血液内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:27

慢性リンパ性白血病のBTK阻害薬アカラブルチニブ、国内承認/AZ

 アストラゼネカは、慢性リンパ性白血病(CLL)に対する選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬アカラブルチニブ(商品名:カルケンス)の国内承認を受け、3月11日にプレス向けのセミナーを行った。この承認は、再発または難治性CLL患者を対象に、標準化学療法とアカラブルチニブを比較した国際共同第III相試験(ASCEND)※において、アカラブルチニブの有効性と安全性が認められたことを受けたものとなる。  CLLは白血病の中で、リンパ系幹細胞が比較的時間をかけてがん化するものを指す。CLLや地域による発症頻度の差が大きく、米国では10万人あたり3.5人だがアジア諸国では少なくなり、日本においては10万人あたり0.2人(いずれも2008年調査)と比較的稀な疾患だ。CLLはB細胞性悪性腫瘍で、アカラブルチニブはB細胞に多く発現するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を標的とし、腫瘍細胞の生存と増殖を阻害する。

「腫瘍内科専門医」は新専門医制度で何が変わる?/日本臨床腫瘍学会

 日本臨床腫瘍学会の専門医制度は、新専門医制度の中で主に内科を基本領域とする「サブスペシャルティ領域専門医」として日本専門医機構より認定された。名称は「腫瘍内科専門医」とされ、今秋・遅くとも来春からの研修開始を目指して最終調整が進められている。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)ではこの新専門医制度についてシンポジウムが開催された。本稿では、その概要について解説した田村 研治氏(島根大学医学部附属病院先端がん治療センター)の講演内容を紹介する。

高リスク初回再発B-ALL小児の地固め療法、ブリナツモマブが有望/JAMA

 高リスクの初回再発B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の小児の治療において、同種造血幹細胞移植前のブリナツモマブの1サイクル投与は、標準的な多剤併用強化化学療法による地固め療法と比較して、無イベント生存割合が有意に優れ、安全性も良好であることが、イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学のFranco Locatelli氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年3月2日号に掲載された。ブリナツモマブは、CD3/CD19を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)分子であり、T細胞を動員してCD19発現B細胞を溶解する。再発・難治性B-ALLの小児を対象とする第I/II相試験で、ブリナツモマブは抗白血病活性が示され、分子レベルでの抵抗性を有するB-ALLの成人および小児において、微小残存病変の高い完全寛解率を誘導したと報告されている。

DPP-4阻害薬は新たな免疫抑制薬となり得るか?(解説:住谷哲氏)-1362

筆者は内分泌代謝疾患を専門としているので、骨髄破壊的同種骨髄幹細胞移植(allo-HSCT)に伴う急性移植片体宿主病(GVHD)に関する知識は少ない。したがって本論文の結果の重要性を評価するのは適任ではないが、36例を対象とした第II相非ランダム化試験でNEJMに掲載されたことから、その結果が臨床的に大きなインパクトを有することは理解できる。シタグリプチンをはじめとしたDPP-4阻害薬の適応は全世界的に2型糖尿病のみである。したがって本試験はdrug repositioning(drug repurposingとも呼ばれる)の1つと考えられる。ペプチド分解酵素であるDPP-4はT細胞表面に発現するCD26と同一分子であり、インクレチンであるGLP-1は生体内に多数存在するDPP-4の基質の1つに過ぎない。CD26はT細胞活性化における共刺激分子costimulatory moleculeである。動物実験でCD26の発現低下によりGVHDの抑制が可能であることが知られており、それに基づいて著者らは今回の試験を計画した。免疫抑制薬であるタクロリムスとシロリムスの併用に加えて、移植前日から移植後14日にわたってシタグリプチン1,200mg/日を投与した。その結果は、主要評価項目である移植後100日までのGrade II~IVのGVHDの発生率は5%であり、これまで報告されている発生率26~47%と比較して大きく低下していた。しかし本試験はいわばproof of conceptの段階であり、その有効性は今後実施される第III相ランダム化比較試験の結果を待つ必要がある。

