糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:43

体は食事の時間を覚えている

 夕食の時間になると、決まってお腹がすくことを、不思議だと感じたことはないだろうか?英サリー大学のJonathan Johnston氏らが行った研究によると、それは単なる習慣的なことではなく、人間の体が周期的な食事の時間帯を予測している結果と考えられるという。この研究の詳細は、「Current Biology」に2月22日掲載された。  動物は、食物の入手可能性の高い時間帯を予測するために、概日リズム(1日24時間周期の生理活動)を活用していることが知られている。ただし、人間にもそのような能力があるのか否かは分かっていない。Johnston氏らは、人間も概日リズムによって食物を大量に手に入れられる時間帯を予測しているとの仮説を立て、以下の研究を行った。

脊髄刺激療法で治療抵抗性の糖尿病性神経障害が改善

 治療抵抗性の有痛性糖尿病性神経障害(painful diabetic neuropathy;PDN)に対する脊髄刺激療法(spinal cord stimulation;SCS)の有用性が報告された。患者の疼痛症状の改善に加えて神経学的評価の改善も認められたという。米アーカンソー大学のErika Petersen氏らが行った無作為化比較試験の報告であり、第75回米国神経学会(AAN2023、4月22~27日、ボストン)での発表に先立ち、研究要旨が2月28日にオンラインで公開された。  米国の糖尿病患者数は約3700万人とされており、最大でその25%がPDNに罹患しているとされる。PDNに対してはさまざまな治療薬が臨床応用されているが、それらの治療に抵抗性を示す患者も少なくない。Petersen氏らは、そのような治療抵抗性PDN患者に対するSCSの安全性と有効性を検討した。

糖尿病のある人を知らずに傷つける糖尿病スティグマ/糖尿病学の進歩

 2月17日・18日に東京・東京国際フォーラムで「第57回 糖尿病学の進歩」(世話人:馬場園 哲也氏[東京女子医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝内科学分野 教授・基幹分野長])が開催された。  近年、「糖尿病」という病名について患者や医療者から疑問の声が出され、糖尿病というネガティブなイメージからさまざまな不利益を受けていることも表面化している。そこで本稿では、「糖尿病診療に必要な知識」より「糖尿病スティグマとアドボカシー活動」(田中 永昭氏[国家公務員共済組合 枚方公済病院 内分泌代謝内科])の内容をお届けする。

2型DM患者、砂糖入り飲料多飲で死亡リスク2割増/BMJ

 2型糖尿病(DM)患者における飲料別の全死因死亡および心血管疾患(CVD)アウトカムとの関連が明らかにされた。砂糖入り飲料の多量摂取が全死因死亡およびCVDの発症・死亡と関連する一方で、コーヒー・紅茶・淡水・低脂肪乳の摂取は、摂取量と全死因死亡が逆相関であるという。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のLe Ma氏らが、2つの大規模前向きコホート試験、Nurses' Health StudyとHealth Professionals Follow-Up Studyの解析結果を報告した。著者は、「示された結果は、成人2型DM患者におけるCVDおよび早期死亡のリスクを管理するうえで、飲料の健康的な選択が果たす潜在的な役割を強調するものであった」とまとめている。BMJ誌2023年4月19日号掲載の報告。

静脈を動脈の代用として下肢切断を回避

 米ペンシルベニア州ハーミテージ市のCynthia Elfordさん(63歳)は、1型糖尿病が原因で左脚を失った。日焼けした足の親指がその後黒っぽく変色し、切断を余儀なくされたのだ。そして彼女は、右脚も同じ状態になりつつあると言われていた。  手足に血液を送る動脈が狭くなる末梢動脈疾患(PAD)があると、下肢の切断を要する状態になりやすい。治癒を促す血流があまりにも少ないと、小さな傷などでも壊死してしまうことがあるためだ。しかし、侵襲性が極めて低い"LimFlow"と呼ばれるシステムを用いた実験段階の治療法のおかげで、Elfordさんは今のところ右脚を切断することなく過ごしている。この治療法は、虚血状態にある脚に新鮮な血液を送るために、静脈を動脈にかえるというものだ。LimFlowの安全性と有効性について調べる目的で実施された臨床研究では、治療を受けた患者の76%が下肢切断を回避できたという。この結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」3月30日号に発表された。

