外科/乳腺外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:78

乳がんでの免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発はかなり複雑/日本癌治療学会

 2020年の乳がん診療におけるトピックスの1つとして、トリプルネガティブ(TN)乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の第III相試験の結果が多く発表されたことが挙げられる。しかし、これらの結果にはまだまだ未知の要因が関係しており、その理解はかなり複雑である。福島県立医科大学の佐治 重衡氏は、乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の試験結果によるディスカッションポイントについて、第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)の会長企画シンポジウムにおける「乳癌診療の新たな構築 2020」で解説した。  乳がんでは腫瘍遺伝子変異量(TMB)が少ないとされ、免疫チェックポイント阻害薬への期待は高くはなかった。しかし、2019年にPD-L1陽性進行/再発TN乳がんに対するアテゾリズマブ+nabパクリタキセルが承認され、今後、ペムブロリズマブもKEYNOTE-355試験の結果を基にPD-L1陽性進行/再発TN乳がんに承認される可能性が高い。今回、佐治氏は、乳がんにおける免疫チェックポイント阻害薬治療でのディスカッションポイントとして、早期乳がんと進行/再発乳がんで免疫チェックポイント阻害薬の効果が異なる点、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法によって異なる点を挙げ、それぞれ解説した。

がん診療病院でのCOVID-19クラスター、その教訓は/日本癌治療学会

 市中感染が広がる状況下では、感染者が院内に入り込む可能性や病院内感染発生のリスクが常にある。リスクをいかに減らし、万が一予期せぬ感染者が発覚した場合にどのような対応が必要か、がん診療をどのように維持していけばよいのか。第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)で、「COVID-19蔓延期の癌治療―体験と教訓―」と題した会長企画シンポジウムが開かれ、がん診療を担う病院での今春からの経験、実施している対策が相互に共有された。本稿では、加藤 秀則氏(北海道がんセンター)、佐藤 悠城氏(神戸市立医療センター中央市民病院)による発表内容を中心に紹介する。

ER+HER-早期乳がんの長期予後予測、治療前18F-FDG PET/CTのSUVmaxが有用/日本癌治療学会

 乳がんで最も頻度の高いER陽性HER陰性早期乳がんは、10年以上の長期にわたって再発を来すことが知られており、近年は遺伝子検査などによる予後予測が行われている。今回、東京女子医科大学の塚田 弘子氏らによる研究で、治療前18F-FDG PET/CT (以下、PET/CT)での原発巣SUVmax値(maximum standardized uptake values)およびリンパ節転移個数が長期無再発生存期間(RFS)の予測因子であり、原発巣SUVmax値は長期全生存期間(OS)の単独予測因子であることが示唆された。第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)で報告された。  PET/CTは乳がん診療において2~5年程度の短期予後予測には有用との報告があるが、10年以上のRFSやOSとの相関は示されていない。本研究は、2007年1月~2010年5月に東京女子医科大学病院で治療が開始された原発性乳がんのうちcStage II以下かつER陽性HER陰性浸潤性乳管がん340例を対象とし、患者/腫瘍背景、治療前PET/CTのFDG集積がRFSおよびOSに与える影響をCox回帰比例ハザードモデルで評価した。

がん患者の禁煙、継続カウンセリングと補助薬提供が有効/JAMA

 がんの診断を受けた喫煙者の禁煙治療において、継続的な禁煙カウンセリングと禁煙補助薬の無料提供による強化治療は、4週間の短期カウンセリングと禁煙補助薬に関する助言を行う標準治療と比較して、6ヵ月後の禁煙の達成割合が高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のElyse R. Park氏らが実施した「Smokefree Support研究」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年10月13日号に掲載された。がん患者では、喫煙の継続が有害なアウトカムを引き起こす可能性があるが、米国の多くのがんセンターは、エビデンスに基づく禁煙治療をルーチンの治療に十分に導入できていないという。

トリプルネガティブ乳がん術前治療における免疫チェックポイント阻害剤併用(解説:下村昭彦氏)-1305

2020年9月19日から欧州臨床腫瘍学会(ESMO)がバーチャル開催され、多数の重要演題が発表された。IMpassion031試験もその1つであり、同日Lancet誌に論文掲載となっている。IMpassion031試験はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前化学療法としてアルブミン結合パクリタキセル(nab-PTX)とAC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)療法に、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブを上乗せすることにより病理学的完全奏効(pCR)率が向上するかどうかを検証したランダム化比較第III相試験である。アテゾリズマブ群で17%のpCR率改善を認め、アテゾリズマブのpCR率に対する効果が統計学的有意に示された。PD-L1陽性(1%以上)・陰性のいずれでもpCR率の改善傾向を認めたが、サブグループでは統計学的有意差は認めなかった。同様の試験として抗PD-1抗体であるペムブロリズマブを用いたKEYNOTE-522試験(CBDCA+PTX f/b AC療法へのペムブロリズマブの上乗せを検証)があり、こちらも全体集団でペムブロリズマブによるpCR率改善が示されており、その傾向はPD-L1ステータスにより変わらなかった。

