循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:67

コレステロール値を安定させることが認知症予防に寄与か

 血中の脂質値の変動は、アルツハイマー病(AD)やアルツハイマー病に関連する認知症(ADRD)のリスクを上昇させる可能性のあることが、米メイヨー・クリニックのSuzette Bielinski氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「Neurology」に7月5日掲載された。  Bielinski氏らは、追跡開始時点(2006年1月1日)にはADまたはADRDのなかった60歳以上の男女1万1,571人(平均年齢71歳、女性54%)のデータを収集して分析した。対象者には、試験開始前5年間の総コレステロール(TC)値、トリグリセライド(中性脂肪、TG)値、LDLコレステロール(LDL-C)値、HDLコレステロール(HDL-C)値のうち、3種類以上の測定値がそろう人が選ばれた。

成人の胸腺摘出、全死亡・がんリスクが増加/NEJM

 胸腺摘出を受けた患者は摘出を受けなかった対照群よりも、全死因死亡およびがんリスクが高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のKameron A. Kooshesh氏らによる検討で示された。また、術前感染症、がん、自己免疫疾患を有する患者を除外した解析では、胸腺摘出は自己免疫疾患のリスクを増大すると思われる関連性もみられたという。成人における胸腺の機能は明らかになっていないが、さまざまな外科手術でルーチンに摘出が行われている。研究グループは、成人の胸腺は、免疫機能と全般的な健康の維持に必要であるとの仮説を立て、疫学的・臨床的・免疫学的解析評価で検証した。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。

寄せられた疑問に答える、脂質異常症診療ガイド2023発刊/日本動脈硬化学会

 『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』が6月30日に発刊された。本ガイドは2018年版から5年ぶりの改訂となり、塚本 和久氏(帝京大学大学院医学研究科長、内科学講座 教授)が改訂点や本書の新たな取り組みについて、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで解説した。  本診療ガイドは脂質異常症に特化し、非専門医が困ったときに参考となる情報をコンパクトに記載したものである。日本動脈硬化学会では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版』をはじめ、『スタチン不耐に関する診療指針2018』『PCSK9阻害薬の継続使用に関する指針』などのさまざまなガイドラインや指針を発刊しており、本GLはそれらの内容を網羅するかたちで作成されている。そのため、主な改訂点も動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版に準じたものになっている。

習慣的に運動をしていた健康な53歳の男性を襲った心臓発作

 53歳の米国人男性、Ed Frauenheimさんは、サンフランシスコの丘陵地帯をしばしばウォーキングしていた。ある夏の日、彼はお気に入りの公園の急な坂を、いつものように大股で上った。上りは息が切れたが下りは楽だった。しかし、下り坂の途中で胸が締め付けられ、吐き気とめまい、立ちくらみに襲われた。そのまま気を失ってしまうのではないかと心配になり、歩道の脇にそれて数分間休んだ。すると、それらの症状はなくなった。  家に帰り、妻のRowena Richieさんにそのことを話すと、彼女は深刻に捉えず、「朝食が少なかったか、水分が不足していたのでは?」と答えた。Frauenheimさんも「そうかもしれない」と思い、一度は仕事にとりかかったが、やはり気になり、健康保険会社が提供している電話相談に電話してみた。応対した看護師は、直ちに救急外来を受診するように勧めた。

体内で溶解する植込み型心臓デバイスの開発が前進

 心疾患患者の体内に留置され、一時的な心臓のモニタリングデバイスやペースメーカーとして機能した後、体内で溶けてなくなる植込み型デバイスの開発に関する研究結果を、米ノースウェスタン大学のIgor Efimov氏らが、「Science Advances」に7月5日発表した。研究グループは、このデバイスを留置された患者は、その除去や調整のために追加の手術を受ける必要はないことから、このデバイスを、時間の経過とともに分解され体内に吸収される縫合糸に例えている。  生体吸収性のポリマーと金属でできているこのデバイスは、郵便切手ほどの大きさで、軟らかくて軽量で、透明である。初期段階の実験で、ラットの心臓の上にこの植込み型デバイスを留置したところ、デバイスは正確な測定値を提示し、その後、安全に溶解して体内に吸収されることが示された。

