循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:67

HDL-コレステロールは“善玉”?/JACC

 “善玉”として知られているHDL-コレステロール(HDL-C)は、心臓の健康にそれほど大きな違いをもたらさないことを示すデータが報告された。白人と黒人の比較では、後者において特にその可能性が大きいという。米オレゴン健康科学大学のNathalie Pamir氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に11月21日掲載された。  米国成人約2万4,000人を対象としたこの研究では、HDL-Cが低い白人は、冠動脈心疾患(CHD)のリスクがやや高くなることが分かった。しかし黒人ではそのような関連は見られなかった。また、白人か黒人かにかかわらず、HDL-Cが高い場合にCHDリスクが低下するという関連は見つからなかった。この結果を受けて、「CHDリスクの予測のためのHDL-Cの位置付けを再検討する必要がある」とする研究者も現れている。論文の上級著者であるPamir氏も、「CHDの古典的リスク因子が誰にでも同様の影響を及ぼすわけではない。治療ガイドラインは全ての人に役立つものであるべきだ」と述べている。

心肺蘇生で帰還した5人に1人が臨死体験?――米英の多施設共同研究

 心停止に至り心肺蘇生(CPR)により蘇生した人を対象とする研究から、それらの人が死の淵にある時、全く意識がなかったとは言えないとする研究結果が、米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表された。米国と英国の医療機関が参加して行われた多施設共同研究の結果であり、米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のSam Parnia氏らが報告した。  臨死体験は古くから人々の興味の的とされてきた。

米国でのAMIの30日死亡率、保険プランでの差は?/JAMA

 米国高齢者向けの公的医療保険・メディケアの、マネジドケア型でカバーする健康保険プラン「メディケアアドバンテージ」加入者と、従来型の出来高払いでカバーするプラン加入者について、2009~18年の急性心筋梗塞(AMI)のアウトカムを比較したところ、30日死亡率は、2009年時点ではメディケアアドバンテージ加入者が従来型メディケア加入者より、わずかながら統計学的に低かったが、2018年までに統計学的有意差は認められなくなっていた。米国・ハーバード大学医学大学院のBruce E. Landon氏らが、メディケアプログラムのデータを基に行った後ろ向きコホート試験の結果で、JAMA誌2022年12月6日号で発表された。メディケアアドバンテージプラン加入者の支払いカバー率は、2018年は37%だったが、2022年には48%に増大している。メディケアアドバンテージプランにおいて、特定の臨床状態の患者に同質のケアを提供していたかどうかは明らかになっていないが、著者は「今回の結果は、他の結果も考慮したうえで、メディケアプランの違いによる治療とアウトカムの格差に関する見識を提供するものになるだろう」と述べている。

リバーロキサバン延長で、静脈血栓塞栓症の再発リスク低減/BMJ

 症候性の孤立性遠位深部静脈血栓症(DVT)の患者に対して、リバーロキサバンによる6週間の治療の後、さらに6週間の同薬の投与を行うと、プラセボと比較して、出血のリスクを増加させずに静脈血栓塞栓症の再発リスクが低減することが、イタリア・インスブリア大学のWalter Ageno氏らが実施した「RIDTS試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年11月23日号に掲載された。  RIDTS試験は、イタリアの28施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2017年1月~2020年3月の期間に患者の登録が行われた(Bayerとインスブリア大学の助成を受けた)。  対象は、年齢18歳以上、下肢の症候性孤立性遠位DVTと診断され、標準的な用量のリバーロキサバンの投与を6週間受けた患者であった。被験者は、さらに6週間の同薬(20mg、1日1回)の追加投与を受ける群、またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、24ヵ月間追跡された。

脂肪性肝疾患は心不全リスクを増大させる?

 肝臓に異常な脂肪が蓄積する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が、心不全リスクを大幅に高める可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。この研究結果は、米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表された。  米国では成人の4人に1人がNAFLDであるとされている。NAFLDは、恒久的な肝臓の損傷を引き起こしたり、プラークが動脈に蓄積して血流を制限するアテローム性動脈硬化症の発症リスクを増大させたりすることが知られている。しかし、NAFLDと心不全(心臓が十分に血液を送り出せない状態)との関係は、これまであまり研究されていなかった。米国での心不全患者の数は約600万人に上る。心不全は、完治は望めないものの、生活習慣の是正、薬剤および外科的処置による治療は可能だ。

SGLT2阻害薬は非糖尿病CKDにおいてもなぜ腎イベントを軽減するか?(解説:栗山哲氏)

