における薬物療法による長期的な疼痛緩和効果には、プラセボと比較して考慮すべき不確実性が存在することが、イタリア・パドバ大学のDario Gregori氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。変形性関節症は、慢性で進行性の疾患だが、薬物療法は主に短期の検討が行われており、そのため長期の疾患管理における推奨治療が不明確になっているという。  研究グループは、変形性膝関節症患者を12ヵ月以上追跡した薬物療法の無作為化臨床試験を系統的にレビューし、ネットワークメタ解析を行った(パドバ大学などの助成による)。

リンゴ型の脂肪分布、腹部と臀部で異なる遺伝的機序が関与か/JAMA

 ウエスト/ヒップ比(WHR)の算出の基礎となる腹部(ウエスト)および殿大腿部(ヒップ)の脂肪分布には、それぞれ異なる遺伝メカニズムが関連している可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のLuca A. Lotta氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。一般にWHRで評価される体脂肪分布は、BMIとは独立の重要な心血管代謝疾患の寄与因子とされるが、腹部の高脂肪分布または殿大腿部の低脂肪分布によるWHR増加が心血管代謝疾患リスクに影響を及ぼすかは不明だという。

高カロリーなのはファストフードだけではない/BMJ

 外食のエネルギー量は、フルサービス食およびファストフード食のいずれもきわめて高く、むしろファストフード食のほうが低い傾向があり、これは広範な地域でみられる現象で、世界的な肥満の下支えとなっている可能性が、米国・タフツ大学のSusan B. Roberts氏らの調査で明らかとなった。肥満の有病率は多くの国で増加し続けている。大規模にチェーン展開しているレストランの栄養情報によると、ファストフードは世界的な肥満の最も重要な寄与因子とされるが、他の形式のレストランの食事については、エネルギー量の測定データがなく、肥満への寄与の程度はほとんど知られてないという。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

再入院削減プログラム、死亡率を増大?/JAMA

 米国のメディケア受給者では、再入院削減プログラムにより、心不全および肺炎による入院患者の退院後30日以内の死亡率がむしろ増加することが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのRishi K. Wadhera氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。HRRPは、「患者保護ならびに医療費負担適正化法(ACA)」の下で2010年に成立し、2012年からは、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)に、心不全、急性心筋梗塞、肺炎患者の30日再入院率が予想を上回った病院に対し制裁金を課すことが求められている。その成果として、HRRPはこれらの疾患による再入院率を抑制することが示されたが、死亡率への影響は知られていなかった。

集団感染発生の多剤耐性菌、温床は院内配管/NEJM

 スフィンゴモナス・コリエンシス(Sphingomonas koreensis)は、米国国立衛生研究所(NIH)臨床センターのインフラに時間と空間を超えて持続的に存在し、医療関連感染症を引き起こすヒト日和見病原体であることを、米国・国立ヒトゲノム研究所のRyan C. Johnson氏らがゲノム疫学調査で突き止めた。病院内の配管システムは、頻度は低いものの入院患者が感染する可能性がある日和見感染病原体の温床として知られている。今回の調査は、2016年に発生したスフィンゴモナス種細菌の集団感染を受けて行われた。NEJM誌2018年12月27日号掲載の報告。

子供がいる米国女医、職場内差別を経験/BMJ

 米国・カリフォルニア大学のMeghan C. Halley氏らが実施した大規模な質的研究の結果、子供を持つ女性医師は、母親ゆえに、頻繁で持続的な、時には露骨な差別を経験していることが明らかになった。そうした母親差別の経験は、他の専門職の女性らの報告と合致する一方で、医師研修に特有の側面もあること、また母親差別を助長する同僚(medical profession)が存在することも示唆されたという。先行研究で、女性医師の3分の2以上が性的な差別を、また女性臨床研究医の3分の1はセクシャルハラスメントを経験しているという報告はあったが、母親ゆえの差別あるいはその後の医師としてのキャリアへの影響に関するデータは限られていた。今回の結果を受けて著者は、「医学・医療分野における母親差別の影響を緩和するためには、出産・育児休暇、保育への取り組みの構造的な変化が必要である」と見解を述べている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

腎疾患に遺伝子診断は有用か/NEJM

 3,000例超のさまざまな慢性腎臓病患者の集団を対象とした検討で、エクソーム解析に基づく遺伝子診断率は、10%未満であることが明らかにされた。米国・コロンビア大学のEmily E. Groopman氏らによる検討の結果で、NEJM誌オンライン版2018年12月26日号で発表された。  研究グループは、慢性腎臓病の患者3,315例を含む2つのコホートを対象に、エクソーム解析と診断解析を行った。詳細な臨床データが入手できた患者について、診断率や、診断の臨床的意義、その他の医学的所見との関連を検証した。

