耳鼻咽喉科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

日本のメモリークリニックにおける聴覚障害や社会的関係とBPSDとの関連性

 認知症の行動・心理症状(BPSD)は、認知症患者とその介護者のQOLに悪影響を及ぼす。そのため、BPSDを予防するための修正可能なリスク因子を特定することは、非常に重要である。滋賀医科大学の田中 早貴氏らは、聴覚障害、社会的関係とBPSDとの関連を調査するため、横断的研究を実施した。Psychogeriatrics誌2025年1月号の報告。  対象は、2023年7月~2024年3月に日本のメモリークリニックを受診した患者179例。純音聴力検査および質問票によるインタビューを行い、医療記録をレビューした。聴覚障害の定義は、聴力がより良好な耳における純音聴力検査で測定された平均聴力レベル40dB以上とした。BPSDの有無および重症度の評価には、BPSD25Qベースの質問票を用いた。交絡因子で調整したのち、聴覚障害、社会的関係指標とBPSDの有無および重症度との関連を評価するため、部分回帰係数を算出する多重回帰分析を行った。

シスプラチン不耐の頭頸部がん患者に最善の治療選択肢は?

 シスプラチンは頭頸部がん患者にとって頼りになる化学療法であるが、ほぼ3分の1の患者はその副作用に耐えられず、治療を中止してしまう。こうした患者に対する最善のセカンドライン治療薬に関して、新たな臨床試験で驚くべき結果が示された。それは、頭頸部がんの治療において、モノクローナル抗体のセツキシマブ(商品名アービタックス)が、より新しい薬である免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブ(商品名イミフィンジ)よりも有効性が高いというものだ。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)クリニカル・トランスレーショナルリサーチ分野のLoren Mell氏らが実施したこの臨床試験の結果は、「The Lancet Oncology」に11月14日掲載された。

スタチン、上咽頭がんCCRT中の投与で死亡リスク減

 スタチンによる、さまざまな悪性腫瘍に対する潜在的な抗がん作用が注目されている。頭頸部がんにおいては、診断前後のスタチンの使用が化学療法の有効性を高め、がん幹細胞の活性を抑制し、放射線療法に伴う心血管および脳血管の合併症を減少させる可能性があることが示唆されている。  進行上咽頭がん(nasopharyngeal cancer)患者における同時化学放射線療法(CCRT)中のスタチン使用が、全生存率およびがん特異的生存率に与える影響を評価する研究が報告された。台湾・台中慈済病院のJung-Min Yu氏らによって行われた本研究は、Journal of the National Comprehensive Cancer Network誌2024年11月号に掲載された。

味覚異常の2割は口腔疾患が主因で半数強に亜鉛以外の治療が必要―歯科外来調査

 歯科における味覚障害患者の特徴を詳細に検討した結果が報告された。患者の約2割は口腔疾患が主因であり、半数強は亜鉛製剤処方以外の治療が必要だったという。北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座の坂田健一郎氏、板垣竜樹氏らの研究によるもので、「Biomedicines」に論文が9月23日掲載された。  近年、味覚異常の患者数が増加傾向にあり、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックで顕著に増加した。味覚異常の原因として古くから亜鉛欠乏が知られており、治療として通常まず亜鉛製剤の投与が行われる。しかし、亜鉛製剤が無効な症例も少なくない。また味覚障害の原因に関する研究は、耳鼻咽喉科で行われたものや既に何らかの基礎疾患を有する患者群での報告が多くを占めている。これらを背景として坂田氏らは、北海道大学病院口腔科の患者データを用いた後ろ向き研究を行った。

鼻腔ぬぐい液検査でCOVID-19の重症度を予測できる?

