神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:23

ベンゾジアゼピン使用と認知症リスク~メタ解析包括レビュー

 高齢化社会に伴い、認知症の患者数は増加しており、認知症が主な死因の1つとなっている。しかし、ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関係については、一貫した結果が得られておらず、エビデンスの最新レビューが必要とされる。台湾・中国文化大学のChieh-Chen Wu氏らは、メタ解析の包括的レビューを実施し、ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関連についての入手可能なエビデンスを要約した後、その信頼性を評価した。Journal of Personalized Medicine誌2023年10月12日号の報告。  ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関係を調査した観察研究のメタ解析をシステマティックに評価した。各メタ解析について、全体的なエフェクトサイズ、不均一性、バイアスリスク、論文の公表年を収集し、事前に指定した基準に基づきエビデンスの格付けを行った。各研究の方法論的な品質の評価には、システマティックレビューを評価するための測定ツールAMSTARを用いた。

片頭痛の前駆症状/予兆期、ubrogepantは有効か?/Lancet

 片頭痛の前駆症状/予兆(prodrome)期におけるubrogepant 100mgの服用は、プラセボと比較して中等度/重度の片頭痛発作を減少させ、忍容性は良好であった。米国・メイヨー・クリニックのDavid W. Dodick氏らが、米国内の研究センターおよび頭痛クリニック75施設で行われた多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー第III相試験「PRODROME試験」の結果を報告した。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体アゴニストのubrogepantは、片頭痛の急性期治療薬として承認されているが、片頭痛発作の最も早い段階である前駆症状/予兆が出現した際に服用した場合の有効性については不明であった。Lancet誌オンライン版2023年11月15日号掲載の報告。

早期アルツハイマー病へのgantenerumab、2件の第III相試験結果/NEJM

 早期アルツハイマー病患者において、完全ヒトモノクローナルIgG1抗体のgantenerumabは116週時点のアミロイド負荷をプラセボより減少させたものの、臨床症状の悪化を抑制しなかった。米国・ワシントン大学のRandall J. Bateman氏らGantenerumab Study Groupが、30ヵ国288施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較第III相試験「GRADUATE I試験」および「GRADUATE II試験」(それぞれ15ヵ国156施設、18ヵ国152施設)の結果を報告した。アミロイドβ(Aβ)を標的とするモノクローナル抗体は、早期アルツハイマー病患者の認知機能や身体機能の低下を遅らせる可能性がある。gantenerumabは、Aβの凝集体に対して高い親和性を有しており、皮下投与のアルツハイマー病治療薬として開発が進められていた。NEJM誌2023年11月16日号掲載の報告。

アミロイド陽性アルツハイマー病患者の皮質萎縮に対する炭水化物制限の影響

 インスリンレベルを低下させる炭水化物制限は、アルツハイマー病(AD)発症を遅らせる可能性がある。炭水化物の摂取を制限するとインスリン抵抗性が低下し、グルコースの取り込みや神経学的健康が改善すると考えられる。ADの特徴は、広範な皮質の萎縮だが、アミロイドーシスが確認されたAD患者において、正味炭水化物摂取量の低下が皮質萎縮の軽減と関連しているかは、明らかとなっていない。米国・Pacific Neuroscience Institute and FoundationのJennifer E. Bramen氏らは、炭水化物制限を行っているアミロイド陽性アルツハイマー病患者を対象に、中程度~高度の炭水化物摂取の場合と比較し、皮質厚が厚いとの仮説を検証した。Journal of Alzheimer's Disease誌2023年10月号の報告。

日本における慢性疼痛・片頭痛患者の医療アクセスへの障壁

 慢性疼痛および片頭痛は、患者のQOLや生産性の低下などの経済的な負担が大きいにもかかわらず、十分に治療されていないケースが少なくない。治療を受けない理由を明らかにすることは、介護を求める行動を改善するための介入を可能にするためにも重要である。しかし、日本において、疾患特有の治療を受けない理由に関する報告は限られている。順天堂大学の唐澤 佑輔氏らは、慢性疼痛および片頭痛を有する未治療の患者における医療アクセスへの障壁を明らかにするため、調査を行った。その結果から、痛みに伴うリスクとその原因、安価な治療選択肢の利用の可能性、適切な治療施設へのアクセスについて患者教育を行うことで、治療率が向上する可能性が示唆された。Frontiers in Pain Research(Lausanne, Switzerland)誌2023年10月3日号の報告。

