精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:79

アルツハイマー病、APOEε3/ε4遺伝子型を持つ民族で上昇か/JAMA

 米国のアフリカ系の家系で、APOEε3/ε4遺伝子型を持つ集団では、APOEε3のR145Cミスセンス変異体がアルツハイマー病(AD)のリスク上昇と関連するとともに、ADの早期発症をもたらす可能性があることが、米国・スタンフォード大学のYann Le Guen氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年2月21日号に掲載された。  研究グループは、アフリカ系の家系における2つのAPOEミスセンス変異体(R145CとR150H)がADリスクと関連するかを評価する目的で、3万1,929人を対象とする探索的な症例対照研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。

うつ病に対するSSRIの治療反応

 うつ病に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の臨床反応の発現には、数週間を要することも少なくない。また、そのメカニズムは十分に把握されているとはいえない。オランダ・ユトレヒト大学のLynn Boschloo氏らは、うつ病の臨床症状に対するSSRIの直接的および間接的な効果について、プラセボ対照の状態と比較し評価を行った。その結果、SSRIは主に感情症状の改善を介して、間接的に認知症状やいくつかの覚醒/身体症状を改善することが明らかとなった。著者らは、本結果はSSRIの作用機序の解明や、臨床でのSSRIに対するレスポンダーおよび非レスポンダーの早期特定に役立つ可能性があると述べている。Translational Psychiatry誌2023年1月21日号の報告。

リチウムは自殺行動を減らし、アラキドン酸は自傷行為を増やす可能性

 薬剤としてではなく、水道水やふだんの食事などを介して血清リチウムレベルが微量ながらも高い状態にある人は、自殺リスクが低い可能性を示唆するデータが報告された。また、EPA(エイコサペンタエン酸)は自傷行為のリスクを減らし、一方、AA(アラキドン酸)はそのリスクを高める可能性があるという。大分大学医学部精神神経医学講座の泉寿彦氏、寺尾岳氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Psychiatry」に12月16日掲載された。  オメガ3脂肪酸であるEPAやDHA(ドコサヘキサエン酸)が、うつ病リスクを抑制するという研究結果が報告されている。しかし、DHAよりもEPAがうつ病に効果的であるという報告があり、さらに、いずれの効果も否定する最近の報告もある。一方、リチウムについては既に気分安定薬として使用されており、自殺リスクを抑制するというデータがある。薬剤としてではなく、食品や水から摂取する微量のリチウムが、自殺関連行動のリスクを抑制するという報告があるものの、それを否定する報告もある。このほか、オメガ6脂肪酸であるAAレベルの高さが、自殺関連行動のリスクの高さと相関するといった報告もある。

統合失調症における抗精神病薬使用と心臓突然死リスク

 抗精神病薬で治療される統合失調症患者は、心臓突然死のリスクが高いといわれている。獨協医科大学の岡安 寛明氏らは、統合失調症患者における抗精神病薬の使用と心臓突然死リスクとの関連を明らかにするため、deceleration capacity(DC)(心臓突然死の予測因子として用いられる心拍変動の指標)の低下を調査し、抗精神病薬の使用による心臓突然死リスクを、DCの評価と補正QT間隔(QTc)との関連で評価した。その結果、抗精神病薬を使用している統合失調症患者においてDCを評価することは、心臓突然死リスク増加のモニタリングおよび特定に役立つ可能性が示唆された。また、DCとQTcの両方の評価で、心臓突然死の予測精度が向上する可能性があることも報告された。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2023年1月14日号の報告。

医学生に労働法の知識を!医師や弁護士がモデル講義/厚生労働省

 医師の過重労働の問題が指摘されて久しいが、2024年4月から医師に対する時間外労働の上限規制をはじめとした「医師の働き方改革」がスタートする。これを踏まえ、厚生労働省では、今後医師となる医学生に対し、労使関係の基本となる労働法や医師の働き方改革の基本を知ってもらうべく、医師や弁護士を講師としたモデル授業をスタートした。  2022年度からスタートしたこのモデル講義について、大学関係者に対して紹介する「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」が開催され、モデル授業を担当した医師や弁護士が講義内容やその意義を報告した。

Yes/No調査による認知症スクリーニングの精度~福井県での調査

 認知症の予防には、早期介入が非常に重要である。しかし、認知症の早期発見に、どのようなスクリーニングが有用であるかは、これまで明らかになっていない。福井大学の濱野 忠則氏らは、サポートやケアを必要とするリスクが高い高齢者を特定するため厚生労働省が作成した基本チェックリストに基づき福井県の認知症予防チームが開発したYes/No自己申告調査の結果と、ミニメンタルステート検査(MMSE)との関連を検討し、Yes/No自己申告調査の認知症スクリーニングに対する有効性を評価した。その結果、認知症スクリーニングに対するYes/No自己申告調査の有効性が示された。とくに、「電話番号を調べて電話をかけられない」「銀行やATMで自身の預貯金を管理できない」などは、認知症のサインであると報告されている。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年1月4日号の報告。

オキシトシンは本当に「愛情ホルモン」?

 「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンは、これまで考えられてきたほど社会的絆の形成に必要不可欠なものではない可能性のあることが、プレーリーハタネズミを用いた研究で示された。研究論文の上席著者である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ワイル神経科学研究所のDevanand Manoli氏は、「この研究結果は、オキシトシンが複雑な遺伝的プログラムの一つに過ぎないことを示すものだ」と述べている。この知見は、「Neuron」に1月27日掲載された。

日本人・小中高校生の頭痛有病率~糸魚川紅ズワイガニ研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、小児および青年期の頭痛、片頭痛、薬物乱用頭痛の有病率を調査するため、小学校から高校までの日本人学生を対象に、学校ベースのオンラインアンケートを実施した。また、片頭痛を引き起こすトリガーについて調査するとともに、頭痛頻度に対するCOVID-19パンデミックの影響も併せて検討を行った。その結果、小児および青年期において、頭痛による生活への支障は大きいことが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、頭痛の臨床診療におけるアンメットニーズを修正する必要があるとしている。Clinical Neurology and Neurosurgery誌オンライン版2023年1月20日号の報告。

双極性障害、うつ病、自殺企図へのT. gondiiの影響

 双極性障害、うつ病、自殺企図における寄生性原生生物トキソプラズマ(T. gondii)の潜伏感染の影響については長期間にわたり議論されているが、T. gondiiが脳や行動を操作する方法に関してエビデンスは不足しており、この推測は不明のままである。トルコ・イスタンブール大学のOmer Faruk Demirel氏らは、自殺企図を有する/有さない双極性障害およびうつ病患者へのT. gondii感染の影響を検討するため本研究を実施した。その結果、T. gondii潜伏感染は、双極性障害および自殺企図の原因と関連している可能性が示唆された。Postgraduate Medicine誌オンライン版2023年2月6日号の報告。

日本人統合失調症患者に対する長時間作用型抗精神病薬注射剤の有効性比較

 明治薬科大学のYusuke Okada氏らは、日本人統合失調症患者に対する各種長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(アリピプラゾール、パリペリドン、リスペリドン、フルフェナジン/ハロペリドール)の有効性の比較を行った。その結果、アリピプラゾールとパリペリドンのLAIは、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、精神科入院およびLAI中止のリスクが低かった。また、アリピプラゾールLAIは、リスペリドンよりもLAI中止リスクが低いことも報告した。Schizophrenia Research誌2023年2月号の報告。