呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:29

味覚障害に耐えられない症例に対する処方は注意せよ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

ゲーファピキサント(商品名:リフヌア)は、選択的P2X3受容体拮抗薬である。P2X3受容体は気道に分布する迷走神経のC線維と呼ばれる求心性神経線維末端にあるATP依存性イオンチャネルである。C線維は炎症や化学物質に反応して活性化される。ATPは炎症により気道粘膜から放出され、シグナル伝達を介して咳嗽反応を惹起させる。ゲーファピキサントはP2X3受容体を介したATPシグナル伝達を遮断することにより、感覚神経の活性化や咳嗽の抑制効果が期待されている薬剤である。現在、慢性咳嗽の原因となりうる病歴・職業歴・環境要因・検査結果などを踏まえた包括的な診断に基づく十分な治療を行っても咳嗽が続く場合、いわゆる難治性の慢性咳嗽に適応となっている。実臨床下では、慢性咳嗽の症例に一般的な鎮咳薬や気管支拡張薬、吸入ステロイド薬が適切に使用されても改善が得られない場合に処方を検討する薬剤となっている。

Stroke Oncology(脳卒中合併がん)の対策、学会の枠越え取り組み/日本腫瘍循環器学会

 がん患者の脳梗塞合併の課題解決に向け、脳卒中医とがん診療医が共同で取り組んでいる。  9月30日~10月1日の2日間、神戸で開催された第6回日本腫瘍循環器学会学術集会にて、NTT東日本関東病院の水上 拓郎氏が発表した。  がん患者の脳梗塞リスクは非がん患者と比べ高く、そのリスクはステージが進行するごとに上昇する。がん患者の脳卒中合併には複数の因子が絡み、がん種や診断時期によってリスクは異なるため、予後予測は複雑である。

ICIによる心筋炎、現時点でわかっていること/日本腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は抗PD-1抗体のニボルマブが2014年に本邦で上市されて以来、抗PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体も登場し、現在では臓器横断的に幅広いがん種に対し、単独投与のみならず併用投与も行われるようになった。しかし、その一方でさまざまな免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、とくに循環器医も腫瘍医も恐れているirAEの1つに心筋炎がある。これは通常の心筋炎とは何が違い、どのように対処するべきなのだろうか―。9月30日~10月1日に開催された第6回日本腫瘍循環器学会学術集会のシンポジウム『免疫チェックポイント阻害薬関連有害事象として心筋炎の最新の理解と対応』において、3名の医師が心筋炎のメカニズムや病態、実臨床での事例やその対応について発表した。

高齢者での術後せん妄、原因は血液脳関門の透過性亢進か

 高齢者では、手術後にせん妄が生じ、それが深刻な合併症や苦痛を引き起こすことがあるが、その原因は不明であった。こうした中、新たな研究により、術後せん妄を発症する患者では、物質が脳に入るのを防ぐ細胞の層である血液脳関門の透過性が亢進していることが明らかになった。米デューク大学医学部麻酔学分野のMichael Devinney氏らによるこの研究結果は、「Annals of Neurology」に8月24日掲載された。  Devinney氏は、「この結果により、米国で毎年何百万人もの高齢者に影響を及ぼしている術後せん妄の問題に取り組むための道筋が整った。その意味で、本研究結果は重要だ」と話している。同氏はさらに、「術後に血液脳関門が開かないようにする方法や、関門を通過して脳に到達することができる物質を特定できれば、術後せん妄を予防する治療法の開発につなげることが可能になるかもしれない」と同大学のニュースリリースで述べている。

睡眠時無呼吸へのCPAP、MACEイベントの2次予防に有効か/JAMA

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と心血管疾患の双方を有する患者の治療において、持続陽圧呼吸療法(CPAP)はこれを行わない場合と比較して、主要有害心脳血管イベント(MACCE)の2次予防に全般的には有効ではないものの、CPAPのアドヒアランスが良好な患者ではMACCEのリスクを低減することが、スペイン・リェイダ大学のManuel Sanchez-de-la-Torre氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年10月3日号で報告された。  研究グループは、OSAに対するCPAPによる治療がMACCEのリスクに及ぼす影響を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(スペイン・カルロス三世保健研究所などの助成を受けた)。

