糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:45

Fire and Forget vs.Treat to Target(解説:平山篤志氏)

これまでの欧米での心血管イベントを低下させるためのガイドラインでは、ハイリスク患者に対してはLDL-コレステロール(LDL-C)を治療するために強力なスタチンの高用量をまず投与するというFire and Forgetの戦略が推奨されてきた。これはスタチンを用いた大規模臨床試験で、高用量と低用量を比較する、あるいはStrongとMildの高用量を比較する試験のメタ解析から得られた結論であった。また、管理目標値を設定するより、初期投与によるLDL-C低下の割合がイベント抑制には必要であるという考えもあった。

糖尿病が五十肩のリスク因子の可能性

 糖尿病が五十肩(frozen shoulder)のリスクを高める可能性を示唆する研究結果が、「BMJ Open」に1月4日掲載された。英キール大学のBrett Paul Dyer氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、糖尿病でない人を基準とするオッズ比が3倍を超えるという。  五十肩の病因の詳細は不明だが、甲状腺機能障害や心血管代謝疾患などとの関連のあることが報告されており、また糖尿病患者の五十肩の有病率は13.4%とするメタ解析の結果がある。ただし、糖尿病が五十肩のリスク因子なのか否かという点は、十分に明らかになっているとは言えない。これを背景としてDyer氏らは、糖尿病の発症と五十肩の発症の時間的関係を検討するという目的で、過去の長期観察研究を対象とするシステマティックレビューとメタ解析を行った。

死亡・CVリスクを低下させる食事法は?40試験のメタ解析/BMJ

 カナダ・マニトバ大学のGiorgio Karam氏らが7つの代表的な食事プログラムに関する試験についてメタ解析を行い、地中海式食事と低脂肪食を推奨するプログラムは、身体活動やその他の介入の有無にかかわらず、心血管疾患リスクが高い患者の全死因死亡および非致死的心筋梗塞を低減するという、中程度のエビデンスが示されたことを明らかにした。地中海式食事プログラムは、脳卒中リスクも低減することが示唆された。概してその他の食事プログラムは、最低限の介入(食事パンフレット配布など)に対する優越性は示されなかったという。BMJ誌2023年3月29日号掲載の報告。

尿酸値が上がりにくいアルコールは?~日本人8万人のデータ

 飲酒は高尿酸血症の重要なリスク因子だが、アルコール飲料の違いによる血清尿酸値への影響の詳細はわかっていない。今回、聖路加国際病院の福井 翔氏らが、日本人7万8,153人の健康診断データを用いて横断研究を実施した結果、飲酒量をエタノール含有量で統一した場合、ビールでの血清尿酸値上昇は大きく、ワインでは中程度の上昇、日本酒での上昇はわずかで有意ではなかったことが示された。JAMA Network Open誌2023年3月17日号に掲載。

低炭水化物ダイエットはメタボになりやすい?

 炭水化物の摂取量について、推奨量を下回るとメタボリックシンドローム(MetS)の発症が低下するかどうか、現時点では関係性を示す一貫した証拠はない。今回、米国・オハイオ州立大学のDakota Dustin氏らが炭水化物の摂取量とMetSの有病率について研究した結果、炭水化物の推奨量を満たしている人よりも下回っている人のほうがMetSの発症率が高いことが明らかになった。Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics誌オンライン版2023年3月23日号掲載の報告。

糖尿病治療による心血管/心不全リスクへの効果の違い~メタ解析

 糖尿病治療による心血管および心不全リスクへの効果は試験により大きく異なる。今回、医学研究所北野病院(大阪市)の長谷部 雅士氏らがランダム化心血管アウトカム試験35試験のメタ解析およびメタ回帰分析により、糖尿病治療は主要有害心血管イベント(MACE)をHbA1cに依存して減少させる一方、心不全リスクは体重に依存して減少することがわかった。Cardiovascular Diabetology誌2023年3月19日号に掲載。  本研究では、2023年1月25日までPubMedとEMBASEで2型糖尿病または前糖尿病患者におけるMACEと心不全アウトカムの両方を報告する糖尿病治療(生活習慣改善、薬剤)のすべてのランダム化比較心血管アウトカム試験を検索し、35試験(計25万6,524例)を同定した。ランダム効果メタ解析に続いてメタ回帰分析を行い、各アウトカムに対するHbA1cまたは体重減少の影響を評価した。

