精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:70

自分の仕事が社会的に無意味と感じている人はあなただけではない

 自分の仕事が無意味だと感じたことがあるだろうか。チューリッヒ大学(スイス)のSimon Walo氏による研究から、自分の仕事は社会にとってほとんど、あるいは全く重要ではないと感じている人の割合が19%にも上ることが示された。このような考えを持つ人は、特に金融、営業、管理職の人で多かったという。この研究結果は、「Work, Employment and Society」に7月21日掲載された。  自分の仕事が社会的に無意味だと考えている人が多いことは、過去の研究で報告されている。この現象の理由の説明として、さまざまな理論が提唱されているが、その代表格が、米国の人類学者であるDavid Graeber氏が提唱した「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)理論」である。この理論では、世の中には無意味な仕事が存在し、それが一部の職種に目立つことが主張されている。Walo氏は、「従業員が、自分の仕事が社会的に無意味と感じているかどうかを評価するのは非常に複雑な問題であり、さまざまな角度からアプローチする必要がある」と述べている。また、「それは、Graeber氏が主張するように、仕事の実際の有用性とは必ずしも関係のない、さまざまな要因に左右されるものだ。例えば、労働条件の悪さが原因で、自分の仕事に社会的な意味を見出せないケースも考えられる」と付け加える。一方、他の研究では、人々は、自分の仕事の内容ではなく、それが毎日、決まった手順で繰り返し行うルーチンワークであり、自律性や優れた管理のないことから無意味だと考える可能性が指摘されている。

リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

 統合失調症患者の臨床転帰を改善するためには、日常診療における治療パターンを理解することが重要なステップとなる。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、リアルワールドにおける抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の長期マネジメントを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するケアにおいて、今後優先すべき事項が浮き彫りとなった。とくに、50歳以上の患者に対する代謝系疾患の予防や18~34歳の患者に対する自殺予防など、特定の集団にさらに焦点を当てる必要がある。また、抗精神病薬の治療継続率は依然として低く、精神科入院率も高いままであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。

記憶力に不安がある高齢者の運転はいかに危険か/長寿研ほか

 日本の高齢ドライバーを対象とした横断研究の結果、客観的認知障害の有無にかかわらず、主観的な記憶力の心配(subjective memory concerns、以下「SMC」)や、SMCに加えて歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome、以下「MCR」)を有する人では自動車衝突事故やヒヤリハットを経験する確率が有意に高かったことを、国立長寿医療研究センターの栗田 智史氏らの研究グループが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。  先行研究によって、MCRは処理速度や実行機能の低下などとの関連が報告されているが、MCRと自動車衝突事故との関連性に関する検討は十分ではない。簡便なMCR評価を行うことで衝突事故リスクに早期に気付くことができる可能性があるため、研究グループはMCR評価と衝突事故やヒヤリハットとの関連を検討した。

双極性障害患者の原因別死亡率~メタ解析

 双極性障害は、早期死亡と関連しているといわれている。双極性障害患者におけるすべての原因による死亡および特定の死亡リスクに関しては、十分明らかになっておらず、これらを理解し、双極性障害患者の死亡を予防する戦略を考えるうえでも、さらに多くの研究が必要とされる。ブラジル・サンパウロ大学医学部のTais Boeira Biazus氏らは、一般集団と比較した双極性障害患者の死亡リスクを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、双極性障害患者の早期死亡リスクは、自殺や不自然死によるものだけでなく、身体合併症とも関連していることが示唆された。著者らは、双極性障害患者の早期死亡率を改善するためには、自殺予防だけでなく、身体的な健康増進や身体合併症の予防も重要であるとしている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月25日号の報告。

統合失調症患者の抗精神病薬治療反応を予測する最適な期間は

 治療開始後、早い段階で治療反応が不十分な統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を予測することは難しい。中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYujun Long氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を適切に予測するための、治療初期段階におけるノンレスポンダーのカットオフ予測値を明らかにするため、多施設共同オープンラベルランダム化比較試験を実施した。その結果、治療開始2週間後の症状改善効果は、統合失調症患者に対する抗精神病薬のノンレスポンダーを予測可能であり、さらに正確に予測するには、ベースライン時の重症度や治療薬剤の違いを考慮する必要性があるとし、最初の2週間の後、さらに2週間の治療反応を評価することで抗精神病薬の変更が必要であるかを判断可能であるとしている。BMC Medicine誌2023年7月19日号の報告。

