精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:73

ビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

 ビタミンD活性代謝物は、神経免疫調節や神経保護特性を有する。しかし、ヒドロキシビタミンDの血清レベルの低さと認知症リスク上昇の潜在的な関連については、いまだ議論の的である。イスラエル・ヘブライ大学のDavid Kiderman氏らは、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の血清レベルの異なるカットオフ値において、ビタミンD欠乏症と認知症との関連を調査した。その結果、不十分なビタミンDレベルは認知症との関連が認められ、ビタミンDが不足または欠乏している患者においては、より若年で認知症と診断される可能性が示唆された。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2023年3月8日号の報告。

統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには

 地域在住の統合失調症患者における身体的、精神的、社会的な併存症は、日常生活を妨げ、再入院リスクを上昇させる可能性がある。しかし、日本において、統合失調症患者の併存症に関する調査は、包括的に行われていない。藤田医科大学の松永 眞章氏らは、日本人統合失調症患者のさまざまな併存症の有病率を調査するため、有病率ケースコントロール研究を実施した。その結果、統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、身体的、精神的、社会的な併存症を管理する効果的な介入が必要であることが示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年2月28日号の報告。

社会的孤立と糖尿病を含む既知のアルツハイマー型認知症リスク因子が関連

 社会的な孤立が、アルツハイマー型認知症を予防するための修正可能なリスク因子の可能性があるとする、マギル大学(カナダ)のKimia Shafighi氏らの研究結果が「PLOS ONE」に2月1日掲載された。社会的孤立や周囲からのサポートの欠如と、糖尿病を含む身体疾患をはじめとする、アルツハイマー病の種々のリスク因子との関連が明らかになったという。  アルツハイマー病とそれに関連する認知症(alzheimer’s disease and related dementias;ADRD)の増加は、多くの国で公衆衛生上の重要な課題となっている。ADRDの治療法はいまだ確立されていないが、予防に関しては、修正可能なリスク因子の管理によって、最大40%程度、発症を抑制できる可能性が報告されている。

大気汚染と認知症リスク (解説:岡村毅氏)

黄砂の飛来がニュースになっているが、タイムリーに大気汚染が認知症発症とも関連するかもしれないという報告だ。喫煙等と比べると認知症発症に与える影響は小さいが、何せ逃げることができないリスクなので、人々への影響は大きい。なお本論文では主にPM2.5を扱っているが、これは大気中に浮遊している直径2.5μm以下の小さな粒子を指し、化石燃料をはじめとする工業活動で排出されるものである。黄砂とは中国やモンゴルの乾燥域から偏西風に乗って飛んでくる砂塵であり、その大きさは4μm程度であるからほとんどがPM2.5ではない。

不眠症患者はどんな治療を望んでいるのか

 認知行動療法(CBT)を求める不眠症患者の睡眠薬使用に対する考えや、使用を減らしたいと願う予測因子について、米国・スタンフォード大学のIsabelle A. Tully氏らが調査を行った。その結果、CBTを望んでいる睡眠薬使用中の不眠症患者において、睡眠薬の必要性を強く示し、服用についての懸念が比較的少ないにもかかわらず、4分の3の患者が睡眠薬を減らしたいと望んでいることが示された。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2023年3月8日号の報告。

新世代抗精神病薬の薬理遺伝学はどこまでわかっているのか

 個別化医療のフレームワークを考えるうえで、新世代抗精神病薬の臨床効果と遺伝子変異との関連を明らかにすることは不可欠である。薬理遺伝学的データは、重度の精神疾患患者の治療効果、忍容性、治療アドヒアランス、機能の回復、QOLの向上に役立つことが期待されている。ルーマニア・Dr. Carol Davila Central Military Emergency University HospitalのOctavian Vasiliu氏は、5つの新世代抗精神病薬(cariprazine、ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、lumateperone、pimavanserin)の薬物動態学、薬力学、薬理遺伝学に関する入手可能なエビデンスを調査し、スコーピングレビューを行った。Frontiers in Psychiatry誌2023年2月16日号の報告。

「話しながら歩く」が難しいのは忍び寄る認知症のサイン?

 中年期でも歩きながら会話をしたり考え事をしたりといったことが難しくなっている場合、それは認知症が忍び寄っていることのサインかもしれない。二重課題(デュアルタスク)下で歩行する能力の低下は、65歳以上の高齢者での認知機能の低下や転倒と関連付けられているが、この能力は、実際には50代の半ばから低下し始めることが新たな研究で明らかにされた。米Hinda and Arthur Marcus Institute for Aging ResearchのJunhong Zhou氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Healthy Longevity」3月号に掲載された。

不定愁訴に伴う疲労の関連因子が明らかに

 「不定愁訴」と称される、医学的に説明できない症状のある人の「疲労」を悪化させる因子が明らかになった。めまいや頭痛という身体症状と、不安や抑うつという精神症状が、疲労の強さに独立して関連しているという。東邦大学医学部心身医学講座の橋本和明氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of General and Family Medicine」1月号に掲載された。  さまざまな検査を行っても患者の訴える症状につながる異常が見つからない場合、「医学的に説明不能な症状(medically unexplained symptoms;MUS)」または「不定愁訴」と診断される。MUSでは複数の身体・精神症状が現れることが多く、原因を特定できないために効果的な治療が困難であることから医療者の負担になりやすい。その影響もあり、医師はMUSの診療を避けようとする傾向のあることが報告されている。

片頭痛予防、日本人患者と医師の好みは?

 現在、日本における片頭痛の予防には、自己注射可能なカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体(mAb)のオートインジェクター(AI)製剤、非CGRPの経口剤などが利用可能である。米国・EvideraのJaein Seo氏らは、CGRP mAbのAI製剤と非CGRPの経口剤に対する日本人患者および医師の好みを調査し、両者にとってのAI製剤の相対的な重要性の違いを測定しようと試みた。その結果、多くの片頭痛患者および医師は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好むことが確認された。本結果から著者らは、日本人医師が片頭痛の予防治療を勧める際には、患者の好みを考慮する必要性が示唆されるとしている。Neurology and Therapy誌2023年4月号の報告。

地中海食とMIND食がアルツハイマー型認知症の予防に有効か

 緑色の葉野菜や魚などの健康的な食品をたくさん食べる習慣のある高齢者は、「脳年齢」が若い可能性のあることが、米ラッシュ大学のPuja Agarwal氏らの研究で示唆された。健康的な食事法である地中海食とMIND食のいずれかに近い食事を取っていた高齢者では、アルツハイマー型認知症に特徴的な、脳内でのアミロイドβの蓄積とリン酸化タウタンパク質の凝集(神経原線維変化)が少なかったという。この研究結果は、「Neurology」に3月8日掲載された。  魚やオリーブ油、野菜、豆類、ナッツ類、食物繊維が豊富な穀物を多く摂取する地中海食が、心疾患や脳卒中のリスク低下につながることは広く知られている。一方、MIND食は、地中海食によく似ているが、野菜や果物のうち緑色の葉野菜やベリー類の摂取をより重視している点が特徴だ。これは、これらの食品が脳の健康に良いことを示した研究結果に基づいている。