神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:34

下肢反応検査で高齢ドライバーの事故リスクを予測可能

 高齢ドライバーのアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故リスクの予測には、現在、免許更新時に行われている認知機能検査よりも、簡単なシミュレーションによるテストの方が優れている可能性が報告された。東北大学未来科学技術共同研究センター/高齢者高次脳医学研究プロジェクトの目黒謙一氏、熊居慶一氏の研究によるもので、詳細は「Dementia & Neuropsychologia」に11月4日掲載された。  高齢ドライバーの交通事故対策は、喫緊の社会的課題となっている。対策の一環として現在、75歳以上で免許を更新する際に認知機能テストと、一定の交通違犯歴がある高齢者には技能検査も行われる。

アルツハイマー病治療薬lecanemab、病態進行を2~3年遅延/エーザイ

 エーザイは4月4日付のプレスリリースにて、同社の早期アルツハイマー病(AD)治療薬lecanemabについて、長期的な健康アウトカムへの影響をシミュレーション評価した結果が、Neurology and Therapy誌オンライン版2023年4月2日号に掲載されたことを発表した。本シミュレーションでは、lecanemabによる治療により、AD病態進行を遅らせ、患者が早期AD段階に留まる期間が延長され、QOL改善の可能性が示された。また、より早期の軽度認知障害(MCI)の段階で投与を開始した場合、病態進行を遅らせる効果がより大きい可能性も明らかとなった。

日本における若年性認知症の初期症状とは

 東京都健康長寿医療センター研究所の枝広 あや子氏らは、認知症のサブタイプごとに、若年性認知症の初期症状を調査した。その結果、若年性認知症はサブタイプにより初期症状の頻度に違いがあることが明らかとなった。著者らは、本結果が若年性認知症の初期症状に対する一般の人々の意識向上に貢献し、早期診断や社会的支援が促進されるだろうと述べている。Psychogeriatrics誌オンライン版2023年2月22日号の報告。  日本における全国的な人口ベースの若年性認知症有病率調査を実施した。データは、若年性認知症を有する人が利用する医療サービス提供者を通じて収集した。初期症状は、記憶障害、失語障害、易刺激性、意欲低下、職場や家庭でのミスの増加、それ以外の異常な行動や態度といった6つのドメインで評価した。

米FDAが片頭痛に対する新たな点鼻薬を承認

 片頭痛患者は、より即効性があり、また、心筋梗塞や脳卒中のリスクがある人にとってはより安全な新しい治療選択肢を得ることになりそうだ。米食品医薬品局(FDA)は3月9日、重度の片頭痛に対する治療薬として、ファイザー社製の点鼻スプレーであるザベジパント(商品名Zavzpret)を承認した。  ファイザー社のグローバルバイオ医薬品事業部の最高商務責任者兼社長であるAngela Hwang氏は、「ZavzpretのFDA承認は、痛みからの解放を必要とし、経口薬に代わる選択肢を望む片頭痛患者にとって、大きなブレークスルーとなる」と同社のニュースリリースで述べた。また、「ファイザー社は、片頭痛に悩まされている人々が、痛みを忘れて日常生活に戻るのを助けるための新たな治療薬の開発に熱意を持って取り組んでいる。Zavzpretはそのようなファイザー社の献身を明確に示すものだ」と強調する。

AD治療薬lecanemab、ARIAやQOL解析結果をAD/PD学会で発表/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは3月31日付のプレスリリースにて、同社の早期アルツハイマー病(AD)治療薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabについて、第III相試験「Clarity AD試験」における最新の解析結果を、スウェーデンのイェーテボリで3月28日~4月1日に開催の第17回アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PD2023)にて発表したことを報告した。lecanemab投与群では、プラセボ群よりアミロイド関連画像異常(ARIA)の発現率が増加したが、抗血小板薬や抗凝固薬の使用によるARIAの発現頻度は上昇せず、ARIA-H単独の発現パターンはプラセボ群と同様だったことが明らかとなり、QOLの結果からは、lecanemab治療が被験者と介護者に有意義なベネフィットをもたらすことが示された。

アルツハイマー病薬が抜毛症と皮膚むしり症の症状軽減か

 アルツハイマー型認知症の治療薬として長年にわたり使用されているメマンチンが、抜毛症や皮膚むしり症の症状の軽減に役立つ可能性が、米シカゴ大学精神科学・行動神経科学教授のJon Grant氏らが実施した臨床試験で示された。同試験では、メマンチンが投与された抜毛症や皮膚むしり症の患者の5人中3人で症状の改善が認められたという。詳細は、「The American Journal of Psychiatry」に2月22日掲載された。  Grant氏によると、抜毛症と皮膚むしり症の米国での有病率は3~4%と推定されているという。これらの疾患の患者は、髪の毛などの自分の体毛を引き抜く、あるいは自分の皮膚をむしることがやめられず、実際に体を傷つけるまでそうした行為を続けてしまう人も多い。