多くの人は受動喫煙に気が付いていない

 自分は副流煙(他人が吸っているタバコの燃焼部分から立ち上る煙)にさらされていないと思っている人の多くが、実際には副流煙にさらされている(受動喫煙)ことが、米国成人を対象に行われた新たな研究で明らかになった。血液検査では、調査対象者の半数以上が過去数日内に副流煙にさらされていたことが示されたにもかかわらず、大半はその自覚がなかったのだ。米フロリダ大学College of Public Health and Health ProfessionsのRuixuan Wang氏らによるこの研究の詳細は「Nicotine & Tobacco Research」に8月30日掲載された。

有病率の高い欧州で小児1型糖尿病発症とコロナ感染の関連を調査(解説:栗原宏氏)

本研究で対象となっている小児1型糖尿病は、発症率に人種差があり白人に非常に多い。欧州全般に発症者は多く、とくに多い北欧諸国、カナダ、イタリアのサルディニアでは年間約30/10万人と日本(1.4~2.2/10万人)に比して10倍以上の違いがある。1歳ごろに膵島細胞への自己抗体が発生するピークがあり、10年以内に臨床的な糖尿病を発症する。自己抗体の発生原因は不明ながら、呼吸器系ウイルス感染が関与している可能性があるとされている。

抗コリン負荷の増大が、心血管イベントのリスクと関連/BMJ

 急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者においては、抗コリン薬による抗コリン作用の総負荷(抗コリン負荷)が、最近増加した集団で急性心血管イベントのリスクが高く、負荷の増加の程度が大きいほどリスクがより高いことが、台湾・国立成功大学のWei-Ching Huang氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年9月27日号に掲載された。  本研究は、台湾の全国的な健康保険研究データベースを用いた症例-症例-時間-対照研究(case-case-time-control[CCTC]study)であり、2011~18年に急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者31万7,446例を対象とした(台湾・国家科学技術委員会などの助成を受けた)。  CCTCは、適応症による交絡および潜在的なprotopathic bias(因果の逆転)の克服を目指した研究デザインであり、2つの自己対照分析(症例クロスオーバー分析と、将来の症例からなる対照クロスオーバー分析)で構成される。急性心血管イベントには、心筋梗塞、脳卒中、不整脈、伝導障害、心血管死を含めた。

コロナ罹患後症状の患者、ワクチン接種で症状軽減か?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種は、COVID-19の重篤化を予防する。しかし、COVID-19罹患後症状を有する患者に対するCOVID-19ワクチン接種が罹患後症状や免疫応答、ウイルスの残存に及ぼす影響は不明である。そこで、カナダ・Montreal Clinical Research InstituteのMaryam Nayyerabadi氏らの研究グループは、COVID-19罹患後症状を有する患者を対象にCOVID-19ワクチンの効果を検討し、COVID-19ワクチンは炎症性サイトカイン/ケモカインを減少させ、COVID-19罹患後症状を軽減したことを明らかにした。本研究結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月15日号に掲載された。

大手術後の炎症を阻害すると...(解説:後藤信哉氏)

コルヒチンは歴史の長い抗炎症薬である。LoDoCo(Low Dose Colchicine)試験にて冠動脈疾患の二次予防効果が証明されて、循環器内科領域に注目されることになった。多くの循環器疾患に炎症が関与する。各種のがん治療などの非心臓疾患の手術時の心房細動の発症予防効果の有無が本研究にて検証された。非心臓性手術後の心房細動と心筋梗塞の発症例では炎症マーカーの高値が報告されている。そこで、本研究では強力な抗炎症薬であるコルヒチンに、非心臓の大手術時の心房細動および心筋障害発症予防効果の有無がランダム化比較試験により検証された。