糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:46

アラーム付き間歇スキャンCGM vs. SMBG-試合前から勝負あり?(解説:住谷哲氏)

持続グルコース測定器(continuous glucose monitoring:CGM)は大きく分けて3種類ある。現在わが国で使用できる機器も併せて記載すると、(1)リアルタイムCGM(real-time CGM[rtCGM]):そのときの血糖値が常に測定表示されるもの(Dexcom G6、ガーディアン コネクト)、(2)間歇スキャンCGM(intermittently scanned CGM[isCGM]、flash glucose monitoring[FGM]とも呼ばれる):患者がセンサーをスキャンしたときにのみグルコース値が表示されるもの(フリースタイルリブレ)、(3)professional CGM(pCGM):患者はグルコース値を装着中に見ることができず検査終了後に解析するもの(フリースタイルリブレPro)、になる。最も汎用されているのはフリースタイルリブレであるが、欧米ではすでに低血糖・高血糖アラーム付きのフリースタイルリブレ2にほぼ移行しており、他の新規医療機器と同じくわが国は周回遅れの状況である。

慢性腎臓病に対するSGLT2阻害薬エンパグリフロジンの有用性(解説:小川大輔氏)

SGLT2阻害薬による糖尿病患者の腎保護効果については数多くの報告があるが、糖尿病以外の慢性腎臓病に対する効果はまだ報告が少ない。2021年にSGLT2阻害薬ダパグリフロジンが慢性腎臓病の進行を抑制するという試験結果が発表され、ダパグリフロジンは日本において慢性腎臓病の保険適用を取得した。今回、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンの慢性腎臓病に対する試験の結果が報告された。この試験では、推算糸球体濾過量(eGFR)が20~45mL/分/1.73m2未満、またはeGFR 45~90mL/分/1.73m2未満で尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)が200(mg/g・CRE)以上の慢性腎臓病患者、合計6,609例をエンパグリフロジン(10mg・1日1回)投与群、またはプラセボ投与群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、腎臓病の進行(末期腎不全、eGFRが持続的に10mL/分/1.73m2未満、eGFRがベースラインから40%以上持続的に低下、腎臓病による死亡)または心血管系による死亡の複合アウトカムであった。結果は追跡期間中央値2.0年の間に、主要アウトカムの発生がエンパグリフロジン群3,304例中432例(13.1%)、プラセボ群3,305例中558例(16.9%)であった(p<0.001)。また糖尿病の有無にかかわらず、またeGFR値によるサブグループ別でも結果は一貫していた。重篤な有害事象の発生率は両群間で有意差はみられなかった。

BMIと心血管疾患による院内死亡率との関連―日本人150万人のデータ解析

 心筋梗塞や心不全、脳卒中などの6種類の心血管疾患(CVD)による院内死亡率とBMIとの関連を、日本人150万人以上の医療データを用いて検討した結果が報告された。低体重は全種類のCVD、肥満は4種類のCVDによる院内死亡リスクの高さと、有意な関連が見られたという。神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科先端医学分野の山下智也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月7日掲載された。  肥満が心血管代謝疾患などのリスク因子であることは広く知られており、肥満是正のための公衆衛生対策が長年続けられている。その一方、高齢者では肥満が死亡リスクに対して保護的に働くことを示すデータもあり、この現象は「肥満パラドックス」と呼ばれている。ただし、肥満の健康への影響は人種/民族により大きく異なると考えられることから、わが国でのエビデンスが必要とされる。そこで山下氏らは、日本循環器学会の患者レジストリ「循環器疾患診療実態調査(JROAD)」を用いて、日本人のBMIと急性心血管疾患による院内死亡率との関連を検討した。

若年発症2型DMは世界的な健康問題-30年で1.5倍超に/BMJ

 1990年以降、若年発症2型糖尿病は、世界的に増大している青少年・若年成人(15~39歳)の健康問題であり、とくに社会人口統計学的指標(SDI)低中・中の国で疾病負担は大きく、また30歳未満の女性で疾病負担が大きいことを、中国・ハルピン医科大学のJinchi Xie氏らが世界疾病負担研究2019(Global Burden of Disease Study 2019)のデータを解析し報告した。これまで若年発症2型糖尿病の世界的疾病負担や長期傾向、および性別やSDI分類別にみた違い、さらに国別の若年発症2型糖尿病寄与リスク因子の違いなどは調査されていなかった。BMJ誌2022年12月7日号掲載の報告。

過体重・肥満の膝OA疼痛、食事・運動療法は有効か/JAMA

 過体重または肥満の変形性膝関節症患者では、18ヵ月間の食事療法と運動療法を組み合わせたプログラムは生活指導のみの場合と比較して、わずかだが統計学的に有意な膝痛の改善をもたらしたものの、この改善の臨床的な意義は不明であることが、米国・ウェイクフォレスト大学のStephen P. Messier氏らが実施した「WE-CAN試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年12月13日号に掲載された。  WE-CAN試験は、米国ノースカロライナ州の3つの郡(都市部1郡、農村部2郡)で行われた無作為化臨床試験であり、2016年5月~2019年8月の期間に参加者の登録が行われた(米国国立関節炎・骨格筋/皮膚疾患研究所[NIAMS]の助成を受けた)。