拡張型心筋症、アフリカ系とヨーロッパ系患者での遺伝的構造/JAMA

 拡張型心筋症(DCM)の遺伝子変異について、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系の患者を対象に調べたところ、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者は、欧州系のゲノム祖先を持つDCM患者と比較し、病原性/病原性の可能性と判定できる臨床的に対処可能な変異遺伝子を有する割合が低いことが、米国・オハイオ州立大学のElizabeth Jordan氏らによる検討で明らかにされた。原因として、遺伝子構造が異なる点と、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者の臨床データが不足している点が示唆されたという。黒人のDCM患者は白人のDCM患者よりも、家族歴によるリスクが高くアウトカムが不良である一方、DCMのゲノムデータの大半は白人患者のものである。研究グループは、多様なDCM患者集団において、ゲノム祖先ごとにDCMのまれな変異遺伝子構造を比較した。JAMA誌2023年8月1日号掲載の報告。

糖尿病予備群は食後高血糖是正により心血管転帰が改善

 食後高血糖への介入が転帰改善につながる可能性を示唆するデータが報告された。国内で実施された多施設共同研究「DIANA研究」終了後の追跡観察調査が行われ、国立循環器病研究センター心臓血管内科部門冠疾患科の片岡有氏らによる論文が、「Journal of Diabetes and its Complications」5月号に掲載された。  糖尿病では食後のみでなく食前の血糖値も高くなるが、糖尿病予備群と言われる75gブドウ糖負荷試験にて診断可能な耐糖能異常(impaired glucose tolerance;IGT)や初期の糖尿病は、食前の血糖値は正常だが食後の高血糖を伴う。食後の高血糖は心血管疾患発症のリスク因子であることを示唆する多くの疫学研究結果が報告されている。しかしながら、食後高血糖への治療介入により、心血管疾患発症リスクが抑制されるかという点については、いまだ十分に明らかになっていない。

突然死が最も起こりやすいスポーツは…

 心臓の病=高齢者のイメージが強いが、心臓突然死に限って言えば若年者も他人ごとではない。心臓突然死では年間約6~8万人が亡くなっており、その発生件数は年齢とともに増加する。ところが、スポーツ関連の突然死の場合は若年層に多く、18歳以下の突然死の約4割はスポーツ関連であるという。ではどんなスポーツで発生しやすいのだろうか。そしてその予防対策や心掛けておくべきことはなんだろうか-。今回、8月10日健康ハートの日を前に行われた第4回健康ハート・シンポジウムにおいて、公益財団法人日本サッカー協会(JFA)の医学委員を務める林 英守氏(順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学 准教授)が『サッカー×ハート ~今、私たちにできることは?~』と題し、発症リスクの高いスポーツ、試合前の体調管理方法について解説した。

わが国の平均寿命、コロナの影響などで男女とも低下/厚生労働省

 厚生労働省は、7月28日に令和4年の簡易生命表の概況を発表した。これによると男性の平均寿命は81.05歳、女性の平均寿命は87.09歳となり、前年と比較し男性は0.42年、女は0.4年下回ったほか、平均寿命の男女差は6.03年で前年より0.07年縮小した。  平均寿命の前年との差を死因別に分解すると、男性は悪性新生物(腫瘍)などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いていたが、男女とも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、心疾患(高血圧性を除く)、老衰などの死亡率の変化が平均寿命を縮める方向に働いていた。

CVDの1次予防、6ヵ月の菜食は薬物治療に引けを取らない

 一般集団において、肉類を摂取しない菜食生活は心血管代謝リスクを改善することが報告されているが、心血管疾患(CVD)リスクが高い人おける効果は結論が出ていない。そこで、オーストラリア・シドニー大学のTian Wang氏らが、CVD高リスク者やCVD患者を対象に菜食生活と主要な心血管代謝リスク因子との関連についてメタ解析を実施した結果、6ヵ月間の菜食生活は、CVD高リスク者では有意なLDL-コレステロール(LDL-C)やHbA1c、体重の改善と関連していたことを発表した。JAMA Network Open誌2023年7月25日号の報告。