神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:17

日本人の3つの食事パターン、脳が萎縮しやすいのは?

 日本人における食事パターンと脳容積の変化の関連はほとんど調べられていない。今回、国立長寿医療研究センターのShu Zhang氏らが、老化に関する長期縦断疫学研究プロジェクトで日本人の中高年を前向きに調査したところ、伝統的日本食を摂取する女性は、西洋食を摂取する女性より全灰白質の萎縮が少ないことが示された。一方、男性は食事パターンと脳萎縮との関連は認められなかったという。Nutrition Journal誌2024年3月12日号に掲載。

ED治療薬がアルツハイマー病を予防?

 勃起障害(ED)治療薬が、アルツハイマー病(AD)のリスクを押し下げる可能性を示唆するデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のRuth Brauer氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に2月7日掲載された。ただし同氏らは、この研究は因果関係を証明可能なデザインで行われておらず、さらなる研究が必要な段階であることを強調している。  シルデナフィル(商品名はバイアグラ)、バルデナフィル(同レビトラ)、タダラフィル(同シアリス)というED治療薬は、作用機序から「ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)」と呼ばれる。これらのPDE5iには血管を拡張する作用があり、また血液脳関門(脳に異物が入り込まないようにするための仕組み)を通過することができ、動物実験では神経保護作用のあることが示されている。ただし、ヒトの認知機能との関連のエビデンスは少ない。Brauer氏らは、EDと診断された40歳以上の男性26万9,725人(平均年齢58.5±10.0歳)の医療記録を解析し、ヒトの認知機能に対するPDE5iの影響を検討した。なお、ベースライン時点で認知機能の低下が認められた患者は、この研究の対象から除外されている。

早期アルツハイマー病における攻撃的行動と関連する脳の変化

 認知症患者の精神神経症状は、介護者の負担につながり、患者の予後を悪化させる。これまで多くの神経画像研究が行われているものの、精神神経症状の病因学は依然として複雑である。東京慈恵会医科大学の亀山 洋氏らは、脳の構造的非対称性が精神神経症状の発現に影響している可能性があると仮説を立て、本研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2024年2月23日号の報告。  アルツハイマー病患者における精神神経症状と脳の非対称性との関連を調査した。対象は、軽度のアルツハイマー病患者121例。日本の多施設共同データベースより、人口統計学的データおよびMRIのデータを収集した。脳の非対称性は、左脳と右脳の灰白質体積を比較することで評価した。精神神経症状の評価には、Neuropsychiatric Inventory(NPI)を用いた。その後、脳の非対称性と精神神経症状との相関関係を包括的に評価した。

認知症は現代病? 古代での症例はまれ

 認知症は時代を問わず人類を悩ませてきた病気だと思われがちだが、実際には現代に登場した病気であるようだ。米南カリフォルニア大学レオナード・デイビス校(老年学)のCaleb Finch氏と米カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校歴史学分野のBurstein Stanley氏らが古代ギリシャとローマの医学書を分析した結果、アリストテレスや大プリニウスなどが活躍した今から2000〜2500年前には、認知症に罹患する人は極めてまれだったことが示唆されたのだ。研究グループは、「現代の環境やライフスタイルがアルツハイマー病などの認知症の発症を促しているとする考え方を補強する結果だ」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of Alzheimer’s Disease」に1月25日掲載された。

抗精神病薬使用と認知症リスク~40万人超のプロスペクティブコホート研究

 抗精神病薬は、最も汎用されている薬剤の1つであり、認知機能低下を引き起こす可能性が示唆されている。しかし、認知症リスクに対する抗精神病薬の影響に関する研究は、一貫性がなく、十分とは言えない。中国・青島大学のLi-Yun Ma氏らは、抗精神病薬使用と認知症リスクとの関係を調査するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年3月15日号の報告。  英国バイオバンク参加者41万5,100例のプロスペクティブコホート研究のデータを用いて、分析を行った。抗精神病薬およびさまざまなクラスの使用が認知症リスクに及ぼす影響を評価するため、多変量Cox比例ハザードモデルおよび経口抗精神病薬用量反応効果分析を用いた。