コロナ疾患後症状患者、1年以内の死亡/重篤心血管リスク増

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染から1年間のコロナ罹患後症状(Post-COVID-19 Condition:PCC[いわゆるコロナ後遺症、long COVID])について、米国の商業保険データベースを用いて未感染者と比較した大規模調査が、保険会社Elevance HealthのAndrea DeVries氏らによって実施された。その結果、PCC患者は心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが約2倍上昇し、1年間の追跡期間中の死亡率も約2倍上昇、1,000人あたり16.4人超過したことが明らかとなった。JAMA Health Forum誌2023年3月3日号に掲載の報告。  米国50州の18歳以上の健康保険会員において、2020年4月1日~7月31日の期間にCOVID-19に罹患し、その後PCCと診断された1万3,435例と、未感染者2万6,870例をマッチングし、2021年7月31日まで12ヵ月追跡してケースコントロール研究を実施した。

日本の食事パターンと認知症リスク~NILS-LSAプロジェクト

 日本食の順守が健康に有益である可能性が示唆されている。しかし、認知症発症との関連は、あまりよくわかっていない。国立長寿医療研究センターのShu Zhang氏らは、地域在住の日本人高齢者における食事パターンと認知症発症との関連を、アポリポ蛋白E遺伝子型を考慮して検討した。その結果、日本食の順守は、地域在住の日本人高齢者における認知症発症リスクの低下と関連しており、認知症予防に対する日本食の有益性が示唆された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2023年2月17日号の報告。  本研究データはNILS-LSA(国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究)プロジェクトの一環として収集され、愛知県在住の認知症でない高齢者1,504人(65~82歳)を対象とした20年間のフォローアップコホート調査が実施された。

軽症COVID-19でも脳の構造に変化が生じる可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後には、脳の構造的・機能的な変化が生じており、不安や抑うつ症状のある人ではそのような変化の程度が強いことを示す研究結果が報告された。カンピーナス大学(ブラジル)のClarissa Yasuda氏らの研究によるもので、第75回米国神経学会(AAN2023、4月22~27日、ボストン)での発表に先立ち、研究要旨が2月20日にオンラインで公開された。  COVID-19の急性期以降にさまざまな症状が遷延する、いわゆる「long COVID」では、不安や抑うつといったメンタルヘルス関連症状が現れることが少なくない。ただし、それらの症状の有無と、脳の構造的・機能的な変化の関連はほとんど明らかにされていない。Yasuda氏は、「long COVIDについてはまだ研究すべきテーマが数多く残されている。われわれの研究によって、急性期に軽症であった患者でさえ、罹患から数カ月後に脳の変化が観察されたことは、新たな懸念材料と言える。患者の生活の質(QOL)が長期間低下してしまうことへの予防的な介入法の確立に向けて、さらに多くの研究が必要とされる」と述べている。

質の低い教育は高齢期の認知症リスクと関連か

 人種と早期教育は高齢者の認知症リスクと関連するようだ。新たな研究で、子どもの頃に教育の質が低い州の学校に通っていた人と、質の低い教育環境で育てられがちな黒人では、高齢期の認知症発症リスクの高いことが示された。米カイザー・パーマネンテ・北カリフォルニア(KPNC)のYenee Soh氏らによるこの研究結果は、「JAMA Neurology」に2月13日掲載された。  この研究では、1997年1月1日から2019年12月31日までの23年間の縦断データが用いられた。このデータは、米国の大規模なヘルスケアシステムであるKPNCの会員のうち、1964〜1972年に実施された任意調査に参加し、1996年1月1日時点で65歳以上であり、同年には認知症と診断されていなかった、米国出身の非ヒスパニック系の黒人と白人2万788人から収集されたものだった。対象者の平均年齢は74.7歳で、56.5%が女性、18.8%が黒人、81.2%が白人であり、41.0%は高等教育を受けていなかった。対象者の電子カルテから認知症の診断の有無を確認し、認知症の発症と対象者が6歳時に受けた州の教育の質との関連を検討した。教育の質は、学校年度の長さ、生徒と教師の比率、出席率で評価し、三分位値で3つの群(「低い」「中程度」「高い」)に分けた。