糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:69

糖尿病の発症年齢が低いほど認知症のリスクが高い(解説:吉岡成人氏)-1396

ホワイトホール・スタディ(Whitehall study)はフラミンガム・スタディの「英国版」ともいわれるもので、英国の国家公務員を対象とした大規模な前向きコホート研究である。1967年に開始された「第I期」、1985年に開始された「第II期」がある。糖尿病に関連した論文では、糖尿病は発症の3~6年前から、空腹時血糖値、75g経口糖負荷試験の2時間値、HOMAα、HOMAβが急激な変動を示す(Tabak AG, et al. Lancet. 2009;373:2215-2221.)という臨床的にインパクトが大きい研究報告がある。また、50歳時における心血管の健康スコア7項目(喫煙、食事、運動、BMI、空腹時血糖値、コレステロール値、血圧)が認知症のリスクと関連していることも2019年に報告されている(Sabia S, et al. BMJ. 2019;366:l4414.)。

生活習慣病に対する薬物療法の実効的カバレッジが上昇

 生活習慣病リスク因子に対する、薬物療法の実効的カバレッジ(保健システムを通して、実際に人々に健康増進をもたらすことができる割合)が上昇していることが、医薬基盤・健康・栄養研究所の池田 奈由氏らによって明らかにされた。LDLなどのコレステロール値はスタチン系薬剤によって効果的に抑えられている一方、降圧薬および糖尿病治療薬の有効性を改善するにはさらなる介入が必要だという。Journal of Health Services Research & Policy誌2021年4月号の報告。  保健システム評価指標を用い、日本における高血圧症、糖尿病および脂質異常症治療に対する健康介入の実効的カバレッジについて、その傾向を分析した。

心不全の2人に1人は予防できる!(解説:有馬久富氏)-1393

高齢者の増加に伴い、心不全患者さんが大幅に増加する「心不全パンデミック」が訪れると予想されている。心不全パンデミックを避けるためには、心不全の発症予防が急務である。 今回、Framingham研究・PREVEND研究およびMESA研究の統合解析から、年代別に心不全発症の危険因子およびその集団寄与危険割合を検討した結果がBMJに報告された。その結果、すべての年代において、男性・肥満・高血圧・糖尿病・喫煙・心筋梗塞および心房細動の既往が重要な危険因子であり、それらすべての集団寄与危険割合は75歳未満で75~77%、75歳以上で53%であった。つまり、75歳未満における心不全の4分の3、75歳以上では2分の1が、これらの危険因子により引き起こされているということが明らかになった。

GLP-1受容体作動薬セマグルチドは中止により体重減少効果が消失する(解説:住谷哲氏)-1392

ダイエットでよく知られた現象にヨーヨー効果(yo-yo effect)がある。運動や食事でうまく減量できても、サボるとすぐに元の体重に戻ってしまうことが、玩具のヨーヨーの上下運動に似ていることから名付けられた。運動による筋肉量の維持を伴わずにカロリー制限だけで減量を試みると、減った筋肉量が脂肪に置換されてその後の減量が一層困難になる弊害もよく知られている。STEPは抗肥満薬としてのGLP-1受容体作動薬セマグルチド注射薬開発を目的とした国際第III相試験プログラムである。すでにSTEP 1-3において、2型糖尿病の合併の有無に関係なく、セマグルチド2.4mg/週の投与により著明な体重減少がもたらされることが報告されている。STEP 4である本試験では、セマグルチドによる体重減少が投与を中止することでリバウンドするか否かを検討したwithdrawal trialである。

米国でダパグリフロジンがCKDの適応承認/アストラゼネカ

 SGLT2阻害薬の活躍の場が拡大している。AstraZeneca(本社:英国ケンブリッジ)のSGLT2阻害剤ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が、進行リスクのある成人の慢性腎臓病(CKD)における適応承認を米国で取得した。適応症は、慢性腎臓病におけるeGFRの持続的低下、末期腎不全への進行、心血管死、および心不全入院のリスク低減。  ダパグリフロジンは、経口で1日1回投与の、ファーストインクラスの選択的SGLT2 阻害剤であり、心臓、腎臓、膵臓における基本的な関連性の解明に伴い、心臓・腎臓に及ぼす影響から、予防、そして臓器保護へと研究は進化している。

