腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:263

症状からの逆引きによるirAEマニュアル/日本肺癌学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、今後肺がん治療の中心になっていくと思われる。それに伴い、ICIによる有害事象(irAE)の対策をさらに整備していく必要がある。滋賀県・市立長浜病院 呼吸器内科 野口 哲男氏は、症状からの逆引きによるirAEマニュアルを作成し、第59回日本肺癌学会学術集会ワークショップ6で紹介した。  とくに夜間・時間外の救急外来では、患者は症状があって受診する。それはirAEにおいても同様である。あらかじめirAEの種類や症状を知っておくことで、早期発見と対処につながる。とはいえ、irAEの症状は多岐にわたり、発現パターンもさまざまである。問診で患者から診断に結びつく症状を申告するとは限らない。さらに、ICIを用いることのない診療科や研修医がirAEの初診を行うことも考えられる。このようなことから、症状から疑わしい病名を想起させ、その後の対応を調べられる、実際に即したirAEマニュアルが必要となる。

HPV陽性中咽頭がんへのセツキシマブ、5年生存率と毒性は/Lancet

 HPV陽性中咽頭がんについて、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは放射線療法+シスプラチンに対し、全生存(OS)および無増悪生存(PFS)ともに劣性であることが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaura L. Gillison氏らによる多施設共同無作為化非劣性試験「RTOG 1016試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。放射線療法+高用量(100mg/m2)シスプラチンによるHPV陽性中咽頭がん治療の生存率は高いが(3年生存率はHPV陽性82.4%、HPV陰性57.1%)、若年患者における生存率の高さが、治療関連の後発性毒性への懸念を増している。シスプラチンの代わりにセツキシマブを併用したレジメンが、高い生存率を維持し治療関連の毒性を低下するかは不明であった。

HPV陽性中咽頭がん、セツキシマブvs.標準レジメン/Lancet

 低リスクHPV陽性中咽頭がんに対して、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは、標準レジメンの放射線療法+シスプラチンと比較して毒性低下のベネフィットは示されず、腫瘍コントロールに関しては重大な損失をもたらすことが示された。英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らによる第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「De-ESCALaTE HPV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。HPV陽性中咽頭がんの発生は急速に増大しており、とくに若年成人を急襲している。セツキシマブは、標準治療のシスプラチンの毒性を低下しde-escalationな放射線併用療法を可能にするものとして提案されたが、この戦略の有効性に関して無作為化試験に基づくエビデンスはなかった。

EPAとアスピリン、単独/併用の大腸腺腫予防効果は?/Lancet

 オメガ3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)もアスピリンも、大腸腺腫を有する患者割合の低下と関連していなかった。英国・リーズ大学のMark A. Hull氏らが、EPAとアスピリンの単独または併用投与の大腸腺腫予防効果を検証した、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「seAFOod Polyp Prevention trial」の結果を報告した。EPAとアスピリンはともに、大腸がんの化学的予防に関するproof of concept試験で、有効性と優れた安全性プロファイルが示されていた。Lancet誌オンライン版2018年11月19日号掲載の報告。

免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとnab-PTXの併用は未治療の進行/転移性乳がんの予後を改善する(解説:矢形寛氏)-962

乳がん領域での免疫チェックポイント阻害薬の有効性に関する初のP3 RCTの報告である。化学療法は腫瘍抗原の放出と免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を高めるようであり、とくにタキサンはToll様受容体の活性化と樹状細胞の活動性を促進するため、併用効果が期待されてきた。本試験ではnab-PTXとヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブの併用効果が検証され、追跡期間約1年でPFSの有意性が示された。また、PD-L1が免疫染色にて腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上発現がみられるものは、より有効性があるようであった。Grade3以上のアテゾリズマブに関連する有害事象はとくにないようであった。OSはmarginalであったが、症例数の設定とTNBCという一般的に予後が短い特殊な集団であることを考えると、OSへの寄与も十分見込めるのではないかと考えられる。

オメガ3脂肪酸、心血管疾患・がんの1次予防効果なし?/NEJM

 n-3脂肪酸サプリメントはプラセボとの比較において、主要心血管イベントやがん発症の低下に結びつかないことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoAnn E. Manson氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験「VITAL試験」の結果、示された。魚介類に含まれるn-3(オメガ3とも呼ぶ)脂肪酸は、心血管疾患やがんリスクを抑制することが、いくつかの観察試験で示されている。しかし、これらリスクが通常の一般集団において、n-3脂肪酸サプリメントにそのような効果があるのかは明らかではなかった。NEJM誌オンライン版2018年11月10日号掲載の報告。

フルベストラント+パルボシクリブはOSも延長しうる(解説:矢形寛氏)-963

フルベストラント+パルボシクリブがフルベストラント単独に比べPFSを延長することはすでに示されている。今回は最終結果ではなく、生存者が40%になったところでの解析である。OSにおいて統計学的有意性はないものの、6.9ヵ月の絶対差が認められた。あらかじめ計画されたサブグループ解析では、過去に内分泌療法の感受性があった患者で、OSに10.0ヵ月の実質的な差がみられた。 本研究における主要評価項目はPFSであり、症例数もPFSを基準として設定しているため、副次評価項目であるOSをみるには絶対数が少ない。しかし、大規模な症例数での臨床試験は困難であり、PFSの有意性をみつつ、少ない症例数からのOSへの影響をみていく必要がある。臨床的感覚でも過去の内分泌療法薬に感受性があった患者での効果はより大きく、その点でも本結果はリーズナブルと思われる。より長期的な観察での生存率への影響をみたい。

新たな免疫CP阻害薬《私を食べて》-さまざまながん腫に対する有用性を示唆(解説:大田雅嗣 氏)-961

NEJM誌11月1日号に「CD47 Blockade by Hu5F9-G4 and Rituximab in Non-Hodgkin’s Lymphoma.」のタイトルで論文が掲載された。スタンフォード大学のWeissmanらのグループの長年にわたる基礎研究が実を結び治療薬として脚光を浴びることとなった。CD47(インテグリン関連蛋白)はマクロファージ、樹状細胞などが介するphagocytosisの調節機能を担う蛋白で種々の細胞表面に発現している。CD47は免疫担当細胞の細胞表面膜の受容体の1つであるSIRPα(signal regulating protein α)のリガンドでもあり、双方の結合によりphagocytosisを抑制する“do not eat me”シグナルを伝達することが判明しており、腫瘍細胞は免疫担当細胞による捕食から身を守るシステムを有している。

アテゾリズマブ+CBDCA+nab-PTX、進行肺がん1次治療でPD-L1発現によらずPFS延長(IMpower130)/ESMO2018

 StageIV非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療におけるカルボプラチンとnab-パクリタキセルの併用療法へのPD-L1阻害薬アテゾリズマブの上乗せ効果を検討した第III相IMpower130試験の結果、アテゾリズマブ併用群でPD-L1発現状態にかかわらず、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが発表された。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、AUSL della Romagna-RavennaのFederico Cappuzzo氏が発表した。

ALK陽性肺がんに、第3世代ALK-TKIロルラチニブ発売/ファイザー

 ファイザー株式会社は、2018年11月20日、「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能・効果で、ロルラチニブ(商品名:ローブレナ錠25mg、同100mg)を発売した。  ALK陽性肺がん治療は2012年のザーコリの発売以降、合計3剤のALK阻害剤が上市され、治療選択肢が広がっている。一方で、遺伝子の耐性変異により既存薬で効果が得られなくなるといった治療上の課題が存在していた。