肺機能と認知症リスク~43万人超のコホート研究 脳の認知的な健康に、肺機能が他の因子と独立して影響を及ぼすかはよくわかっていない。中国・青島大学のYa-Hui Ma氏らは、肺機能と脳の認知的な健康の縦断的な関連性を評価し、根底にある生物学的および脳の構造的なメカニズムを明らかにしようと試みた。その結果、認知症発症の生涯リスクに対する個々の肺機能の影響が確認され、著者らは、「最適な肺機能の維持は、健康的な加齢や認知症予防に有用である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌2023年3月号の報告。
歯を失うと糖尿病に伴う認知機能低下に拍車がかかる可能性 糖尿病患者が歯を失うと、認知機能低下リスクがより上昇するかもしれない。その可能性を示唆する、米ニューヨーク大学ローリーマイヤーズ看護学部のBei Wu氏らの研究結果が、「Journal of Dental Research」に3月12日掲載された。この研究のみでは因果関係の証明にはならないが、強固な関連が認められるという。 糖尿病が認知症のリスク因子の一つであることや、残っている歯の数が少ないほど認知症リスクが高くなることが知られている。ただし、糖尿病患者が歯を失うことにより認知症リスクがより高まるのか否かは明らかでない。Wu氏らはこの点について、同大学が行っている、就労や定年退職と健康に関する研究(Health and Retirement Study;HRS)のデータを用いて検討した。
PM2.5曝露で認知症リスク増加の可能性~メタ解析/BMJ 直径2.5ミクロン未満の微小粒子状物質(PM2.5)への曝露が認知症リスクの増加と関連する可能性があり、ややデータが少ないものの二酸化窒素と窒素酸化物への曝露にも同様の可能性があることが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のElissa H. Wilker氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年4月5日号に掲載された。 研究グループは、認知症リスクにおける大気汚染物質の役割の調査を目的に、文献の系統的レビューとメタ解析を行った(Harvard Chan National Institute of Environmental Health Sciences Center for Environmental Healthなどの助成を受けた)。
片頭痛患者の血清尿酸値は痛みの強さに影響しているのか プリン体の最終代謝産物である尿酸は、抗酸化物質として作用し、酸化ストレスと関連している。血清尿酸(SUA)は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症などの神経変性疾患の病因と関連している可能性が報告されている。しかし、片頭痛とSUAレベルとの関連を評価した研究は、これまでほとんどなかった。トルコ・Istanbul Basaksehir Cam ve Sakura City HospitalのYavuz Altunkaynak氏らは、片頭痛患者の痛みの特徴とSUAレベルとの関係を調査し、頭痛発作中および頭痛がない期間における片頭痛患者のSUAレベルを対照群と比較検討した。その結果、片頭痛患者の発作中と発作がない期間のSUAレベルの差は、痛みの強さと正の相関を示していることが報告された。Medicine誌2023年2月3日号の報告。
認知症のリスクを下げる7種類の習慣 心臓に良いことは、脳にも良い――。これは、心臓の健康を維持するための7種類の習慣が、認知症の発症リスクも抑制する可能性のあることを示した、新しい研究からのメッセージだ。この研究は、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のPamela Rist氏らによって行われ、第75回米国神経学会(AAN2023、4月22~27日、ボストン)での発表に先立ち、研究要旨が2月27日にオンラインで公開された。 この研究で認知症リスク抑制効果が評価された7項目のリストには、より多く体を動かすこと、より健康的な食事を取ること、適正体重を維持すること、タバコを吸わないこと、血圧とコレステロールおよび血糖値を良好に保つことが含まれている。これらは米国心臓協会(AHA)が、心臓の健康維持のために提唱していた「Life's Simple 7」と呼ばれるもの。なお、現在はこれらに加えて「睡眠」も留意すべき事柄とされ、「Life's Essential 8」と呼ばれている。