SGLT2阻害薬に関するこれまでのシステマティックレビューやメタ解析は、2型糖尿病(diabetes mellitus:DM)患者を中心に検討されてきた。本論文では、非DM患者の登録割合が多い最近の大規模研究EMPA-KIDNEY、DELIVER、DAPA-CKD加えて、2022年9月の時点における13の大規模研究、総計9万409例(DM 7万4,804例[82.7%]、非DM 1万5,605例[17.3%]、平均eGFR:37~85mL/min/1.73m2)を解析した。本研究は、DMの有無によりSGLT2阻害薬の心・腎保護作用に差異があるか否かを膨大な症例数で解析した点が新しい。

重症ED患者はアディポネクチン高値だが心血管リスクが高い可能性

 勃起障害(ED)の重症度が高い男性は、“善玉”のサイトカインとされているアディポネクチンが高値であるというデータが報告された。ただし、それにもかかわらず、重症ED患者をアディポネクチン値の高低で比較すると、低値群の方がBMIや体脂肪率が高く、糖・脂質代謝は悪化しているという。金沢大学大学院医薬保健学総合研究科泌尿器集学的治療学の重原一慶氏らが、性腺機能低下症の男性を対象に行った研究の結果であり、詳細は「The Aging Male」に10月3日掲載された。  EDは近年、心血管イベントの関連因子の一つとして位置付けられており、ED患者では血管内皮機能が低下したり、糖・脂質関連指標が悪化していることが多い。一方、アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されているサイトカインであり、インスリン感受性を高めたり炎症を抑制する作用があり、一般的には“善玉”と呼ばれている。ただ、EDとアディポネクチンとの関連はよく分かっていない。重原氏らは、金沢大学附属病院の患者データを後方視的に解析し、この関連を検討した。

心房細動患者へのNOAC、間質性肺疾患リスクに影響か

 近年、非弁膜性心房細動(NVAF)患者の脳卒中予防のため、ワルファリンの代替として経口抗凝固薬(NOAC)の使用が推奨されている。しかし、第Xa因子(FXa)阻害薬の使用に関連する間質性肺疾患(ILD)リスクの可能性が報告されている。今回、台湾・長庚記念病院国際医療センターのYi-Hsin Chan氏らがFXa阻害薬による治療がNVAF患者の肺損傷と関連していたことを明らかにした。JAMA Network Open誌11月1日号掲載の報告。  研究者らは、NVAF患者におけるNOAC使用に関連するILDリスクを評価することを目的として、台湾国民健康保険研究データベースを使用し後ろ向きコホート研究を実施した。対象者は2012年6月1日~2017年12月31日までにOACによる治療を受け、既存の肺疾患のないNVAF患者が含まれた。傾向スコアで安定化重み(PSSW:Propensity score stabilized weighting)を用いて、投薬群(FXa 阻害薬、ダビガトランまたはワルファリン、参照をワルファリン) 間で共変量のバランスを取った。患者は服薬開始日からILDの発症/死亡、または研究終了(2019年12月31日)のいずれか早い期間まで追跡され、データ分析は2021年9月11日~2022年8月3日に行われた。

帯状疱疹の既往で長期的な脳卒中・冠動脈疾患リスクが増大

 帯状疱疹と脳卒中および冠動脈疾患の関連を検討したところ、帯状疱疹の既往が脳卒中および冠動脈疾患の長期的なリスクを高め、そのリスクは帯状疱疹発症から12年以上継続する可能性があることを、米国・Brigham and Women's HospitalのSharon G. Curhan氏らが明らかにした。Journal of the American Heart Association誌2022年11月16日掲載の報告。  調査は、米国の3つの大規模コホート研究であるNurses' Health Study(NHS)、Nurses' Health Study II(NHS II)、Health Professionals Follow-Up Study(HPFS)を用いて行われた。解析対象は、これまでに脳卒中や冠動脈疾患の既往のないNHSの女性7万9,658例(平均年齢65.8歳、2000~2021年)、NHS IIの女性9万3,932例(平均年齢46.2歳、2001~2021年)、HPFSの男性3万1,440例(平均年齢69.5歳、2001~2016年)の合計20万5,030例であった。

治療抵抗性高血圧に対する二重エンドセリン受容体拮抗薬の効果(解説:石川讓治氏)

治療抵抗性高血圧は、降圧利尿薬を含む3種類の降圧薬の服用によっても目標血圧レベル(本研究では収縮期血圧140mmHg未満)に達しない高血圧であると定義されている。基本的な2種類としてカルシウムチャネル阻害薬およびアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシンII受容体阻害薬といった血管拡張薬が選択されることが多く、この定義には、血管収縮と体液ナトリウム貯留といった2つの血圧上昇の機序に対して介入しても血圧コントロールが不十分であることが重要であることが含まれている。従来から、第4番目の降圧薬として、血管拡張と体液ナトリウム貯留の両方に作用する薬剤であるスピロノラクトンやミネラルコルチコイド受容体阻害薬が投与されることが多かったが、高齢者や腎機能障害のある患者では、高カリウム血症に注意する必要があった。