2型糖尿病、「座る時間の短縮」も指導して

  身体活動に加えて、座位中心の生活習慣を2型糖尿病のリスク評価に含める必要がある。2型糖尿病のリスク低減には、身体活動の促進と座位中心の生活習慣の回避を併せた指導が重要であると、スペイン・ナバラ大学のMaria Llavero-Valero氏らによって示された。Nutrition, Metabolism & Cardiovascular Diseases誌2021年2月8日号の報告。  身体活動と座りがちな行動―。ともに独立して2型糖尿病進展との関連性が示されている。しかし、両者の組み合わせによる検証は乏しい。そのため、本研究では身体活動スコアの評価だけでなく、座位中心の生活習慣スコアも併せて評価し、2型糖尿病との関連性を比較検証した。

糖尿病の発症年齢が若いほど認知症になりやすい?/JAMA

 2型糖尿病の発症年齢が下がるほど、その後の認知症リスクは高くなることが示された。フランス・パリ大学のClaudio Barbiellini Amidei氏らが、英国の前向きコホート研究Whitehall II参加者を対象とした追跡期間中央値31.7年のデータを分析して明らかにした。2型糖尿病については若年発症者が増加する傾向がみられる。これまで2型糖尿病の若年での発症と血管合併症との関連は知られていたが、認知症との関連は不明であった。JAMA誌2021年4月27日号掲載の報告。

「高齢者糖尿病の血糖管理目標(HbA1c値)」と死亡リスクの関係

 日本糖尿病学会と日本老年医学会は「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」を公表し、患者を3つのカテゴリーに分類している。しかしその妥当性に関して本邦の縦断研究に基づくエビデンスは不足していた。東京都健康長寿医療センターの荒木 厚氏・大村 卓也氏らはJ-EDIT研究のデータを用い、認知機能、手段的ADL、基本的ADL、併存疾患による種々のカテゴリー分類と死亡リスクとの関連を検討。身体機能と認知機能に基づく分類および併存疾患数に基づく分類が死亡リスクの予測因子となることに加え、8つの簡便な質問項目でカテゴリー分類が可能となることが明らかとなった。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版4月22日号の報告より。

リラグルチド+運動、減量維持効果は最良か?/NEJM

 肥満治療において減量後の体重のリバウンドは重大な問題だが、肥満成人の減量後に運動プログラムとリラグルチドを併用することで、運動プログラムのみに比べ、1年後の体重減の差は5.4kgと、体重減維持に効果があることが示された。体脂肪率の減少幅も、運動プログラムとリラグルチドの併用群では、どちらか一方の介入群に比べて約2倍に上った。デンマーク・コペンハーゲン大学のJulie R. Lundgren氏らが、195例を対象に行った無作為化直接比較プラセボ対照試験で明らかにし、NEJM誌2021年5月6日号で発表した。

全粒穀物、豆類そして野菜をしっかり食べよう!―低GI食と心血管疾患(解説:住谷哲氏)-1379

今から20年ほど前に「低インスリンダイエット」なるものが世間で流行した。筆者も糖尿病の食事療法との関係で何冊か本を読んだ記憶がある。「低インスリンダイエット」は米国で流行したダイエット本「Sugar Busters!」(邦訳:「シュガーバスター」1999年、講談社)がわが国でアレンジされたもののようであるが、そこで初めてグリセミック指数(glycemic index:GI)について知った。GIの概念を提唱したのはカナダ・トロント大学のJenkinsであるが、本論文の筆頭著者を見て少々驚いた。JenkinsがGIに関する最初の論文を報告したのが今から40年前の1981年であるから、はじめは別人かと思ったが、David J.A. Jenkins, Torontoとあるので間違いなく本人である。40年以上にわたって1つのテーマに専心して研究を続けられるところが、やはり欧米の学問の層の厚さである。