転移を有するHR+/HER2-乳がんにおいて、CDK4/6阻害薬による治療で増悪した後、内分泌療法を別の薬剤に切り替えてribociclibを投与することにより、無増悪生存(PFS)に有意なベネフィットが得られたことが、無作為化試験で示された。米国・エモリー大学Winship Cancer InstituteのKevin Kalinsky氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。
HR+/HER2-転移乳がんの標準療法であるCDK4/6阻害薬と内分泌療法との併用で増悪した患者において、内分泌療法を切り替えてCDK4/6阻害薬を継続する治療が有用である可能性が観察研究で示唆されているが、前向き無作為化試験は報告されていない。今回、多施設無作為化第II相試験であるMAINTAIN試験の結果が報告された。
・対象: CDK4/6阻害薬+内分泌療法で増悪したHR+/HER2-転移乳がんの男性もしくは閉経後女性
・試験群(ribociclib併用群):ribociclib+増悪前と異なる内分泌療法※60例
・対照群(プラセボ群):プラセボ+増悪前と異なる内分泌療法※59例
※アロマターゼ阻害薬を投与しフルベストラントを投与していなかった患者にはフルベストラント、フルベストラントを投与していた患者にはエキセメスタン
・評価項目:
[主要評価項目]PFS(無作為化から増悪または死亡までの期間)
[副次評価項目]全奏効率、クリニカルベネフィット率、安全性、腫瘍および血液マーカー
主な結果は以下のとおり。
・データカットオフ時点(2022年1月4日)での追跡期間中央値は18.2ヵ月だった。
・評価可能例は119例で、プラセボ群の1例以外は女性、増悪前に投与されていたCDK4/6阻害薬は、パルボシクリブ103例(87%)、ribociclib 14例(12%)、アベマシクリブ2例(2%)だった。
・PFS中央値は、ribociclib併用群が5.29ヵ月(95%CI:3.02~8.12)で、プラセボ群2.76ヵ月(95%CI:2.66~3.25)に対して有意に延長した(HR:0.57、95%CI:0.39~0.95、p=0.006)。
・PFS率は、6ヵ月時点でribociclib併用群41.2%、プラセボ群23.9%、12ヵ月時点でribociclib併用群24.6%、プラセボ群7.4%だった。
・内分泌療法別のPFS中央値は、フルベストラント投与患者(99例)ではribociclib併用群が5.29ヵ月とプラセボ群2.76ヵ月に対して有意に改善した(HR:0.60、95%CI:0.39~0.94)。エキセメスタン投与患者(20例)では、ribociclib併用群5.36ヵ月、プラセボ群3.06ヵ月(HR:0.41、95%CI:0.14~1.24)だった。
・全奏効率は、ribociclib併用群20%、プラセボ群11%(p=0.51)、クリニカルベネフィット率はribociclib併用群43%、プラセボ群25%(p=0.06)だった。
・ribociclib併用群におけるGrade3以上の主な治療関連有害事象は好中球減少症(40%)で、管理可能な安全性プロファイルを示した。
最後にKalinsky氏は、探索的解析として、フルベストラント投与患者ではESR1野生型のみにribociclib併用群のPFSベネフィットがみられたという結果を提示したが、「ESR1変異型の症例が少なく、またCCND1およびFGFR1の増幅を示す患者の割合が高く、これらのデータは仮説を生み出すものだ」と述べた。
(ケアネット 金沢 浩子)