内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:33

あいまいな診断を巡るモノローグ(解説:岡村毅氏)

アルツハイマー病を明確に診断するための血液バイオマーカーに関する重要なポジションペーパーである。その意義を記す前に、精神医学の診断についてちょっとお話をしよう。その昔、精神医学の診断はきわめてあいまいだった。うつ病の人が妄想を持つことはよくあることは知っているだろうか? そして妄想性障害や統合失調症の人がうつ状態になることもある。すると、「どちらを本体とみるか」というのは人間観や疾病観による。というわけで、その昔、精神科医の診断は学派によって異なることもあった。

日本人高齢入院患者のせん妄軽減に対するスボレキサントの有用性~ランダム化試験

 高齢入院患者において頻繁にみられるせん妄は、早急なマネジメントを必要とするだけでなく、認知症、施設入所、死亡率など長期的なリスクに影響を及ぼす可能性がある。せん妄は、睡眠障害と関連しているといわれており、特定の睡眠導入薬によりせん妄が軽減する可能性が示唆されている。順天堂大学の八田 耕太郎氏らは、せん妄リスクの高い高齢入院患者を対象に、せん妄軽減に対するオレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの有用性を評価した。JAMA Network Open誌2024年8月1日号の報告。

高齢者の単純性虫垂炎、最適な治療は?

 高齢者における急性単純性虫垂炎の最適な治療戦略を検討した2万人以上の高齢者を対象としたコホート研究により、即時虫垂切除(入院後1日以内)が非手術的管理より院内死亡率が低いことが示された。また、遅延虫垂切除(入院後1日超)は院内死亡率および合併症発生率が高かった。米国・University of Southern CaliforniaのMatthew Ashbrook氏らが、JAMA Network Open誌2024年8月26日号で報告した。

歯周ポケットなどの歯科健診項目は嚥下機能と関連

 75歳以上の日本人高齢者を対象に、歯科健診の結果と嚥下機能との関連を調べる縦断的研究が行われた。その結果、歯周ポケットの深さが4mm以上、硬いものが噛みにくいこと、水やお茶でむせること、口が乾くことは、将来の嚥下機能低下と関連することが明らかとなった。朝日大学歯学部口腔感染医療学講座社会口腔保健学分野の岩井浩明講師、友藤孝明教授らによる研究であり、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に5月24日掲載された。  加齢に伴う筋肉量の減少などにより、嚥下機能は低下する。また、ストレスや抑うつなどのメンタルヘルスの問題も嚥下機能低下のリスクであるとされる。口腔の健康状態に関しては、唾液の分泌、残存歯数、歯周病菌などと嚥下機能との関連が報告されている。しかし、口腔に関するどのような要因が、嚥下機能低下につながるのかは明らかになっていない。

SGLT2阻害薬による長期治療、2型DMの認知症予防に有効/BMJ

 年齢40~69歳の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬と比較してSGLT-2阻害薬は認知症の予防効果が高く、治療期間が長いほど大きな有益性をもたらす可能性が、韓国・Seoul National University Bundang HospitalのAnna Shin氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年8月28日号に掲載された。  研究グループは、中高年の2型糖尿病患者における認知症リスクと、SGLT-2阻害薬およびDPP-4阻害薬との関連を比較する目的で住民ベースのコホート研究を行った(韓国保健産業振興院[KHIDI]の助成を受けた)。

重症インフルエンザに抗ウイルス薬は有効か/Lancet

 重症インフルエンザの治療に最適な抗ウイルス薬は未だ不明とされる。中国・蘭州大学のYa Gao氏らは、重症インフルエンザの入院患者において、標準治療やプラセボと比較してオセルタミビルおよびペラミビルは、入院期間を短縮する可能性があるものの、エビデンスの確実性は低いことを示した。研究の成果は、Lancet誌2024年8月24日号で報告された。  研究グループは、世界保健機関(WHO)のインフルエンザ診療ガイドラインの改訂を支援するために、重症インフルエンザ患者の治療における抗ウイルス薬の有用性を評価する目的で、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(WHOの助成を受けた)。

HFpEF/HFmrEFへのβ遮断薬~約1万7千例の解析/ESC2024

 β遮断薬は、左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)、LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)を有する患者にも用いられているが、その安全性や臨床転帰への影響は明らかになっていない。そこで、松本 新吾氏(英国・グラスゴー大学/東邦大学医療センター大森病院)らの研究グループは、HFpEF/HFmrEF患者を対象とした4つの大規模臨床試験の参加者を対象として、β遮断薬の臨床転帰への影響を検討する観察研究を実施した。その結果、β遮断薬はHFpEF/HFmrEF患者の臨床転帰を悪化させないことが示唆された。本研究結果は、8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)で発表され、European journal of heart failure誌オンライン版2024年8月31日号に同時掲載された。

日本の野菜中心の食習慣がMASLD患者の肝線維化リスクを低減

 日本の日常的な食習慣が代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)および肝線維症に及ぼす影響を調査した横断研究の結果、野菜中心の食習慣がMASLD患者の肝線維化リスクの低減と関連していたことが、弘前大学の笹田 貴史氏らによって明らかになった。Nutrients誌2024年8月28日号掲載の報告。  MASLDの発症・進行には、食習慣が大きく関与している。これまで、日本食、地中海食、西洋食などの国民的食習慣とMASLDの関連について多くの研究がなされているが、国内の同一地域における食習慣の違いがMASLDの発症・進行にどの程度影響するかを疫学的に検討した研究は乏しい。そこで研究グループは、日本の日常的な食習慣がMASLDと肝線維症の予防に有効であるという仮説を立て、日本の農村地域の一般住民におけるMASLDの発症と肝線維症への進行に対する食習慣の影響を調査した。

ヘルスリテラシー世界最低国の日本、向上のカギは「がん教育」

 現在、小・中・高等学校で子供たちが「がんの授業」を受けていること、そしてその授業を医師などの医療者が担当する可能性があることをご存じだろうか。  2024年8月27日、厚生労働省プロジェクト「がん対策推進企業アクション」メディアセミナーで、中川 恵一氏(東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)が「がん教育の意味」をテーマに、ヘルスリテラシーから考えるがん教育、授業の効果、医療者による授業などについて解説した。  ヘルスリテラシーとは「健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力」を指すが、先進国以外も含む調査において、日本のヘルスリテラシーは最低レベルであることが報告されている。

75歳以上=高齢者は正しい?高齢者総合機能評価に基づく診療・ケアガイドライン

 2017年より日本老年学会・日本老年医学会の合同ワーキンググループが再検討・提言していた「高齢者」の定義が7年の時を経て、現行の65歳以上から“75歳以上を高齢者”とする動きにシフトしていく。しかし、患者を一概に年齢だけで判断し、治療時の判断基準にしてはいけない。その理由はこれと同時に発刊された『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』が明らかにしている。今回、ガイドライン(GL)作成代表者である秋下 雅弘氏(東京都健康長寿医療センター センター長)に本書の利用タイミングや活用方法について話を聞いた。