ブリナツモマブは、1~30歳の初回再発B-ALLの無病生存を改善するか/JAMA

 高または中リスクの初回再発B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の小児・青年・若年成人の再寛解導入療法後の治療において、ブリナツモマブ投与後の造血幹細胞移植(HSCT)と、化学療法施行後のHSCTでは、無病生存割合に関して統計学的に有意な差はないことが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のPatrick A. Brown氏らChildren's Oncology Group(COG)が行った「AALL1331試験」で示された。試験の早期中止による検出力不足の可能性があるため、結果の解釈には限界があるという。研究の詳細は、JAMA誌2021年3月2日号で報告された。小児・青年・若年成人B-ALLの初回再発に対する標準的な化学療法は、とくに早期再発(高リスク)または再導入化学療法後の残存病変の晩期再発(中リスク)の患者において、重度の毒性、その後の再発、および死亡の発生率が高いとされる。ブリナツモマブは、CD3/CD19を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体で、再発・難治性B-ALLに有効であり、良好な毒性プロファイルを有すると報告されている。

がん治療、臨床的に意味のあるQOL改善のエビデンスはほとんど提示なし/JAMA Netw Open

 カナダ・Sunnybrook Research InstituteのVanessa Arciero氏らがシステマティックレビューを行い、がん治療においてQOLの重要性が認識されているにもかかわらず、QOLの改善を示唆するエビデンスが公表されていないことを明らかにした。緩和治療を受けるがん患者にとって、QOLは生存と並び治療意思決定の重要な側面であるが、規制当局はQOL改善のエビデンスがなくても生存期間延長または抗腫瘍効果だけに基づいて承認することがある。著者は、「統計学的な改善に関するエビデンスがある適応症のうち、臨床的に意味のあるQOL改善を示したものはほとんどなかった」と述べている。JAMA Network Open誌2021年2月1日号掲載の報告。

多発性骨髄腫へのide-celのCAR-T細胞療法、奏効率70%超/NEJM

 3種のクラスの薬剤による前治療歴のある再発・難治性多発性骨髄腫の治療において、イデカブタジェン ビクルユーセル(ide-cel、bb2121)は高い全奏効割合をもたらし、微小残存病変(MRD)の陰性化の割合も良好であるが、多くの患者でGrade3/4の血液毒性やサイトカイン放出症候群などの有害事象が発現することが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のNikhil C. Munshi氏らが実施した「KarMMa試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年2月25日号に掲載された。3種の主要クラスの骨髄腫治療薬(免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38抗体製剤)による治療を行っても、病勢が進行した多発性骨髄腫患者では、標準治療が確立されておらず、完全奏効(CR)はまれで、無増悪生存(PFS)期間中央値は3~4ヵ月、全生存(OS)期間中央値は8~9ヵ月と転帰は不良である。ide-celは、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であり、再発・難治性多発性骨髄腫の第I相試験で有望な有効性が報告されている。

FDA、再発/難治性大細胞型B細胞リンパ腫の新CAR-T療法lisocabtagene maraleucelを承認/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年2月5日、米国食品医薬品局(FDA)が、原発性中枢神経系リンパ腫を除く、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)非特定型(インドレントリンパ腫に起因するものを含む)、高悪性度B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、およびグレード3B濾胞性リンパ腫を含む、2種類以上の全身療法による治療歴を有する再発または難治性(R/R)の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の成人患者の治療薬として、CD19を標的とするCAR-T細胞療法のliso-cel(lisocabtagene maraleucel、海外商品名:Breyanji)を承認したと発表。

新型コロナ感染症に対する回復期血漿療法は有効か?(解説:山口佳寿博氏)-1353

新型コロナに対する治療の一環として自然感染から回復した患者血漿を投与する療法が試みられている。これと同様の治療法はS蛋白の種々なる領域に対するMonoclonal抗体治療である。しかしながら、Monoclonal抗体製剤は高価であり世界のすべての地域で簡単に施行できる方法ではなく、費用対効果の面から安価な回復期血漿療法(一種のPolyclonal抗体療法)が多くの国で試みられている。患者の回復期に得られた血漿を新たな患者に輸血する方法はエボラ出血熱、SARS、MERS、鳥インフルエンザなど種々の感染症において施行されてきた。

造血器腫瘍遺伝子パネル検査を開発/大塚製薬・イルミナ

 大塚製薬と次世代シークエンサーの世界トップ企業であるIllumina,Inc.(以下、イルミナ社)は、造血器腫瘍を対象とするがん遺伝子パネル検査を体外診断用検査キットとして開発および商業化する契約を締結したと発表。  今回の契約締結により、大塚製薬は、同社が国内主要施設と共同研究を進めている日本で初めての造血器腫瘍を対象としたがん遺伝子パネル検査を、イルミナ社の医療機NextSeq 550Dxシステムで使用できる体外診断用検査キットとして開発する。