脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:53

アルツハイマー病スクリーニングのための網膜アミロイドイメージング

 アルツハイマー病のスクリーニングでは、アミロイド沈着のin vivoイメージングを行うための費用対効果に優れた非侵襲的な方法が求められる。網膜アミロイドは、アルツハイマー病の診断マーカーとなりうる可能性があるが、in vivoにおける網膜アミロイドイメージングに関する研究はほとんどない。岡山大学の田所 功氏らは、アルツハイマー病患者における網膜アミロイドのin vivoイメージングの有用性について調査を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2021年8月5日号の報告。

ILRによる心房細動の検出は、脳卒中の予防に有効か/Lancet

 脳卒中のリスク因子を持つ集団において、脳卒中の予防を目的とする植込み型ループレコーダ(ILR)による心房細動のスクリーニングは、心房細動の検出と抗凝固療法の開始をそれぞれ約3倍に増加させるものの、脳卒中や全身性動脈塞栓症のリスク低減には結び付かず、大出血の発生も抑制しないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院RigshospitaletのJesper Hastrup Svendsen氏らが実施した「LOOP試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年8月27日号に掲載された。

血小板減少症/血栓症リスク、コロナワクチン接種後vs. 感染後/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のChAdOx1 nCoV-19ワクチン(Oxford-AstraZeneca製)の初回接種後には血小板減少症や静脈血栓塞栓症、まれな動脈血栓症のリスクが上昇し、BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)初回接種後には動脈血栓塞栓症や虚血性脳卒中のリスクの増加が認められるが、これらのイベントのリスクは、ワクチン接種後と比較して同一集団における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後のほうがはるかに高く、長期に及ぶことが、英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らの調査で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2021年8月26日号で報告された。  本研究は、イングランドにおけるCOVID-19ワクチンと血液学的/血管系イベントとの関連の評価を目的とする自己対照ケースシリーズ研究であり、2020年12月1日~2021年4月24日の期間に実施された(英国研究技術革新機構[UKRI]の助成による)。

軽症高血圧患者の認知症リスクに対する血圧コントロールの影響

 高血圧は、認知症リスクを上昇させるといわれているが、低リスクの軽症高血圧患者における認知症リスクに関する研究は、これまでほとんど行われていなかった。韓国・延世大学校のChan Joo Lee氏らは、グレードIの高血圧患者の認知症リスクに対する血圧コントロールの影響について調査を行った。Journal of Hypertension誌2021年8月1日号の報告。  National Health Insurance Service National Health Examinee cohortより、2005~06年にグレードI高血圧(140~159/90~99mmHg)と診断された患者12万8,665例を対象とした。対象患者は、血圧コントロール群(フォローアップ期間中の平均血圧:140/90mmHg未満)と非血圧コントロール群(平均血圧:140/90mmHg以上)に分類し、2015年までフォローアップを行った。認知症リスクは、傾向スコアで調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。

認知症のBPSDに対するタンドスピロンの有効性

 愛媛大学の越智 紳一郎氏らは、認知症の周辺症状(BPSD)に対するタンドスピロン(buspironeを改良したazapirone系抗不安薬)の有効性について、とくに超高齢者をターゲットとして検討を行った。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2021年8月31日号の報告。  2013年8月~2018年8月に特別養護老人ホームでBPSDを有する高齢者を対象として、オープンラベル観察研究を行った。認知症の重症度の評価には臨床的認知症尺度(CDR)、BPSDの重症度の評価には臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory-12(NPI-12)を用いた。主要アウトカムは、ベースラインからタンドスピロン維持療法到達4週間後のBPSD重症度の変化とした。タンドスピロンは、30mg/日から開始し、1日3回に分けて投与した。2週間後に看護記録に基づき有効性が十分であると確認された場合、タンドスピロンの投与を継続し、有効性が不十分な場合、タンドスピロンを40~60mg/日へ増量した。

慢性片頭痛予防に対するフレマネズマブの有効性~日韓共同第III相試験

 慢性片頭痛に利用可能な予防的治療は、さまざまな有効性および安全性の問題により制限されている。片頭痛の病因に関連するカルシトニン遺伝子関連ペプチド経路を標的とするモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、大規模な国際第III相臨床試験において、効果および忍容性の高さが確認されている。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本人および韓国人の慢性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性について、評価を行った。Headache誌オンライン版2021年7月29日号の報告。

アルツハイマー病患者の抑うつ症状に対する抗うつ薬治療の有効性~メタ解析

 抑うつ症状は、アルツハイマー病(AD)患者でみられる最も一般的な神経精神症状の1つである。現在の臨床現場では、AD患者の抑うつ症状に対する第1選択治療として、抗うつ薬治療が行われている。中国・Maoming People's HospitalのYanhong He氏らは、AD患者の抑うつ症状の治療における抗うつ薬の有効性に関するエビデンスをシステマティックに調査した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2021年7月9日号の報告。  ランダム化比較試験のメタ解析を行うため、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PubMed、Embase、CNKIデータベースよりシステマティックに検索した。主要アウトカムは、平均うつ病スコアおよび安全性とし、副次的アウトカムは、認知機能とした。さまざまな治療による順位確率を推定するため、surface under the cumulative ranking curveを用いた。

