呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:227

マスクの再利用、消毒後のウイルス遮断効果は?

 これまでの研究では、N95マスクを再利用するさまざまな滅菌方法の評価試験やN95マスクとサージカルマスクの比較試験などが行われてきた。しかし、現時点でKN95やサージカルマスクの滅菌後のろ過効率の影響を調べた研究は乏しい。米国・オクラホマ大学のChangjie Cai氏らはKN95とサージカルマスクが再利用可能かどうかを明らかにするための研究を実施。 その結果、滅菌プロセスが各マスクのろ過効率に影響を与えることが示唆された。ただし、研究者らは試験時の制限(マスクメーカーの種類が少ない、各マスクと条件のサンプルサイズが小さい、評価した滅菌技術が2つしかないなど)や1回より多く滅菌した場合にマスク劣化の可能性もあるため、これらを踏まえたさらなる調査が必要としている。2020年6月15日JAMA Network Open誌のリサーチレターに報告した。

全身療法が計画されている高齢者での高齢者機能評価の有用性(INTEGERATE試験)/ASCO2020

 オーストラリア・モナシュ大学Eastern Health Clinical SchoolのWee-Kheng Soo氏は、全身療法が計画されている高齢者での包括的な高齢者機能評価や老年医学専門家の介入の有無を比較する無作為化非盲検試験・INTEGERATE試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。老年医学的介入群ではQOLが有意に改善し、予期せぬ入院や有害事象による早期治療中止が減少すると報告した。 ・対象:固形がんあるいはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、で3カ月以内に化学療法、分子標的薬治療、免疫チェックポイント阻害薬療法が予定されている70歳以上の高齢者154例。 ・試験群:本人申告による質問票での回答と高齢者機能評価(CGA)を実施。栄養、身体機能などの改善に向けた標準的介入に加え、併存疾患のケアなどアセスメントに基づく個別介入を実施(76例) ・対照群:通常ケア(78例) ・評価項目:[主要評価項目] ELFI(Elderly Functional Index)スコアによるQOL評価 [副次評価項目] ヘルスケアサービスの利用状況、治療提供状況、機能、施設入所状況、気分、栄養状態、健康上の効用、生存状況

新型コロナウイルス感染症の重症化リスク解析について(解説:小林英夫氏)-1249

新型コロナウイルス感染症はWHOによるICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂)ではCOVID-19とコードされ、その和訳は「コロナウイルス感染症2019」とする案、つまり「新型」が付記されない方向で厚労省にて現在審議中とのことである。さて、日本と欧米や東アジア間ではCOVID-19への対応状況が異なるが、死亡者数・感染者数に明らかな差異が報告されている。その差異の理由はいかなるものかを解明していくことは今後の必須テーマで、京都大学の山中 伸弥教授はこの因子にファクターXと名付けている。現状では実態不明のファクターXであるが誰にでも予想できる要素として、人種別の遺伝的要素、ウイルス遺伝子変異、などは当然の候補となろう。そこで本論文では重症化、呼吸不全化のリスクについてゲノムワイド関連解析を行っている。その方向性は適正であろう。本論文の和訳は別途本サイトで掲載されるが、血液型によるリスク差に関する結果の一部だけを切り取ってマスメディアが過剰に喧伝しそうで気掛かりである。本論文はあくまでイタリアとスペインというラテン系民族が対象であり、日本人に該当するかどうかは未定である。もちろん、感染症に対して遺伝的素因・体質的素因が関与することは予想される事項であり、本邦でも罹患リスクや重症化リスクへのゲノム解析への取り組みに期待したい。

初診料が前年比5割減、健診・検診は9割減も/日医・医業経営実態調査

 2020年3~5月、月を追うごとに病院の医業収入が大きく落ち込み、健診・検診の実施件数は半減から9割減となった実態が明らかになった。6月24日の日本医師会定例記者会見において、松本 吉郎常任理事が全国の医師会病院および健診・検査センターの医業経営実態調査結果を発表した。  調査は73の医師会病院、164の健診・検査センターが対象。回答率はそれぞれ71.2%(52病院)、51.2%(84施設)だった。回答病院のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者「あり」は25.0%(13病院)、COVID-19患者のための病床「あり」は50.0%(26病院)。COVID-19入院患者「あり」の病院における月平均入院患者数は7.6人だった(最大は4月に76人の入院患者[東京都])。

