精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:48

日本における認知症教育による潜在的態度の変化

 東京大学の松本 博成氏らは、成人および高齢者における認知症に対する偏見などの潜在的な態度の測定に関して、その実現可能性と妥当性を評価し、仮想現実(VR)を用いた認知症フレンドリー教育が潜在的な態度に及ぼす影響を評価した。Australasian Journal on Ageing誌オンライン版2024年2月15日号の報告。  ランダム化比較試験のデータを2次分析した。東京在住の20~90歳が、VRの有無にかかわらず、認知症フレンドリー教育に参加した。認知症フレンドリー教育プログラム終了後、Implicit Relational Assessment Procedure(IRAP)を用いて、認知症に対するimplicitを測定した。

職場で怒りを表す人は評価されにくい

 職場で怒りをあらわにする人は評価されにくいことが、新たな研究で示された。研究グループは、「先行研究では、職場で怒りを表す人は有能と判断され、より高い地位を維持できることが示唆されていたが、今回の研究ではそれを否定する結果が示された」と説明している。ヘブライ大学(イスラエル)政治学・国際関係学分野のRoni Porat氏と米プリンストン大学のElizabeth Levy Paluck氏によるこの研究の詳細は、「Frontiers in Social Psychology」に2月13日掲載された。  研究グループは今回、総計3,852人を対象にした4つの実験を通じて、職場で感情(怒り、悲しみ、感情を表さない)を実験的に操作し、その感情表現をする人が組織の中でどの程度の地位や権力、独立性、尊敬、年収を得るべきかを試験参加者に尋ねた。実験は、感情表現をする人物の性別だけでなく、感情を向ける対象(別の人物、別の状況)、感情を表すときの状況(面接、通常の就業日)も変えて検討した。

うつ病と診断された双極性障害患者の自殺企図リスク

 多くの場合、自殺には、原因となる精神疾患が関連している。うつ病と診断された双極性障害患者における自殺企図のリスク因子は、十分に明らかとなっているとは言えない。中国・北京大学のLin Chen氏らは、うつ病と診断された双極性障害患者における自殺企図の発生率および臨床的リスク因子を評価するため、本研究を実施した。Asian Journal of Psychiatry誌2024年3月4日号の報告。  対象は、中国の精神保健施設13施設より登録されたうつ病診断患者1,487例。うつ病と診断された双極性障害患者を特定するため、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を用いた。対象患者の社会人口統計学的および臨床的データを収集した。MINIを用いて、自殺企図を有する患者を特定した。

ストレスや託児所不足を理由に多くの医師が離職

 長時間で変動も多い勤務時間に対応可能な託児所を見つけることの困難さや育児にかかる費用が、子どもを持つ医師の大きなストレスのもととなっていることが、英国で実施された新たな調査から明らかになった。フリーランスのヘルスケアジャーナリストであるErin Dean氏がまとめたこの調査結果は、「The BMJ」に2月14日掲載された。調査結果からは、すでに医師を辞めたか辞めることを考えている人、より柔軟な働き方ができるように専門分野を変えた人、子どもを持つ計画を変更した人のいることが浮き彫りになったという。

認知症リスクと喫煙に対する歯の喪失の影響~JAGESコホート研究

 歯の喪失には、さまざまな原因があるが、その原因別に健康への影響を評価した研究は、これまでなかった。東北大学の草間 太郎氏らは、現在また過去の喫煙歴と認知症リスクとの関連が、歯の喪失により媒介されるかを評価した。Journal of Clinical Periodontology誌オンライン版2024年2月7日号の報告。  65歳以上の成人を対象に、9年間のフォローアッププロスペクティブコホート研究を実施した。アウトカムは2013~19年の認知症罹患率、エクスポージャーは2010年の喫煙状況(非喫煙、喫煙歴あり、現在の喫煙)、メディエーターは2013年の残存歯数(19本以下、20本以上)として評価した。媒介分析を用いてCox比例ハザードモデルを適合させ、歯の喪失による認知症発症に対する喫煙の自然間接効果(NIE)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)、およびそれらの媒介比率を推定した。

抑うつ症状のある人は体温も高い

 抑うつと体温上昇は関連していることが、新たな研究で示唆された。どちらが原因であるのかまでは明らかになっていないものの、研究グループは、体温の調節が抑うつに対する新たな治療法となり得る可能性を示唆する結果だとの見方を示している。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)精神医学分野のAshley Mason氏らによるこの研究の詳細は、「Scientific Reports」に2月5日掲載された。  この研究では、2020年春からおよそ7カ月にわたって実施された研究(TemPredict Study)のデータを用いて、体温と抑うつとの関連が検討された。TemPredict Studyは、大規模集団の中から初期段階の新型コロナウイルス感染症患者を見つけ出すために市販のウェアラブルデバイス(以下、デバイス)で収集したデータを活用できるかどうかを検討した研究である。研究参加者はデバイスの装着により体温を測定したほか、体温計で測定した体温の報告も行っていた。また、毎月1回、電子メールを通じて抑うつ症状に関する調査に回答していた。自己報告による体温に関する解析は2万880人(平均年齢46.9歳、男性53%)、デバイスにより測定された体温に関する解析は2万1,064人(平均年齢46.5歳、男性56%)を対象に行われた。