コロナによる認知障害、症状持続期間による違いは?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)へ感染し、症状が消失・回復しても、症状の持続期間にかかわらず軽度の認知機能障害が認められた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAdam Hampshire氏らが、オンライン評価による大規模コミュニティのサンプル調査(14万例超)の結果を報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の認知機能障害はよく知られているが、客観的に測定可能な認知機能障害が存在するか、またどのくらいの期間持続するかは不明だった。NEJM誌2024年2月29日号掲載の報告。   研究グループは、イングランドの試験に参加した成人80万例に対し、認知機能のオンライン評価の実施を依頼し、8タスクの全般的認知機能スコアを推定した。  感染発症後に12週間以上持続する症状を有した患者は、客観的に測定可能な全般的認知機能障害があり、とくに直近の記憶力低下または思考や集中困難(ブレインフォグ)を報告した患者では、実行機能と記憶の障害が観察されるだろうと仮説を立て、検証した。

カフェインは片頭痛を引き起こすのか

 カフェイン摂取は、片頭痛の要因であると考えられており、臨床医は、片頭痛患者に対しカフェイン摂取を避けるよう指導することがある。しかし、この関連性を評価した研究は、これまでほとんどなかった。習慣的なカフェイン摂取と頭痛の頻度、持続時間、強さとの関係を調査するため、米国・Albany Medical CollegeのMaggie R. Mittleman氏らは、発作性片頭痛成人患者を対象としたプロスペクティブコホート研究を実施した。Headache誌オンライン版2024年2月6日号の報告。  2016年3月~2017年8月に発作性片頭痛と診断された成人患者101例を対象に、カフェイン入り飲料の摂取に関する情報を含むベースラインアンケートを実施した。対象患者は、頭痛の発症、持続時間、痛みの強さ(スケール:0~100)に関する情報を1日2回、6週間、電子的日誌で報告した。年齢、性別、経口避妊薬の使用で調整した後、ベースライン時の習慣的なカフェイン摂取と6週間の頭痛との関連を評価した。

3Dプリントで「会話」する脳組織の作成に成功

 ニューロン(神経細胞)が互いにネットワークを形成して「会話」する脳組織を3Dプリンティング技術で作成することに成功したという研究結果を、米ウィスコンシン大学マディソン校の研究グループが発表した。研究グループは、「研究室における神経学的プロセスの研究を進歩させる画期的な成果だ」と述べている。同大学マディソン校ワイズマンセンターのSu-Chun Zhang氏らによるこの研究の詳細は、「Cell Stem Cell」2月号に掲載された。  Zhang氏は、「これは、ヒトの脳細胞や脳の部位がどのようにコミュニケーションを取っているのかを理解する上で、非常に強力なモデルになる可能性がある」と述べ、「この3Dプリントの脳組織は、幹細胞生物学、神経科学、そして多くの神経疾患や精神疾患の発症機序に対する見方を変える可能性がある」と付け加えている。

認知症になる前に頭の中で何が起きているのか(解説:岡村毅氏)

アルツハイマー型認知症になる前に頭の中で何が起きているのだろうか? もうすぐ新学期だから、医学生・看護学生に話すつもりでわかりやすく説明しよう。かつてはアルツハイマー型認知症のことは何もわかっていなかったが、亡くなった人の脳を調べることで、重症になればなるほどアミロイドが溜まり、タウが溜まり、脳が小さくなっている(萎縮という)ということがわかっていた。しかし脳は、たとえば肝臓のように、バイオプシーができないため、実際に生きている人の脳の中で何が起きているのかはわからないという大問題があった。診断に関しても、血液検査や画像検査(こういうのをバイオマーカーという)ではわからないので、臨床診断しかなかったのだ。われわれがいつも使ってきたDSM4やICD10はバイオマーカーを用いない臨床診断である。

認知症の診断、実は肝硬変の可能性も?

 高齢化した米国の退役軍人を対象とした新たな研究で、認知症と診断された人の10人に1人は、実際には肝硬変により脳に障害が生じている可能性のあることが示された。米リッチモンドVA医療センターのJasmohan Bajaj氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に1月31日掲載された。  肝硬変は、肝臓の肝組織が徐々に瘢痕化して機能障害を起こすもので、その発症要因には、年齢、男性の性別、アルコール性肝障害、肝炎ウイルス、うっ血性心不全など多数ある。肝硬変の症状の一つである肝性脳症は、本来、肝臓で分解されるはずのアンモニアが、肝硬変や肝臓がんなどによる肝機能の低下が原因で十分に分解されず、血液に蓄積して脳に達し、脳の機能が低下する病態を指す。