COVID-19の肺がん患者、死亡率高く:国際的コホート研究/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行期における、肺がん等胸部がん患者の転帰について、初となる国際的コホート研究の結果が公表された。COVID-19に罹患した胸部がん患者は死亡率が高く、集中治療室(ICU)に入室できた患者が少なかったことが明らかになったという。イタリア・Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのMarina Chiara Garassino氏らが、胸部がん患者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の影響を調査する目的で行ったコホート研究「Thoracic Cancers International COVID-19 Collaboration(TERAVOLT)レジストリ」から、200例の予備解析結果を報告した。これまでの報告で、COVID-19が確認されたがん患者は死亡率が高いことが示唆されている。胸部がん患者は、がん治療に加え、高齢、喫煙習慣および心臓や肺の併存疾患を考慮すると、COVID-19への感受性が高いと考えられていた。結果を踏まえて著者は、「ICUでの治療が死亡率を低下させることができるかはわからないが、がん治療の選択肢を改善し集中治療を行うことについて、がん特異的死亡および患者の選好に基づく集学的状況において議論する必要がある」と述べている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年6月12日号掲載の報告。

高レベルのMET増幅肺がんにおけるcapmatinib(GEOMETRY-MONO1)/ASCO2020

 MET-TKI capmatinibは、METexon14スキッピングを有する非小細胞肺がん(NSCLC)への有効性が示されており、FDAでも認可されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)では、MET増幅NSCLCについての、第II相GEOMETRY Mono-1試験の結果が発表された。 ・対象: [コホート1a]Stage IIIB / IVの既治療の高度(遺伝子コピー数、GCN10以上)MET増幅NSCLC [コホート5a]治療の高度MET増幅(同上)NSCLC ・介入:capmatinib 400mg×2/日 ・評価項目: 「主要評価項目]盲検独立審査委員会(BIRC)評価の全奏効率(ORR) [副次評価項目]BICR評価の奏効期間(DoR)、BIRCおよび治験担当医評価の病勢制御率(DCR)、治験担当医評価のORR、治験担当医評価のDoR、BIRCおよび治験担当医評価の無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、BIRCおよび治験担当医評価の奏効までの期間、安全性、薬物動態

EGFR陽性肺がんに対するゲフィチニブのアジュバント(CTONG1104試験)/ASCO2020

 病理病期II~IIIAで、完全切除を受けたEGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する術後療法としての、標準的なプラチナ併用化学療法とゲフィチニブの比較試験の全生存期間(OS)に関する報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で中国・Guangdong Lung Cancer InstituteのYi-Long Wu氏より発表された。  本試験は中国国内で実施された多施設共同オープンラベルの第III相無作為化比較試験であり、無病生存期間(主要評価項目)の有意な改善に関する報告は2017年のASCOで既になされている。今回の発表はOSの最終解析報告である。

RET陽性肺がんに対するselpercatinibの脳転移に関する効果(LIBRETTO-001)/ASCO2020

 米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのVivek Subbiah氏は、RET融合遺伝子陽性のNSCLCに対するRET阻害薬selpercatinib(LOXO-292)の第I/II相試験LIBRETTO-001の脳転移例に関するサブ解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。同薬が脳転移に対する著名な抗腫瘍効果を示すと報告した。  非小細胞肺がん患者の約2%に認められるRET融合遺伝子陽性症例では脳転移の頻度が高いことが報告されている。selpercatinibは前臨床試験でこうした転移に対する抗腫瘍効果が報告されている。

未治療HIV結核患者、検査に基づく治療が有益/NEJM

 抗レトロウイルス療法(ART)歴のない重度免疫不全状態のHIV感染成人患者における結核治療について、検査結果に基づく治療は系統的・経験的治療と比べて24・48週後のアウトカムはいずれも同等で、Grade3/4の有害事象発生率は低いことが示された。フランス・ナント大学のFrancois-Xavier Blanc氏らSTATIS ANRS 12290 Trial Teamが、コートジボワールやウガンダなどの患者1,000例超を対象に無作為化比較試験を行い報告した。結核およびHIVの疾病負荷が高い地域において、HIV感染成人患者の多くがART開始時にはすでに重度の免疫不全状態にあり、これらの患者のART開始後の死亡率は高く、結核および侵襲性の細菌感染症が死因の多くを占めているという。NEJM誌2020年6月18日号掲載の報告。

COVID-19、ABO血液型により重症化に違い/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が重症化し呼吸不全を来すリスクについて、ゲノムワイド関連分析(GWAS)を行い調べたところ、3p21.31遺伝子座と9q34.2遺伝子座の変異との関連性が明らかになった。9q34.2遺伝子座は血液型の遺伝子座と一致しており、血液型A型の人は、他の血液型の人に比べ重症化リスクが1.45倍高く、一方で血液型O型の人は重症化リスクが0.65倍低いことが示されたという。COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2に感染した患者にばらつきがみられることから、ドイツ・Christian-Albrechts大学のDavid Ellinghaus氏らの研究グループ「The Severe Covid-19 GWAS Group」が、イタリアとスペインの患者を対象にGWASを行い明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年6月17日号掲載の報告。