糖尿病患者、女性は男性より静脈血栓塞栓症を発症しやすい

 糖尿病患者は非糖尿病者よりも静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高いこと、特に女性患者でリスク差が大きく、かつ男性糖尿病患者との比較でもリスク差がある可能性を示すデータが報告された。ウィーン医科大学(オーストリア)のCarola Deischinger氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」12月号に掲載された。  糖尿病と心血管疾患(CVD)リスクとの関連については豊富なエビデンスがあり、糖尿病に伴う凝固亢進状態はCVDのみならずVTEリスクも押し上げることが想定される。ただし、糖尿病とCVDの関連に比べ、糖尿病とVTEに関するエビデンスはまだ十分でない。特に、性差についてはほとんど分かっていない。

米国の成人1型糖尿病患者の肥満有病率は一般人口と同等

 従来、1型糖尿病患者は痩せていることが多いと考えられてきたが、米国ではそのような捉え方が当てはまらなくなってきたことを示すデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のMichael Fang氏らの研究によるもので、「Annals of Internal Medicine」に2月14日、レターとして掲載された。  この研究は、米国国民健康インタビュー調査に回答した、12万8,000人以上の一般住民のデータを解析するという手法で行われた。著者らは、「本研究は、米国の1型糖尿病患者における過体重・肥満の有病率を調査した初の研究と考えられる」としている。

統合失調症患者の体重増加や代謝機能に対する11種類の抗精神病薬の比較

 抗精神病薬の投与量と代謝機能関連副作用との関係を明らかにするため、スイス・ジュネーブ大学のMichel Sabe氏らは、統合失調症患者を対象に抗精神病薬を用いたランダム化比較試験(RCT)の用量反応メタ解析を実施した。その結果、抗精神病薬ごとに固有の特徴が確認され、アリピプラゾール長時間作用型注射剤を除くすべての抗精神病薬において、体重増加との有意な用量反応関係が認められた。著者らは、利用可能な研究数が限られるなどの制限があったものの、本研究結果は、抗精神病薬の用量調整により、体重や代謝機能に対する悪影響を軽減するために有益な情報であるとしている。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年2月8日号掲載の報告。

日本人の睡眠時間と内臓脂肪面積との関連、男女で大きな差

 睡眠時間と内臓脂肪面積の関係は、男性と女性で大きく異なることを示すデータが報告された。8時間以上の長時間睡眠の男性には内臓脂肪型肥満が有意に多く、一方で長時間睡眠の女性には内臓脂肪型肥満が有意に少ないという。東京大学医学部の齊藤活輝氏、同予防医学センターの山道信毅氏らが行った日本人対象横断研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月24日掲載された。  肥満は体に脂肪が過剰に蓄積した状態であり、さまざまな疾患のリスクを高める。特に、内臓の周囲に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は、よりハイリスクな状態であることが知られている。近年、BMI(Body Mass Index;肥満指数)高値で定義される肥満と睡眠時間との間に関連のあることが分かり、そのメカニズムとして、睡眠不足によってストレスホルモンや食欲関連ホルモンの分泌、深部体温に影響が生じることなどの関与が想定されている。ただし、BMI高値より正確な肥満指標である内臓脂肪面積高値で定義される内臓脂肪型肥満と睡眠時間の関係については、特にアジアからのデータの報告はほとんどなかった。齊藤氏らはこの点を明らかにするため、日本人成人を対象とする以下の研究を実施した。