心臓に良いとされるサプリのコレステロール低下作用は否定的/JACC

 心臓に良いとされているサプリメント(サプリ)のコレステロール低下作用を検討した結果、いずれも見るべきものはなく、中には負の影響を示すものもあったとする報告が、米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表されるとともに、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に論文が同時掲載された。米クリーブランド・クリニックのLuke Laffin氏らの研究によるもの。  心血管疾患のリスク抑制には、血清脂質値の改善〔LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪の低下、HDL(善玉)コレステロールの上昇〕が重要であり、その手段として医師からは、主としてスタチンと呼ばれる薬剤が処方される。一方、処方箋のいらないサプリメントの中にも心臓に良いとされているものがある。ただし、それらの血清脂質改善作用は明らかでない。そこでLaffin氏らは、それら6種類のサプリの脂質改善作用をスタチンの一種であるロスバスタチンと比較するという、前向き無作為化単盲検比較試験を実施した。

降圧薬使用とアルツハイマー病との関連~メタ解析

 高血圧は認知症のリスク因子として知られているが、高血圧患者のアルツハイマー病リスク軽減に対する降圧薬使用の影響についてのエビデンスは、決定的であるとは言えない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部のM. Adesuyan氏らは、認知機能が正常な高血圧症の成人患者における降圧薬使用とアルツハイマー病発症率との関連を調査した。その結果、降圧薬の使用とアルツハイマー病発症率低下との関連が認められた。とくに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用は、降圧薬の中でも最大のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。このことから著者らは、降圧が認知機能保護の唯一のメカニズムではない可能性があり、認知機能に対するアンジオテンシンIIの影響についてさらなる調査が求められるとしている。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2022年号の報告。

喘息が動脈硬化の進行を促す?

 喘息がアテローム性動脈硬化の進行を促す可能性を示唆するデータが報告された。米ウィスコンシン大学マディソン校のMatthew Tattersall氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に11月23日掲載された。持続型喘息の患者では、頸動脈の動脈硬化が有意に進行していることが確認されたという。ただし、間欠型喘息の患者では、この関係は非有意とのことだ。  喘息とアテローム性動脈硬化の病態にはともに炎症が関与していることから、両者に何らかの相互関係がある可能性が想定される。Tattersall氏らは、アテローム性動脈硬化のリスク評価に頻用されている、超音波検査による頸動脈内膜中膜複合体厚(頸動脈IMT)を指標として、喘息の有無により動脈硬化の進行レベルが異なるか否かを検討した。

トリグリセライドの新基準と適切なコントロール法/日本動脈硬化学会

 今年7月に発刊された『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』。今回の改訂点の1つとして「随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値」が設定された。これらの基準をもとに動脈硬化性疾患のリスクとしての高TG血症を確認するが、TG値の低下だけではイベントを減らせないため、高TG血症の原因となる生活習慣を改善させ適切な治療介入により動脈硬化を抑制するという観点から複合的に行う必要がある。今回、日本動脈硬化学会プレスセミナーにおいて、増田 大作氏(りんくう総合医療センター循環器内科部長)が「高トリグリセライド血症とその治療」と題し、日本人疫学に基づいたTGの適切なコントロール法について解説した。

低炭水化物食は糖尿病リスクの抑制にも良い可能性

 血糖値が極端に高くはない人の糖尿病発症予防という目的でも、低炭水化物の食事スタイルが役立つ可能性が示された。米テュレーン大学のKirsten Dorans氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に10月26日掲載された。  食後の血糖値を上げるように働く炭水化物の摂取量を抑える「低炭水化物食」は、糖尿病患者の治療という場面での有用性を示すエビデンスが増えてきている。ただし、糖尿病の発症予防という点でのエビデンスはまだ少ない。そこでDorans氏らは、まだ糖尿病の治療を受けておらず、HbA1cが6.0~6.9%とそれほど高くない集団を対象とする無作為化比較試験により、この点を検討した。  研究参加者は150人で、平均年齢58.9±7.9歳(範囲40~70歳)、女性72%、BMI35.9±6.7、HbA1c6.16±0.3%。75人ずつの2群に分け、低炭水化物食群に対しては、前半3カ月間は炭水化物を1日40g未満、後半3カ月間は同60g未満を目標とする栄養介入を行った。最初の4週間は毎週1回、それ以降は隔週で個人面接を行ったほか、電話やグループ教育によるフォローアップが継続された。一方、対照群には食事に関する一般的な注意事項を示した書面を手渡し、各自で食事療法を行うように指示したほか、食事とは関係のないトピックの教育セッションが毎月行われた。