 鼻腔ぬぐい液を用いた検査が、新型コロナウイルスに感染した人のその後の重症度を医師が予測する助けとなる可能性のあることが、新たな研究で示された。この研究結果を報告した、米エモリー大学ヒト免疫センター(Lowance Center for Human Immunology)およびエモリー・ワクチンセンターのEliver Ghosn氏らによると、軽度または中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患者の70%以上で特定の抗体が作られており、これらの抗体が、症状の軽減や優れた免疫応答、回復の速さに関連していることが明らかになったという。この研究の詳細は、「Science Translational Medicine」11月6日号に掲載された。

加齢性難聴予防に「聴こえ8030運動」を推進/耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 加齢性難聴は、日常のQOLを低下させるだけでなく、近年の研究から認知症のリスクとなることも知られている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、都内で日本医学会連合TEAM事業の一環として「多領域の専門家が挑む加齢性難聴とその社会的課題」をテーマに、セミナーを開催した。本事業では「加齢性難聴の啓発に基づく健康寿命延伸事業」に取り組んでおり、主催した日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では「聴こえ8030運動」を推進している。当日は、加齢性難聴対策の概要や認知症との関係、学会の取り組みなどが講演された。

世界初の軟骨伝導集音器、補聴器との違いや利便性とは

 世界初の軟骨伝導集音器に関する特許を有し、販売を行っているCCHサウンド(以下、CCH)が第6回ヘルスケアベンチャー大賞に輝いた―。CCHは細井 裕司氏(奈良県立医科大学 学長)が発見した“軟骨伝導”という聴覚技術を応用し、役所や金融機関での円滑なコミュニケーションを支援する『窓口用軟骨伝導イヤホン』や日常生活で会話を促進し認知症予防に役立つ『軟骨伝導集音器』を発売しているベンチャー企業である。本稿では、10月25日に開催されたヘルスケアベンチャー大賞の最終審査会におけるCCH代表取締役社長の中川 雅永氏によるプレゼンテーション内容を交えて、補聴器との違いや利便性についてお伝えする。

難聴は認知機能の低下につながる?

 フランスの大規模研究において、成人の聴覚障害(難聴)は認知症と関連することが明らかにされた。論文の筆頭著者であるパリシテ大学(フランス)のBaptiste Grenier氏は、「認知機能低下がもたらす大きな負担と、認知機能低下を治癒する治療法がないことを考え合わせると、修正可能なリスク因子を特定することが重要だ」との考えを示している。この研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。  この研究でGrenier氏らは、2012年1月1日から2020年12月31日の間に募集されたCONSTANCESコホート研究参加者6万2,072人(45〜69歳、平均年齢57.4歳、女性52%)のデータの縦断的解析を行い、客観的に測定された難聴と認知機能との関連を評価した。これらの研究参加者の認知機能は、試験登録時に5種類の検査から成る認知機能評価バッテリーにより評価されていた。主成分分析により算出された認知機能スコアが分布の25パーセンタイル以下である場合を認知機能障害があると判断された。

インフルワクチンの日本人の心不全に対する影響~PARALLEL-HF試験サブ解析/日本心不全学会

 呼吸器感染症に代表されるインフルエンザ感染は、心筋へウイルスが移行する直接作用、炎症惹起性サイトカイン放出による全身反応などによって心血管障害を及ぼす。また、プラークの不安定化、炎症による心拍数の不安定化への影響なども報告されているが、海外研究であるPARADIGM-HF試験が検証したところによると、インフルエンザワクチン接種が心不全患者の死亡リスク低下と関連する可能性を示唆している。

歯周病原菌は頭頸部がんのリスクを高める?

 歯周病原菌は、頭頸部がんリスクを高める可能性があるようだ。新たな研究で、13種類の口腔内細菌が頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)のリスク上昇と関連していることが示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部人口健康学教授のRichard Hayes氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に9月26日掲載された。Hayes氏は、「われわれの研究結果は、口腔衛生習慣を維持すべきことに対する新たな理由を示すものだ。フロスを使っての歯磨きは、歯周病だけでなく頭頸部がんの予防にも役立つ可能性がある」と述べている。