なぜジャンクフードを食べたくなる?おやつに意外な効果も? 高脂肪・高糖質の食品には中毒性がある。高脂肪・高糖質の食事は、エネルギーの過剰摂取と体重増加をもたらすが、その根底にあるメカニズムは明らかになっていない。また、肥満が脳内ドパミン神経系の変化と関連することが知られているが、これらの変化が、「太りやすい体質にしているのか」「肥満に伴って2次的に生じるのか」「欧米型の食事に直接起因するのか」は解明されていない。そこで、ドイツ・マックスプランク代謝研究所のSharmili Edwin Thanarajah氏らは、正常体重の健康成人を対象に、通常の食事に加えて高脂肪・高糖質のヨーグルトまたは低脂肪・低糖質のヨーグルトを8週間摂取させる無作為化比較試験を実施した。その結果、高脂肪・高糖質のヨーグルトの摂取は、低脂肪食品への嗜好性を低下させたが、高脂肪・高糖質のミルクセーキに対する脳の反応を増加させた。さらに、食事とはまったく関係のない連合学習能力も向上させた。これらの変化は、体重や代謝パラメータとは関係がなかった。本研究結果は、Cell Metabolism誌4月4日号に掲載された。
精神科病棟の認知症患者に対する音楽療法~レトロスペクティブ研究 音楽療法は、地域および施設でケアされている認知症患者の気分を高め、興奮を軽減し、苦痛を伴う行動の減少が期待できる治療法である。しかし、精神科病棟に入院している認知症患者に対する音楽療法の影響はあまり知られていない。英国・アングリア・ラスキン大学のNaomi Thompson氏らは、2つの精神科病棟において認知症患者に対する音楽療法の影響を調査した。その結果、音楽療法を実施した日は実施しなかった日と比較し、苦痛を伴う行動が有意に減少し、音楽療法が患者の気分および興奮の軽減をサポートする価値ある介入であることが報告された。BJPsych Open誌2023年2月23日号の報告。
ハリケーンで認知症の人の死亡リスク上昇 ハリケーンによる災害が認知症の高齢者の死亡リスクを高める可能性を示唆するデータが報告された。認知症でない高齢者に比べて死亡リスクが1割近く高く、被災後に非被災地へ移転した人でも死亡リスクの上昇が認められたという。米ミシガン大学のSue Anne Bell氏らによる研究の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に3月7日掲載された。 論文の筆頭著者であるBell氏は、ハリケーン被災により認知症の高齢者の死亡リスクが上昇することの理由として、「日常生活の混乱、生活環境の変化、さらには介護や医療へのアクセスが妨げられることに起因する可能性がある」としている。その上で、「この研究からの重要なメッセージは、被災した認知症の高齢者には固有なニーズがあるということだ。その最も顕著な一例を挙げるなら、認知症の人は災害発生時の危機的な状況を認識できないため、身の安全の確保をほぼ完全に介護者に依存することになる」としている。
下肢反応検査で高齢ドライバーの事故リスクを予測可能 高齢ドライバーのアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故リスクの予測には、現在、免許更新時に行われている認知機能検査よりも、簡単なシミュレーションによるテストの方が優れている可能性が報告された。東北大学未来科学技術共同研究センター/高齢者高次脳医学研究プロジェクトの目黒謙一氏、熊居慶一氏の研究によるもので、詳細は「Dementia & Neuropsychologia」に11月4日掲載された。 高齢ドライバーの交通事故対策は、喫緊の社会的課題となっている。対策の一環として現在、75歳以上で免許を更新する際に認知機能テストと、一定の交通違犯歴がある高齢者には技能検査も行われる。
アルツハイマー病治療薬lecanemab、病態進行を2~3年遅延/エーザイ エーザイは4月4日付のプレスリリースにて、同社の早期アルツハイマー病(AD)治療薬lecanemabについて、長期的な健康アウトカムへの影響をシミュレーション評価した結果が、Neurology and Therapy誌オンライン版2023年4月2日号に掲載されたことを発表した。本シミュレーションでは、lecanemabによる治療により、AD病態進行を遅らせ、患者が早期AD段階に留まる期間が延長され、QOL改善の可能性が示された。また、より早期の軽度認知障害(MCI)の段階で投与を開始した場合、病態進行を遅らせる効果がより大きい可能性も明らかとなった。