神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:138

幼若脳への放射線照射、どのような影響を及ぼすか

 放射線療法は小児脳腫瘍に対する一般的な治療であるが、しばしば認知機能低下を含む遅発性の後遺症を引き起こす。その機序としては、海馬でのニューロン新生の抑制が部分的に関与していると考えられている。しかし、若年者の成長過程にある脳への放射線照射が歯状回のニューロンネットワークにどのような変化をもたらすかはまだよくわかっていない。スウェーデン・ヨーテボリ大学のGinlia Zanni氏らは、マウスを用いた研究を行い、成熟脳への照射では長期増強(LTP)の減少のみが引き起こされるが幼若脳ではさらに長期抑圧(LTD)も生じ、成熟脳と幼若脳とで長期シナプス可塑性に対する全脳照射の影響が異なることを明らかにした。結果を踏まえて著者らは、「シナプス変性のメカニズムを解明する必要はあるが、今回の知見は発達過程の脳への放射線照射の影響、ならびに頭部放射線療法を受けた若年者にみられる認知機能障害の理解につながる」とまとめている。Developmental Neuroscience誌オンライン版2015年6月2日号の掲載報告。

レビー小体病変を伴うアルツハイマー病、その特徴は

 遅発性アルツハイマー病(AD)では、しばしばレビー小体病変が認められる。韓国・仁済大学校医科大学のEun Joo Chung氏らは、レビー小体病変の存在がADの臨床表現型や症状進行に影響を及ぼすかどうかを検討する目的で、レトロスペクティブな病理学的コホート研究を行った。その結果、AD病変とレビー小体病変の両方を有する患者とAD病変のみの患者とでは臨床表現型が異なり、両者を識別できることが明らかとなった。著者らは、「ADにおけるレビー小体の頻度やレビー小体とAPOEε4アレルとの関係から、ADとレビー小体の病理学的なメカニズムは共通していることが示唆される」とまとめている。JAMA Neurology誌オンライン版2015年5月18日号の掲載報告。

一般集団における知的障害、ゲノムワイド研究で判明/JAMA

 スイス・ローザンヌ大学のKatrin Mannik氏らは、一般集団を対象にヒト遺伝子のコピー数多型(copy number variations:CNV)と認知表現型(Cognitive Phenotypes)の関連を調べた。CNVと知的障害に関するような表現型との関連は、これまでほとんどが臨床的に確認された集団コホートにおいて評価されたものであった。研究グループは、臨床的プリセレクションのない成人キャリアにおけるCNVによる臨床的特性と既知の症候群との関連を調べ、また一般集団において、頻度やサイズがまれなCNVキャリアの学業成績(educational attainment)におけるゲノムワイドな影響と、知的障害の有病率を調べた。JAMA誌2015年5月26日号掲載の報告より。

認知症と介護、望まれる生活環境は

 認知症患者が生活する環境デザインは納得できるもの、そして患者がパーソナルアイデンティティを強く保ち、彼らの能力を維持していけるようなものであるべきである。これまでは認知症患者がうまく生活することに重点を置いてきたため、終末期が近い患者の物理的環境支援へのニーズや希望が考慮されてこなかった。オーストラリア・ウーロンゴン大学のRichard Fleming氏らは、認知症患者が良好なQOLを保ちつつ人生の最期を迎えるのに適切な環境を明らかにするため、認知症患者、介護家族、医療従事者らからなるフォーカスグループインタビューを行った。その結果、環境デザインとして求められる15の特性についてコンセンサスが得られたことを発表した。BMC Palliative Care誌オンライン版2015年5月12日号の掲載報告。

アミロイドPET陽性率で若年性認知症診断の可能性/JAMA

PET画像診断で検出されたアミロイド陽性率について、アルツハイマー型認知症(AD)の患者では加齢に伴い低下することが、一方、非ADでは、加齢に伴い上昇することが明らかにされた。またAD患者における同低下の程度はアポリポ蛋白E(APOE)ε4非キャリアのほうがキャリアと比べると大きいことなども判明したという。オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのRik Ossenkoppele氏らが、メタ解析の結果、明らかにした。所見について著者は、「若年性認知症診断へのアミロイドPETの臨床有用性、および70歳超のAPOEε4非キャリアAD患者の鑑別診断をサポート可能であることを示唆するものである」と述べている。JAMA誌2015年5月19日号掲載の報告より。

認知症治療、薬物療法にどの程度期待してよいのか

 認知症は治癒が望めない疾患であり、治癒または回復に向かわせる治療法は存在しない。現在の治療は、認知または機能的アウトカムの改善を目的としたものである。米国・ブラウン大学のJacob S. Buckley氏らは、認知症および軽度認知障害(MCI)の治療に関する研究をレビューし、治療のベネフィットとリスクを評価した。その結果、コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)によるベネフィットは小さく、経過とともに効果が減弱すること、用量依存的に有害事象が増加すること、またメマンチン単剤療法はベネフィット、リスクともに小さいことが明らかになったと報告した。Drugs & Aging誌オンライン版2015年5月5日号の掲載報告。

てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか

 米国・ホフストラ・ノースショアLIJ医科大学のPuja Appasaheb Naik氏らは、米国神経学会のガイドラインに準じてシステマティックレビューを行った。その結果、てんかんを有するドライバーと一般集団における交通事故率の違いに関するエビデンスは矛盾しており、結論は得られないことを報告した。Epilepsy&Behavior誌オンライン版2015年5月7日号の掲載報告。

小児てんかん、多剤併用療法の悪影響は

 英国・Young EpilepsyのColin Reilly氏らは、小児活動性てんかんにおける全般的認知、ワーキングメモリおよび処理スピードの障害について調査した。その結果、とくにワーキングメモリおよび処理スピードの障害が顕著であること、多剤併用療法は全般的認知、ワーキングメモリおよび処理スピードの障害に関連していることを報告した。これまで、小児てんかんに特異的な認知プロファイルに関する住民ベースの検討データはなかった。Journal of Clinical and Experimental Neuropsychology誌2015年5月号の掲載報告。

非定型抗精神病薬は認知症に有効なのか

 認知症によくみられる神経精神症状の治療に、さまざまな非定型抗精神病薬が広く用いられているが、これらの薬剤の有効性と安全性に関する無作為化比較試験では矛盾する結果が示されている。中国海洋大学のリン・タン氏らは、この問題に取り組むためシステマティックレビューを行った。結果、アリピプラゾールとリスペリドンは、平均12週で認知症の神経精神症状を改善し認知機能の低下を遅らせると結論付けた。ただし、著者は「認知症患者においては、重度の有害事象が非定型抗精神病薬の有効性を相殺する可能性がある」と指摘している。Alzheimer’s Research &Therapy誌オンライン版2015年4月20日号の掲載報告。