腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:84

切除不能局所進行NSCLC、CRT後デュルバルマブのリアルワールドデータ(PACIFIC-R)/JTO

 切除不能なStage III 非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法は、1,000例を超える症例のリアルワールドデータでも有効性が示された。  同治療は第III相PACIFIC試験で有用性が証明され、標準療法として確立されている。一方、実臨床での有用性についての検討が望まれていた。そのような中、リアルワールドの無増悪生存期間 (rwPFS) を評価したPACIFIC-R観察研究の結果がJournal of Thoracic Oncology誌で発表された。

再発リスクの高い腎細胞がん術後患者においてアテゾリズマブ補助療法は有効性を見出せず(解説:宮嶋哲氏)

転移性腎細胞がんに対する標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬やチロシンキナーゼ阻害薬の併用療法である。抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブもまた、その有効性が期待される薬剤であるが、本研究は28ヵ国215施設において、外科的切除後に再発リスクの高い腎細胞がん患者を対象に、アテゾリズマブ補助療法の有効性を検討した第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験である(IMmotion010試験)。主要評価項目はDFS。

ガーダントヘルスジャパン、Guardant360 CDxでエスアールエルと業務提携

 ガーダントヘルスジャパンとエスアールエルは、固形がん患者を対象とした包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)用リキッドバイオプシー検査Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(Guardant360CDx)のサービス提供のために業務提携契約を締結した。  ガーダントヘルスジャパンは、今回の業務提携によりSRLの遺伝子検査領域におけるロジスティックスならびにネットワーク、サービスを活用することが可能となる。SRLが医療機関から検体を受理してから14日を目途に、国立がん研究センター、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)およびGuardant360 CDxがん遺伝子パネル検査ポータルに解析結果を提供する。

家族性腺腫性ポリポーシス、新たな治療戦略を日本で開発(J-FAPP Study III)

 京都府立医科大学の石川 秀樹氏らが大腸がんの超高危険群である家族性大腸腺腫症(FAP)患者に対し、予防のための内視鏡的積極的摘除術を世界で初めて開発したことがEndoscopy誌2022年10月10日号オンライン版に掲載された。  結腸全摘は、FAPの標準治療であるにもかかわらず、若年層のFAP患者が手術を延期したり、手術を拒否したりするケースもあるという。そこで、同氏らはFAP にきわめて多発する大腸ポリープのダウンステージングを目的とする積極的な内視鏡的摘除(IDP)の有効性を評価することを目的に内視鏡的積極的摘除術の多施設共同介入試験(J-FAPP Study III)を実施した。本試験は22施設で実施した単群介入研究で、参加者は2012年11月24日~2014年9月25日の間に登録。結腸切除術を受けていない、または結腸切除術を受けたが大腸が10cm以上残っている16歳以上で、100個のポリープがあったFAP患者を対象とした。IDPでは、10mm以上の大腸ポリープが摘除され、続いて5mm以上のポリープが摘除された。主要評価項目は5年間の介入期間中の結腸切除術の有無、副次評価項目は内視鏡による穿孔/出血、結腸直腸がんの発生、内視鏡治療に適さない腫瘍の発生、結腸直腸がんおよびその他の原因による死亡だった。

ニボルマブ+イピリムマブによるNSCLC1次治療、CheckMate227試験5年追跡結果/JCO

 CheckMate 227 Part1の5年間の結果がJournal of Clinical Oncology誌2022年10月12日号で発表された。ニボルマブとイピリムマブの併用は、PD-L1の状態にかかわらず、転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の5年生存(OS)率を改善していた。  最低追跡期間61.3ヵ月の解析で、PD-L1≧1%集団の5年OS率はニボルマブ+イピリムマブ群の24%に対し、化学療法群では14%であった。PD-L1<1%集団では、ニボルマブ+イピリムマブ群の19%に対し、化学療法群では7%であった。

