精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:78

治療抵抗性うつ病に対するガイドラインの推奨事項

 うつ病は、重篤かつ広範に及ぶメンタルヘルス関連疾患である。うつ病は、2つ以上の抗うつ薬による治療でも寛解が得られず、治療抵抗性うつ病に至ることも少なくない。ブラジル・サンパウロ大学のFranciele Cordeiro Gabriel氏らは、診断および治療の改善を目的に作成された臨床診療ガイドライン(CPG)における治療抵抗性うつ病に対する推奨事項について、それらの品質および比較をシステマティックに評価した。その結果、うつ病治療のための高品質なCPGにおいて、治療抵抗性うつ病の定義および使用が統一されておらず、治療抵抗性うつ病に対する共通したアプローチも見当たらなかった。PLOS ONE誌2023年2月6日号の報告。

抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。

「マザリーズ」への関心の程度で自閉症の診断が可能に?

 母親などが、高いトーンで、ゆっくりと、抑揚をつけて乳幼児に話しかける話し方を「マザリーズ」という。このようなマザリーズへの関心の程度が、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断や予後の指標となり得ることが、乳幼児を対象にした研究で示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)神経科学分野のKaren Pierce氏らが実施したこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に2月8日掲載された。  この研究では、生後12〜48カ月の乳幼児653人(平均月齢26.45カ月、男児73.51%)を対象に、乳幼児がマザリーズへ注意を向ける程度をASD診断の指標にできるのかどうか、また、それが社会的スキルや言語能力と関連しているのかどうかを調べた。マザリーズに注意を向ける程度は、Pierce氏らが開発したアイトラッキングテストにより測定した。これは、対象者に2本の動画を一つの画面に提示し、どちらをどれだけ見るのかを視線でコントロールさせることで、動画に対する対象者の関心を定量化するものである。提示される2本の動画のうちの1本は常にマザリーズを話す女優の動画(以下、「マザリーズ」)とし、もう1本は、1)高速道路を走る車とその騒音(以下、「高速道路」)、2)音楽とともに動く抽象的な形や数字(以下、「図形や数字」)、3)「マザリーズ」と同じ女優が同じセリフを抑揚のない口調で話すもの(以下、「抑揚のない口調」)のいずれかとした。

せん妄予防に対するラメルテオン~メタ解析

 せん妄予防に対する新たな治療オプションとして期待されているラメルテオンだが、その有効性を評価したエビデンスは、まだ限られている。台湾・長庚記念病院国際医療センターのChia-Ling Yu氏らは、アップデートメタ解析を実施し、入院患者のせん妄予防に対するラメルテオンの効果に関するこれまでのエビデンスの信頼性を調査した。その結果、ラメルテオンは、プラセボと比較し、入院患者のせん妄リスクを低減させることが最新のメタ解析で明らかとなった。Journal of Pineal Research誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。

日本人の認知症リスクに対する喫煙、肥満、高血圧、糖尿病の影響

 心血管リスク因子が認知症発症に及ぼす年齢や性別の影響は、十分に評価されていない。大阪大学の田中 麻理氏らは、喫煙、肥満、高血圧、糖尿病が認知症リスクに及ぼす影響を調査した。その結果、認知症を予防するためには、男性では喫煙、高血圧、女性では喫煙、高血圧、糖尿病の心血管リスク因子のマネジメントが必要となる可能性が示唆された。Environmental Health and Preventive Medicine誌2023年号の報告。対象は、ベースライン時(2008~13年)に認知症を発症していない40~74歳の日本人2万5,029人(男性:1万134人、女性:1万4,895人)。