PPIと認知症リスクの新たな試験、4.4年超の使用で影響か

 長年にわたってプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されている高齢者では、認知症を発症するリスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で示された。米ミネソタ大学公衆衛生学部教授で血管神経学者のKamakshi Lakshminarayan氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に8月9日掲載された。  この研究は、PPIの長期使用に伴う潜在的な危険性を明らかにした研究の中で最新のものだ。PPIは医師によって処方される医療用医薬品のほか、一般用医薬品(OTC医薬品)としても販売されている。PPIは慢性的に胃酸が食道に逆流し、胸やけの症状などをもたらす胃食道逆流症(GERD)に対して処方されてきた。しかし近年、PPIの長期使用が心筋梗塞や腎臓病、早期死亡などさまざまな健康リスクに関連することを示した研究結果が相次いで報告されている。2016年には認知症もこのリスクに含まれることを示唆する研究が発表されて話題となった。

運動で認知機能が改善する一方、ビタミンDは効果なし?

 認知機能が軽度に低下している高齢者を対象とする研究から、運動と認知機能トレーニングによって認知機能が改善する可能性のあることが明らかになった。一方、それらにビタミンD摂取を追加しても、上乗せ効果は見られないという。モントリオール心臓研究所(カナダ)のLouis Bherer氏らが行ったランダム化比較試験の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に7月20日掲載された。論文の上席著者であるBherer氏は、「認知症の確立された治療法はまだないが、ライフスタイルの改善は認知症の予防に役立ち、加齢や慢性疾患が脳の健康に及ぼす影響を部分的に打ち消すことができる」と話している。  この研究は、認知機能が正常な状態と認知症との中間にあたる「軽度認知障害(MCI)」の患者175人(年齢73.1±6.6歳、女性49.1%)を対象に行われた。全体を無作為に5群に分類して20週間介入し、認知機能の変化を調査。設定されていた5群では、有酸素運動、バランス力を高める運動、認知機能トレーニング、偽りの認知機能トレーニング、ビタミンD摂取(1万IUを週3回)、ビタミンDのプラセボ摂取が組み合わせて行われており、それらの介入効果を比較できるという研究デザインだった。

日本人のBMIと認知症リスク、男女間で異なる

 BMIと認知症リスクとの関連は、年齢によりばらつきがあり、性別の影響を受ける可能性がある。新潟大学のAlena Zakharova氏らは、地域在住の日本人を対象に、BMIと認知症リスクとの関連に対する性別の影響を明らかにするため、コホート研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌2023年8月1日号の報告。  ベースライン時(2011~13年)に40~74歳であった地域在住の日本人1万3,802人を対象に8年間のフォローアップ期間を伴うコホート研究を実施した。直接測定により収集された身長、体重、腹囲を含む社会人口統計学的およびライフスタイル、病歴に関する情報を自己記入式アンケートで収集した。BMIに基づき参加者を次の6群に分類した。

オリーブ油の摂取で認知症による死亡リスクが低下する?

 年を重ねても鋭敏な頭脳を保ちたい人は、マーガリンの代わりにオリーブ油を使うようにすると良いようだ。米国のヘルスケア専門家9万人以上を対象とした予備的研究から、オリーブ油の愛用者は、オリーブ油をほとんど摂取しない人に比べて、今後30年間で認知症により死亡するリスクが25%低いことが明らかになった。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のAnne-Julie Tessier氏らによるこの研究の詳細は、米国栄養学会(ASN)の年次総会(Nutrition 2023、7月22〜25日、米ボストン)で発表された。

コロナ後遺症、1年後は約半数、急性期から持続は16%/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)に関する多施設共同研究において、COVID-19に罹患した人の約16%が、感染から12ヵ月後も何らかの症状が持続していると報告した。また、感染から一定期間を置いて何らかの症状が発症/再発した人を含めると、感染から12ヵ月時点での有病率は約半数にも上った。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年8月11日号に掲載された。