ADHD患者の薬物療法、全死因死亡リスクを有意に低減/JAMA

 注意欠如・多動症(ADHD)患者への薬物療法は、全死因死亡リスクを有意に低減することが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLin Li氏らが、約15万例のADHD患者を対象に行った全国的な観察コホート試験で明らかにした。ADHDは早期死亡を含む有害な健康アウトカムのリスク増大と関連していることが知られているが、ADHD薬物療法が死亡リスクに影響を与えるかどうかについては不明だった。JAMA誌2024年3月12日号掲載の報告。  研究グループは、今回スウェーデンで行われた観察コホート試験について、標的試験模倣フレームワークを用い、2007~18年にADHDの診断を受け、診断前にADHD薬物療法を受けていなかった6~64歳を特定した。ADHDの診断から、死亡、移住、ADHD診断後2年、2020年12月31日のいずれか早い時点まで追跡した。ADHD薬物療法の開始は、診断後3ヵ月以内の処方で定義した。  ADHD診断後2年間の全死因死亡、自然死因(身体の状態によるなど)、非自然死因(不慮の傷害、自殺、偶発的な中毒によるなど)を評価した。

統合失調症の認知機能に対する抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、抗コリン作用負荷の影響

 統合失調症は、日常生活に影響を及ぼす認知機能障害を特徴とする疾患である。これまでの研究では、抗うつ薬が認知機能改善と関連している可能性があるとの仮説が立てられていたが、その結果に一貫性は見られていない。フィンランド・ヘルシンキ大学のVille Makipelto氏らは、臨床サンプルにおける反応時間と視覚学習の観点から、抗うつ薬の使用と認知機能との関連を調査した。また、ベンゾジアゼピン使用と抗コリン薬負荷との関連も調査した。Schizophrenia Research誌オンライン版2024年2月23日号の報告。  参加者は、2016~18年にフィンランドの精神疾患患者を対象に実施されたSUPER-Finlandコホートより抽出された1万410例。分析には、統合失調症と診断された成人患者のうち認知機能評価結果が含まれていた3,365例を含めた。薬物治療および心理社会的要因に関する情報は、アンケートとインタビューを通じて収集した。認知機能は、返納時間と視覚学習を測定する2つのサブテストを備えたCambridge Neuropsychological Test Automated Battery(CANTAB)を用いて評価した。

日本における片頭痛患者の治療パターンと特徴

 日本における片頭痛患者にみられる実際の臨床的特徴や治療実践については、十分に調査されていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、近年の片頭痛の臨床実態、現在の治療選択肢では十分にコントロールできていない可能性のある患者の特徴を明らかにするため、レセプトデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2024年2月8日号の報告。  大規模レセプトデータシステムJMDCデータベースを用いて、調査を行った。2018年1月~2022年7月に頭痛または片頭痛と診断された患者を対象とした頭痛コホート、頭痛コホート内で片頭痛と診断され片頭痛治療薬を使用した患者を対象とした片頭痛コホートとして定義し、検討を行った。頭痛コホートでは、医療機関の特徴、二次性頭痛を鑑別するための画像検査の状況を検討した。片頭痛コホートでは、急性期およびまたは予防的治療では十分にコントロールできていない可能性のある患者の治療パターン、および特徴を評価した。

ED治療薬がアルツハイマー病を予防?

 勃起障害(ED)治療薬が、アルツハイマー病(AD)のリスクを押し下げる可能性を示唆するデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のRuth Brauer氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に2月7日掲載された。ただし同氏らは、この研究は因果関係を証明可能なデザインで行われておらず、さらなる研究が必要な段階であることを強調している。  シルデナフィル(商品名はバイアグラ)、バルデナフィル(同レビトラ)、タダラフィル(同シアリス)というED治療薬は、作用機序から「ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)」と呼ばれる。これらのPDE5iには血管を拡張する作用があり、また血液脳関門(脳に異物が入り込まないようにするための仕組み)を通過することができ、動物実験では神経保護作用のあることが示されている。ただし、ヒトの認知機能との関連のエビデンスは少ない。Brauer氏らは、EDと診断された40歳以上の男性26万9,725人(平均年齢58.5±10.0歳)の医療記録を解析し、ヒトの認知機能に対するPDE5iの影響を検討した。なお、ベースライン時点で認知機能の低下が認められた患者は、この研究の対象から除外されている。