作り笑いの「笑いヨガ」で糖尿病を改善~日本人でのRCT

 笑いには、ストレス軽減、NK細胞の活性化、アレルギー反応抑制、食後血糖値の上昇抑制などが報告されている。しかし、お笑い番組は人により好みが異なるため、すべての人を笑わせることは難しい。今回、福島県立医科大学の広崎 真弓氏らの無作為化比較研究の結果、作り笑いと深呼吸を組み合わせた「笑いヨガ」で2型糖尿病患者の血糖コントロールが改善されることが示された。Frontiers in Endocrinology誌2023年3月31日号に掲載。

社会的孤立と糖尿病を含む既知のアルツハイマー型認知症リスク因子が関連

 社会的な孤立が、アルツハイマー型認知症を予防するための修正可能なリスク因子の可能性があるとする、マギル大学(カナダ)のKimia Shafighi氏らの研究結果が「PLOS ONE」に2月1日掲載された。社会的孤立や周囲からのサポートの欠如と、糖尿病を含む身体疾患をはじめとする、アルツハイマー病の種々のリスク因子との関連が明らかになったという。  アルツハイマー病とそれに関連する認知症(alzheimer’s disease and related dementias;ADRD)の増加は、多くの国で公衆衛生上の重要な課題となっている。ADRDの治療法はいまだ確立されていないが、予防に関しては、修正可能なリスク因子の管理によって、最大40%程度、発症を抑制できる可能性が報告されている。

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」発売/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、4月18日付のプレスリリースで、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注2.5mgアテオス」「同皮下注5mgアテオス」(一般名:チルゼパチド、以下「マンジャロ」)の販売を同日より開始したことを発表した。  マンジャロは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬である。天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子の構造だが、GLP-1受容体にも結合するように改変されており、選択的に長時間作用し血糖値を改善させる。本剤は、1回使い切りのオートインジェクター型注入器(「アテオス」)によって、週1回皮下注射する薬剤である。あらかじめ注射針が取り付けられた専用ペン型注入器により、注入ボタンを押すことで自動的に注射針が皮下に刺さり、1回量が充填されている薬液が注入されるため、患者が用量を設定したり、注射針を扱ったりする必要がない。

身長が5mm低くなっただけで死亡リスクが有意に上昇―日本人での縦断研究

 加齢に伴い、わずかに身長が低くなっただけで、死亡リスクが有意に高くなる可能性を示唆するデータが報告された。2年間で5mm以上低くなった人は、そうでない人より26%ハイリスクだという。福島県立医科大学医学部腎臓高血圧内科の田中健一氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に3月3日掲載された。  身長は椎間板の変形や椎骨骨折などの影響を受けて、歳とともに徐々に低くなる。そのような身長短縮の影響は骨粗しょう症との関連でよく検討されており、また死亡リスクとの関連も検討されている。ただし後者については、2cm以上という顕著な身長短縮が見られた場合を評価した研究が多く、わずかな身長短縮と死亡リスクの関連は明らかになっていない。田中氏らは、特定健診研究(J-SHC study)のデータを用いて、軽微な身長短縮の死亡リスクへの影響を縦断的に検討した。

2型DMの追加処方に有益なのは?~816試験をメタ解析/BMJ

 中国・四川大学のQingyang Shi氏らはネットワークメタ解析を行い、2型糖尿病(DM)成人患者に対し、従来治療薬にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を追加投与する場合の実質的な有益性(心血管系および腎臓系の有害アウトカムと死亡の減少)は、フィネレノンとチルゼパチドに関する情報を追加することで、既知を上回るものとなることを明らかにした。著者は、「今回の結果は、2型DM患者の診療ガイドラインの最新アップデートには、科学的進歩の継続的な評価が必要であることを強調するものである」と述べている。BMJ誌2023年4月6日号掲載の報告。