小児科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:30

喘息の増悪発生に地域差/AZ

 アストラゼネカ(以下、AZ)は、喘息増悪の発生状況を地域別に検討した「Asthma heatmap研究」を実施し、喘息の増悪発生率に日本国内で地域差があることを初めて明らかにしたと発表した。本研究の結果を基に、地域の実情に即した喘息治療の適正化を目指した活動を実施していくとしている。  日本において、喘息に罹患している患者(小児を含む)は約800万人といわれている。喘息による死亡数は年々減少傾向にあり、2021年では1,038人と報告されている一方で、症状が残存する患者はいまだ残されており、患者の5~10%は従来の治療でコントロールできない重症喘息と推定されている。本研究では、複合アウトカムで定義した喘息増悪が平均で100人年当たり39.87件生じており、その頻度に地域差があることが示された。都道府県別にみると、複合アウトカムに示された喘息増悪発生率は、最多の地域では最少の地域の6.7倍であった。

不要な抗菌薬処方、60歳以上の医師に多く特定の医師に集中か

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症には、抗菌薬が無効であるにもかかわらず、抗菌薬が処方されている実態が報告されている。ただし、抗菌薬処方に関連する医師や患者の特徴については明らかになっていない。そこで、東京大学大学院医学系研究科の宮脇 敦士氏らは、本邦の一般開業医を対象としたデータベース(Japan Medical Data Survey:JAMDAS)を用いて、COVID-19の外来受診データを分析した。その結果、本邦のCOVID-19のプライマリケアにおいて、抗菌薬の処方は少数の診療所に集中していた。また、60歳以上の医師は抗菌薬の処方が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月25日号のリサーチレターで報告された。

小児の16%にコロナ後遺症、多くみられる症状は?~メタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を経験した小児でも、コロナ後遺症(コロナ罹患後症状、long COVID)の報告が増加している。19歳以下の小児におけるSARS-CoV-2感染の長期的な臨床的特徴を明らかにするために、カナダ・トロントのThe Hospital for Sick ChildrenのLi Jiang氏らによって系統的レビューとメタ解析が実施された。その結果、COVID-19小児患者の16.2%がコロナ後遺症を経験し、男児よりも女児に特定の症状が発生するリスクが高いことなどが判明した。

小児の急性副鼻腔炎、鼻汁の色で判断せず細菌検査を/JAMA

 急性副鼻腔炎の小児において、鼻咽頭から細菌が検出されなかった患児は検出された患児に比べ抗菌薬による治療効果が有意に低く、その有意差を鼻汁の色では認められなかったことが、米国・ピッツバーグ大学のNader Shaikh氏らによる多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験で示された。急性副鼻腔炎とウイルス性上気道感染症の症状の大半は見分けることができない。そのため小児の中には、急性副鼻腔炎と診断されて抗菌薬による治療を受けても有益性がない集団が存在することが示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「診察時に特異的な細菌検査をすることが、急性副鼻腔炎の小児における抗菌薬の不適切使用を減らす戦略となりうる」とまとめている。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。

モデルナとファイザーのコロナワクチン、対象年齢や初回免疫の一変承認取得

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンを提供するモデルナおよびファイザーは、8月2日に各社のプレスリリースにて、ワクチンの接種対象年齢や初回免疫について一部変更承認を取得したことを発表した。  モデルナ・ジャパンのプレスリリースによると、同社の新型コロナワクチン「スパイクバックス筋注」についついて、これまで接種対象年齢が12歳以上だったものを、6歳以上に引き下げ、6~11歳の用法用量を変更する承認事項の一変承認を取得した。今回の一変承認は、「スパイクバックス筋注(1価:起源株)」の6~11歳における初回免疫、および「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」と「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」の6~11歳における追加免疫を対象としている。

標準治療に不応・不耐の若年性特発性関節炎、バリシチニブが有効/Lancet

 標準治療で効果不十分または不耐の若年性特発性関節炎患者の治療において、JAK1/2阻害薬バリシチニブはプラセボと比較して、再燃までの期間が有意に延長し、安全性プロファイルは成人のほかのバリシチニブ適応症で確立されたものと一致することが、英国・ブリストル大学のAthimalaipet V. Ramanan氏らが実施した「JUVE-BASIS試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月6日号で報告された。  JUVE-BASISは、日本を含む20ヵ国75施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年12月~2021年3月に患者の登録が行われた(Incyteのライセンス下にEli Lilly and Companyの助成を受けた)。

コロナ禍において、5歳児に4ヵ月の発達遅れ/京大ほか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、学校や保育施設が閉鎖され、多くの乳幼児・子供が影響を受けた。これまで手薄だった未就学児を対象として、コロナ禍の影響を調査した京都大学医学研究科助教・佐藤 豪竜氏らによる研究結果が、JAMA Pediatrics誌オンライン版2023年7月10日号に掲載された。  研究者らは新型コロナ流行前から行っていた研究対象を再調査することで、コロナの影響を調べた。首都圏のある自治体の全認可保育所(小規模含む)に通う1歳または3歳の乳幼児887例に対し、2017~19年に1回目の調査、2年後に2回目の調査を行った。データは2022年12月8日~2023年5月6日に解析された。

乳児の遺伝子検査、迅速全ゲノムvs.標的遺伝子/JAMA

 遺伝的疾患が疑われる乳幼児の遺伝子検査として、迅速全ゲノムシークエンスと標的乳幼児遺伝子パネルの分子診断率および結果が得られるまでの時間は同等なのか。米国・Women and Infants Hospital of Rhode IslandのJill L. Maron氏らは、400例を対象に多施設共同前向き比較試験「Genomic Medicine for Ill Neonates and Infants(GEMINI)試験」を行い、ゲノムシークエンスの分子診断率は高率だが、臨床に有用な結果が得られるまでの時間は標的乳幼児遺伝子シーケンス検査よりも遅かったことを示した。乳幼児への遺伝子検査は医療上の決定を導き健康アウトカムの改善を可能とするが、分子診断率や結果が得られるまでの時間が同等なのかについて明らかになっていなかった。JAMA誌2023年7月11日号掲載の報告。

ウイルス感染時の発熱による重症化抑制、腸内細菌叢が関係か/東大ほか

 これまで、ウイルスに感染した場合に外気温や体温が重症度に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、東京大学医科学研究所の一戸 猛志准教授らの研究グループは、さまざまな温度条件で飼育したマウスに対し、ウイルスを感染させた場合の重症度を解析した。その結果、体温の上昇によりウイルスに対する抵抗性が高まり、血中胆汁酸レベルが上昇した。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の血液についても解析した結果、軽症患者は中等症患者と比較して血中胆汁酸レベルが高かった。これらのことから、発熱により腸内細菌叢が活性化し、2次胆汁酸産生を介してウイルス感染症の重症化が予防されることが示唆された。本研究結果は、Nature Communications誌2023年6月30日号に掲載された。

思春期うつ病と脂質異常症との関連

 小児期および思春期のうつ病患者は、若年性心血管疾患(CVD)リスクが上昇するといわれている。思春期うつ病患者において、CVDの重要なリスクファクターである脂質異常症の兆候が認められているかは、よくわかっていない。カナダ・Sick Kids Research InstituteのAnisa F. Khalfan氏らは、思春期うつ病患者における脂質異常症の有病率を調査した。その結果、思春期うつ病患者の脂質異常症レベルは、健康対照群と同レベルであった。うつ病の経過とともに出現する脂質異常症のタイミングや思春期うつ病患者のCVDリスク増加に関連するメカニズムを明らかにするためには、今後の研究において、うつ症状と脂質関連検査値の軌跡を調査することが求められる。