ER+/HER2-進行乳がんの1次治療として、パルボシクリブ+レトロゾールをプラセボ+レトロゾールと比較した第III相PALOMA-2試験において、副次評価項目である全生存期間(OS)は有意な改善が示されなかったことが報告された。米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのRichard S. Finn氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。
PALOMA-2試験では、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が示されている(追跡期間中央値23ヵ月でのPFS中央値:24.8ヵ月vs.14.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.58、p<0.001)。PFSの最終解析時、OSデータは必要なイベント数(層別log-rank検定で0.74未満のHR検出に390イベント必要)に達しておらず、2021年11月に必要イベント数に達したことからOSの最終解析を実施した。
・対象:進行がんに対する治療歴のないER+/HER2-進行乳がんの閉経後女性 666例
・試験群(パルボシクリブ群):パルボシクリブ+レトロゾール 444例
・対照群(プラセボ群):プラセボ+レトロゾール 222例
・評価項目:
[主要評価項目]PFS
[副次評価項目]OS、奏効率、安全性、バイオマーカー、患者報告アウトカム
主な結果は以下のとおり。
・OS中央値は、パルボシクリブ群53.9ヵ月(95%CI:49.8~60.8)、プラセボ群51.2ヵ月(95%CI:43.7~58.9)だった(HR:0.956、95% CI:0.777~1.177、片側p=0.3378)。
・同意撤回/追跡不能により生存データが得られなかった患者(パルボシクリブ群13%、プラセボ群21%)を除外した事後感度分析では、OS中央値はパルボシクリブ群51.6ヵ月(95%CI:46.9~57.1)、プラセボ群44.6ヵ月(95%CI:37.0~52.3)だった(HR:0.869、95%CI:0.706~1.069)。
・化学療法までの期間の中央値は、パルボシクリブ群38.1ヵ月(95%CI:34.1~42.2)、プラセボ群29.8ヵ月(95%CI:24.7~34.8)だった(HR:0.730、95%CI:0.607~0.879)。
・PALOMA-1試験とPALOMA-2試験を合わせたOS中央値(追跡期間中央値90ヵ月)は、パルボシクリブ群51.8ヵ月、プラセボ群46.8ヵ月で、HRは0.934(95%CI:0.780~1.120)だったが、無病生存期間12ヵ月超のサブグループでは、パルボシクリブ群64.0ヵ月、プラセボ群44.6ヵ月で、HRは0.736(95%CI:0.551~0.982)であった。
Finn氏は、「OSは数値的には改善したが、統計学的に有意ではなかった。しかしながら、この集団におけるOS中央値が50ヵ月以上であることはHR+乳がんの臨床経過において意味のある改善を示すものであり、それは無病生存期間12ヵ月超の患者で強調される」と述べた。さらに、「PALOMA-2試験では生存データが得られなかった患者の割合が大きく、また2つの群に偏りがあったことで、OSの解釈は限られる」と考察した。
(ケアネット 金沢 浩子)