慢性期統合失調症患者の認知機能に対する抗精神病薬、抗コリン薬の影響

 精神疾患の治療には、さまざまな向精神薬が用いられるが、その多くは抗コリン作用を有しており、認知機能を低下させる可能性がある。フランス・Lebanese American UniversityのChadia Haddad氏らは、抗コリン作動性負荷と抗精神病薬の用量に焦点を当て、神経心理学的障害や症状の治療に用いられる薬剤と統合失調症患者の認知機能との関連を評価した。その結果、慢性期統合失調症患者の認知機能は、薬物療法や抗コリン作動性負荷の影響を受ける可能性があることを報告した。BMC Psychiatry誌2023年1月24日号の報告

メタボ該当者はうつ病リスクが高い―国内のコホート内症例対照研究

 メタボリックシンドローム(MetS)に該当する人は、うつ病のリスクが高い可能性のあることが報告された。名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部の今泉貴広氏、同大学大学院医学系研究科病態内科学腎臓内科の丸山彰一氏らによる研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月3日掲載された。  うつ病は労働者の精神疾患として最も一般的に見られる疾患であり、公衆衛生上の大きな問題となっている。うつ病が糖尿病や心血管疾患のリスクと関連のあることは既に知られており、さらにそれらの発症前段階に当たるMetSも、うつ病と関連のあることが報告されている。ただし、MetSとうつ病との関連を縦断的に示した研究はなく、MetS該当者が将来的にうつ病を発症しやすいのかどうかは明らかになっていない。仮にそのような関連があるとすれば、MetSによる心血管疾患の発症抑止という目的で行われている特定健診・保健指導を、うつ病予防の介入の機会とするという公衆衛生対策も可能と考えられる。このような背景のもと今泉氏らは、健診データと医療費請求データを用いて、MetS該当者がうつ病を発症しやすいのかを検討した。

SNS依存が大学生の学業成績に及ぼす影響

 依存症では、身体的または心理的な極度の渇望および没頭を生じるが、近年、若者世代においてソーシャルメディア依存症が問題となっている。エチオピア・Mettu UniversityのAman Dule氏らは、SNSサービスの1つであるFacebookに対する依存状態と大学生の学業成績との相関関係を評価した。その結果、若者のFacebook依存度は高く、このことは学業成績低下だけでなく、精神的ウェルビーイングや自尊心の低下などとも関連していることを報告した。著者らは、学生におけるSNS依存による悪影響を減少させるためにも、大学などの教育機関は、安全な使用促進につながるしっかりとした方針を整備すべきであろうとしている。PLOS ONE誌2023年2月6日号の報告。

アルツハイマー病治療薬lecanemab、FDAフル承認への優先審査に指定/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは3月6日付のプレスリリースにて、同社のアルツハイマー病治療薬lecanemab(米国での商品名:LEQEMBI)について、迅速承認かららフル承認への変更に向けた生物製剤承認一部変更申請(supplemental Biologics License Application:sBLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理されたことを発表した。本申請は優先審査に指定され、審査終了目標日であるPDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクションデートは2023年7月6日に設定された。  本剤は、米国において、2023年1月6日にアルツハイマー病の治療薬として迅速承認され、同日にフル承認に向けたsBLAがFDAに提出されていた。ヒト化IgG1モノクローナル抗体のlecanemabによる治療は、アミロイドβ病理が確認されたアルツハイマー病による、軽度認知障害または軽度認知症患者を対象としている。今回のsBLAは、大規模グローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータに基づく。

尿酸と認知機能障害との関係~新規双極性障害患者の横断研究

 認知機能障害は、双極性障害患者の主要な症状の1つである。また、認知機能障害に対しプリン体関連の障害が重要な影響を及ぼしていることが示唆されている。しかし、双極性障害における認知機能障害とプリン体作動性代謝との関連を調査した研究は十分ではない。中国・The Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのSujuan Li氏らは、これらの関連性とその潜在的な生死学的メカニズムについて調査を行った。その結果、尿酸値レベルの上昇は、双極性障害患者の認知機能に対する潜在的なメカニズムである可能性があり、尿酸値のコントロールが双極性障害の予防や治療においての新たな戦略となりうる可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月2日号の報告。