英外食チェーン、推奨エネルギー量の料理は9%のみ/BMJ

 英国の主要外食チェーンで提供される主な食事のうち、英国公衆衛生局が推奨する1食当たりのエネルギー量が600kcal以下の食事はわずか9%である一方、47%に及ぶかなり多くの食事が1,000kcal以上とエネルギー量が過度であることが明らかになった。英国・リバプール大学のEric Robinson氏らが、英国の外食チェーン27社の食事を調査した結果で、著者は「ファストフード店の食事の栄養価は不十分だがきちんと表示はされている。一方で、英国のフルサービスで提供するレストランの食事のエネルギー量は過度な傾向がみられ、懸念の元である」と述べている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

mFOLFIRINOXが膵がん術後補助療法に有望/NEJM

 転移を有する膵がんの術後補助療法において、フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチンによる併用化学療法(修正FOLFIRINOX[mFOLFIRINOX])はゲムシタビン(GEM)療法に比べ、全生存期間が有意に延長する一方で、高い毒性発現率を伴うことが、フランス・ロレーヌ大学のThierry Conroy氏らが実施した「PRODIGE 24-ACCORD 24/CCTG PA 6試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年12月20日号に掲載された。膵がんの治療では、手術単独の5年生存率は約10%と低く、術後補助療法ではGEM(日本ではS-1のエビデンスもある)が標準治療とされるものの、2年以内に69~75%が再発する。転移を有する膵がんの1次治療では、従来のFOLFIRINOXはGEMに比べ、全生存期間を延長することが知られている。

脳梗塞/TIAへのクロピドグレル併用、ベストな投与期間は/BMJ

 高リスク一過性脳虚血発作(TIA)または軽症虚血性脳卒中の発症後24時間以内のクロピドグレル+アスピリンの抗血小板薬2剤併用療法は、1,000人当たりおよそ20人の脳卒中再発を予防できることが示された。また、2剤併用投与の中断は、21日以内に行い、できれば10日以内に行うのが、最大のベネフィットを享受かつ有害性を最小とできることも示唆されたという。中国・四川大学のQiukui Hao氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果で、BMJ誌2018年12月18日号で発表された。

地域別の脳卒中生涯リスク、東アジアで39%/NEJM

 2016年において世界全体の25歳以降の脳卒中生涯リスクは、男女ともに約25%であり、同リスクは地理的ばらつきがみられ、東アジア、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパで高率であった。米国・ワシントン大学のGregory A. Roth氏らGBD 2016 Lifetime Risk of Stroke Collaboratorsが、1990年と2016年の脳卒中生涯リスクについて調べ明らかにした。脳卒中生涯リスクは、限られた選択的集団で算出されているが、研究グループは、主要疾患有病率の包括的な研究データを用いて、地域別、国別、および世界全体レベルでの推算を行った。NEJM誌2018年12月20日号掲載の報告。

ソラフェニブが進行・難治性デスモイド腫瘍に高い有効性/NEJM

 進行性、再発性または症候性のデスモイド腫瘍の患者において、ソラフェニブは無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、持続性の奏効をもたらすことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのMrinal M. Gounder氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年12月20日号に掲載された。デスモイド腫瘍(侵襲性線維腫症とも呼ばれる)は、あらゆる解剖学的部位に発生し、腸間膜、神経血管構造、臓器に浸潤する可能性のある結合組織腫瘍であり、標準治療は確立されていない。ソラフェニブは、複数の標的を持つ受容体チロシンキナーゼ阻害薬であり、レトロスペクティブな解析では、デスモイド腫瘍に対し安全に投与可能であり、奏効率は25%と報告されている。

非がん性慢性疼痛へのオピオイド、有益性と有害性/JAMA

 非がん性慢性疼痛に対するオピオイド使用は、プラセボとの比較において疼痛および身体機能の改善は統計学的に有意ではあるがわずかであり、嘔吐リスクは増大することが示された。また、オピオイド使用と非オピオイド使用の比較では、低~中程度のエビデンスであるが、疼痛、身体機能に関するベネフィットは同程度であった。カナダ・マックマスター大学のJason W. Busse氏らが、非がん性慢性疼痛のオピオイド使用に関する無作為化試験(RCT)のシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかにした。非がん性慢性疼痛に対するオピオイドの有害性および有益性は、不明なままであった。JAMA誌2018年12月18日号掲載の報告。

米国総合診療医の「時間がない」は本当か/BMJ

 米国のプライマリケアに従事する総合診療医(general practitioner:GP)の「患者との共同意思決定(shared decision making:SDM)や、予防的ケアをする時間がない」という主張について、米国・ミシガン大学のTanner J. Caverly氏らがマイクロシミュレーション試験で調べた結果、これまで広く持たれてきた疑念「GPは貴重な時間を“個人的なケア”の活動に費やしている」ことが確認されたという。著者は、「ひとたび個人的な時間が膨大であることを知らしめれば、プライマリケアの権威者は、増大している臨床的要求に、より多くの個人的な時間を再割当するようGPを“説得する”ための方法を、試しはじめることができるだろう」と述べている。BMJ誌2018年12月13日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

飲酒運転、基準値下げても交通事故は減少せず/Lancet

 交通事故は世界中で公衆衛生上の大きな問題である。そのリスク因子として重要なのが死傷事故原因の大半を占める飲酒運転で、各国および司法権が及ぶ地域ではドライバーの血中アルコール濃度の規制が行われている。スコットランドでは、2014年12月5日に基準値が0.08g/dLから0.05g/dLへ引き下げられた。しかし、英国・グラスゴー大学のHoura Haghpanahan氏らが行った自然実験(natural experiment)の結果、規制変更によって、on-trade酒類(バーやレストランなどの飲食店)からの1人当たりのアルコール消費量はわずかに減少したが、交通事故減少は認められなかったという。著者は、「取り締まり(検問による呼気検査など)が不十分であったことが1つ考えられるが、ドライバーの血中アルコール濃度を厳しく規制するのみでは、交通事故は減少しないことが示唆された」と指摘し、「今回の結果は、同様にドライバーへの規制強化を考える国々にとって重要な政策的意義を持つものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年12月12日号掲載の報告。