耳鼻咽喉科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

難聴は認知機能の低下につながる?

 フランスの大規模研究において、成人の聴覚障害(難聴)は認知症と関連することが明らかにされた。論文の筆頭著者であるパリシテ大学(フランス)のBaptiste Grenier氏は、「認知機能低下がもたらす大きな負担と、認知機能低下を治癒する治療法がないことを考え合わせると、修正可能なリスク因子を特定することが重要だ」との考えを示している。この研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。  この研究でGrenier氏らは、2012年1月1日から2020年12月31日の間に募集されたCONSTANCESコホート研究参加者6万2,072人(45〜69歳、平均年齢57.4歳、女性52%)のデータの縦断的解析を行い、客観的に測定された難聴と認知機能との関連を評価した。これらの研究参加者の認知機能は、試験登録時に5種類の検査から成る認知機能評価バッテリーにより評価されていた。主成分分析により算出された認知機能スコアが分布の25パーセンタイル以下である場合を認知機能障害があると判断された。

インフルワクチンの日本人の心不全に対する影響~PARALLEL-HF試験サブ解析/日本心不全学会

 呼吸器感染症に代表されるインフルエンザ感染は、心筋へウイルスが移行する直接作用、炎症惹起性サイトカイン放出による全身反応などによって心血管障害を及ぼす。また、プラークの不安定化、炎症による心拍数の不安定化への影響なども報告されているが、海外研究であるPARADIGM-HF試験が検証したところによると、インフルエンザワクチン接種が心不全患者の死亡リスク低下と関連する可能性を示唆している。

歯周病原菌は頭頸部がんのリスクを高める?

 歯周病原菌は、頭頸部がんリスクを高める可能性があるようだ。新たな研究で、13種類の口腔内細菌が頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)のリスク上昇と関連していることが示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部人口健康学教授のRichard Hayes氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に9月26日掲載された。Hayes氏は、「われわれの研究結果は、口腔衛生習慣を維持すべきことに対する新たな理由を示すものだ。フロスを使っての歯磨きは、歯周病だけでなく頭頸部がんの予防にも役立つ可能性がある」と述べている。

ウイルスを寄せ付けない鼻スプレーを開発

 薬剤を含まない鼻スプレーが、理論的には、マスク着用よりもインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどの呼吸器系病原体の拡散を防ぐのに効果的である可能性を示唆する研究が報告された。このスプレーに含まれている医学的に不活性な成分が、人に感染する前に鼻の中の病原体を捕らえるのだという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院麻酔科のNitin Joshi氏らによるこの研究結果は、「Advanced Materials」に9月24日掲載された。  論文の責任著者の一人である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJeffrey Karp氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、呼吸器系病原体が非常に短期間で、人類に極めて大きな影響を与えることをわれわれに示した。その脅威は、今も続いている」と話す。

マイナ保険証にまだ不安があると回答した人は約半数/アイスタット

 マイナンバーカード(マイナカード)の活用場面が日々拡大している。最近では、役所の窓口だけでなく、医療機関や薬局でも健康保険証とマイナカードが一体化された「マイナ保険証」の利用も増えている。とくにマイナ保険証では、所持者の同意があれば診療・薬剤情報が提供されることもあり、今後、全国のどこの医療機関であってもそれらを基に正確な診療ができ、医療費控除の簡便化できるなどのメリットが期待されている。その一方で、個人情報の流出や情報の悪用、デジタル機器の操作に慣れていない高齢者への対策など課題もある。  そこでアイスタットは、「マイナ保険証に関するアンケート」を8月に行った。

重篤な薬疹を起こしやすい経口抗菌薬は?/JAMA

 一般的に処方される経口抗菌薬の中には、マクロライド系薬と比較して救急外来受診または入院に至る重篤な皮膚有害反応(cADR)のリスクが高い薬剤があり、とくにスルホンアミド系とセファロスポリン系で最も高いことが、カナダ・トロント大学のErika Y. Lee氏らによるコホート内症例対照研究の結果で示された。重篤なcADRは、皮膚や内臓に生じる生命を脅かす可能性のある薬物過敏症反応である。抗菌薬はこれらの原因として知られているが、抗菌薬のクラス間でリスクを比較した研究はこれまでなかった。結果を踏まえて著者は、「処方者は、臨床的に適切な場合はリスクの低い抗菌薬を優先して使用すべきである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年8月8日号掲載の報告。

cfDNAでHER2陽性の固形がん、T-DXdの奏効率56.5%(HERALD)/JCO

 抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、前治療歴があり代替の治療手段のない切除不能または転移を有するHER2陽性(IHC 3+)固形がんについて、米国食品医薬品局(FDA)より2024年4月に迅速承認を取得している1)。本承認は、組織検体をもとにHER2陽性(IHC3+)が認められた患者での有効性が評価されており、リキッドバイオプシー検体でも同様の結果が得られるかは、明らかになっていなかった。そこで、血中遊離DNA(cfDNA)でERBB2(HER2)遺伝子増幅が検出された切除不能固形がん患者を対象に、医師主導治験として、国内多施設共同第II相単群試験「HERALD/EPOC1806試験」が実施された。その結果、対象患者は前治療ライン数中央値3であったが、奏効率(ORR)は56.5%と高率であった。本研究結果は、八木澤 允貴氏(いまいホームケアクリニック)らによって、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年8月1日号で報告された。

日本人高齢者の難聴と認知症との関係

 日本では、高齢者の補聴器装着率が他の先進国より低いといわれている。このボトルネックを特定し、対策を講じることは重要である。広島市立広島市民病院の福増 一郎氏らは、難聴と認知症との関係についての認知向上が、聴力検査や補聴器装着に意義があるかを調査した。Auris Nasus Larynx誌2024年8月号の報告。  総合病院を受診した65歳以上の参加者を対象にアンケート調査を実施し、次の背景因子を調査した。 (1)最近の聴力検査歴 (2)耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を希望するか (3)難聴と認知症との関係についての認知状況 (4)補聴器の装着について

日本人で増加傾向の口腔がん、その最大要因とはー診療ガイドライン改訂

 『口腔癌診療ガイドライン2023年版 第4版』が昨年11月に4年ぶりに改訂された。口腔がんは歯科医も治療を担う希少がんだが、口腔がんを口内炎などと見間違われるケースは稀ではないという。そこで今回、日本口腔腫瘍学会学術委員会『口腔癌診療ガイドライン』改定委員会の委員長を務めた栗田 浩氏(信州大学医学部歯科口腔外科学 教授)に口腔がんの疫学や鑑別診断などについて話を聞いた。

パーキンソン病の構音障害、音声治療LSVT LOUDが有効/BMJ

 パーキンソン病患者の構音障害の治療において、Lee Silverman音声治療(Lee Silverman voice treatment:LSVT)は、国民保健サービスの言語聴覚療法(NHS SLT)を行う場合やSLTを行わない場合(非介入)と比較して、構音障害の影響の軽減に有効であり、またNHS SLTは非介入と比較して有益性はないことが、英国・ノッティンガム大学のCatherine M. Sackley氏らPD COMM collaborative groupが実施した「PD COMM試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年7月10日号に掲載された。