新しい病気の登場(解説:後藤信哉氏)

人類は時代に応じて各種疾病と戦ってきた。ペストの時代があり、結核の時代があり、心血管病の時代があった。数の多い疾病に対して、発症メカニズムを解明し、予防、治療手段を開発してきた。新型コロナウイルスも人類が克服すべき疾病である。ワクチンは新型コロナウイルス感染に対する人類の反撃の第一歩である。 ヒトの細胞にウイルスの蛋白を作らせる新型コロナウイルスワクチンも歴史的な医学の進歩として記録されるだろう。しかし、革新的ワクチン特有の副反応も見つかってきた。ワクチンによる免疫血栓症(vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia(VITT)も新規に出現した問題である。実証的な英国医学では理論よりも現実を注視する。英国の規制当局は、ワクチン接種を担う医師たちにワクチン接種後の脳静脈洞血栓症の報告を依頼した。本研究では2021年4月1日から5月20日までに報告された99例の脳静脈血栓症のまとめである。70例はVITTとされた。新しい病気に対する新しいワクチンなので、どんな合併症がどれだけ起こるか、誰も知らない。新型コロナウイルス感染による死亡を減らせるのであれば、まずワクチンを使ってみよう! しかし、合併症があれば、公開してみんなで議論しよう! というのは英国人の良いところである。

若年性認知症の世界的有病率~メタ解析

 認知症の症状が65歳以前に発現する若年性認知症については、信頼できる推定有病率が明らかとなっていない。有病率の推定は、政策立案時に適切な医療環境を組織するうえで必要となる。オランダ・マーストリヒト大学のStevie Hendriks氏らは、若年性認知症の世界的有病率の推定を試みた。JAMA Neurology誌オンライン版2021年7月19日号の報告。  1990年1月~2020年3月に公表された若年性認知症の有病率に関する人口ベースの研究を、PubMed、Embase、CINAHL、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。65歳未満の認知症有病率に関するデータを含む研究を独立した2人のレビュアーによりスクリーニングし、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。30~34歳から60~64歳まで、5歳刻みの年齢層における若年性認知症の有病率を推定した。有病率の推定値をプールするため、変量効果メタ解析を実施した。結果は、世界標準人口による年齢調整を行った。性別、認知症サブタイプ、研究デザイン、世界銀行の分類に基づく経済状態によるサブグループ分析およびメタ解析により、不均一性を評価した。主要アウトカムは、5歳刻みの年齢層における若年性認知症の推定有病率とした。

科学的情報早期共有の重要性(解説:後藤信哉氏)

新型コロナウイルス感染のすべてが解明されているわけではない。予防ワクチンの副反応もすべてが解明されているわけではない。生命現象は複雑精妙な調節系であり、基本原理は未知である。実際に疾病にかかってみる、あるいは実際にワクチンを受けてみる、ことにより反応を実証的に積み重ねていかないと正解にはたどり着けない。法律、規制のYes/Noはヒトが決めることができる。しかし、規制当局が承認した薬剤、ワクチンがすべての症例に有効、安全であるわけではない。アストラゼネカ(AZ)ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)では血栓症の発症がファイザー、モデルナワクチンよりも多いように報道されている。AZワクチンによる血栓症についても実態を正確に把握する必要がある。NEJMは、世界で最も信頼されている医学雑誌である。本研究は約1,600万人の50歳以上の症例と約800万人の50歳以下の、最低1回AZワクチンを受けた症例からワクチンによる血栓症を疑われた294例の専門家による解析結果である。実際に、ワクチンによる免疫血栓症(vaccine induced immuno-thrombosis:VIIT)を疑われた症例のうち、170例は確実にVIIT、50例はVIIT疑いとされた。VIIT発症者の中間年齢は48歳、ワクチン接種から発症までの期間の中間値は14日であった。リスクの高い症例を事前予測する性別などのリスク因子を明確にすることはできなかった。VIITによる死亡率は22%であった。死亡率の高い症例は脳静脈洞血栓症、経過中の血小板減少、経過中のフィブリノゲン減少などであった。本研究は英国における経験である。健常者のワクチン接種により致死的合併症が起こることを容認できないヒトもいるかもしれない。VIITの死亡率22%を容認できないヒトもいるかもしれない。世の中にはいろいろな考えるのヒトがいるものだ。しかし、2千万人以上のワクチン接種の経験を速やかに論文発表してpublic domainにする英国には強さを感じる。結果を数値にして公表してしまえば、メディアでも国会でも数値を客観的事実として共有するのみである。