慢性的なストレスはがんによる死亡と関連

 慢性的なストレスを抱えている人は、将来的にがんにより死亡するリスクが有意に高いことが、米国国民健康栄養調査(NHANES)の30年以上に及ぶデータの分析から明らかになった。人種、性別、病歴などの多数の要因を調整した後でも、生涯にわたるストレスにより、がんによる死亡リスクが14%上昇する可能性が示唆されたという。米オーガスタ大学ジョージア医学部のJustin Moore氏らによるこの研究の詳細は、「SSM-Population Health」9月号に掲載された。  Moore氏によると、慢性的なストレスとがんによる死亡との関連は、「アロスタティック負荷」に起因するという。人間の体には、急性のストレスに適応して身体の恒常性を維持する仕組みが備わっている(アロスタシス)。しかし、ストレス負荷が長引いたり過度になったりすると、身体の恒常性維持のバランスが失われ、それが原因で身体に障害が発生することがある。この負荷をアロスタティック負荷という。同氏によると、アロスタティック負荷は、BMIや高血圧、血糖値やコレステロール値など、さまざまな生体マーカーにより具体的な数字として測定可能だという。

LINEを使った患者報告システムを副作用マネジメントに活かす/日本癌治療学会

 薬剤の副作用は、医師の評価と患者の捉え方が大きく異なるケースが多いことは以前から報告されていた。PRO(Patient Reported Outcome)とは、医師の評価を経ず、患者自身が副作用を報告するシステムを指し、これを電子的に行うePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的な患者報告アウトカム)取得システムが世界各地で開発され、実際の運用や効果測定のための臨床試験が行われている。  慶應義塾大学が開発した乳がん患者を対象としたePROについて、同大外科学教室の林田 哲氏が第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)上で発表した。

futibatinib、既治療の切除不能肝内胆管がんに対しFDAの承認取得/大鵬

 大鵬薬品工業は、2022年10月3日、米国子会社の大鵬オンコロジーが、FGFR阻害薬futibatinib(開発コード:TAS-120)について、「前治療歴を有するFGFR2融合遺伝子またはその他の再構成を伴う切除不能な局所進行または転移性肝内胆管がん」の適応で米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。今回の承認は、FOENIX-CCA2試験での全奏効率(ORR)と奏効期間結果に基づくものである。  FOENIX-CCA2試験は、FGFR2遺伝子融合またはその他の再構成を有する切除不能な肝内胆管がん患者103例を対象とした第II相試験である。全身療法治療歴のある患者を対象に、病勢進行または許容できない毒性が認められるまでfutibatinib20mg/日を経口投与した。本試験の主要評価項目は全奏効率である。

甘い飲み物でがん死リスク上昇の可能性

 甘い飲み物を過剰に摂取すると、がんによる死亡が増える可能性を示唆するデータが報告された。米国がん協会(ACS)のMarjorie McCullough氏らの研究によるもので、詳細は「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」10月号に掲載された。論文の筆頭著者であるMcCullough氏は、「残念ながら、米国人は食事ガイドラインで推奨されている砂糖摂取量の上限を超えて摂取している。また、加糖飲料は体重増加や肥満のリスク因子として知られている」と語っている。  McCullough氏らは、がん予防に関する前向き研究(cancer prevention study-II;CPS-II)のデータを用いて、加糖飲料(sugar-sweetened beverage;SSB)および人工甘味料入り飲料(artificially-sweetened beverage;ASB)の摂取量と、がん死との関連を検討。1982年にSSBとASBの摂取量が調査されていた、がん既往歴のないCPS-II参加者93万4,777人を対象として、2016年までがん死の発生を追跡。がん死については、全てのがんによる死亡と、肥満が関連しているがんによる死亡、および20種類の個別のがんによる死亡について検討した。SSBやASBの摂取量とがん死の関連は多変量Cox比例ハザードモデルにより解析し、調整因子にBMIを加えた場合と加えない場合の2通りの検討を行った。

転移乳がんへの局所療法はescalationなのか?/日本癌治療学会

 転移乳がんに対する積極的な局所療法の追加は、がんが治癒しなくても薬剤使用量を減らすことができればescalationではなくde-escalationかもしれない。第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)において、岡山大学の枝園 忠彦氏は「転移乳がんに対する局所療法はescalationかde-escalationか?」と題した講演で、3つのクリニカルクエスチョンについて前向き試験の結果を検証し、転移乳がんにおける局所療法の意義について考察した。  転移乳がんにおいて治癒は難しいが、ある特定の患者ではきわめて長期生存する可能性があり、近年そのような症例が増えてきているという。枝園氏はその背景として、PETなどの画像検査の進歩により術後早期に微小転移の描出が可能となったこと、薬物療法が目まぐるしく進歩していること、麻酔や手術が低侵襲で安全になってきていること、SBRT(体幹部定位放射線治療)が保険適用され根治照射が可能になったことを挙げた。この状況の下、3つのクリニカルクエスチョンについて考察した。