超高齢者でもLDLコレステロール上昇は心筋梗塞、動脈硬化性疾患のリスクである(解説:平山篤志氏)-1347
LDLコレステロール(LDL-C)と動脈硬化性疾患の関連は、多くの疫学研究や大規模臨床試験で明らかにされてきた。しかし、75歳までのデータが多く、75歳以上さらに80歳以上の高齢者のデータはほぼなかった。本論文のCopenhagen General Population Study(CGPS)では動脈硬化性疾患の既往のない健康人を追跡した結果、高齢になればなるほど、心筋梗塞および動脈硬化性疾患(心筋梗塞、致死的冠動脈疾患、非致死的、致死的脳梗塞)の発生頻度が増加しかつ、LDL-C値が高くなればなるほど増加している。LDL-C 1mmol/L(ほぼ38.5mg/dL)の上昇の心血管イベント発生率に及ぼす影響は高齢になるほど大きかった。これまでは、疫学調査でも高齢者のfollow-upが十分でない、期間が短いなどの限界があったが、この研究ではほぼ100%の追跡ができている点、80~100歳が3,188人(全体の3%)、70~79歳が1万591人(全体の12%)と多数例が追跡されている点で実態を正確に反映していると考えられる。この対象にmoderate-intensity statinを使用することで、LDL-C 1mmol/Lを低下することで、5年間の心筋梗塞予防のNNTが80歳以上では80、70~79歳では145と他の年齢に比較して効果があると結論付けている。これはあくまで、これまでの介入試験でのLDL-C低下効果の結果からの類推であり、1次予防効果のエビデンスではないことに留意が必要である。ただ、わが国のエゼチミブを用いた75歳以上の高齢者を対象にしたEWTOPIA75試験でもLDL-C低下によるイベント抑制効果が示されている。超高齢化社会に突入したわが国で、高齢者、とくに超高齢者はポリファーマシー、フレイルなど多くの問題を抱えている。脂質低下療法は2次予防では、論をまたないであろうが、1次予防において積極的介入をすべきかどうかは今後明らかにする必要がある。