パクスロビドのCOVID-19罹患後症状の予防効果に疑問符

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として知られるパクスロビド(一般名ニルマトレルビル・リトナビル、日本での商品名パキロビッドパック)のCOVID-19の罹患後症状(post-COVID-19 conditions;PCC)に対する効果に疑問を投げかける研究結果が報告された。COVID-19の重症化リスクや死亡リスクが高い患者に処方されることが多い抗ウイルス薬のパクスロビドを投与された患者と投与されなかった患者の間で31種類のPCCについて比較したところ、肺塞栓症・静脈血栓塞栓症以外はリスクが同等であることが示されたのだ。米Veterans Affairs Puget Sound Health Care Systemおよび米ワシントン大学消化器学分野のGeorge Ioannou氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に10月31日掲載された。

米FDAが全身型重症筋無力症治療薬のジルビスクを承認

 米食品医薬品局(FDA)は10月17日、抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の全身型重症筋無力症の成人患者に対する治療薬として、補体5(C5)阻害作用を有する自己投与型の皮下注ペプチド製剤ジルビスク(一般名ジルコプラン)を承認した。  全身型重症筋無力症はまれな自己免疫疾患で、神経筋接合部における機能障害と損傷を特徴とする。全身型重症筋無力症の病態は、補体カスケードの活性化や免疫細胞の過剰反応、病原性のIgG(免疫グロブリンG)自己抗体の作用など複数の要因によって引き起こされると考えられている。

認知機能維持にゴルフやウォーキングが有望か

 歳を重ねる中で思考力を保つためにするべきことは何なのか。その答えは、ゴルフ、2本のポールを持って行うノルディックウォーキングや通常のウォーキングであることが、新たな研究で明らかになった。東フィンランド大学(フィンランド)のJulia Kettinen氏らによるこの研究結果は、「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に10月12日掲載された。  一過性の有酸素運動により、運動の強度や実施時間、種類に関係なく認知機能が向上する可能性が過去の研究で示唆されている。この研究では、5日間にわたるランダム化クロスオーバー試験により、認知的要求度の高い3種類の高齢者に適した有酸素運動(18ホールのゴルフ、6kmのノルディックウォーキング、6kmのウォーキング)が認知機能に及ぼす即時的な効果が検討された。対象者であるゴルフを趣味とする健康な高齢者25人(平均年齢69±4歳、男性16人)には、3種類の運動の全てを、各運動の間に1日のウォッシュアウト期間を挟みながら、実際の生活環境の中で自分のペースで行ってもらった。運動の際には、フィットネスモニターにより距離、時間、ペース、エネルギー消費量、歩数を測定し、ECG(心電図)センサーにより心拍数も測定した。

地域のソーシャルキャピタルと認知症発症との関連~日本老年学的評価研究データ分析

 近年、社会や地域における、人々の信頼関係・結びつきを意味するソーシャルキャピタルという概念が注目されている。個人レベルでのソーシャルキャピタルは、認知機能低下を予防するといわれている。また、コミュニティレベルでのソーシャルキャピタルが、認知症発症に及ぼす影響についても、いくつかの研究が行われている。国立長寿医療研究センターの藤原 聡子氏らは、日本人高齢者を対象とした縦断的研究データに基づき、コミュニティレベルのソーシャルキャピタルと認知症発症との関連を調査した。その結果から、市民参加や社会的一体感の高い地域で生活すると、高齢女性の認知症発症率が低下することが示唆された。Social Science & Medicine誌2023年12月号の報告。

好きな音楽が痛みを軽減する可能性を示す新研究

 好きな音楽を聴くと痛みが和らぐ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。これまでにも、音楽が鎮痛薬の代わりになる可能性については研究されてきたが、今回、音楽を聴いているときの感情的反応が痛みの緩和に大きな役割を果たすことが示されたという。マギル大学(カナダ)のDarius Valevicius氏らによるこの研究の詳細は、「Frontiers in Pain Research」に10月25日掲載された。