腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:400

新規分子標的薬の開発に従来型の大規模臨床試験は必要か?~第10回日本臨床腫瘍学会学術集会

 がん治療における「個別化治療」は、最近の分子標的薬剤の開発によって現実化してきている。第10回日本臨床腫瘍学会学術総会(2012年7月26~28日、大阪国際会議場)のシンポジウム5「Biomarkerによる個別化治療の進歩」では、各領域がんの個別化治療の現状と将来展望について講演が行われた。「バイオマーカーに基づく非小細胞肺癌における治療開発」と題して講演を行った近畿大学の岡本勇氏は、新規分子標的薬の開発における臨床試験について、「非小細胞肺がんは、遺伝子変異別に薬剤を投与する時代になり、各遺伝子変異の頻度が非常に少ないこともわかってきたことから、従来型の大規模臨床試験による新薬開発からマインドを変える必要がある」と提言した。

MEK阻害薬トラメチニブ、進行期メラノーマ患者の生存改善

米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのKeith T. Flaherty氏らによる第3相無作為化オープンラベル試験の結果、新規の経口選択的MEK阻害薬トラメチニブ(本邦未承認)は従来の化学療法と比べて、BRAF変異のある進行期メラノーマ患者の無増悪生存期間と全生存期間を改善することが報告された。進行期メラノーマ患者ではBRAF変異が50%でみられ、同集団への選択的BRAF阻害薬による治療は、化学療法と比較し生存を改善するが、たいていは短期間であった。一方でMEK阻害薬については、BRAF変異のある患者を対象とした第1相、第2相試験で、腫瘍退縮と病勢安定のエビデンスが示され新規の治療薬として有望視されているという。NEJM誌2012年7月12日号(オンライン版2012年6月4日号)掲載報告より。

今後も評価の価値あり…転移性乳がんのマルチチロシンキナーゼ阻害薬TSU-68

TSU-68はVEGFR-2、血小板由来増殖因子受容体と線維芽細胞成長因子受容体を阻害する新たなマルチキナーゼ阻害薬である。東海大学のSuzuki氏らは、アントラサイクリンレジメン+タキサンによる術前治療にも関わらず進行した転移性乳がん患者におけるTSU-68単剤療法の有効性と安全性を評価する臨床第II相試験を実施し、その結果をInternational Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2012年5月15日号に報告した。

アジアの臨床腫瘍学のエピセンターを目指すJSMO2012 第10回日本臨床腫瘍学会学術集会プレスセミナーより

今年の日本臨床腫瘍学会(以下、JSMO)学術集会は10周年記念大会として、"Beyond the Global Standard of Medical Oncology 縲弃erspectives from Asia縲鰀"をテーマとして掲げ 、7月26日~28日の3日間、大阪国際会議場で開催される。10ヵ所の講演会場とポスター会場を使い、1,000題を超えるプレゼンテーションが行われる。今年の学術集会の見どころを、13日に行われたプレスセミナーで、会長である近畿大学医学部内科学教室腫瘍内科部門 教授 中川和彦氏が紹介した。

新たな分子標的薬の登場で腎細胞がん治療はどう変わるのか?

腎細胞がん治療において、現在わが国で発売されている分子標的薬は4剤あり、日本泌尿器科学会の腎癌診療ガイドライン2011年版では、1次治療ではMSKCCリスク分類別、2次治療では前治療別に薬剤が推奨されている。そのなかで、新たな分子標的薬であるアキシチニブ(商品名:インライタ)が、2012年6月29日、根治切除不能または転移性の腎細胞がんの治療薬として承認された。今回、ファイザー株式会社によるプレスセミナーが7月11日に開催され、慶應義塾大学泌尿器科教授 大家基嗣氏と近畿大学泌尿器科教授 植村天受氏が、腎細胞がん治療における現状・課題、アキシチニブの特性や臨床成績、今後の展望などについて講演した。その内容をレポートする。