がん患者・家族、食と体重の悩み5割が「相談できていない」/日本対がん協会

 公益財団法人日本対がん協会 サバイバークラブは、2020年9月30日、全がん種を対象にした、がん患者・家族がかかえる食と体重減少の悩みに関する全国インターネット調査の結果を発表。多くのがん患者・家族が食や体重減少に関する悩みを抱えており、また、相談できていない現状が明らかになった。  調査対象は、がん患者とその家族。調査期間は 2019年10月1日~2019年11月18日、回答数は1,382名(がん患者1,168名、家族214名)であった。 食の悩み6割  「食事について気になることや悩みを感じたことがある」と回答した割合は、患者本人は58%、家族は77%が、全体では61%であった。具体的な食の悩みには「食欲がない」が48%、「味が変わって感じる」40%、「吐き気・嘔吐」37%、体重減少36%などで、さまざまな悩みが混在していることがわかった。

進行TN乳がん1次治療へのペムブロリズマブ+化療、日本人解析結果(KEYNOTE-355)/日本乳癌学会

 手術不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療として、化学療法とペムブロリズマブ併用の有効性を評価するKEYNOTE-355試験の全体集団における中間解析結果が2020年のASCOで発表され、PD-L1陽性(CPS≧10)患者でPFSの有意な改善が示されている。今回その日本人集団解析の結果を、国立病院機構大阪医療センターの八十島 宏行氏が第28回日本乳癌学会学術総会で発表した。 ・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例(日本人87例)

虫垂炎治療、抗菌薬は切除術の代替となるのか/NEJM

 虫垂炎の治療では、抗菌薬治療の効果は虫垂切除術に対し非劣性であるが、抗菌薬治療を受けた患者10例当たり約3例(29%)が90日後までに虫垂切除術を受けており、虫垂結石を有する患者は虫垂切除術や合併症のリスクが高いことが、米国・ワシントン大学のDavid R. Flum氏らが実施した「CODA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年10月5日号に掲載された。60年以上も前(1956年)に、虫垂炎治療における虫垂切除術の代替治療として抗菌薬治療の有効性が報告されているが、長期にわたり虫垂炎の標準治療は虫垂切除術とされてきた。

われわれの直感はあまり正しくない(解説:今中和人氏)-1301

手術も終わりに近づくころ、何だか麻酔科の先生がせわしない。聞けば酸素化が悪いとかで、レントゲンを撮ったら見事に真っ白。「抜管どうする?」と、その場に微妙な空気が流れて…なんていうシナリオは、誰しも経験がおありだろう。とはいえ、しっかり換気し過ぎて気胸になったら、それこそ一大事。そんなわけで、周術期呼吸管理については数多くの先行研究があるが、術式や体格をはじめ多くの患者要因があるうえ、呼吸管理と言っても気道内圧、呼気終末圧(PEEP)、1回換気量、リクルートメントなどさまざまな要因が入り乱れて、一筋縄ではいかない。

乳がん術前/術後化学療法時の頭皮冷却が毛髪回復を早める/日本乳癌学会

 乳がんの術前/術後化学療法時に脱毛抑制のためにPaxman Scalp Coolingシステムで頭皮冷却した後の毛髪回復状況を長期間、前向きに調査した結果から、化学療法時の頭皮冷却は脱毛を軽減するだけでなく、毛髪の回復を早め、さらに永久脱毛をほとんどなくす可能性が示唆された。国立病院機構四国がんセンターの大住 省三氏が第28回日本乳癌学会学術総会で発表した。  本研究の対象は、Paxman Scalp Coolingシステムによる術前/術後化学療法時の脱毛研究に参加し、頭皮冷却を1回以上受け、予定していた化学療法を完遂し、脱毛状況の評価が可能だった乳がん患者122例。最後の化学療法後1、4、7、10、13ヵ月時の頭髪状況について、客観的評価(5方向からの撮影写真を医師と看護師2名で評価)でのGrade(0:まったく脱毛なし、1:1~25%脱毛、2:26~50%脱毛、3:>50%脱毛)および主観的評価(患者にかつらまたは帽子の使用を質問)でのGrade(0:まったく使っていない、1:時々使用、2:ほとんど常に使用)で分類した。全例での評価のほか、頭皮冷却を全サイクルで完遂した患者79例(A群)と、途中で頭皮冷却を中止した43例(ほとんどは1サイクルで中止)(B群)の結果を比較した。